原子核乾板による浜岡2号機格納容器下部の観測

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1.背景・目的
福島第一原子力発電所の廃炉を円滑に実施するためには、原子炉圧力容器(RPV)内や原子炉格納容器(PCV)内において、燃料デブリがどこにどれだけの量があるのかを把握することが重要である。この方法として、宇宙線の一種である、非常に高いエネルギーを有し、高い透過性 を有するミューオンを用いた、透過型ミューオンラジオ グラフィが適していると考えられる。 これまで、福島第一原子力発電所の 1 号機および 2 号 機にて観測が実施されているが、検出器の寸法や電源確保の観点などから地上部に検出器が設置されている。 天然の宇宙線ミューオンは上空から飛来してくることから、RPV底部やPCV底部を観測するためには、検出器を地下に設置する必要がある。 原子核乾板は、小型・軽量・電源不要・防水性を有するといった特徴があることから、設置場所の制約はほとんどない。 以上のことから、浜岡原子力発電所2号機原子炉建屋 の地下2階や原子炉建屋周辺の排水用立坑(サブドレン) 内に原子核乾板を設置して観測を実施している。 今回は、その実施状況や観測結果について報告する。
2.測定装置と観測
2.1 原子核乾板 プラスチック製のベースの両面に、原子核乳剤(臭化 銀の微結晶をゼラチンに混合分散させたもの)を塗布(図 1)して薄いアルミシートにて遮光パックする。このよ うに作成した原子核乾板2枚を重ね、図2に示すようなア ルミ製の治具に固定して観測したい場所に設置する。観 測終了後に回収した原子核乾板を現像後、専用の読取装 置(図3)にて乳剤層の深さ方向の現像銀粒子の位置を読 み取ることにより、ミューオンの飛来方向を分析する。 以上のことから、原子核乾板は小型軽量であり電源が 不要でかつ防水性にも優れていることから、設置する場 所の制約は小さい。また、乳剤層の現像銀粒子を分析す ることになるため、3次元の飛跡解析が可能であり、分解 能も数mradと高性能である。 図1 ミューオンの飛跡を記録する原理
図2 観測用治具の例 図3 飛跡の読取装置
2.2 原子核乾板での観測 平成27 年5 月22 日から平成27 年6 月12 日にかけ て、浜岡原子力発電所 2 号機の原子炉建屋地下 2 階に 原子核乾板を設置した。2号機原子炉建屋屋外周辺には、 地下水排水用のサブドレンの立坑があり、以下の期間に 立坑下部に原子核乾板を設置した。 第1期:平成28年1月28日~2月19日 第2期:平成28年1月28日~3月10日 図4 原子核乾板設置位置 3.観測結果 浜岡 2 号機の原子炉建屋地下 2 階に設置した原子核乾 板を回収して現像した後、読取装置を用いて各飛来方向 図5 モデル計算結果(左)と観測結果(右) 4.まとめと今後 今後は、浜岡 2 号機の燃料プールや原子炉建屋の壁・ 床等のデータだけでなく、背後の構造(1 号機原子炉建 屋・2号機タービン建屋)のデータを含めて、より精密な モデル計算を実施する。また、原子核乾板での観測期間 を長期間化し、原子核乾板でどこまで詳細に観測できる か限界性能の確認を実施する。 - 446 - からのミューオンの数からその方向における物質量分布 (密度長)を算出した(図5 右)。 これに平行して、原子炉圧力容器・炉内構造物・原子 炉格納容器・ペデスタル・生体遮へい等のデータを用い てモデル計算を行った(図5 左)。 浜岡原子力発電所 2 号機の原子炉建屋地下 2 階および 原子炉建屋屋外周辺のサブドレン下部に原子核乾板を設 置した。原子炉建屋地下 2 階に設置した原子核乾板の観 測結果とモデル計算結果より、原子炉格納容器下部を視 野にとらえたことが確認できた。
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