宇宙機の地上試験設備における保全方法改善の取り組み

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カテゴリ: 第13回
1.緒言
宇宙機開発は、設計・製造検証や耐環境性能を検証するための試験設備、ロケット打上げのための射場設備、軌道上運用を行うための追跡管制設備等多くの地上インフラ設備によって支えられている。一般に宇宙機は量産品ではなく「一品モノ」として開発されることが多く、 開発コストも高価(設計寿命数年~十数年に対して開発コスト数十億~数百億円)となることが多いため、開発プロセスの中で不具合が顕在化し開発出戻りが発生した場合の損失コストもFig.1に示す通り自動車やその他の業界よりも高い傾向にある[1]。そのため、今日の宇宙機開発プロセスでは損失コストの増加を抑制するためいわゆる伝統的なウォーターフォール型のプロセスが開発の基本モデルとなっている。
Fig.1 Hardware failure costs vs. assembly level
このように宇宙機開発では不具合顕在化による開発出戻りやそれに伴うスケジュール遅延がトータルコストに多大な影響を与えるため、宇宙機本体のみならずそれを支える地上設備にも高い信頼性が求められており、特に地上試験設備に関しては「試験時に不具合なく確実に稼働する」ことが重要となる。旧来、宇宙航空研究開発機 構(JAXA)が保有する宇宙機用地上試験設備では定期点検・定期交換による事前保全を主として行い、試験時不具合の未然防止に努めてきた。一方で、石油プラントや水道・電力インフラ等他産業界の設備保全動向に目を向けると、定期的に検査・交換を行う時間基準保全に加え、 故障が発生した場合に設備全体に与える影響(リスク) を識別し影響が小さい機器は故障が発生してから対策を行う事後保全、さらには近年のIoT 技術の急速な進歩に伴い発展した状態監視保全の 3つの保全方式を合理的に選択するリスクベースメンテナンス(RBM)が保全方式の主流となりつつあり[2]、宇宙機用地上試験設備保全においてもこのような技術動向を取り入れた保全計画のさらなる合理化が望まれている。本稿では、RBMに基づく設備保全方式改善の取り組み の内、設備構成機器の不具合発生実績からワイブル分析を用いて保全の有効性を定量的に評価する手法を宇宙機 用地上試験設備へ適用した試行結果、及びそこから見えてきた宇宙機用地上試験設備特有の課題点について報告 する。
2.宇宙機用地上試験設備
2.1 宇宙機用地上試験設備の概要
宇宙機はロケット打上げ時の加速度、振動、衝撃、音響等の機械環境、宇宙空間での熱真空環境や放射線環境、アウトガスによる分子状汚染からスペースデブリに至るまで、運用中に様々な環境に曝される。地上試験設備はこれらの環境を地上に再現し打上げ前に機器の健全性を検証するための設備であり、JAXAの前身組織である宇宙開発事業団(NASDA)は、1989年に茨城県つくば 市筑波宇宙センターに総合環境試験棟(SITE)を建造、稼働を開始した(Fig.2)。 Fig.2 Ground environmental test facility in SITE これらの試験設備は稼働開始から20年以上が経過しており、全体的にも老朽化が進んでいる。一方で設備の更新改修や保全に係る基盤的維持費は限られているため、設備保全のさらなる合理化を推進していくためには保全コストに対する設備の信頼性(不具合発生確率や不具合発生時の設備システム全体及び宇宙機本体に与える影響度の多寡)の関係を定量的に評価し、組織として要求す るリスク・コストバランスを確保するための保全計画の改善活動(PDCAサイクル)が重要となる。しかし、現状では設備信頼性を定量的に判断する手法自体が存在しないため、宇宙機用地上試験設備における保全有効性 (Maintenance Effectiveness)の定量的な評価手法の整備が 望まれている。
2.2 本手法の適用設備
SITEを所管するJAXA環境試験技術ユニットが保有する「6mφ放射計スペースチャンバ」と「1600m3音響試験設備」の二設備(Fig3,4)について、次項以降に示す保全有効性の定量評価手法の適用を図る。この二設備は設備構成機器を系統毎に分類すると、6mφ放射計スペースチャンバは電動機や液体窒素貯槽、温度計や圧力計等一般にも流通している機器が多い一方で、1600m3音響試験設備は音響発生器やスピーカホーン等比較的特殊な機器で構成されており、この二設備で傾向を把握することが出来れば他設備への展開性を確認することが出来ると考え られるためである。 The acoustic test facility is used to conduct tests to confirm the functions and structural robostness of a spacecraft in a simulated interior acoustic environment of a launch vehicle fairing during the launch and flight stages. Fig.4 System architecture of 1600m3 acoustic test facility 3.