ステンレス鋼のすきま腐食生起及び進展停止臨界電位に及ぼす 非有害アニオン添加の影響
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カテゴリ: 第13回
1.緒言
原子力発電所の1次系高温部位の構造物は、不動態形成型の耐食合金を多く用いている。ところが2011年3月の東日本大震災の影響により、福島第一原子力発電所では事故直後に燃料の冷却のため海水を注入、同年5月14日には浜岡原子力発電所5号機では原子炉の冷温停止操作過程で、主復水器損傷により系統内に約400tの海水が混入する事象が発生した。環境中に Cl-が存在することにより、ステンレス鋼において局部腐食が発生する可能性がある。このように、原子力発電所は水質を管理しているものの、最終ヒートシンクとして海水を用いているため、炉水に混入する可能性がある。原子力発電所構造物には、金属の接触部等のすきま構造が多く存在するため、すきま腐食が発生する可能性が高く、万一海水が混入した際の腐食対策として、すきま腐食の発生抑止及び発生したすきま腐食の不活性化の対策が必要不可欠である。 すきま腐食は、すきま内外の電位勾配によるすきま内への Cl-濃縮と活性な金属の溶解により進行する。従って、Cl-濃縮の阻害及び皮膜修復ができるアニオン(非有害アニオン)をCl-と共存させることにより、すきま腐食の不活性化を実現できる可能性が高い。すきま腐食の発生は、定常腐食電位ESPと臨界電位VCを比較することで評価できる(図 11))。本研究では、すきま腐食抑制に用いる非有害アニオン種の選定及び非有害アニオン共存環境中のすきま腐食の臨界電位を測定し、すきま腐食発生抑止及び進展抑制効果を定量的に評価する。
2.実験方法
2.1 非有害アニオン共存環境のアノード分極 曲線測定
非有害アニオンとして WO42-、MoO42-、VO3-を候 補とした。試験片は SUS316L(湿式研磨 600 番仕上 げ)を用いた。組成及び形状を表 1、図 2 に示す。試 験片上部に SUS316L ワイヤーをスポット溶接し、ス ポット溶接部からの脱落を防ぐため半浸漬状態で 試験を行った。試験溶液は、HCl で 1000ppm Cl-に調 製したものをベース溶液(pH1.7)とし、溶液温度は 50°Cとした。このベース溶液に、[Cl-]に対し[WO42-]、 [MoO42-]、[VO3-]が 1 倍、10 倍となるように Na2WO4・ 2H2O、Na2MoO4・2H2O、NaVO3を添加した。試験は 脱気環境中で行い、20mV/min の動電位法によりア ノード分極曲線(往復, 最大 1.0VSCE)の測定を行った。 アノード分極挙動及びアニオン種の溶解度、経済性 を考慮し、有効な非有害アニオンを選定した。 図 1 すきま腐食発生評価(模式図)1) 表 1 SUS316L の組成、wt% 図 2 試験片形状 2.2 非有害アニオン共存環境のすきま腐食生 起及び進展停止臨界電位測定 選定した非有害アニオンの濃度ならびに Cl-濃度 を変数として定電位保持によりすきま腐食生起及 び進展停止電位を測定する。試験片は SUS316L(湿式 研磨 600 番仕上げ)を用い、図 3 に示す形状とし、Φ 20 のアクリルによりすきまを形成した。試験溶液は NaCl で Cl-濃度を調整した溶液に、非有害アニオン を添加する。温度 50°C、脱気環境で、定電位保持試 験により臨界電位の測定を行う。すきま腐食進展抑 制試験は、先行研究 2)に習い、電気化学操作により すきま腐食を発生・進展させてから定電位保持を行 い、非有害アニオン溶液の添加を行った。 図 3 すきま付き試験片形状 3.結果および考察 3.1 非有害アニオン共存環境のアノード分極 挙動 図 4 はベース溶液及びモル濃度比 10のアノード分 極曲線の測定結果である。ベース溶液(No addition)の アノード分極曲線は、-200mVSCE~+200mVSCEに不動 態域を示し、さらに貴な電位になると孔食の発生を 示す電流密度の増大が見られた。