AEセンサを用いたメカニカルアンカの非破壊検査技術の開発 2
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カテゴリ: 第13回
1.緒言
金属拡張系アンカ(メカニカルアンカ)は、原子力プラント等における機器構造物の支持に広く用いられているが、施工後も全体が大気環境下にあるため、ボルトやスリーブの腐食、あるいはコンクリートの劣化等により健全性が損なわれる可能性が潜在している。国内原子力プラントの高経年化技術評価書には、高経年化に対応した長期保守管理項目の一つとしてメカニカルアンカが挙げられており[1]、健全性維持の必要性が認識されている。 原子力プラントのメカニカルアンカに対しては、目視点検、異常振動の有無の確認が定期的に行われる他、機器の取替え時等を利用したサンプル調査により腐食・付着力等が調査される[1]。しかしながら、目視点検では施工部の腐食やコンクリート基部損傷等の発見が困難な場合も考えられるため、メカニカルアンカの健全性を簡便且つ非破壊的に評価可能な検査手法が望まれる。 筆者らはメカニカルアンカの施工不良、経年劣化を非破壊的に検出するAE(acoustic emission)センサを用いた非破壊検査システムを開発し、その適用範囲の拡充を進めている。前報[2]では締付けトルクの緩みに対する検出性について報告した。本報ではコンクリート基部の損傷に対する検出性について実験的に検討した結果を報告する。
2.実験条件
2.1 AEセンサを用いた非破壊検査システムの概要
開発した非破壊検査システム(Fig.1)は、センサをアンカ頭頂部等に設置し、ハンマ等で加振して得られた信号が、施工不良、経年劣化に感度を有することを利用している。本システムによる検査は、検査精度が検査員の熟練度に依存しない、客観性ある定量的な検査結果が得られる、等の特徴を有している。 Fig.1 Schematic view of the inspection system
2.2 現場検査システム 筆者らは現場使用に適したポータブルタイプの検査装 置を開発し(Fig.2)、道路構造物等について実機適用を進 めつつある[3]。この装置は検査対象から得られた信号波 形や周波数解析結果のみならず、検査対象の外観目視結 果、外観写真等を含めて記録、管理可能である。 Fig.2 Portable inspection equipment 2.3 供試体 検出性検討にあたり、M16 スリーブ打込み式メカニカ ルアンカを一辺200mm、圧縮強度24N/mm2の立方コン クリートブロックに施工した供試体を作製した(Fig.3(a))。 コンクリート基部の劣化模擬として、メカニカルアン カを施工した面の対辺中央にくさびを打ち込むことによ り、基部にき裂を与えた。き裂幅を最大1 mm程度まで4 水準変化させて、各状態において得られた信号を比較し た。き裂幅の変化をFig.3(b) から Fig.3(d) に示した。 (a) concrete block (b) with no crack (c) crack width : 0.5mm (d) crack width : 1 mm Fig.3 Mechanical anchor bolt mockups installed in concrete blocks 3.試験結果 供試体より得られた信号の周波数分布においてしきい 値(0.5)を超える最も低いピーク(1,200 - 1,400Hz 程度)に 着目し(以下、評価ピーク)、き裂幅の変化に伴う周波数 crack Tablet PC Measurement box AE sensor - 276 - crack の変化を調べた。試験結果をFig.4 に示す。 き裂を与えた供試体より得られた評価ピーク周波数は、 健全施工された供試体から得られた周波数と比較して、 いずれも低周波側にシフトした。また、評価ピーク周波 数はき裂幅の増加に伴い低下する傾向を示し、き裂幅が 1mm程度の状態における評価ピーク周波数は健全施工状 態と比較して最大 150Hz 程度低下した。この低下は、メ カニカルアンカ固着部の拘束条件がき裂幅の増加に伴い 変化したことに起因すると推定される。本試験結果から、 メカニカルアンカに発生するコンクリート基部損傷を非 破壊的に検出する可能性が示された。 Crack Crack Crack Crack width: width: width: width: 1 mm 0.75 mm 0.5 mm 0.25 mm No crack Fig.4 Frequency distribution changes obtained from concrete mockups 4.結言 メカニカルアンカの施工不良、経年劣化を非破壊的に 検出する AE センサを用いた非破壊検査システムを構 築し、適用範囲の拡充を進めている。コンクリート基部 損傷に対する検出性検証として、コンクリートブロック にき裂を与えた供試体を作製し、周波数分布の変化を 調べた。評価ピーク周波数はき裂幅の増加に伴い低下 する傾向を示し、メカニカルアンカに発生するコンクリ ート基部損傷を非破壊的に検出する可能性が示された。 参考文献 [1] ”美浜発電所3 号炉 高経年化技術評価書”, 関西電力 株式会社(2006) 他. [2] ”AE センサを用いたメカニカルアンカの非破壊検査 技術の開発”, 日本保全学会第 12 回学術講演会 (2015). [3] “ガードレール支柱の経年劣化検査技術の開発2”, 日 本土木学会第71回年次学術講演会(2016) (発表予定).“ “AEセンサを用いたメカニカルアンカの非破壊検査技術の開発 2“ “匂坂 充行,Mitsuyuki SAGISAKA,松永 嵩,Takashi MATSUNAGA,小川 良太,Ryota OGAWA,鵜飼 康史,Yasufumi UKAI,礒部 仁博,Yoshihiro ISOBE