保全有効性の定量評価 3.1 保全有効性評価指標(ME)の導入 現状の保全がどの程度有効に機能しているかを定量的 に評価するためには、設備運用中(宇宙機用地上試験設 備においては試験中)に発生する不具合と、予防保全に より未然に洗い出せている不具合の割合を評価する必要 があり、保全有効性評価指標MEは式(1)のように表すこと が出来る。 (c) Space Chamber (e) Large Vibration Test Facility (f) Radiowave Test Facility (d) Acoustic Test Chamber (a) SITE image 1 (b) SITE image 2 Fig.3 System architecture of 6mφ radiometer space chamber - 122 - The 6mφ radiometer space chambber is used to simulate environments a spacecraft is exposed t in space, such as high vacuum or cryogenic temprature, for the purposes of verifying the endurance, function, and temperature, of a test item. 等号条件を考え(2)式を展開していくと次式(3)が導ける。 ME = 1 ? NNtest all ここで、Ntestは試験中不具合が発生した試験件数、N(1) allは PM PM?t = 1 + (CM ? C1 P )(QM ? PM ) (3) その設備(機器)の累積試験件数である。緒言で述べた ここで、QM = PMが成り立つと仮定する。これは、保全 通り宇宙機用地上試験設備で重要なことは「試験中不具 により解消されなかった潜在不具合は試験中に必ず顕在 合を発生させないこと」であり、全試験件数Nallに対して 化することを仮定している。このとき、(3)式は以下のよ 試験中不具合が発生した試験件数Ntestが小さい(ME ? 1) うに変形できる。 場合は保全が有効に機能していると判断することが出来、 逆に全試験件数Nallに対して試験中不具合が発生した試 LM ≡ PPM?t M == 1 + (C1 M ? CP ) (4) 験件数Ntestが大きい(ME ? 0)場合は保全内容の改善が ここで、最適メンテナンスLMを保全を行った上で設備 必要であると判断することが出来る。保全改善を行って 不具合の発生確率と保全を行わず設備不具合が発生する いく際はまずは(1)式を用いて現行保全を定量的に評価し 確率の比として、右辺に示すようにコストの概念から定 た後、次項以降に示す種々の方法を用いてMEの値が1に 義している。例えば、機器調達・製造に掛かるコストCPに 漸近するように適切な改善措置を講じていくことになる。 対して予防保全に掛かるコストCM が小さければ (CM ? CP ≪ 1)、予防保全によって可能な限り不具合の発 3.2 最適メンテナンスレベル(LM)の導入 生を未然に防ぐべきであり、逆(CM ? CP ≫ 1)であれば 3.2.1 理論 予防保全にコストを投じるよりも事後保全で修理・交換 設備保全の適正化を図っていくためには、不具合の未 をした方がトータルコストを低減することが可能となる。 然防止に投資する予防コストと不具合が発生した場合の また、CM ? CP = 1のときはLM = 0.5となり、「予防保全 損失コスト、双方を考慮したトータルの保全コストを考 により不具合発生確率を半減させることと予備品を 1 つ える必要がある。例えば、損失コストが非常に大きい機 持つことはコストと信頼性の面で同等」であることを表 器には不具合発生を未然防止できるだけの予防コストを している。コスト比と最適メンテナンスレベルの関係を 投じるべきであり、逆に損失コストが非常に小さい機器 Fig.5に示す。実際のコスト比がFig5の実線上にあれば保 に対しては多大な予防コストを投じても意味がないこと 全レベルは妥当であると判断でき、線上から離れるほど になる。これを保全コストに係る期待値として考えると、 過大/過少保全となる。 下式(2)のように整理することが出来る。 1 0.9CPPM + CMQM ? CPPM?t (2) ここで、CPは機器調達・製造に係るコスト、CMは予防保 全に掛かるコストであり、PMは保全を行った上で機器修 理・交換を必要とする設備不具合の発生確率、QMは保全 により設備不具合が解消されない確率、PM?tは保全を行 わず設備不具合が発生する確率である。