再処理施設におけるグローブボックスパネルの更新技術

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カテゴリ: 第13回
1.はじめに
平成23年の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故後に制定された核燃料施設等に係る新規制基準では、 核燃料物質等を取り扱うグローブボックス(以下、「GB」 とする)は、火災発生時でも放射性物質の閉じ込め機能を維持するため、不燃性材料又は難燃性材料を使用することが要求されている 1)。しかし、核燃料サイクル施設等で設置されているGBの多くは、透明パネルの材質に空気中で可燃性を示すアクリルが使用されており、新規制基準への適合にあたっては、パネルの難燃化、不燃化等の火災防止対策が必要となってくる。そこで、本件では、新規制基準へ適合するため、GBパネルを従来のアクリルから難燃性の材料への変更を試みた。 更新を実施したGBは、本体の材質にステンレス鋼であるSUS304L、パネルに透明アクリルが合計6 枚使用されている。図1に当該GBの写真を示す。なお、パネルは、図 2 に示すように、コの字型の断面を有するクロロプレンゴム製のガスケットによって端部を覆い、スタッドボルトを通したL字型のステンレス製押さえ板でナットにより漏えい率が0.1vol%/h 以下になるように設置されている 2), 3)。このGB は、東海再処理施設の分析所に昭和53年に設置され、現在も供用中であり、その内部は放射性物質によって汚染されている。このため、パネルの 更新作業にあたっては、放射性物質の拡散による汚染拡大と作業者の被ばく防止を図るとともに、更新作業終了後にGB の閉じ込め機能が、作業前と同様に維持されていることを検証する必要がある。 以上を踏まえ、本件では、GBパネル用の難燃性材料の選定、更新作業時の汚染の拡大防止と作業者の被ばく防止のための対策、パネルの交換作業手順及び検査の方法 について検討して、更新を実施した。
図1 パネル更新対象のグローブボックス
2.更新パネルの材料
更新するパネルは、新規制基準の要求に応えるため、 難燃性のプラスチック材料から選定した。プラスチック の燃焼性を判断する指標としては、米国 Underwriters Laboratories 社による試験規格 UL94 がある 4)。これは、 米国で提唱された規格であり、現在の日本のプラスチッ ク産業界では、UL94を燃焼性試験規格として広く採用し ている。ここで定める試験は、所定の試験片を水平及び 垂直に保持した条件で燃焼性を確認する水平燃焼試験(以 下、「HB 試験」とする)と垂直燃焼試験(以下、「V 試験」 とする)の 2 種類があり、HB 試験に適合する材料は遅燃 パネル パネル パネル 性、V 試験に適合する材料は V-2、V-1、V-0 のグレード 順で高い難燃性を有し、自己消化性を示す。本件では、 UL94の各グレードのうち、高い難燃性を示すV-0に適合 するプラスチックについて検討した。 スタッドボルト UL94 V-0に適合する代表的なプラスチックとしては、 押さえ板 ガスケット パネル 分子骨格に芳香族を加えて難燃性を高めたポリカーボネ グローブポート 押さえ板 ートや分子内に窒素及びハロゲン系元素を加えて難燃性 グローブボックス ガスケット ナット を高めたポリ塩化ビニールが知られている。表 1 に日本 スタッドボルト 工業規格(以下、「JIS」とする)にて規定されているポリカ パネルの取付け構造 ーボネート 5)、ポリ塩化ビニール 6)、及び現在GBパネル 図2 パネルの取り付け構造 として使用しているアクリル 7) の主な物性の規格値等を 示す。各材料を比較すると、機械的性質、全光透過率、 耐酸性、耐アルカリ性、耐有機溶媒性はほぼ同じであっ たが、ポリカーボネートは荷重たわみ温度とビカット軟 化温度が最も高く、熱的性質に優れていることがわかっ た。なお、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニール、アク リルの耐放射線性はほぼ同じであることが報告されてい る 8)。 これらのことから、更新するパネルの材料には熱的性 質に優れ、UL-94 V-0に適合する難燃性材料であるポリカ ーボネート(積水化学工業:エスロン DC プレート PH-407-AS)を選択した。パネルは、従来と同じ寸法で製 作し、GBの固有振動数と応力を再評価した結果、耐震上 の問題はないことを確認した。 