表面き裂解析プログラム(SCANP)の特長とその適用性評価
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カテゴリ: 第13回
1.緒 言
応力拡大係数は,小規模降伏条件下におけるき裂先端近傍の応力場を一義的に決定し,脆性破壊の開始,疲労き裂や応力腐食割れのき裂進展挙動を規定する重要な破壊力学パラメータである.その有用性の高さから,様々な構造形状,き裂形状,および負荷応力に応じた応力拡大係数解が提案されている. 白鳥は,有限要素法解析によりき裂面上の節点の一つに単位分布力を与えたときの応力拡大係数(これを影響 係数と呼ぶ)を求め,この解析を繰り返し行うことで, き裂面上の全ての節点について影響係数を求め,重ね合わせの原理に基づいて任意分布力を受けるき裂の応力拡大係数を評価する手法を開発した[1].また,様々な構造 およびき裂形状について影響係数を求め,これらをデータベースとして実装した「表面き裂解析プログラム」(以 下,旧プログラムと記す)を整備した[2].同プログラムは,任意分布力を受けるき裂の応力拡大係数の計算,疲労き裂進展解析および応力腐食割れき裂進展解析が実施できる.当研究所では,上記プログラムをベースに,応力拡大係数解の適用範囲の拡張,き裂進展解析機能の拡張,およびプログラムの操作性の向上を図った「表面き 裂解析プログラム(Surface Crack ANalysis Program:SCANPR)」を開発した[3].一方,SCANP で利用できる応力拡大係数解の適用性については,一部の解について既存解との比較を通じて検証された結果が報告されているものの[4-6],実用性が高いと考えられる円筒中の周方向き裂に関しては,その適用性の確認が十分でなかった. 本発表では,開発した「表面き裂解析プログラム (SCANP)」の特長について述べるとともに,円筒中の周方向き裂の応力拡大係数解の適用性評価について述べる. 2.表面き裂解析プログラム(SCANP)の特長
2.1 影響関数法
影響関数法[1]では,き裂面に任意分布力が作用する問 題の応力拡大係数を求めておくことで,重ね合わせの原 理に基づき,任意分布力が負荷された弾性体中のき裂の 応力拡大係数を計算することができる.いま,二次元の 連絡先:永井政貴,〒240-0196 神奈川県横須賀市長坂 2-6-1,電力中央研究所 材料科学研究所 構造材料領域 二次の形状関数で表せる単位分布力を,き裂面上の節点j に与えることを考える.これは図1 に示すように,節点j E-mail: nagai@criepi.denken.or.jp で1,他の節点で零となるような単位分布力である.この - 230 - およびプログラムの操作性の向上を図っている. 応力拡大係数解の適用範囲の拡張に関しては,平板中 の半だ円表面き裂のデータベースの更新と追加,平板中 の内部き裂のデータベースの更新,日本機械学会維持規 格2012年版[7]に採録された応力拡大係数解の追加,およ び任意の管厚比の円筒中の周方向き裂について応力拡大 係数が計算できるように拡張した. き裂進展解析機能の拡張に関しては,維持規格2012 年 度版に採録された疲労き裂進展速度式および応力腐食割 れき裂進展速度式の追加,実用上とあまり用いられない 疲労き裂進展速度式の削除,および平板中の内部き裂の 疲労き裂進展解析機能の追加を行った. プログラムの操作性の向上に関しては,旧プログラム は解析対象の違いに応じた独立した 7 つのプログラムの 集合体であったので,これを統合して操作性の改善を図 った.また,バッチ処理機能の追加,FITNET Revision MK8 [8]に採録された溶接残留応力分布式の追加を行った. 2.3 表面き裂解析プログラム(SCANP)の概要 SCANP では,き裂を有する構造が荷重を受けるとき, き裂の応力拡大係数を影響関数法に基づき計算する.ま た,計算した応力拡大係数を用いて疲労き裂進展解析お よび応力腐食割れき裂進展解析を行う.図 2 に,平板中 の半だ円表面き裂の疲労き裂進展解析を例に,実際にデ ィスプレイ上に表示されるプログラムを示す. き裂進展解析では,進展するき裂は常に半だ円形状を 保持すると仮定し,最深点および表面点の応力拡大係数 からき裂進展則に従い進展量を計算し,深さ方向と長さ Table1 Classification of modifications in SCANP 改良の種類 旧プログラム SCANP 1. 