動的荷重による進行性変形の発生と周波数の影響

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カテゴリ: 第13回
1.研究背景
原子力発電所において更に安全な設計を行うために は、「事故が起こらないような設計」から「事故が起こることを前提とした設計と対策」へと意識の転換が必要である。そのため本研究では設計想定を超える地震荷重に対する破損様式(破損モード)とその発生条件を明らかにし、事故の影響を緩和し最悪の事態を防止する減災を目指す。 EPRI(Electric Power Research Institute)では、1994年に発電プラントで用いられる様々な形状の配管に対して、過大な地震荷重を与える実験が行われ、確認された破損モードに関する報告がなされた[1]。この実験において、地震動による慣性力で大きな変形を起こす塑性崩壊とは別に、地震荷重が繰り返し作用するにつれて変形が進行する進行性変形と呼ばれる破損モードが確認された。 進行性変形の発生条件を明らかにするためにBree線 図[2]と同様の整理を目指す。Bree線図は熱ラチェット変形の発生条件図であり、1次応力と2次応力で整理されている。ここで 1次応力とは外的荷重との釣り合いによって生じる応力、2次応力とは変形の拘束から生じる応力である。 これまでの研究より[3]、図1のような試験機を用いて、平板に進行性変形を発生させる振動試験を行ったところ、その発生条件が加振周波数の大小によって異なることが確認されている。
Fig1 Picture in experiment
2.研究目的
本研究では、有限要素法を用いたモデルを用い解析 を行い、詳細な進行性変形の発生条件を調べた。また、 荷重の動的特性が応答に与える影響について調べた。 3. 解析による進行性変形の発生条件調査 3.1 試験のモデル化 おもりのついた梁の振動試験のモデル化及び、有限 要素のモデルを図 2 に示す。モデルの形状は表 1 であ り、要素は平面応力要素、構成式は弾完全塑性体、大 連絡先: 酒見 亮太、〒113-8656 文京区本郷7-3-1 変形を考慮し、FINAS-STAR を用いて弾塑性解析を行 東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻 った。入力はサイン波を用いた。また進行性変形の発 E-mail: sakemi.ryota@gmail.com 生の判定として高速炉でのひずみ制限を参考に、主波 - 174 - 20 波に対して、塑性ひずみが0.2[%]に達したときとし た。[4] Table 1 Dimensions and properties for analytical model 3.2 解析結果 解析より得られた結果を図3、4に示す。図3中の横 軸はおもりに作用する重力により生じる曲げ応力を降 伏応力で規格化したもの、縦軸は入力波による最大慣 性力との静的釣り合いから計算される応力を降伏応力 で規格化したものである。図 4中の赤色の直線は静的 な崩壊条件を表している。また、横軸は入力周波数を 構造物の固有振動数で規格化したもの、縦軸は入力波 による先端の変位を、慣性力が静的に作用すると仮定 した時の変位で割った応答倍率である。 図3、4での色のついた領域はそれぞれ対応している。 青色の領域は、高周波の領域で、崩壊条件を大きく超 えてもラチェット変形が生じにくく、Bree線図に類似 した発生条件図となった。赤色の領域は、低周波の領 域で長方形断面の梁で曲げ崩壊を起こす静的理論解に 近くなっている。緑色の領域は共振領域では、共振の 影響によって著しく進行性変形が起こりやすくなって いる。 一方で共振域では構造物への影響が大きいが、荷 Fig3 Failure boundary of ratcheting Fig2 Cantilever and mesh model Fig4 Amplification factor 重が大きくなると伝達特性に影響し、共振部分でも減 衰が大きくなり応答が下がる。 4.結論と今後の課題 今回の研究より、地震荷重は加振周波数と構造物の 入力波の周波数によって 3 つの領域に分類することが でき、領域によって作用する応力の特性が異なること が分かった。低周波の領域では静的理論解に近くなっ ていることから、1次応力として扱うことができる。一 方で高周波の領域では、崩壊条件を大きく上回る、Bree 線図に類似した発生条件図になることから、地震荷重 は 2 次応力に近いとみなすことができる。両者の中間 である共振領域では進行性変形は非常に起こり易い。 これらの周波数による地震荷重のラチェット変形へ の影響の違いを明らかにするために、荷重と変位の位 相差や構造物の塑性サイクルにおけるエネルギー消費 の観点から静的荷重と動的荷重の特性の違いの分析を 進める。 参考文献 [1] G. C. Slagis, “Experimental Data on Seismic Response of Piping Components”, Journal of Pressure Vessel Technolog, ASME, 1998. [2]Bree.J, “Elastic-plastic Behavior of Thin Tubes Subjected to Internal Pressure and Intermittent High-heat Fluxes with Application to Fast-nuclear-reactor Fuel Elements” Journal of strain analysis for engineering design, Vol.2, pp.226-238 (1967) [3] 桂也真人、国府田敏明、Bari Md Abdullah.Al Bari、 出町和之、佐藤拓哉、笠原直人、”地震荷重によって発 生する構造物の進行性変形に関する研究”、日本機械学 会M&M2015 [4] 上坂充、鬼沢邦雄、笠原直人、鈴木一彦、”原子炉 構造工学”、2009 - 175 -“ “動的荷重による進行性変形の発生と周波数の影響“ “酒見 亮太,Ryota SAKEMI,MD ABDULLAH AL BALI,佐藤 拓哉,Takuya SATO,笠原 直人,Naoto KASAHARA
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