表1 アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニールの物性の主な規格値 材料の種類 アクリル ポリカーボネート ポリ塩化ビニール 機械的性質 引張降伏応力(MPa) 引張破断呼びひずみ(%) 70以上 4以上 55以上 60以上 50以上 8以上 シャルピー衝撃強さ(kJ/m2) 13以上 6以上 2以上 熱的性質 - 26 - 荷重たわみ温度(°C) 98以上 130 以上 データなし 加熱収縮率(%) 2.5 以下 5以下 4以下 ビカット軟化温度(°C) 105 以上 145 以上 70以上 比重 約1.2 約1.2 約1.4 全光透過率(%) 約85 約80 約80 燃焼性 可燃性 難燃性 難燃性 耐酸性 弱酸の影響 強酸の影響 ◎ △~◎ 耐アルカリ性 弱アルカリの影響 強アルカリの影響 ◎ ◎ △ △ ◎ ◎ 有機溶剤の影響 ケトン・エステル・塩素化 溶剤に可溶 ◎ ○ × × 芳香族、塩素化溶剤に ケトン・エステルには膨潤又 可溶 は可溶、芳香族に膨潤 ※表中の記号は、当該項目への耐性に対して、◎:最適、○:適、△:やや不適、×:不適である。 3.グローブボックス内の汚染の除去 GB の内部は、これまでの使用によりウラン、プルトニ ウム等の放射性物質によって汚染されている。このため、 パネル更新作業時の汚染リスクを低減するため、作業前 に内部の汚染状況を調査し、除染を実施した。汚染状況 の調査は、GB内の床面、側面、天井、パネルの所定面積 (100 cm2)をスミヤろ紙で拭き取り、α線シンチレーション 式サーベイメータ(日立アロカメディカル:TCS-21JE)及び βγ線 GM 管式サーベイメータ(日立アロカメディカル: TGS-146B)で測定して表面汚染密度を求めた。この結果、 GB 床面の表面汚染密度が最も高く、サーベイメータの検 出上限であるα: 7.1×103 Bq/cm2、βγ: 2.5×102 Bq/cm2を超 える値を示した。そこで、水、アルコール、中性洗剤を 湿らせたウェス、不繊維布製スポンジ、メラミン樹脂製 スポンジの順で拭き取り除染を試みた。図 3 に除染前、 各拭き取りによる除染後の表面汚染密度の測定結果を示 す。 水、アルコール、中性洗剤を湿らせたウェスによる拭 き取り(6回)を実施することで、表面汚染密度は除染前の 約1/10~1/100程度に低下した。その後、不繊維布製スポ ンジ及びメラミン樹脂製スポンジによる拭き取り(3回)で、 表面汚染密度は、α: 2.5×102 Bq/cm2以下、βγ: 2.5 Bq/cm2 以下にまで低下したが、これ以上拭き取りを行っても、 表面汚染密度は低下しなかった。 GB本体及びパネル表面は、完全な平滑面でなく、汚染 が微細な傷等に入り込んでいる可能性がある。このため、 残存する汚染については固定することとした。汚染の固 定には、アクリル系樹脂にキレート剤を加えた厚膜タイ プの剥離型塗料とスプレー式の水性ペイント剤を用いて 実施した。固定後にスミヤ法で確認した GB 内の表面汚 染密度は、α: 33 Bq/cm2以下、βγ: 1.7 Bq/cm2以下であり、 除染前の約 1/150~1/215 にまで低下することができた。 これにより、GB内部の放射性物質を減らし、作業者及び 作業エリアの汚染リスクを低減することができた。 4.パネルの更新作業 パネルの更新作業を安全且つ円滑に行うには、GB内部 からの放射性物質の拡散による汚染と作業者の被ばくを 防止することが重要となる。そこで、作業場所周囲には グリーンハウス(GH)を設置するとともに、作業者は、呼 吸保護具等の放射線防護具を着用して作業を実施した。 4.1 グリーンハウスの設置 GHは、放射性物質が作業場所から拡散して汚染が拡大 1921/11/25水、アルコール、中性洗剤で湿らせたウェスによる拭き取り (水) するのを防止するため、GBの周囲に鋼管パイプとビニー (アルコール) (中性洗剤) (不繊維布) スポンジによる拭き取り (メラミン樹脂) 汚染の固定 ル製シートを用いて設置した。図 4 に設置した GH の概 6000グローブボックス床面 グローブボックス天井 略を示す。GH は4室構造とし、汚染レベルの高いハウス グローブボックス側面(バックポート側) グローブボックス側面 から順次GH-1、GH-2、GH-3、GH-4とした。GH-1は、 パネル(正面) 4000 パネル(背面) パネルの更新作業を実施するハウスであり、GH-1 からの 作業者は、着用した放射線防護具の表面を除染し、サー 2000 ベイメータによる汚染検査を実施してから退出すること 0にした。