応力拡大係数解の 適用範囲と種類 Crack Unit distributed load σj j i Fig. 1 Definition of influence coefficients とき,き裂前縁上の節点iの応力拡大係数をKijとすると, き裂面に任意分布力が作用したときのき裂前縁上の節点 iの応力拡大係数Kiは,次式で与えられる. K i =∑ n K ij σ j (1) j = 1ここで,n はき裂面上の節点数,σjは節点jにおける分布 力の値を示す.有限要素法解析によりあらかじめKijを求 めておくことで,式(1)からき裂面に任意分布力が作用す る問題の応力拡大係数が求められる.SCANP では,表面 き裂に関しては最深点と表面点のKijをデータベースとし て蓄積している. 2.2 旧プログラムからの主な変更点 SCANPは,旧プログラムをベースに表1 に示す応力拡 大係数解の適用範囲の拡張,き裂進展解析機能の拡張, 平板中の半だ円表面き裂 0.1≦a/t≦0.8, 0.1≦a/c≦2.0 平板中の内部き裂 0.1≦a/d≦0.8, 0.2≦a/c≦2.0, d/t=0.5 円筒中の周方向半だ円き裂 Ri/t=5/3, 2.5, 5, 10 - 231 - 平板中の半だ円表面き裂 0.025≦a/t≦0.8, 0.1≦a/c≦8.0 平板中の内部き裂 0.1≦a/d≦0.8, 0.2≦a/c≦1.0, 0.2≦d/t≦0.5 円筒中の周方向き裂 5/3≦Ri/t≦10 維持規格2012年度版に採録された応力拡大係数解 2. き裂進展解析機能 疲労き裂進展速度式 Paris則,Walkerの式,Formanの式, 下限界近傍まで適用できる式 応力腐食割れき裂進展速度式 BWRの配管および炉内構造物用オーステ ナイト系ステンレス鋼の速度式 疲労き裂進展速度式 Paris則,Walkerの式,JSME維持規格2012年度版に 採録された式,事例規格に採録された式 応力腐食割れき裂進展速度式 JSME維持規格2012年度版に採録された式, 事例規格に採録された式 平板中の内部き裂の疲労き裂進展解析機能 3. プログラムの操作性 解析対象(構造形状,き裂進展モード)の違い に応じた独立した7つのプログラムの集合体 ・独立した7プログラムの統合 ・バッチ処理機能の追加 ・残留応力分布式の追加 a: き裂深さ,c: き裂半長,t: 板厚, Ri: 内半径, d: 板表面から内部き裂の中心までの距離 方向にき裂を進展させる.また,き裂面に作用する任意 分布力は,入力の簡便さから5次多項式として与える. 3.応力拡大係数解の適用性評価 SCANP で利用できる応力拡大係数の適用性について は,数値解析解との比較や適用対象が同じである既存の 解との比較を通じて検証がなされて結果が報告されてい る[4-6].しかしながら,実用性が高いと考えられる円筒 中の周方向半だ円表面き裂および貫通き裂に関しては, その適用性の評価が十分にされていなかった.そこで, 既往の応力拡大係数解との体系的な比較を通じて, SCANP に実装された円筒中の周方向き裂の応力拡大係 数の適用性評価を行った. ここでは,図 3 に示す円筒中の周方向貫通き裂の応力 拡大係数を比較した結果を示す.比較対象とする解は, CEAの解[9],APIの解[10]およびZahoorの解[11]とする. 全周に対するき裂長さの比c/πRiの変化に伴う補正係数の 推移を比較した結果を図4 に示す.なお,管厚比Ri/tは, SCANP の適用範囲が狭く相対的に厚肉な円筒の解しか ないため,Ri/t = 10とした.CEAの解による補正係数を 基準とした場合,API の解の補正係数は,全周に対する き裂長さの比c/πRiが大きいときに,相対的な差が10%を 超える場合がある.一方,SCANP の解および Zahoor の 解の補正係数はCEA の解とよく一致している.したがっ て,円筒中の周方向貫通き裂に対するSCANPの解は構造 健全性評価への適用するにあたり,十分な妥当性を有し ていると考えられる.円筒中の周方向半だ円き裂に関し ては既報[3]を参照されたい. 4.