それに対し、非有 害アニオン共存環境のアノード分極曲線は、いずれ のアニオン種も、1.0VSCEまで不動態を保持し、孔食 の発生は見られず、優れた不動態化促進作用が認め られる。 図 5 はモル濃度比 1 のアノード分極曲線の測定結 果である。いずれのアニオン共存環境中でも 400mVSCE~500mVSCE まで不動態域であると考えら れる。表 2 に最大電流密度、保護電位 EPROTを示す。 いずれのアニオン種も最大電流密度はベース溶液 よりも低下しているが、MoO42-が最も低い値を示し た。EPROTは、ベース溶液に比して、VO3-が最も貴な - 197 - 電位を示し、MoO42-も貴な電位を示したのに対し、 WO42-は卑な電位を示した。 以上から、不動態化促進作用の優れたアニオン種 は、MoO42-、VO3-と判断した。また Na2MoO4・2H2O、 NaVO3 の溶解度はそれぞれ、840、210[g/L]であり、 試薬価格(10倍濃度溶液作製時)はNa2MoO4・2H2O(特 級)が約\1,600、NaVO3が約\8,300である。以上から、 今回の候補の中では MoO42-を非有害アニオンとし 図 5 アノード分極曲線測定結果 (モル濃度比 1) 表 2 アノード分極曲線のパラメータ 図 4 アノード分極曲線測定結果 (モル濃度比 10) 図 6 生起臨界電位測定結果 て選択した。MoO42-は、γ 線による放射線分解が起 きないことが報告 3)されており、原子炉内へ投入し た場合も不動態化促進効果が期待できる。 先行研究により、SUS316L における 1000ppm Cl-、 50°C溶液中すきま腐食進展停止電位は-20mVSCE で ある 2)。図 7 に MoO42-共存環境中の進展停止電位 (1000ppm Cl-固定)測定結果を示す。MoO42-の添加量 の増加に伴い進展停止電位が上昇することが分か る。図 8 に Cl-濃度を変数(試験電位 106mVSCE 固定) とした MoO42-添加による進展抑制試験結果を示す。 横軸(Cl-濃度)と縦軸([MoO42-]と[Cl-]の比)を両対数に 取ると比例関係を示し、Cl-濃度が上昇するとすきま 腐食進展抑制に必要な MoO42-量が増えることが分 かる。 - 198 - 3.2 非有害アニオン共存によるすきま腐食生 起及び進展停止臨界電位への影響 事前に測定した、MoO42-を添加しない場合のすき ま腐食生起臨界電位は-100mVSCE であった。図 6 に MoO42-共存下におけるすきま腐食生起臨界電位測定 結果を示す。[MoO42-]/[Cl-]=0.1 の溶液で生起臨界電 位は 50mV 程の上昇が見られ、添加量が増えるとさ らに生起臨界電位は上昇する傾向にある。 SUS316L 鋼は Mo を含むため、すきま腐食が一旦 発生しても自発的に停止する電位域が存在する 2)が、 すきま腐食の進展度合が小さい段階ではその電位 域が拡大する可能性がある。すきま腐食生起試験で は、[MoO42-]/[Cl-]=3 溶液において、進展停止電位よ りも貴な電位(296mVSCE, 396mVSCE)であっても自発 的に停止した。生起試験ではすきま腐食が初期段階 であり、すきま腐食の進展度合が小さいために、進 展停止電位よりも貴な電位であっても自発的に停 止したと考えられる。 3.3 MoO42-のすきま腐食抑制効果 進展停止試験において、MoO42-の添加量が足りず 進展停止しなかった中では、腐食電流が大きく上昇 し腐食を加速させる場合もあった。これは MoO42-が カソード復極型のインヒビターである 4)ため、カソ ード復極が不十分だと腐食が加速される可能性が ある。しかし、すきま腐食が加速されるメカニズム は解明できていないため、調査が必要である。