格納容器用改良 EPDM ゴム(EP-176)の温度変化 による圧縮永久ひずみの挙動
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カテゴリ: 第13回
1.緒言
原子力発電所において、メルトダウンや冷却システム の破損などの“シビアアクシデント”の場合に格納容器は放射性物質の放散の防壁として重要な機能を備えている。格納容器は“シビアアクシデント”で発生する高温高圧の蒸気などのガスに対して高い気密性と抵抗性が要求され、格納容器の密封境界部を形成するドライウェルフランジやハッチフランジなども十分なシール性能を有することが必要である。 この格納容器の密封境界部のシール材としては、従来、 シリコーンゴムや EPDM ゴムが使われている。しかし、 シリコーンゴムは蒸気雰囲気下での耐久性に不安があり、 EPDMゴムは高温雰囲気下での耐久性に不安がある。 花島、山本らは「改良EPDMゴム」と呼ばれるEP-176に“シビアアクシデント”を想定して放射線照射した試料の高温蒸気環境の圧縮永久ひずみ試験やシール試験を 行い、従来のシリコーンゴムやEPDMゴムよりもより高い性能であることを示した[1],[2]。また、中野らは常温での圧縮永久ひずみ試験において、治具に試料をセット した圧縮状態で放射線照射を行った場合、試験前の試料に放射線照射を行ったものよりも圧縮永久ひずみが大きくなることを示した[3]。ここで、格納容器用のゴムガスケットは圧縮状態で使用されるため、“シビアアクシデント”での特性をよりよく評価するためには、花島、山本 らが行った放射線照射した試料の高温蒸気環境の圧縮永 久ひずみ試験だけでなく、治具に試料をセットした圧縮状態で放射線照射したものの高温蒸気環境の圧縮永久ひずみ試験でも評価を行う必要がある。 そこで、今回、今後の格納容器で使用するゴムガスケ ットである「改良EPDMゴム」EP-176 について、治具に セットした圧縮状態で“シビアアクシデント”を想定し た放射線照射を行った後、高温蒸気で加熱した圧縮永久ひずみ試験を行い、その挙動について検討した。 さらに、“シビアアクシデント”が終息し、温度が低下した後もゴムガスケットは十分なシール性能を有することが必要であるので、“シビアアクシデント”が終息した後に温度が低下した場合を想定した圧縮永久ひずみ試験 を行い、その挙動についても検討した。
2.ゴムガスケットのシール特性 2.1 ゴムガスケットのシール機構 小林らはゴムガスケットのガスの漏れには、明らかに 挙動が違う 2 種類の漏れがあることを確認した[4]。一つ はゴムガスケットの表面と接触しているフランジ面の隙 間をガスが通る接面漏れになる(Fig.1)。もう一つはゴムガ スケットの内部をガスが透過する浸透漏れになる(Fig.2)。 Fig.1 Contact surface leak Fig.2 Penetration leak 接面漏れは石鹸水を塗布すると泡が発生するような比 較的大規模な漏れであり、この時の漏洩率は 1× 10-5Pa-m3/s 以上になる[5]。通常、ゴムガスケットは 10~ 15%程度圧縮するとこの接面漏れはほとんどなくなるこ とが判っている[4]。それに対して、浸透漏れは石鹸水を 塗布しても泡が発生しない 1×10-5Pa-m3/s 未満の微小な 漏れになる。この浸透漏れはガスがゴムガスケットの内 部を通過(拡散)するので、漏れが発生するまでに時間もか かる。“シビアアクシデント”時、格納容器内の放射性物 質の外部への漏れを防止するには、密封境界部のゴムガ スケットを圧縮して接面漏れを防ぐことが重要になる。 2.2 圧縮永久ひずみとシール機構 ゴムガスケットは通常、フランジの溝に設置し、フラ ンジを締め切って圧縮して使用する。高温や水蒸気、放 射線環境で使用するとゴムが劣化してフランジを開放し てもゴムガスケットが使用前の厚さまで戻らなくなる。 この戻らないひずみ(永久ひずみ)の度合いを評価するの が、下式の圧縮永久ひずみCs になる。 Cs = (t0-t2) / (t0-t1) × 100 Cs:圧縮永久ひずみ (%) t0:試料厚さ (mm) t1:圧縮時厚さ (mm) t2:取出し後厚さ (mm) Fig.3 Compression set t0 t1 永久ひずみが発生するとフランジ開放時の復元量が小 さくなるとともに圧縮中の実質的な圧縮量も小さくなっ ているので、フランジ接触面の隙間を埋めているゴムガ スケットの応力が小さくなる。接触面の応力が小さくな ると隙間が発生しやすくなり、接面漏れによる大規模な 漏れの可能性が高くなる。 ここで、加藤らは大規模漏洩が発生する圧縮永久ひず みを推定し、温度と時間による圧縮永久ひずみの変化傾 向から、ゴムガスケットの使用限界を評価した[5]。また、 花島、山本らも実際に圧縮永久ひずみの温度と時間によ る変化からゴムガスケットの使用期間を推定した[1],[2]。 3.試験 3.1 試料 試料はニチアスで“シビアアクシデント”対策用に開 発した「改良 EPDM ゴム」EP-176 とする。一般特性を Table 1に示す Table 1 Typical properties Rubber Improvement EPDM Sample name EPDM-B NICHIAS Product No. NU2670-EP-01 NU2680-EP-01 NICHIAS Compound No. EP-176 Hardness JIS K 6253 A 82 Tensile Strength [MPa] JIS K 6251 13.1 Elongation [%] JIS K 6251 140 Compression set [%] 150°C x 72hr JIS K 6262 1900/01/063.2 圧縮永久ひずみ試験 圧縮永久ひずみ試験はJIS K 6262に準拠して行った。 放射線照射はすでに常温で照射した試料(圧縮前、Before) を試験治具に挟んで加熱する場合と試験治具に試料を挟 t2 んだ圧縮した状態の常温で照射した(圧縮中、During)後に 加熱する場合の二つから選択した。加熱は大気中の乾熱 と水蒸気の2種類の環境を選択した。さらに、“シビアア - 448 - クシデント”が終息した後、格納容器の温度が低下する ことを想定し、試験中に温度を低下させた圧縮永久ひず み試験も行った。試験条件を下記に示す。 ・試料形状:大型試験片外径φ29mm、厚さ12.5mm ・加熱環境:乾熱、蒸気 ・放射線照射:線量 0.8MGy 、1.2 MGy γ線(線源 Co60)、線量率10 kGy/hr ・水蒸気:試験温度での飽和蒸気 ・試験温度:150°C、200°C、250°C ・試験時間:24hr(1day)、72hr(3day)、168hr (7day)、 168hr→168hr( 7day)、720hr(30day)、 168hr→744hr(31day)、1272hr(53day)、 168hr→720hr(30day)→552hr(23day) Table 2 Test condition ・試験数:各条件3個(n=3) 試験結果は3個の平均値とする ・圧縮率[ (t0-t1)/t0 ]:25% Radiation Test Heating No. Timing Total Environ 1st 2nd 3rd dose -ment Temp. Time Temp. Time Temp. Time MGy °C hr °C hr °C hr 1-1 Before 0.8 Dry 200 24 - - - - 1-2 Before 0.8 Dry 200 72 - - - - 1-3 Before 0.8 Dry 200 168 - - - - 1-4 Before 0.8 Dry 225 24 - - - - 1-5 Before 0.8 Dry 225 72 - - - - 1-6 Before 0.8 Dry 225 168 - - - - 1-7 Before 0.8 Dry 250 24 - - - - 1-8 Before 0.8 Dry 250 72 - - - - 1-9 Before 0.8 Dry 250 168 - - - - 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - Before : The irradiation before compression During : The irradiation during compression - 449 - ・試験後厚さ測定 乾熱 試験治具を恒温槽から取り出し、速やか に試験治具から試料を開放する。開放し た試料は室温に 30 分間放置後に厚さを 測定する。 蒸気 試験時間経過後に恒温槽の温度を下げ、 80°C以下になってから試験治具を取り 出し、30分間、室温で放置する。その後、 試験治具から試料を開放し、厚さを測定 する。 3.3 硬さ測定 蒸気暴露した圧縮永久ひずみ試験前後の試料について、 平面部の硬さ測定を行う。試験前後の硬さの値から硬さ 変化率?Hr(Hardness rate)を求める。試験条件を下記に示す。 ・JIS K6253準拠 タイプAデュロメーター ・試験数:各条件3個(n=3) 試験結果は3個の平均値とする ・Hr=(試験後硬さ-試験前硬さ)/試験前硬さ 硬さ変化率が+:試験前よりも試料が硬くなる 硬さ変化率が-:試験前よりも試料が柔らかくなる 4.結果 4.1 圧縮永久ひずみ 放射線を事前照射した乾熱および水蒸気の加熱におけ る圧縮永久ひずみ試験の結果をTable3,4、Fig.4に示す。 Table 3 Compression set (1) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total dose MGy Environ 1st -ment Temp. Time °C hr 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 1-1 Before 0.8 Dry 200 24 - - - - 9 9 99 1-2 Before 0.8 Dry 200 72 - - - - 12 12 1212 1-3 Before 0.8 Dry 200 168 - - - - 20 19 1818 1-4 Before 0.8 Dry 225 24 - - - - 14 14 1414 1-5 Before 0.8 Dry 225 72 - - - - 16 15 1514 1-6 Before 0.8 Dry 225 168 - - - - 17 17 1717 1-7 Before 0.8 Dry 250 24 - - - - 15 14 1314 1-8 Before 0.8 Dry 250 72 - - - - 20 19 1919 1-9 Before 0.8 Dry 250 168 - - - - 24 24 2323Ave. Value Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ dose -ment MGy 1st Temp. Time °C hr 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 14 14 1415 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 17 17 1817 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 21 21 2121 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 16 16 1617 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 22 22 2222 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 26 25 2523 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 24 24 2424 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - 28 27 2626 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - 31 31 3031Ave. Value Table 4 Compression set (2) Fig.4 Compression set - 450 - Table 3,4 及びFig.4 から、放射線を圧縮永久ひずみ試験 前に照射(0.8MGy)した場合、加熱方法(乾熱および水蒸気) によらず、時間の経過(24hr,72hr,168hr)とともに圧縮永久 ひずみは大きくなった。