結 言 本研究では,当研究所で開発した「表面き裂解析プロ グラム(SCANP)」について,その基礎となる影響関数法, (c) 疲労き裂進展解析の条件入力 (d) 疲労き裂進展解析の結果 Fig. 2 Example analyzed by SCANP - 232 - (a) き裂形状選択 (b) 応力分布の表示 y σ(y) 2c t Ri x Fig. 3 Circumferentially through-wall crack in cylinder 8 0次の補正係数 6断面曲げの補正係数 644APIの解 22CEAの解 CEAの解 Zahoorの解 Zahoorの解 0SCANPの解 0SCANPの解 0 0.2 0.4 0.6 0.8 0 0.2 0.4 0.6 0.8 き裂長さ/全周 き裂長さ/全周 Fig. 4 Comparison of normalized stress intensity factor solutions for circumferentially through-wall crack in cylinder 旧プログラムとの違い,SCANP の概要等のプログラムの 特長を示した.また,実用性が高いと考えられる円筒中 の周方向半だ円き裂の応力拡大係数について,SCANPで 計算される解と対照し得る代表的な応力拡大係数解につ いて比較を行い,その適用性を検討した.その結果,円 筒中の周方向貫通き裂については,対照解とよく一致す ることを確認した. 参考文献 [1] Shiratori, M., “Analysis of Stress Intensity Factors for Surface Cracks Subjected to Arbitrary Distributed Surface Stresses”, Bulletin of the Faculty of Engineering, Yokohama National University, Vol. 35, 1986, pp. 1-25. [2] 松下久雄,小俣重雄,松田宏之,白鳥正樹,吉川 直紀,岩松史則,“表面疲労き裂進展解析ソフト SCAN-微小き裂,複数き裂,内部き裂バージョ ンの開発-”,日本海事協会会誌,No. 266, 2004, pp. 18-35. [3] 永井政貴,三浦直樹,白鳥正樹,“表面き裂解析 プログラム(SCANP)の開発”,電力中央研究所 研究報告,Q15011,2016. [4] Miyazaki, K., Iwamatsu, F., Nakanishi, S., and Shiratori, M., “Stress Intensity Factor Solution for - 233 - Subsurface Flaw Estimated by Influence Function Method,” PVP2006- ICPVT11-93138, 2006, pp. 1-17. [5] 三浦直樹,永井政,高橋由紀夫,“欠陥評価に用 いる応力拡大係数解の適用性検討”,電力中央研 究所研究報告,Q13002, 2014. [6] 三浦直樹,“原子炉容器ノズルコーナーき裂に対 する破壊評価法に関する検討”,電力中央研究所 研究報告,Q14001, 2014. [7] 日本機械学会, “発電用原子力規格 維持規格(2012 年版),” JSME S-NA1-2012, 2012. [8] FITNET Fitness-for-Service (FFS) Annex, Revision MK8, 2008. [9] Chapuliot, S., “Formulaire de KI pour les tubes comportant un defaut de surface semi-elliptique longitudinal ou circonferentiel, interne ou externe,” Rapport CEA-R-5900, 2000. [10] American Petroleum Institute, “Recommended Practice for Fitness-For- Service,” API Recommended Practice 579, 2000. [11] Zahoor, A., “Closed form expressions for fracture mechanics analysis of cracked pipes”, Transactions of the ASME, Journal of Pressure Vessel Technology, Vol. 107, pp. 203-205, 1985.“ “表面き裂解析プログラム(SCANP)の特長とその適用性評価“ “永井 政貴,Masaki NAGAI,三浦 直樹,Naoki MIURA,白鳥 正樹,Masaki SHIRATORI