基本的にCMとPM LM = 1 when CM/CP = 0LM = 0.5 when CM/CP = 1 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 は相関関係があり、CMが増加する程PMは低下する(予防 Fig.5 Cost ratio vs maintenance level 保全にコストを投じるほど運用中の不具合発生確率は低 下する)ことになる。(2)式の左辺は「設備の保全を行っ 一般に機器調達・製造に掛かるコストCPは機器が決定 たにも関わらず運用中に不具合が発生してしまった場合 すれば自ずと確定する定数値(機器の高度化に伴い適宜ア の損失コスト期待値」であり、右辺は「設備の保全を行 ップデートは必要)であり、管理者が操作することが出来 わず運用中に不具合が発生してしまった場合の損失コス るパラメータは予防保全に掛かるコストCMとなる。CMの ト期待値」とみることができる。保全を行う際は不具合 値は(2)式に示すように設備不具合発生確率を用いて組織 発生確率PMをみながら予防保全が有効になる((左辺)? として要求するリスク・コストバランスの閾値から決定 (右辺)となる)ように投資するコストCMの値を調整し、 すべき値であり、適正値を求めるためには設備不具合の 最適なメンテナンスレベルを探索することが重要となる。 発生確率を把握することが必要となる。 - 123 - M 0.80.70.60.50.40.30.20.10Cost ratio, CM / CP 3.3 3.2.2 スペースチャンバへの試行例 ワイブル分析による不具合発生確率定量評価 前項に示した保全有効性の定量評価の概念を、2.2項に 3.3.1 理論 示した 6mφ放射計スペースチャンバへ適用する。まず、 次に、設備不具合の発生確率を定量的に概算する方法 設備構成機器を系統毎に分類し、総試験件数と不具合発 を示す。設備・機器における稼動中の不具合発生確率を 生試験件数から系統毎の保全有効性MEを算出した結果 求める方法としては、メーカによる保証年数をそのまま をTable 1に示す。総試験件数が構成機器によって異なる 採用する方法(保障年数を越えたら即交換)や、近年では のは、制御監視装置及び通話装置は改修更新実施後の試 IoT を用いたヘルスモニタリング技術による故障予兆診 験件数をカウントしたためである。 断システム等が存在する[3]。宇宙機用地上試験設備では Table1 Maintenance effectiveness of 後者のような故障予兆による不具合発生確率の定量評価 6mφ radiometer space chamber 手法は導入に至っておらず、メーカ保障年数をベースに Maintenance Item Ntest Nall ME [%] これまでの運用実績から担当者の判断で機器の点検・交 vacuum vessel 0 42 100 換周期を決定している。ここでは、機器の寿命予測にし liw vacuum system 3 42 93 ばしば用いられるワイブル分布を用いた統計解析手法を high vacuum system 5 42 88 宇宙機用地上試験設備に応用し、機器の不具合発生実績 liquid nitrogen system 2 42 95 データから不具合の発生確率を概算する方法を紹介する。 cold water sypply unit 0 42 100 対象にストレスを与えた際の時間経過に対する不具合 instrument air supply unit 0 42 100 発生確率はワイブル分布に従うことが広く知られており oximeter 0 42 100 [4]、その累積分布関数F(t|m,η)及び確率密度関数 vibration analyzer 0 42 100 f(t|m,η)は次式のように表される。 monitor and control system 3 7 57 communication device 1 8 88 F(t|m,η) = 1 ? exp {?(nη)m} (5) また、構成機器系統の最適メンテナンスレベルを算出し たグラフをFig.6示す。Table 1及びFig.6より、6mφ放射 計スペースチャンバでは制御監視装置及び冷却水設備に ついて最適レベルから逸脱していることが分かる。この 結果からより詳細に各系統構成機器の故障モードや故障 発生時の影響度を評価することにより、リスク・コスト バランスを考慮した保全改善を行うことが可能となる。 f(t|m,η) = mη (ηt)m?1 exp{?(ηt)m} (6) ここで、mは形状パラメータ、ηは尺度パラメータと呼ば れる、ワイブル分布の性質を決定する母数パラメータで ある。ワイブル分布は機器の故障率λ(t|m,η)を(7)式のよ うに表すことが出来、工学的には、m < 1(時間経過と ともに故障確率が減少していく)の領域を初期故障域、 m = 1(時間経過に依らず故障確率がほぼ一定)の領域 を偶発故障域、m > 1(時間経過とともに故障確率が増 加していく)の領域を摩耗故障域と捉え、故障率の時間 3.0 1900/01/01 12:00:00推移いわゆるバスタブカーブとして表現し、アイテムの 1900/01/01optimum level 寿命予測手法等として種々の分野で広く応用されている。 