GH-2、GH-3 は、作業者が放射線防護具を着脱 1 2 3 4 5 除染作業回数 6 7 8 9 装するハウスであり、GH-1からの退出者が、ここで汚染 250水、アルコール、中性洗剤で湿らせたウェス、スポンジによる拭き取り (水) (アルコール) (中性洗剤) (不繊維布) スポンジによる拭き取り (メラミン樹脂) 汚染の固定 検査を実施して放射線防護具を脱装できるようにした。 GH-4 は、GH からの退出者の最終汚染検査を実施するハ 200 ウスとし、ここで確実に汚染がないことを確認してから、 1900/05/29GHを退出することとした。このように、各GHを通して 100グローブボックス床面 グローブボックス天井 グローブボックス側面(バックポート側) 二重三重の汚染検査を実施することで、放射性物質の拡 グローブボックス側面 パネル(正面) パネル(背面) 散及び汚染の拡大防止を図った。なお、GH 内はビニール 50製シートを多重に敷設することで、作業中に汚染が発生 0しても、シートを交換することで容易に除去できるよう 1 2 3 4 5 6 7 8 9 除染作業回数 にした。また、GH-1 には、高性能エアフィルタである 図 3 グローブボックス内の除染結果(上:α線放出核種の除染 HEPA フィルタ(放射性物質の捕集率 99.97%)を介して排 結果、下:βγ線放出核種の除染結果) 気ブロアを取り付け、GH 内部を換気(換気回数:10 回/h - 27 - GH-1 GH-4 GH-3 GH-2 不繊維布製フィルタ グローブボックス ヒュームフード HEPA 【排気ブロア】 へ接続 フィルタ 最大排気量:約15 m3/min 使用電圧:100V 仮設排気ダクト GH-1 フィルタ:HEPAフィルタ1段 (捕集効率:99.97%) ダクト:内径190 mm×長さ4 m 排気ブロア 排気設備接続詳細図 図4 グリーンハウスの概略図 以上)することで負圧とし、放射性物質の閉じ込めを図っ た。さらに、各GHには、α線ダストモニタを設置して作 業中の空気中における放射性物質濃度を監視し、濃度限 度を超える事態が生じた場合には、作業を中断して除染 等を実施することにした。 4.2 放射線防護具の選定 除染後に測定したGBの表面線量率は1μSv/h 以下であ り、更新の予定作業時間を考慮して評価した作業者の累 積線量率は約0.6mSv であった。この値は、法令等で定め られている放射線業務従事者の実効線量限度(50mSv/年) を十分に下回るため、本作業において外部被ばく上の問 題はない。このため、作業者の放射線防護具は、内部被 ばくと身体汚染防止の観点から選定した。 除染及び汚染固定後のGB内部の表面汚染密度は、3 節 よりα: 33Bq/cm2、βγ: 1.7Bq/cm2以下であった。GB内の汚 染が空気中へ舞い上がる程度を示す再浮遊係数(1× 10-6cm-1)9)を用いて、更新作業中における GH 内の空気中 の放射性物質濃度を推定した結果、その値はα: 3.3× 10-5Bq/cm3、βγ: 1.7×10-6Bq/cm3であった。GH 内の放射性 物質濃度に対して、内部被ばくを防止するための呼吸保 護具である全面マスクの着用限度はα:5.6×10-5Bq/cm3、 βγ:2.9×10-6Bq/cm3 と僅かに許容できる値であり、全面マ スクに空気供給式ホースを接続したエアラインマスクの 着用限度はα:5.6×10-3Bq/cm3、βγ:2.9×10-4Bq/cm3と 2 桁 程度の裕度を持った値であった。このため、本件では、 内部被ばくを確実に防止するため、最も内部被ばくのリ スクが高い GH-1 の作業者の呼吸保護具にエアラインマ スクを選定した。また、GH-1と比較して汚染リスクが少 ないGH-2の作業者の呼吸保護具には全面マスク、GH-3 図5 パネル更新の作業手順 - 28 - 及び GH-4 の作業者の呼吸保護具には半面マスクを選定 した。さらに、放射性物質が直接身体に付着するのを防 止するため、ポリエチレン繊維製放射線防護服、酢酸ビ ニール製放射線防護服、ゴム手袋、綿手袋、シューズカ バー、フットカバー及びオーバーシューズを必要に応じ て着用することとした。なお、万が一の外部被ばくを防 止するため、GH 内作業者は個人被ばく線量計、電子ポケ ット線量計及び警報付きポケット線量計を常時着用する こととした。 4.3 更新作業 放射性物質の拡散を確実に防止するためには、GBの閉 じ込め機能を維持したままパネルの交換作業を実施する 必要がある。このような方法としては、GB の内側にステ ンレス鋼製閉止板と外側にグローブ付のビニール製シー トを取り付けて、作業領域を隔離しながら実施した例が 桜庭らによって報告されている 10)。