応力拡大係数は,小規模降伏条件下におけるき裂先端近傍の応力場を一義的に決定し,脆性破壊の開始,疲労き裂や応力腐食割れのき裂進展挙動を規定する重要な破壊力学パラメータである.その有用性の高さから,様々な構造形状,き裂形状,および負荷応力に応じた応力拡大係数解が提案されている. 白鳥は,有限要素法解析によりき裂面上の節点の一つに単位分布力を与えたときの応力拡大係数(これを影響 係数と呼ぶ)を求め,この解析を繰り返し行うことで, き裂面上の全ての節点について影響係数を求め,重ね合わせの原理に基づいて任意分布力を受けるき裂の応力拡大係数を評価する手法を開発した[1].また,様々な構造 およびき裂形状について影響係数を求め,これらをデータベースとして実装した「表面き裂解析プログラム」(以 下,旧プログラムと記す)を整備した[2].同プログラムは,任意分布力を受けるき裂の応力拡大係数の計算,疲労き裂進展解析および応力腐食割れき裂進展解析が実施できる.当研究所では,上記プログラムをベースに,応力拡大係数解の適用範囲の拡張,き裂進展解析機能の拡張,およびプログラムの操作性の向上を図った「表面き 裂解析プログラム(Surface Crack ANalysis Program:SCANPR)」を開発した[3].一方,SCANP で利用できる応力拡大係数解の適用性については,一部の解について既存解との比較を通じて検証された結果が報告されているものの[4-6],実用性が高いと考えられる円筒中の周方向き裂に関しては,その適用性の確認が十分でなかった. 本発表では,開発した「表面き裂解析プログラム (SCANP)」の特長について述べるとともに,円筒中の周方向き裂の応力拡大係数解の適用性評価について述べる. 2.表面き裂解析プログラム(SCANP)の特長
2.1 影響関数法
影響関数法[1]では,き裂面に任意分布力が作用する問 題の応力拡大係数を求めておくことで,重ね合わせの原 理に基づき,任意分布力が負荷された弾性体中のき裂の 応力拡大係数を計算することができる.いま,二次元の 連絡先:永井政貴,〒240-0196 神奈川県横須賀市長坂 2-6-1,電力中央研究所 材料科学研究所 構造材料領域 二次の形状関数で表せる単位分布力を,き裂面上の節点j に与えることを考える.これは図1 に示すように,節点j E-mail: nagai@criepi.denken.or.jp で1,他の節点で零となるような単位分布力である.この - 230 - およびプログラムの操作性の向上を図っている. 応力拡大係数解の適用範囲の拡張に関しては,平板中 の半だ円表面き裂のデータベースの更新と追加,平板中 の内部き裂のデータベースの更新,日本機械学会維持規 格2012年版[7]に採録された応力拡大係数解の追加,およ び任意の管厚比の円筒中の周方向き裂について応力拡大 係数が計算できるように拡張した. き裂進展解析機能の拡張に関しては,維持規格2012 年 度版に採録された疲労き裂進展速度式および応力腐食割 れき裂進展速度式の追加,実用上とあまり用いられない 疲労き裂進展速度式の削除,および平板中の内部き裂の 疲労き裂進展解析機能の追加を行った. プログラムの操作性の向上に関しては,旧プログラム は解析対象の違いに応じた独立した 7 つのプログラムの 集合体であったので,これを統合して操作性の改善を図 った.また,バッチ処理機能の追加,FITNET Revision MK8 [8]に採録された溶接残留応力分布式の追加を行った. 2.3 表面き裂解析プログラム(SCANP)の概要 SCANP では,き裂を有する構造が荷重を受けるとき, き裂の応力拡大係数を影響関数法に基づき計算する.ま た,計算した応力拡大係数を用いて疲労き裂進展解析お よび応力腐食割れき裂進展解析を行う.図 2 に,平板中 の半だ円表面き裂の疲労き裂進展解析を例に,実際にデ ィスプレイ上に表示されるプログラムを示す. き裂進展解析では,進展するき裂は常に半だ円形状を 保持すると仮定し,最深点および表面点の応力拡大係数 からき裂進展則に従い進展量を計算し,深さ方向と長さ Table1 Classification of modifications in SCANP 改良の種類 旧プログラム SCANP 1. 