BWR使用済燃料貯蔵ラックの減衰特性評価

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カテゴリ: 第13回
1.はじめに
BWR の使用済燃料貯蔵ラック(以下、「燃料ラック」 という)の耐震性評価に用いる設計用減衰定数は、従来、 「原子力発電所耐震設計技術指針 JEAG4601-1991 追補版」に示されている溶接構造物の設計用減衰定数1%を適用している。 既往の加振試験に基づき 7%を適用している事例もあるものの、現状の設計用地震動の増大を考慮すると、既往の試験よりも大きな加振条件での減衰特性を確認することは耐震安全性向上の観点から有効である。 本稿では、実機を模擬した2種類の燃料ラック(角管型、格子型)に対する、大加速度による水中加振試験の結果を報告する。
2.実機の燃料ラックの構造 実機の燃料ラックは、Fig.1 に示すとおり、水深約12m の使用済燃料プール内に燃料集合体を貯蔵するための設備であり、プール底部にボルト固定にて設置されている。 燃料ラックは、複数の金属製のセルで構成されており、セル内に燃料集合体を貯蔵し、適切な間隔に維持することで燃料集合体の臨界防止および冷却する機能を有している。 東北電力女川原子力発電所および東通原子力発電所に設置される燃料ラックの種類には、角管をセルとする角管型ラックと、鋼板を格子状に組み合わせてセルを構成する格子型ラックの2種類がある。
3.試験装置
3.1 試験水槽 燃料ラックの実機使用状態である水中を摸擬するため、振動台上に水槽を設置して、内部に試験用燃料ラックを設置した。 なお、試験水槽は試験用燃料ラックと共振しないよう、十分に剛な構造として製作した。
3.2 模擬燃料集合体 試験用燃料ラックの内部には、模擬燃料集合体を装荷した。模擬燃料集合体は、実機燃料集合体と同一の構造、寸法、重量、 材質(UO2 ペレットは鉛により 重量を模擬)で構成した実機相当燃料集合体と、外形および重量を同一とした形状模擬燃料集合体の2種類を使用した。 なお、実機相当燃料集合体と 形状模擬燃料集合体が同等の振動特性(共振振動数)を有することを模擬燃料集合体の単体試験で確認している。 Fig.3 The Simulant Fuel
3.4 計測装置
試験用燃料ラックの共振振動数、応答倍率および振動モードを計測するために、振動台、試験水槽および試験 用燃料ラック各部に加速度計を設置した。 Storage Capacity 3.3 試験用燃料ラック 実機の燃料ラックの振動特性を模擬するため、実機の 角管型ラック、および格子型ラックの構造・寸法を同一 とした実物大相当の試験用燃料ラックを製作した。ただし、実機燃料ラックと同等の貯蔵体数を有する試験用燃料ラックでの加振試験は、加振設備の搭載質量や構造強度などの制約上困難であることから、本試験の試験用燃料ラックは、加振する方向を実機の燃料ラック最小列の 貯蔵体数として模擬した部分模擬の試験用燃料ラックとし、試験用燃料ラックの長辺方向を加振方向とした。 以上より、本試験における試験用燃料ラックは、角管型ラックとして30体貯蔵ラック、格子型ラックとして33 体貯蔵ラックとした。 Approx. 3 m Water Tank Approx. 5 m Vibration direction Fig.4 The Test Fuel Rack (Square Tube Type) Accelerometer (Horizontal) Fig.5 Location of the Accelerometer (Square Tube Type) さらに、加振試験により試験用燃料ラックの脚部構造 や締結部に損傷や緩みなどが無いことを確認するため、 ラック下部やボルト締結部付近などに、ひずみゲージを 設置した。 角管型ラックに対する加速度計の設置位置を Fig.5 に 示す。 Fig.2 The Water Tank Table.1 Comparison of the Actual and the Test Fuel Racks