1899/12/31 12:00:001λ(t|m,η) = mη (ηt)m?1 1899/12/2312:00:000:00:00いま、tを試験日数[日]として考え、設備を構成する各 機器の不具合発生確率がワイブル分布に従っていると仮 定しその母数パラメータの推定を行っていく。パラメー タの推定には広く一般に用いられている最尤推定法 (MLE)を適用する。 MLEは「今現在発生している(観 Fig.6 Maintenance level of 測されている)事象が起きる確率が最大となる母数の値 6mφ radiometer space chamber が,現在の時点ではその推定値として最も尤もらしい」 という最尤原理のもと、離散型確率分布の場合は各事象 - 124 - 累積分布関数F(t|m,η)の信頼区間を推定することが可 の発生確率の積を、連続型確率分布の場合は確率密度関 数の積を尤度関数として定義し、観測事象の発生確率が 能となる。 最大となるようにパラメータを探索していく手法である。 ワイブル分布の場合、尤度関数Lは(6)式の確率密度関数 3.3.2 音響試験設備への試行例 を用いて以下のように表される。 前項に示した不具合発生実績からワイブル分析を用い NL(m,η|t) = ?f(ti|m,η) Ni て不具合発生確率を導出する手法について、2.2項に示す 1600m3音響試験設備への適用を図る。解析の結果得られ == ?i mη (tηi)m?1 exp {?(tηi)m} -8た2つの特徴的な機器の傾向をFig.7に示す。 Actual data Fit curve 95% conf.int. 多くの場合は (8)式の自然対数をとった対数尤度関数 NlnL(m,η|t) = ln [?i mη (tηi)m?1 exp{?(tηi)m} ] (9) を用い、(9)式が最大となるような最尤推定値m?、ηを求め ていく。これは最尤推定値が1点求まる点推定であるが、 実際に有限個のサンプルから得られた推定値はバラつき を有していると考え信頼区間の推定を行うのが一般的で n oitcnuFn oitubirtsiDe vitalumuC1.0 0.8 0 50 100 150 200 250 Test duration [Day] ある。例えば、ワイブル分布累積分布関数の 95%信頼区 間は次のように与えられる。 (a) F(t|m,η)p95 = F(t|m?,η) ± Kp95 ? √Var{F(t|m,η)} (10) ここで、Kp95は 95%信頼区間における信頼水準であり、 Var{F(t|m,η)}はワイブル分布累積分布関数の分散を表 している。ワイブル分布においては自由度(推定パラメ ータ)が複数あるため、累積分布関数F(t|m,η)の信頼区 間を求めるためには各パラメータの分散を考慮した合成 0.0 分散を計算する必要がある。累積分布関数F(t|m,η)の分 散を分散共分散法(デルタ法)によって Taylor 展開する ことで求めると下式(11)のようになる。 Var{F(t|m,η)} +{ ∂η ∂= 2 { ∂m? ∂F(t|m?,η)}Var(η) (b) 2Fig.7 Waibull Analysis of 1600m3 acoustic test facility F(t|m?,η)}Var(m?) 1600m3 音響試験設備の年間平均試験日数は約 25 日で +2 ? ∂m? ∂F(t|m?,η) ? ∂η ∂F(t|m?,η) ? Cov(m?,η) ある。Fig.7(a)に示す機器は 1 年周期で保全を行っている -11機器であるが、試験日数70~80 日前後で不具合が発生し 文献[5]によると、合成分散の各パラメータの分散はFisher ており、試験日数 63.1 日までは不具合発生確率 5%未満 情報量行列を用いて次のように求めることが出来る。 であることが分かる。このことから、もし保全内容と不 [ Cov(m?,η) Var(m?) Cov(m?,η) Var(η) ] = I?1(m,η) Actual data Fit curve 95% conf.int. 具合発生確率に相関関係がない場合は、保全周期を延長 することが可能であると考えることが出来る(相関関係 があった場合は 1 年周期で保全を行っているからこそ不 == 具合が70~80日間隔となっている可能性があり、保全周 [ 期を延長することでワイブル分布の推定曲線もそれに応 じて変わる可能性があるため注意が必要である)。 