応力拡大係数解の 適用範囲と種類 Crack Unit distributed load σj j i Fig. 1 Definition of influence coefficients とき,き裂前縁上の節点iの応力拡大係数をKijとすると, き裂面に任意分布力が作用したときのき裂前縁上の節点 iの応力拡大係数Kiは,次式で与えられる. K i =∑ n K ij σ j (1) j = 1ここで,n はき裂面上の節点数,σjは節点jにおける分布 力の値を示す.有限要素法解析によりあらかじめKijを求 めておくことで,式(1)からき裂面に任意分布力が作用す る問題の応力拡大係数が求められる.SCANP では,表面 き裂に関しては最深点と表面点のKijをデータベースとし て蓄積している. 2.2 旧プログラムからの主な変更点 SCANPは,旧プログラムをベースに表1 に示す応力拡 大係数解の適用範囲の拡張,き裂進展解析機能の拡張, 平板中の半だ円表面き裂 0.1≦a/t≦0.8, 0.1≦a/c≦2.0 平板中の内部き裂 0.1≦a/d≦0.8, 0.2≦a/c≦2.0, d/t=0.5 円筒中の周方向半だ円き裂 Ri/t=5/3, 2.5, 5, 10 - 231 - 平板中の半だ円表面き裂 0.025≦a/t≦0.8, 0.1≦a/c≦8.0 平板中の内部き裂 0.1≦a/d≦0.8, 0.2≦a/c≦1.0, 0.2≦d/t≦0.5 円筒中の周方向き裂 5/3≦Ri/t≦10 維持規格2012年度版に採録された応力拡大係数解 2. き裂進展解析機能 疲労き裂進展速度式 Paris則,Walkerの式,Formanの式, 下限界近傍まで適用できる式 応力腐食割れき裂進展速度式 BWRの配管および炉内構造物用オーステ ナイト系ステンレス鋼の速度式 疲労き裂進展速度式 Paris則,Walkerの式,JSME維持規格2012年度版に 採録された式,事例規格に採録された式 応力腐食割れき裂進展速度式 JSME維持規格2012年度版に採録された式, 事例規格に採録された式 平板中の内部き裂の疲労き裂進展解析機能 3. プログラムの操作性 解析対象(構造形状,き裂進展モード)の違い に応じた独立した7つのプログラムの集合体 ・独立した7プログラムの統合 ・バッチ処理機能の追加 ・残留応力分布式の追加 a: き裂深さ,c: き裂半長,t: 板厚, Ri: 内半径, d: 板表面から内部き裂の中心までの距離 方向にき裂を進展させる.また,き裂面に作用する任意 分布力は,入力の簡便さから5次多項式として与える. 3.応力拡大係数解の適用性評価 SCANP で利用できる応力拡大係数の適用性について は,数値解析解との比較や適用対象が同じである既存の 解との比較を通じて検証がなされて結果が報告されてい る[4-6].しかしながら,実用性が高いと考えられる円筒 中の周方向半だ円表面き裂および貫通き裂に関しては, その適用性の評価が十分にされていなかった.そこで, 既往の応力拡大係数解との体系的な比較を通じて, SCANP に実装された円筒中の周方向き裂の応力拡大係 数の適用性評価を行った. ここでは,図 3 に示す円筒中の周方向貫通き裂の応力 拡大係数を比較した結果を示す.比較対象とする解は, CEAの解[9],APIの解[10]およびZahoorの解[11]とする. 全周に対するき裂長さの比c/πRiの変化に伴う補正係数の 推移を比較した結果を図4 に示す.なお,管厚比Ri/tは, SCANP の適用範囲が狭く相対的に厚肉な円筒の解しか ないため,Ri/t = 10とした.CEAの解による補正係数を 基準とした場合,API の解の補正係数は,全周に対する き裂長さの比c/πRiが大きいときに,相対的な差が10%を 超える場合がある.一方,SCANP の解および Zahoor の 解の補正係数はCEA の解とよく一致している.したがっ て,円筒中の周方向貫通き裂に対するSCANPの解は構造 健全性評価への適用するにあたり,十分な妥当性を有し ていると考えられる.円筒中の周方向半だ円き裂に関し ては既報[3]を参照されたい. 4.