4.加振試験方法および結果 4.1 加振試験方法 試験用燃料ラックに模擬燃料集合体を装荷し、試験水 槽に水を注入した状態において、加振試験を実施した。 加振試験方法の概要をFig.6 に、振動台から入力した加 振条件をTable.2 に示す。振動台からの加振は、試験用燃 料ラックの共振特性を精度良く計測することができるよ う、加速度振幅一定で振動数を時間比例で変化、上昇さ せる正弦波掃引により入力し、振動台加速度と試験用燃 料ラック各部の応答加速度との伝達関数から共振振動数、 応答倍率、振動モード等の振動特性を分析評価した。 Table.2 Shake Test Input Conditions Fig.6 Summary of the Shake Test Method Rack Type Input Wave Frequency Input Range (Hz) Acceleration (m/s2) Square Tube Type Sine Sweep Wave 8-20 0.42 - 7.09 Lattice Type Sine Wave Sweep 9-21 0.51 - 4.94 4.2 試験結果 正弦波掃引加振試験における各加振入力に対する、試 験用燃料ラック頂部と振動台の伝達関数から得られた試 験用燃料ラックの共振曲線として、格子型ラックの例を Fig.7に示す。 Response Wave この結果から、入力が小さい領域では応答倍率は 7~8 程度と大きいが、加振入力レベルが大きくなるに従い応 答倍率が 3 程度となっており、顕著な低下傾向が見られ Time (s) る。 Input Wave (Sine Sweep) これらの加振入力に対する応答特性は、燃料ラックの 減衰特性の振幅依存性を示すものであり、入力加速度レ ベルの小さな低振幅域では減衰が比較的小さく、振幅の 増加に伴って減衰が増加することによって、応答倍率が Time (s) 低下していると考えられる。なお、角管型ラックの減衰 水特性も同様の傾向であることを確認している。 Amplification Ratio Resonance Frequency Frequency (Hz) 4.3 減衰特性評価 (1) 減衰定数の評価方法 今回の試験における減衰定数の評価においては、試 験用燃料ラックの応答特性を精度よく評価することが 出来るよう、応答倍率による手法を用いて減衰を評価 した。 応答倍率による減衰評価の概要をFig.8に示す。 1 質点系の応答倍率が1 ? 2ζ(ζ:減衰比)と等しい ことから、これを試験用燃料ラックの多質点系に展開 して、減衰比を求めた。 6 5X 4Max = ζ21 / 3Y 2100 0.5 1 1.5 2 Fig.8 Summary of Damping Constant Evaluation (2) 減衰特性評価結果 前述の応答倍率による手法により求めた減衰定数と ラック頂部の最大応答加速度の関係をFig.9に示す。 Fig.9 Damping Constant of the Fuel Racks 角管型ラックと格子型ラック共に、ラック頂部の応 答加速度と減衰の関係は、応答加速度の増加に伴い減 衰定数が増加する傾向であり、減衰の大きさについて も角管型ラックと格子型ラックは同等であることがわ かる。 したがって、燃料ラックの減衰定数は、加速度が大 きな領域では、既往の加振試験結果により得られた7% よりも十分に大きいことを確認した。 この減衰の傾向は、燃料ラックの応答の増加に従い、 ラックセル内部での燃料集合体とラック間の摩擦、衝 突、流体減衰等による振動エネルギーの消散が大きく なり、減衰も増加したことによるものと推定される。 - 118 - 5.結論 実機を模擬した 2 種類の燃料ラックにより、既往試験 よりも大きな加振条件での水中加振試験を実施した。そ の結果、角管型および格子型共に、応答加速度の増加に 伴い減衰定数が大きくなる傾向を確認した。 本試験結果から、設計用地震動増大を想定した応答加 速度レベルにおけるラックの減衰定数は、既往の加振試 験に基づく7%よりも大きくなることを確認した。 したがって、今後の燃料ラックの耐震性評価において は、評価用地震動に対する燃料ラック頂部の応答加速度 に応じた適切な減衰定数が適用できるものと考えられる。“ “BWR使用済燃料貯蔵ラックの減衰特性評価“ “草階 達朗,Tatsuo KUSAKAI,飯田 純,Jun IIDA,長坂 直,Naoshi NAGASAKA,渡邊 和,Urara WATANABE,前田 学,Manabu MAEDA
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