従っ 図 8 MoO42-添加による進展抑制試験 (保持電位 106mVSCE固定) 謝辞 本研究は、中部電力(株) 原子力安全技術研究所 公募研究(平成 27-28 年度)「非有害アニオンによる すき間腐食防止技術の開発研究」の成果の一部です。 ここに謝意を表します。 参考文献 1) 腐食防食協会編: ““金属の腐食・防食 Q&A?電気化 学入門編““, 丸善 (2002). 2) 関口智大, 平成 26 年度 東北大学大学院修士論文, (2015). 3) 平崎敏史, 深谷祐一, 龍岡照久, “希釈海水中での 炭素鋼腐食に及ぼすモリブデン酸塩の影響”, 第 61 回材料と環境討論会, pp.175-178, (2014). 4) 荒牧国次, “インヒビター”, 防食技術, Vol.25, pp.693-702, (1976). - 199 - 図 7 MoO42-添加による進展停止電位 (1000ppm Cl-固定) 4.結言 ・WO42-、MoO42-、VO3-共存環境中の SUS316L のア ノード分極挙動を比較し、溶解度、経済性を考慮し、 有効な非有害アニオンとして MoO42-を選定した。 MoO42-は耐照射性にも優れる。 ・MoO42-の添加量が増加すると、すきま腐食生起臨 界電位、進展停止電位ともに貴側にシフトする。 ・Cl-濃度が高くなると、すきま腐食進展抑制に必要 な MoO42-量も増加する。 ・SUS316L 鋼の場合、すきま腐食の進展が初期の段 階では、進展停止電位よりも貴な電位であっても自 発的に停止する可能性がある。 ・MoO42-の添加量不足によりすきま腐食加速の可能 性があるため、抑制手法として用いるには、添加量 を適切に設定する必要がある。 て、すきま腐食抑制手法として MoO42-を添加する手 段を用いる場合には、添加量を適切に設定する必要 がある。“ “ステンレス鋼のすきま腐食生起及び進展停止臨界電位に及ぼす 非有害アニオン添加の影響 “ “渡辺 駿,Shun WATANABE,関口 智大,Tomohiro SEKIGUCHI,阿部 博志,Hiroshi ABE,渡邉 豊,Yutaka WATANABE
原子力発電所の1次系高温部位の構造物は、不動態形成型の耐食合金を多く用いている。ところが2011年3月の東日本大震災の影響により、福島第一原子力発電所では事故直後に燃料の冷却のため海水を注入、同年5月14日には浜岡原子力発電所5号機では原子炉の冷温停止操作過程で、主復水器損傷により系統内に約400tの海水が混入する事象が発生した。環境中に Cl-が存在することにより、ステンレス鋼において局部腐食が発生する可能性がある。このように、原子力発電所は水質を管理しているものの、最終ヒートシンクとして海水を用いているため、炉水に混入する可能性がある。原子力発電所構造物には、金属の接触部等のすきま構造が多く存在するため、すきま腐食が発生する可能性が高く、万一海水が混入した際の腐食対策として、すきま腐食の発生抑止及び発生したすきま腐食の不活性化の対策が必要不可欠である。 すきま腐食は、すきま内外の電位勾配によるすきま内への Cl-濃縮と活性な金属の溶解により進行する。従って、Cl-濃縮の阻害及び皮膜修復ができるアニオン(非有害アニオン)をCl-と共存させることにより、すきま腐食の不活性化を実現できる可能性が高い。すきま腐食の発生は、定常腐食電位ESPと臨界電位VCを比較することで評価できる(図 11))。本研究では、すきま腐食抑制に用いる非有害アニオン種の選定及び非有害アニオン共存環境中のすきま腐食の臨界電位を測定し、すきま腐食発生抑止及び進展抑制効果を定量的に評価する。
2.実験方法
2.1 非有害アニオン共存環境のアノード分極 曲線測定