結 言 本研究では,当研究所で開発した「表面き裂解析プロ グラム(SCANP)」について,その基礎となる影響関数法, (c) 疲労き裂進展解析の条件入力 (d) 疲労き裂進展解析の結果 Fig. 2 Example analyzed by SCANP - 232 - (a) き裂形状選択 (b) 応力分布の表示 y σ(y) 2c t Ri x Fig. 3 Circumferentially through-wall crack in cylinder 8 0次の補正係数 6断面曲げの補正係数 644APIの解 22CEAの解 CEAの解 Zahoorの解 Zahoorの解 0SCANPの解 0SCANPの解 0 0.2 0.4 0.6 0.8 0 0.2 0.4 0.6 0.8 き裂長さ/全周 き裂長さ/全周 Fig. 4 Comparison of normalized stress intensity factor solutions for circumferentially through-wall crack in cylinder 旧プログラムとの違い,SCANP の概要等のプログラムの 特長を示した.また,実用性が高いと考えられる円筒中 の周方向半だ円き裂の応力拡大係数について,SCANPで 計算される解と対照し得る代表的な応力拡大係数解につ いて比較を行い,その適用性を検討した.その結果,円 筒中の周方向貫通き裂については,対照解とよく一致す ることを確認した. 参考文献 [1] Shiratori, M., “Analysis of Stress Intensity Factors for Surface Cracks Subjected to Arbitrary Distributed Surface Stresses”, Bulletin of the Faculty of Engineering, Yokohama National University, Vol. 35, 1986, pp. 1-25. [2] 松下久雄,小俣重雄,松田宏之,白鳥正樹,吉川 直紀,岩松史則,“表面疲労き裂進展解析ソフト SCAN-微小き裂,複数き裂,内部き裂バージョ ンの開発-”,日本海事協会会誌,No. 266, 2004, pp. 18-35. [3] 永井政貴,三浦直樹,白鳥正樹,“表面き裂解析 プログラム(SCANP)の開発”,電力中央研究所 研究報告,Q15011,2016. [4] Miyazaki, K., Iwamatsu, F., Nakanishi, S., and Shiratori, M., “Stress Intensity Factor Solution for - 233 - Subsurface Flaw Estimated by Influence Function Method,” PVP2006- ICPVT11-93138, 2006, pp. 1-17. [5] 三浦直樹,永井政,高橋由紀夫,“欠陥評価に用 いる応力拡大係数解の適用性検討”,電力中央研 究所研究報告,Q13002, 2014. [6] 三浦直樹,“原子炉容器ノズルコーナーき裂に対 する破壊評価法に関する検討”,電力中央研究所 研究報告,Q14001, 2014. [7] 日本機械学会, “発電用原子力規格 維持規格(2012 年版),” JSME S-NA1-2012, 2012. [8] FITNET Fitness-for-Service (FFS) Annex, Revision MK8, 2008. [9] Chapuliot, S., “Formulaire de KI pour les tubes comportant un defaut de surface semi-elliptique longitudinal ou circonferentiel, interne ou externe,” Rapport CEA-R-5900, 2000. [10] American Petroleum Institute, “Recommended Practice for Fitness-For- Service,” API Recommended Practice 579, 2000. [11] Zahoor, A., “Closed form expressions for fracture mechanics analysis of cracked pipes”, Transactions of the ASME, Journal of Pressure Vessel Technology, Vol. 107, pp. 203-205, 1985.“ “表面き裂解析プログラム(SCANP)の特長とその適用性評価“ “永井 政貴,Masaki NAGAI,三浦 直樹,Naoki MIURA,白鳥 正樹,Masaki SHIRATORI