本更新でも GB の閉 じ込め機能を維持するため、桜庭らの報告を参考に、作 業領域を隔離するためのビニール製シートを GB パネル の内側と外側に取り付け、図 5 に示す作業手順を策定し て作業を実施した。 GB 内側は、図6 に示すように両面テープ、布テープ、 伸縮棒を用いてビニール製シートを取り付けた。その後、 アクリル製パネルを取り外すための事前処置として、パ ネルを固定している押さえ板を取り外し、スタッドボル ト及び周辺の除染とテープによる汚染の固定を実施した。 なお、押さえ板の固定に用いるスタッドボルトには、O リング付きの真鍮製保護キャップを取り付けることで放 射性物質の付着を防止した。 GB パネルの外側は、図7に示すように塩化ビニール製 パイプの骨組にテープ等を用いてビニール製シートを取 り付けた。シートにはグローブを取り付けることでアク リル製パネルの取り外しを遠隔でできるようにした。さ らに、上部にはフィルタを取り付けることで、パネル取 り外し時に空気流線がGB内部へ流れるように調整した。 その後、グローブを用いてパネル及び付随するガスケ ットを取り外し、廃棄用ビニールバッグに入れて、溶着 して切り離すことでパネルに付着していた汚染を内部に 閉じ込めたまま搬出した。なお、パネル取り外し時に確 認した空気流線は GB 側へ流れており、作業領域の閉じ 込め機能は維持されていることを確認した。 パネル取り外し後、放射性物質の拡散を防止するため、 排気ダクトに接続したトレイを用いながら GB パネル取 り付け面の清掃及び除染を実施した。取り付け面には、 旧パネルで使用していたガスケットの一部が付着してい たため、除染前に軟質プラスチック製のヘラを用いて付 着物を除去した。除染は、水及びアルコールで湿らせた ウェスを用いて拭き取りにより行った。除染後の汚染検 査で取り付け面の表面汚染密度は、α線サーベイメータに よる直接測定で最大 4.6×102Bq/cm2 と高い値を示した。 このため、再度の拭き取りを行ったが同等の表面汚染密 度が確認されたため、スプレー式水性ペイントを吹き付 けて汚染の固定を図った。固定後の表面汚染密度はα:8.3 ×10-1 Bq/cm2 以下と大幅に汚染を低下させることができ た。 ポリカーボネート製の新パネルは、GB外側のビニール 製シートを撤去した後、スペーサーを用いて位置合わせ をしながら 1 枚ずつ慎重に取り付けた。パネルの取り付 け作業時の様子を図 8 に示す。パネル取り付け時のスタ ッドボルトのナットの締め付けトルクには、新設 GB 用 伸縮棒 (剥がれ防止用) パネル 1050 1000 1050 中性能フィルタ 塩化ビニール製 パイプ グローブポート 1400 パネル廃棄用 ビニールバッグ 図6 インナーバッグの概略図 図7 アウターバッグの概略図 パネル中性能 フィルター グローブポート ビニール製 シート 物品搬出入用 ファスナー 架台 グローブボックス 両面テープ及び布テープにより、固定 伸縮棒 (剥がれ防止用) - 29 - グローブ ※単位:mm パネルのトルクである2~3N・m を用いた。なお、ガスケ ット及び押さえ板は、従来と同様の寸法で新たに製作し たものを取り付けた。これらの結果、作業場所及び作業 者への汚染はなく、作業領域から放射性物質を拡散させ ずに更新を行うことができた。 5.検査 検査は、難燃性材料を使用した GB パネルが適切に設 置されていること及び GB の閉じ込め機能が維持されて いることを検証するため、作業終了後にポリカーボネー トの材料検査、パネルの据付・外観検査、GBの負圧検査 及び漏えい検査を実施した。 材料検査ではパネルに使用したポリカーボネートが JIS K6735で規定された特性を満足し、燃焼性がUL94 V-0 に適合する難燃性を有することを購入メーカ及び米国 Underwriters Laboratories 社が発行する証明書を用いて確 認した。 図8 新パネル取り付け作業時の様子 査にも合格し、パネルを更新したグローブボックスの閉 パネルの据付・外観検査は、設置した 6 枚のポリカー ボネート製パネルの寸法と取り付け位置をコンベックス じ込め機能は、更新前と同様に維持されていることが確 ルールで測定し、設計通りに作業が行われたことを確認 認された。これらの結果より、グローブボックスパネル するとともに、パネルの外観に有害な傷等がないことを を可燃性であるアクリルから難燃性のポリカーボネート 確認した。なお、検査は、日本機械学会の発電用原子力 へと更新し、新規制基準へ適合させることができ、供用 設備規格に基づき 11)、検査箇所の明るさが540Lx 以上、 中のGBパネルの更新技術を確立することができた。 