一方Fig.7(b)を見ると、この機器は1年周期で保全を行 っているにも関わらず、10~50日(1~2年)間隔で不具合 - 125 - n oitcnuFn oitubirtsiDe vitalumuC0.6 0.4 0.2010.80.60.40.20 50 100 150 200 250 Test duration [Day] ? ∂m? ∂2 2 lnL ? ∂m?∂η ∂2 lnL ? ∂m?∂η ∂2 lnL ? ∂η∂2 2 lnL ] ?1 -12(12)式により各パラメータの分散共分散を求め、(11)式に 代入し得られた合成分散を(10)式に代入することにより、 5.結言 が頻発していることが分かる。このような機器に対して は、不具合の中身と保全内容を突き合わせ、不具合発生 箇所が適切に点検されているか否かの確認を行い、適切 に点検されていてなお不具合が頻発している場合には保 全周期を短縮しよりこまめに点検を行うか、予備品を確 保する等の方法で不具合発生時のリスクを未然に解消し ておく等の対処が必要であると考えられる。 以上より、保全有効性の検討手法と宇宙機用地上試験 設備への試行例を示した。これらの結果を考慮し、保全 全体の改善を図ることが可能であると考えられる。 本稿のまとめを以下に示す。 ? 宇宙機用地上試験設備では、「試験中に不具合なく確 実に稼働する」という至上命題のもと、事前保全を 主として行い試験中不具合の事前防止に努めてきた。 ? 設備保全の技術は日々進歩しており、宇宙機用地上 試験設備でも保全計画のさらなる合理化を図るべく、 保全の有効性を定量的に評価し効率的に改善を図っ ていく手法の整備が望まれている。 ? 今回、宇宙機用地上試験設備の内JAXA 環境試験技 4.宇宙機用地上試験設備保全特有の課題点 術ユニットが保有する二設備「6mφ放射計スペース 本検討から見えてきた宇宙機用地上試験設備保全の課 題点を以下に示す。 ? 宇宙機用地上試験設備は石油プラントや電力インフ ラ設備のように 24 時間稼働し続けるようなもので はなく、試験がないとき(宇宙機の試験スケジュー ルの合間)には稼働を停止している状態である。そ のため、「次回試験時に不具合なく確実に稼働するか」 をこれまでの運転状況や直前の点検結果等から推定 チャンバ」と「1600m3音響試験設備」について、保 全有効性の定量評価手法を試行した。 ? その結果、スペースチャンバでは制御監視装置・冷 却水設備でコストの観点から改善が見込まれること が判明した。 ? また、音響試験設備ではワイブル分析を用いた不具 合発生確率の概算手法を適用することにより、保全 周期の見直しが期待できる機器が確認された。 する必要がある。 ? 宇宙機用地上試験設備ではこれまで事前保全を主と して行い試験中不具合の事前防止に努めてきた経緯 もあり、そもそも試験中不具合の件数が少なく信頼 区間が非常に広く工学的に意味のない値を示してし まう機器が多々存在する。中にはこれまで一件も不 今後、状態監視保全の導入可能性を検討しつつ、保全 コスト、故障モード、故障発生時のリスク等から時間基 準保全・状態監視保全・事後保全を定量的に評価・識別 する手法を検討し、設備保全のさらなる合理化に努めて いく。 具合が発生していない機器も多く存在するため、そ ういった機器には不具合実績以外から不具合発生確 率を概算する手法を検討する必要がある。 ? 不具合発生確率を見積もる方法としては他にも状態 監視保全等が存在するが、このような故障予兆診断 システムは水道・電力インフラといった24時間稼働 設備で導入が進んでおり、前述の通り宇宙機用地上 試験設備は 24 時間稼働ではないため適用可能か否 か検討が必要である。 ? 今回の手法では試験日数[日]を一つの指標としたが、 実際には一日の中で複数回試験を行う、試験前後で 設備の確認運転を行う、試験毎に試験条件(運転時 の各機器への負荷レベル)が異なる等、今後より詳 細に解析を行っていくためには上記のようなパラメ 参考文献 [1] MIL- HDBK- 340A, VOL II, p8, Figure 1, April, 1999 [2] 酒井 信介, “リスクベースメンテナンスによる保全 計画の合理化”, オペレーションズ・リサーチ, 2012 年9 月号 [3] 中島 慎悦, 小谷 宗千和, 鈴木 忠志, 須藤 直也, 西 正樹, 上田 純, “設備高度保全 IT 融合ソリューショ ンを活用した電力・エネルギーシステムのサービス 事業展開”, 日立評論,Vol.97 No.12 758?75,12,2015 [4] 広瀬英雄: “ワイブル分布の周辺”, 日本応用数理学会, VOL.1, NO.4, p34-47, 1991 [5] 市田嵩, 鈴木和幸, “信頼性の分布と統計”, 日科技連, 1984ータも考慮していく必要がある。 - 126 -“ “宇宙機の地上試験設備における保全方法改善の取り組み“ “嶋崎 信吾,Shingo SHIMAZAKI,梶川 隆史,Takafumi KAJIKAWA,施 勤忠,Qinzhong SHI
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