非有害アニオンとして WO42-、MoO42-、VO3-を候 補とした。試験片は SUS316L(湿式研磨 600 番仕上 げ)を用いた。組成及び形状を表 1、図 2 に示す。試 験片上部に SUS316L ワイヤーをスポット溶接し、ス ポット溶接部からの脱落を防ぐため半浸漬状態で 試験を行った。試験溶液は、HCl で 1000ppm Cl-に調 製したものをベース溶液(pH1.7)とし、溶液温度は 50°Cとした。このベース溶液に、[Cl-]に対し[WO42-]、 [MoO42-]、[VO3-]が 1 倍、10 倍となるように Na2WO4・ 2H2O、Na2MoO4・2H2O、NaVO3を添加した。試験は 脱気環境中で行い、20mV/min の動電位法によりア ノード分極曲線(往復, 最大 1.0VSCE)の測定を行った。 アノード分極挙動及びアニオン種の溶解度、経済性 を考慮し、有効な非有害アニオンを選定した。 図 1 すきま腐食発生評価(模式図)1) 表 1 SUS316L の組成、wt% 図 2 試験片形状 2.2 非有害アニオン共存環境のすきま腐食生 起及び進展停止臨界電位測定 選定した非有害アニオンの濃度ならびに Cl-濃度 を変数として定電位保持によりすきま腐食生起及 び進展停止電位を測定する。試験片は SUS316L(湿式 研磨 600 番仕上げ)を用い、図 3 に示す形状とし、Φ 20 のアクリルによりすきまを形成した。試験溶液は NaCl で Cl-濃度を調整した溶液に、非有害アニオン を添加する。温度 50°C、脱気環境で、定電位保持試 験により臨界電位の測定を行う。すきま腐食進展抑 制試験は、先行研究 2)に習い、電気化学操作により すきま腐食を発生・進展させてから定電位保持を行 い、非有害アニオン溶液の添加を行った。 図 3 すきま付き試験片形状 3.結果および考察 3.1 非有害アニオン共存環境のアノード分極 挙動 図 4 はベース溶液及びモル濃度比 10のアノード分 極曲線の測定結果である。ベース溶液(No addition)の アノード分極曲線は、-200mVSCE~+200mVSCEに不動 態域を示し、さらに貴な電位になると孔食の発生を 示す電流密度の増大が見られた。それに対し、非有 害アニオン共存環境のアノード分極曲線は、いずれ のアニオン種も、1.0VSCEまで不動態を保持し、孔食 の発生は見られず、優れた不動態化促進作用が認め られる。 図 5 はモル濃度比 1 のアノード分極曲線の測定結 果である。いずれのアニオン共存環境中でも 400mVSCE~500mVSCE まで不動態域であると考えら れる。表 2 に最大電流密度、保護電位 EPROTを示す。 いずれのアニオン種も最大電流密度はベース溶液 よりも低下しているが、MoO42-が最も低い値を示し た。EPROTは、ベース溶液に比して、VO3-が最も貴な - 197 - 電位を示し、MoO42-も貴な電位を示したのに対し、 WO42-は卑な電位を示した。 以上から、不動態化促進作用の優れたアニオン種 は、MoO42-、VO3-と判断した。また Na2MoO4・2H2O、 NaVO3 の溶解度はそれぞれ、840、210[g/L]であり、 試薬価格(10倍濃度溶液作製時)はNa2MoO4・2H2O(特 級)が約\1,600、NaVO3が約\8,300である。以上から、 今回の候補の中では MoO42-を非有害アニオンとし 図 5 アノード分極曲線測定結果 (モル濃度比 1) 表 2 アノード分極曲線のパラメータ 図 4 アノード分極曲線測定結果 (モル濃度比 10) 図 6 生起臨界電位測定結果 て選択した。MoO42-は、γ 線による放射線分解が起 きないことが報告 3)されており、原子炉内へ投入し た場合も不動態化促進効果が期待できる。 先行研究により、SUS316L における 1000ppm Cl-、 50°C溶液中すきま腐食進展停止電位は-20mVSCE で ある 2)。図 7 に MoO42-共存環境中の進展停止電位 (1000ppm Cl-固定)測定結果を示す。MoO42-の添加量 の増加に伴い進展停止電位が上昇することが分か る。図 8 に Cl-濃度を変数(試験電位 106mVSCE 固定) とした MoO42-添加による進展抑制試験結果を示す。 