目視検査における眼から検査対象部までの距離が 1200 核燃料再処理施設には、可燃性であるアクリル製パネ mm 以内の条件で実施した。 ルを取り付けたグローブボックスが多く使用されている。 GBの負圧検査では、パネル更新後のGB の内部が東海 これらは、今後の使用状況等に応じてパネル更新を含め 再処理施設で定められている-300±50 Paの負圧状態に維 た難燃化対策を実施する必要がある。また、東海再処理 持されていることを負圧計により確認した。 施設は、多くのグローブボックスでパネル等の老朽化が 漏えい検査では、日本非破壊検査協会で規格化されて 進んでいる。このような状況を鑑み、今回の更新作業を いるハロゲンリーク試験方法(NDIS 3407)12)に準じて試験 通じて得られた知見や技術を継承していくことが重要で を行った。NDIS では、漏えいの判定基準として 1×10-6 ある。 Pa・m3/s以下が定められている。これは、GBの漏れ率に 換算すると 1.5×10-6vol%/h に相当する値であり、JIS 参考文献 Z4820:2002 で定められた放射性物質取扱用 GB の漏えい 1) 原子力規制委員会: “再処理施設の位置、構造及び備 率である0.1vol%/h以下 3)を十分に満足する値である。こ 基準に 再処理施設の位置、構造及び備基準に 関す のため、本検査の判定基準としては、NDIS:3407 の判定 基準をそのまま採用した。検査の結果、パネルとグロー ブポートの設置境界部からの漏えいは判定基準以下であ る規則 の解釈の制定について”, 原管研発第 1311275 号 (平成25年11月27 日制定) 2) JIS Z4808:2002. 放射性物質取扱作業用グローブボ ックス. った。 3) JIS Z4820:2002. グローブボックス気密試験方法. 以上の結果より、更新したパネルの材料、据付・外観 4) UL-94:2013. Standard for Tests for Flammability 状況に問題はなく、GBの閉じ込め機能も更新前と変わら of Plastic Materials for Parts in Devices and ずに維持されていることを確認した。なお、上記検査項 目については、原子力規制庁による使用前検査を受検し て合格した。 Appliances. 5) JIS K6735:2014. プラスチック ‐ポリカーボネ ート板‐タイプ, 寸法及び特性. 6) JIS K6745:2008. プラスチック ‐硬質ポリ塩化 6.まとめ ビニール板. 7) JIS K6718-1:2000. プラスチック ‐メタクリル グローブボックスの新規制基準への適合を図るため、 樹脂板‐タイプ, 寸法及び特性‐第 1 部:キャスト 新しく取り付けたパネルの材質は、従来の可燃性である 板. アクリルから難燃性であるポリカーボネートへ変更した。 8) 栗山将: “原子力産業に要求される高分子材料”, パネルの更新作業は、グローブボックス内及びパネル取 JAERI-M 9412 (1981). り付け面の除染を実施し、ビニール製シート等により作 業領域を隔離することで、問題なく放射性物質を内部に 閉じ込めることができ、作業者の有意な被ばく、放射性 9) 関昭雄, 大西俊彦, 叶野豊, 岩月恒信: “放射線管理 のための表面汚染からの再浮遊係数に関する文献調 査”, PNC SN8420 88-008 (1988). 10) 桜庭直敏, 沼田正美, 古宮友和, 市瀬健一,他: “バッ 物質の拡散、汚染等を発生させずに完了することができ グイン・バッグアウト方式による大型グローブボッ た。更新後、新たに設置したポリカーボネート製パネル ク ス の ア ク リ ル パ ネ ル 交 換 技 術 ”, の健全性及びグローブボックスの閉じ込め機能が更新前 JAEA-Technology 2009-071 (2010). と同様に維持されていることを検証するため、材質検査、 11) JSME S NA1-2008. 発電用原子力設備規格. 据付・外観検査、負圧検査、漏えい検査を実施した。検 12) NDIS3407:1999. ハロゲンリーク試験. 査結果に問題はなく、原子力規制庁が実施した使用前検 - 30 -“ “再処理施設におけるグローブボックスパネルの更新技術“ “舛井 健司,Kenji MASUI,山本 昌彦,Masahiko YAMAMOTO,久野 剛彦,Takehiko KUNO,駿河谷 直樹,Naoki SURUGAYA
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