3DCADモデルに基づく廃止措置エンジニアリング支援 Decommissioning Engineering Support based on 3D CAD Models
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カテゴリ: 第13回
1.はじめに
運転開始後、長期間を経過する原子力発電プラントの廃止措置が今後増加する。廃止措置では、放射性廃棄物を扱う上での安全性、効率性、及び、経済性(コスト低 減)が課題である。これらを解決し、廃止措置の計画時の効率性、経済性を確認するため、3D CAD モデルを用いた廃止措置エンジニアリング支援技術を開発した[1]。 廃止措置エンジニアリングで検討すべき要素技術として、残留放射能(インベントリ)評価、除染、解体、遠隔操作、廃棄物処理・管理、及び、放射線安全(計測) がある[2]。これらの要素技術を基盤として、システム・ エンジニアリングにより、廃止措置事業が適正に行われる必要がある。システム・エンジニアリングでは、要素技術の選択と組み合わせの最適化、計画・準備、及び、 過去の経験(Lessons learned)に学ぶしくみが求められる。これら要素技術を結び付け、システム・エンジニアリングを適切に利用するために、廃止措置対象の原子力プラントの形状、機能(系統)のデータと、運転により蓄積された放射性物質による汚染による放射能量をデータベース化することが有効である。
2.廃棄物量見積システムの構築 2.廃炉シミュレータの構築と評価 2.1 システム構成 原子力プラントの3Dモデルと、評価済み放射能インベ ントリ・データを利用して、廃棄物量算出、機器・配管 の切断計画、被曝線量を評価する機能を開発した。シス テム構成をFig. 1に示す。 : developed Fig. 1 System Configuration 原子力プラントの3Dモデルに含まれる機器・配管の内面に評価済みの放射能インベントリ・データを線源デー タとして自動的に割り当てる。三次元的な線源モデルか ら生成した入力データを用いて、放射線輸送計算コード Phits[3]により、空間線量率を計算する。システムは計算結果をもとに、作業空間の線量率分布を可視化する。また、機器・配管の 3D モデルを自動的に解体・切断し、
廃棄物収納容器に詰め込んだ状態を生成する。これによ り、解体工事エリアごとに必要となる廃棄物収納容器の 個数、放射能量、及び、重量を計算することができる。 2.2 評価結果 空間線量率の計算結果を基に、プラント3D モデル上に 透明ボクセルを配置し、作業現場の空間線量率の分布を 可視化した(Fig. 2)。また、機器・配管の3D モデルを指定 した寸法で横方向、半割で自動切断し、容器に格納した 状態を生成し(Fig. 3)、解体に必要な収納容器数を評価す る機能を開発した。これにより、切断長と廃棄体の数の 関係や、切断方法(半割あり/なし)、収納方法(放射能 高の廃棄体を中央に詰める等)が、廃棄物収納容器の数 に与える影響を評価可能とした。Fig.4 に一つの解体工事 エリアの機器・配管切断長と廃棄体との関係、及び、必 要とする廃棄物収納容器数の評価結果を示す。 Fig. 2 Spatial distribution of dose rate around piping components and equipment. Fig. 3 Generated waste container model. 11 containers 13~14 containers Fig. 4 Number of segmented objects. 3.まとめ 作業による被ばく線量を少なくするため、切断数を少 なくする必要があるが、収納容器にすきまなく解体物を 詰めるためには切断長を短くしたり、半割切断したりし て、切断数を増やす必要がある。切断数を少なくすれば、 必要な収納容器数が多くなり、廃棄体管理が課題となる 可能性がある。このようなトレードオフの関係を作業員 の被ばく量を合理的、かつ、適切に管理する観点から最 適化する必要があり、開発したシステムを活用すること によりエンジニアリング判断を支援できると考える。 参考文献 [1] 関洋,杉本洋平,榎本敦子,今村光孝,平重貴之,玉 田 愼,長瀬 博: “廃止措置エンジニアリング技術 の開発;(1)プラント 3D モデルに基づく大規模廃棄 物量算出の自動化”, 原子力学会2015年秋の大会, G01 (2015). [2] 石榑顕吉:”原子力発電所廃止措置 通常炉廃止措置 に向けた我が国の蓄積と今後の展望”, 21 世紀にお ける原子力発電所廃止措置のあり方に関する調査検 討委員会,第4回廃止技術セミナー,通常炉原子力発 電所廃止措置 - わが国の30年の蓄積 - ,エ ネルギー総合研究所 講演会資料(2014). [3] T. Sato, K. Niita, N. Matsuda, S. Hashimoto, Y. Iwamoto, S. Noda, T. Ogawa, H. Iwase, H. Nakashima, T. Fukahori, K. Okumura, T. Kai, S. Chiba, T. Furuta and L. Sihver, “Particle and Heavy Ion Transport Code System PHITS, Version 2.52”, J. Nucl. Sci. Technol. 50:9, 913-923 (2013). - 444 - 500 s tcejbod etnemgesf or ebmuN450 With pipe half cut 400 With pipe half cut ¢ering high radioactivity 350 Without half cut 3002501000 1100 1200 1300 1400 Cut length [mm]“ “3DCADモデルに基づく廃止措置エンジニアリング支援 Decommissioning Engineering Support based on 3D CAD Models “ “今村 光孝,Mitsutaka IMAMURA,北原 隆,Takashi KITAHARA