金属拡張系アンカ(メカニカルアンカ)は、原子力プラント等における機器構造物の支持に広く用いられているが、施工後も全体が大気環境下にあるため、ボルトやスリーブの腐食、あるいはコンクリートの劣化等により健全性が損なわれる可能性が潜在している。国内原子力プラントの高経年化技術評価書には、高経年化に対応した長期保守管理項目の一つとしてメカニカルアンカが挙げられており[1]、健全性維持の必要性が認識されている。 原子力プラントのメカニカルアンカに対しては、目視点検、異常振動の有無の確認が定期的に行われる他、機器の取替え時等を利用したサンプル調査により腐食・付着力等が調査される[1]。しかしながら、目視点検では施工部の腐食やコンクリート基部損傷等の発見が困難な場合も考えられるため、メカニカルアンカの健全性を簡便且つ非破壊的に評価可能な検査手法が望まれる。 筆者らはメカニカルアンカの施工不良、経年劣化を非破壊的に検出するAE(acoustic emission)センサを用いた非破壊検査システムを開発し、その適用範囲の拡充を進めている。前報[2]では締付けトルクの緩みに対する検出性について報告した。本報ではコンクリート基部の損傷に対する検出性について実験的に検討した結果を報告する。
2.実験条件
2.1 AEセンサを用いた非破壊検査システムの概要
開発した非破壊検査システム(Fig.1)は、センサをアンカ頭頂部等に設置し、ハンマ等で加振して得られた信号が、施工不良、経年劣化に感度を有することを利用している。本システムによる検査は、検査精度が検査員の熟練度に依存しない、客観性ある定量的な検査結果が得られる、等の特徴を有している。 Fig.1 Schematic view of the inspection system
2.2 現場検査システム 筆者らは現場使用に適したポータブルタイプの検査装 置を開発し(Fig.2)、道路構造物等について実機適用を進 めつつある[3]。この装置は検査対象から得られた信号波 形や周波数解析結果のみならず、検査対象の外観目視結 果、外観写真等を含めて記録、管理可能である。 Fig.2 Portable inspection equipment 2.3 供試体 検出性検討にあたり、M16 スリーブ打込み式メカニカ ルアンカを一辺200mm、圧縮強度24N/mm2の立方コン クリートブロックに施工した供試体を作製した(Fig.3(a))。 コンクリート基部の劣化模擬として、メカニカルアン カを施工した面の対辺中央にくさびを打ち込むことによ り、基部にき裂を与えた。き裂幅を最大1 mm程度まで4 水準変化させて、各状態において得られた信号を比較し た。き裂幅の変化をFig.3(b) から Fig.3(d) に示した。 (a) concrete block (b) with no crack (c) crack width : 0.5mm (d) crack width : 1 mm Fig.3 Mechanical anchor bolt mockups installed in concrete blocks 3.試験結果 供試体より得られた信号の周波数分布においてしきい 値(0.5)を超える最も低いピーク(1,200 - 1,400Hz 程度)に 着目し(以下、評価ピーク)、き裂幅の変化に伴う周波数 crack Tablet PC Measurement box AE sensor - 276 - crack の変化を調べた。試験結果をFig.4 に示す。 き裂を与えた供試体より得られた評価ピーク周波数は、 健全施工された供試体から得られた周波数と比較して、 いずれも低周波側にシフトした。また、評価ピーク周波 数はき裂幅の増加に伴い低下する傾向を示し、き裂幅が 1mm程度の状態における評価ピーク周波数は健全施工状 態と比較して最大 150Hz 程度低下した。この低下は、メ カニカルアンカ固着部の拘束条件がき裂幅の増加に伴い 変化したことに起因すると推定される。本試験結果から、 メカニカルアンカに発生するコンクリート基部損傷を非 破壊的に検出する可能性が示された。 Crack Crack Crack Crack width: width: width: width: 1 mm 0.75 mm 0.5 mm 0.25 mm No crack Fig.4 Frequency distribution changes obtained from concrete mockups 4.結言 メカニカルアンカの施工不良、経年劣化を非破壊的に 検出する AE センサを用いた非破壊検査システムを構 築し、適用範囲の拡充を進めている。コンクリート基部 損傷に対する検出性検証として、コンクリートブロック にき裂を与えた供試体を作製し、周波数分布の変化を 調べた。評価ピーク周波数はき裂幅の増加に伴い低下 する傾向を示し、メカニカルアンカに発生するコンクリ ート基部損傷を非破壊的に検出する可能性が示された。 参考文献 [1] ”美浜発電所3 号炉 高経年化技術評価書”, 関西電力 株式会社(2006) 他. [2] ”AE センサを用いたメカニカルアンカの非破壊検査 技術の開発”, 日本保全学会第 12 回学術講演会 (2015). [3] “ガードレール支柱の経年劣化検査技術の開発2”, 日 本土木学会第71回年次学術講演会(2016) (発表予定).“ “AEセンサを用いたメカニカルアンカの非破壊検査技術の開発 2“ “匂坂 充行,Mitsuyuki SAGISAKA,松永 嵩,Takashi MATSUNAGA,小川 良太,Ryota OGAWA,鵜飼 康史,Yasufumi UKAI,礒部 仁博,Yoshihiro ISOBE