横軸(Cl-濃度)と縦軸([MoO42-]と[Cl-]の比)を両対数に 取ると比例関係を示し、Cl-濃度が上昇するとすきま 腐食進展抑制に必要な MoO42-量が増えることが分 かる。 - 198 - 3.2 非有害アニオン共存によるすきま腐食生 起及び進展停止臨界電位への影響 事前に測定した、MoO42-を添加しない場合のすき ま腐食生起臨界電位は-100mVSCE であった。図 6 に MoO42-共存下におけるすきま腐食生起臨界電位測定 結果を示す。[MoO42-]/[Cl-]=0.1 の溶液で生起臨界電 位は 50mV 程の上昇が見られ、添加量が増えるとさ らに生起臨界電位は上昇する傾向にある。 SUS316L 鋼は Mo を含むため、すきま腐食が一旦 発生しても自発的に停止する電位域が存在する 2)が、 すきま腐食の進展度合が小さい段階ではその電位 域が拡大する可能性がある。すきま腐食生起試験で は、[MoO42-]/[Cl-]=3 溶液において、進展停止電位よ りも貴な電位(296mVSCE, 396mVSCE)であっても自発 的に停止した。生起試験ではすきま腐食が初期段階 であり、すきま腐食の進展度合が小さいために、進 展停止電位よりも貴な電位であっても自発的に停 止したと考えられる。 3.3 MoO42-のすきま腐食抑制効果 進展停止試験において、MoO42-の添加量が足りず 進展停止しなかった中では、腐食電流が大きく上昇 し腐食を加速させる場合もあった。これは MoO42-が カソード復極型のインヒビターである 4)ため、カソ ード復極が不十分だと腐食が加速される可能性が ある。しかし、すきま腐食が加速されるメカニズム は解明できていないため、調査が必要である。従っ 図 8 MoO42-添加による進展抑制試験 (保持電位 106mVSCE固定) 謝辞 本研究は、中部電力(株) 原子力安全技術研究所 公募研究(平成 27-28 年度)「非有害アニオンによる すき間腐食防止技術の開発研究」の成果の一部です。 ここに謝意を表します。 参考文献 1) 腐食防食協会編: ““金属の腐食・防食 Q&A?電気化 学入門編““, 丸善 (2002). 2) 関口智大, 平成 26 年度 東北大学大学院修士論文, (2015). 3) 平崎敏史, 深谷祐一, 龍岡照久, “希釈海水中での 炭素鋼腐食に及ぼすモリブデン酸塩の影響”, 第 61 回材料と環境討論会, pp.175-178, (2014). 4) 荒牧国次, “インヒビター”, 防食技術, Vol.25, pp.693-702, (1976). - 199 - 図 7 MoO42-添加による進展停止電位 (1000ppm Cl-固定) 4.結言 ・WO42-、MoO42-、VO3-共存環境中の SUS316L のア ノード分極挙動を比較し、溶解度、経済性を考慮し、 有効な非有害アニオンとして MoO42-を選定した。 MoO42-は耐照射性にも優れる。 ・MoO42-の添加量が増加すると、すきま腐食生起臨 界電位、進展停止電位ともに貴側にシフトする。 ・Cl-濃度が高くなると、すきま腐食進展抑制に必要 な MoO42-量も増加する。 ・SUS316L 鋼の場合、すきま腐食の進展が初期の段 階では、進展停止電位よりも貴な電位であっても自 発的に停止する可能性がある。 ・MoO42-の添加量不足によりすきま腐食加速の可能 性があるため、抑制手法として用いるには、添加量 を適切に設定する必要がある。 て、すきま腐食抑制手法として MoO42-を添加する手 段を用いる場合には、添加量を適切に設定する必要 がある。“ “ステンレス鋼のすきま腐食生起及び進展停止臨界電位に及ぼす 非有害アニオン添加の影響 “ “渡辺 駿,Shun WATANABE,関口 智大,Tomohiro SEKIGUCHI,阿部 博志,Hiroshi ABE,渡邉 豊,Yutaka WATANABE