運転開始後、長期間を経過する原子力発電プラントの廃止措置が今後増加する。廃止措置では、放射性廃棄物を扱う上での安全性、効率性、及び、経済性(コスト低 減)が課題である。これらを解決し、廃止措置の計画時の効率性、経済性を確認するため、3D CAD モデルを用いた廃止措置エンジニアリング支援技術を開発した[1]。 廃止措置エンジニアリングで検討すべき要素技術として、残留放射能(インベントリ)評価、除染、解体、遠隔操作、廃棄物処理・管理、及び、放射線安全(計測) がある[2]。これらの要素技術を基盤として、システム・ エンジニアリングにより、廃止措置事業が適正に行われる必要がある。システム・エンジニアリングでは、要素技術の選択と組み合わせの最適化、計画・準備、及び、 過去の経験(Lessons learned)に学ぶしくみが求められる。これら要素技術を結び付け、システム・エンジニアリングを適切に利用するために、廃止措置対象の原子力プラントの形状、機能(系統)のデータと、運転により蓄積された放射性物質による汚染による放射能量をデータベース化することが有効である。
2.廃棄物量見積システムの構築 2.廃炉シミュレータの構築と評価 2.1 システム構成 原子力プラントの3Dモデルと、評価済み放射能インベ ントリ・データを利用して、廃棄物量算出、機器・配管 の切断計画、被曝線量を評価する機能を開発した。シス テム構成をFig. 1に示す。 : developed Fig. 1 System Configuration 原子力プラントの3Dモデルに含まれる機器・配管の内面に評価済みの放射能インベントリ・データを線源デー タとして自動的に割り当てる。三次元的な線源モデルか ら生成した入力データを用いて、放射線輸送計算コード Phits[3]により、空間線量率を計算する。システムは計算結果をもとに、作業空間の線量率分布を可視化する。また、機器・配管の 3D モデルを自動的に解体・切断し、
廃棄物収納容器に詰め込んだ状態を生成する。これによ り、解体工事エリアごとに必要となる廃棄物収納容器の 個数、放射能量、及び、重量を計算することができる。 2.2 評価結果 空間線量率の計算結果を基に、プラント3D モデル上に 透明ボクセルを配置し、作業現場の空間線量率の分布を 可視化した(Fig. 2)。また、機器・配管の3D モデルを指定 した寸法で横方向、半割で自動切断し、容器に格納した 状態を生成し(Fig. 3)、解体に必要な収納容器数を評価す る機能を開発した。これにより、切断長と廃棄体の数の 関係や、切断方法(半割あり/なし)、収納方法(放射能 高の廃棄体を中央に詰める等)が、廃棄物収納容器の数 に与える影響を評価可能とした。Fig.4 に一つの解体工事 エリアの機器・配管切断長と廃棄体との関係、及び、必 要とする廃棄物収納容器数の評価結果を示す。 Fig. 2 Spatial distribution of dose rate around piping components and equipment. Fig. 3 Generated waste container model. 11 containers 13~14 containers Fig. 4 Number of segmented objects. 3.まとめ 作業による被ばく線量を少なくするため、切断数を少 なくする必要があるが、収納容器にすきまなく解体物を 詰めるためには切断長を短くしたり、半割切断したりし て、切断数を増やす必要がある。切断数を少なくすれば、 必要な収納容器数が多くなり、廃棄体管理が課題となる 可能性がある。このようなトレードオフの関係を作業員 の被ばく量を合理的、かつ、適切に管理する観点から最 適化する必要があり、開発したシステムを活用すること によりエンジニアリング判断を支援できると考える。 参考文献 [1] 関洋,杉本洋平,榎本敦子,今村光孝,平重貴之,玉 田 愼,長瀬 博: “廃止措置エンジニアリング技術 の開発;(1)プラント 3D モデルに基づく大規模廃棄 物量算出の自動化”, 原子力学会2015年秋の大会, G01 (2015). [2] 石榑顕吉:”原子力発電所廃止措置 通常炉廃止措置 に向けた我が国の蓄積と今後の展望”, 21 世紀にお ける原子力発電所廃止措置のあり方に関する調査検 討委員会,第4回廃止技術セミナー,通常炉原子力発 電所廃止措置 - わが国の30年の蓄積 - ,エ ネルギー総合研究所 講演会資料(2014). [3] T. Sato, K. Niita, N. Matsuda, S. Hashimoto, Y. Iwamoto, S. Noda, T. Ogawa, H. Iwase, H. Nakashima, T. Fukahori, K. Okumura, T. Kai, S. Chiba, T. Furuta and L. Sihver, “Particle and Heavy Ion Transport Code System PHITS, Version 2.52”, J. Nucl. Sci. Technol. 50:9, 913-923 (2013). - 444 - 500 s tcejbod etnemgesf or ebmuN450 With pipe half cut 400 With pipe half cut ¢ering high radioactivity 350 Without half cut 3002501000 1100 1200 1300 1400 Cut length [mm]“ “3DCADモデルに基づく廃止措置エンジニアリング支援 Decommissioning Engineering Support based on 3D CAD Models “ “今村 光孝,Mitsutaka IMAMURA,北原 隆,Takashi KITAHARA