熱成層界面を有する直管およびエルボ配管における熱応力発生メカニズムに関する研究

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カテゴリ: 第13回
1.研究背景
原子力プラントにおいて、冷却材の温度変動により誘発される高サイクル熱疲労に起因する破損事故が多く報告されている[1]。流体温度変動による接液構造物の熱疲労破損は熱流体と構造の両分野に跨る複雑な現象である。流体の温度変動は構造表面に熱伝達で伝わり、熱伝導により構造内温度が変動し、熱膨張/収縮が拘束されて繰り返し熱応力が発生する。 熱疲労破損をもたらす典型的熱流動現象として、主管を流れる高温流体が閉塞分岐配管に侵入し滞留していた低温流体との境界に熱成層を生じさせ、その層が上下に変動する熱成層界面ゆらぎ(Fig.1)がある。 熱成層界面ゆらぎに対して、現行の日本機械学会指針 [2]では熱応力の定量的評価法が充分に整備されていないことから、界面が閉塞分岐配管のエルボ部にないことを 求めており、極めて保守的である。そこで著者らは鉛直管での熱成層界面ゆらぎに対する発生熱応力予測手法を開発した[3]。しかし提案された予測法は、最も有害とされている、熱成層界面がエルボ配管に存在する場合には適用できない。
Fig.1 Thermal stratification oscillation at closed branch pipe
2.研究目的
熱成層界面がエルボ配管に存在する場合の応力予測を可能にするためには、熱応力発生メカニズムを明らかに する必要がある。本研究では熱成層界面が鉛直管、水平管に存在する場合とエルボ部に存在する場合との比較を行うことで、エルボ部に存在する場合の熱応力発生メカニズムを検討することを目的とする。
3.熱応力解析
熱成層界面がエルボ部に存在する場合は、界面位置に 応じてさらに二種類に分類できる。一つは界面が水平管 にかからない場合(Fig.2 (a))であり、配管長手方向温度 分布が支配的な荷重源になると考えられる。もう一つは 界面が水平管にかかる場合(Fig.2 (b))であり、周方向温 度分布が支配的な荷重源になると考えられる。 これらの場合に対して有限要素解析を行った。主な条件 は、外径:250mm、板厚:10mm、高低温流体温度差:140°C、 材料:SUS316、要素:8 節点6 面体要素、である。変形 図をFig.3に、応力分布を鉛直管・水平管のものと比較し た結果をそれぞれFig.4、Fig.5に示す。 (a) Interface locates above horizontal part Fig.3 Deformation (contour represents temperature) Fig.4 Stress distribution comparing elbow pipe (Fig.2(a)) and vertical pipe (a) Interface locates above horizontal part Fig.2 Two types of interface location at elbow part Stress evaluation point (b) Interface locates at horizontal part (b) Interface locates at horizontal part - 147 - 4.結論と今後の課題 熱成層界面がエルボ部に存在する場合に対し熱応力発 生メカニズムを検討し、以下の知見を得た。 Fig.2 (a)の場合、長手方向応力・周方向応力ともに、熱 成層が鉛直管に存在する場合の応力分布とよく似た分布 を示した。よってFig.2 (a)の場合は鉛直管の場合と類似の 熱応力発生メカニズムである。応力値に着目するとFig.2 (a)の場合の方が鉛直管で生じる応力値と比べ大きな値を 示していることから、エルボはより強く変形を拘束する ことがわかる。 Fig.2 (b)の場合、長手方向応力は、曲げ変形を許容する 熱成層が水平管に存在する場合の応力分布とよく似た分 布を示した。Fig.3(b)の様にエルボが曲げ変形を許容する ためと考えられる。よってFig.2 (b)の長手方向応力は水平 管のそれと類似の熱応力発生メカニズムである。一方、 周方向応力は熱成層が水平管に存在する場合とは異なる 応力分布を示した。これは、エルボが水平部の自由な断 面変形を拘束するためである。 今後は、エルボにおいて強い拘束が為されることに合 理的な説明を与え、鉛直管と水平管の中間的性質を持つ エルボ内部の応力発生メカニズムを明らかにしていく必 要がある。 参考文献 [1] O. Gelineau, C. Escaravage, J. Simoneau and C. Faidy : “High Cycle Thermal Fatigue : experience and state of art in French LMFRs”, SMiRT16, Paper#1311 ,2001 . [2] 日本機械学会、“配管の高サイクル熱疲労に関する評 価指針”、JSME S017、2003. [3] 栗林大、鈴木正昭、笠原直人、“熱成層界面ゆらぎに 対する熱応力評価法と疲労損傷評価法の開発”、日本保 全学会第12回学術講演会、2015. Fig.5 Stress distribution comparing elbow pipe (Fig.2(b)) and horizontal pipe“ “熱成層界面を有する直管およびエルボ配管における熱応力発生メカニズムに関する研究“ “栗林 大,Hiroshi KURIBAYASHI,久永 晃司,Koji HISANAGA,鈴木 正昭,Masaaki SUZUKI,佐藤 拓哉,Takuya SATO,笠原 直人,Naoto KASAHARA
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