また、温度が高い方が圧縮永久 ひずみは大きくなった。さらに、同じ時間、温度で、加 熱環境が乾熱よりも水蒸気の方が圧縮永久ひずみは大き くなった。これらは、以前の報告と同様の結果となって いる[1],[2]。 水蒸気での加熱の場合の加熱時間の対数と圧縮永久ひ ずみの関係をFig.5に示す。 Fig.5 Time and Compression set (steam) Fig.5 から、加熱時間の対数と圧縮永久ひずみの関係は 良い直線性(R2:0.93~0.96)を示しており、各温度での加 熱時間の対数と圧縮永久ひずみの直線の傾きはほぼ同じ 傾き(3.31~4.26)を示している。このことは、水蒸気加熱 での時間による圧縮永久ひずみの増加は今回の温度範囲 で同一の機構により発生していると示唆される。 次に、加熱温度を途中で下げて水蒸気加熱を継続した ときの圧縮永久ひずみ試験(1st:1段階目加熱、2nd:2段 階目加熱、3rd:3段階目加熱)の結果Table5、Fig.6,7に示 す。 Table 5 Compression set (3) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ 1st dose -ment Temp. Time MGy °C hr Fig.6 Compression set (2steps-heat) Fig.7 Compression set (2steps, 3steps-heat) 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 18 17 1817 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 22 23 2322 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 22 22 2222 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 21 21 2119 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 16 18 1819 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 26 22 2119 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 24 23 2222 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 26 23 2222 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 25 24 2423 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 26 25 2425 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 19 20 1920Ave. Value - 451 - Table 5、Fig.6の2段階目(2nd)の加熱時間が744hr まで の場合、圧縮永久ひずみ試験前に照射する放射線の線量 0.8MGy と1.2MGy であまり変わりなく、1.6MGyになる とわずかに大きくなった。また、2段階目の加熱時間が長 くなると圧縮永久ひずみ率はわずかに大きくなる傾向が 見られるが、2段階目の加熱を行っていないものの圧縮永 久ひずみとほとんど変わらなかった。 Table 5、Fig.7 の 2 段階目の加熱がより長期の 1,272hr までの場合(2 段階目 100°Cまたは 150°C)と 2 段階目の加 熱を 150°C、720hr として 3 段階目の加熱を 100°C、 552hr(720hr+552hr=1,272hr)とした場合で、圧縮永久ひず みはほとんど変わらなかった。 以上から、水蒸気加熱において、200°C、168hr 加熱後 に温度を下げて加熱を継続しても圧縮永久ひずみは 200°C、168hr 加熱のものとほとんど変わらないことが判 った。 次に、放射線を圧縮中に照射した試料の圧縮永久ひず み試験の結果をTable6、Fig.8 に示す。 Table 6 Compression set (4) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ 1st dose -ment Temp. Time MGy °C hr Fig.8 Compression set (Radiation Timing) 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 47 43 3747 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 51 51 4951 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 53 53 5452 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 58 58 5859 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 63 62 6161 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 61 61 1916/08/04Ave. Value Table 6、Fig.8 から、圧縮永久ひずみ試験中(During)に放 射線照射すると試験前(Before)に放射線照射したものよ り圧縮永久ひずみは非常に大きくなった。特に試験中に 放射線照射すると加熱しない常温の状態でも圧縮永久ひ ずみは非常に大きくなった。さらに、試験中に放射線照 射したものは線量が高い1.2MGyの方が0.8MGyのものよ りも圧縮永久ひずみが大きくなった。 4.2 硬さ 水蒸気加熱の場合の圧縮永久ひずみ試験前後の硬さの 変化率HrをTable7に示す。 Table7 Hardness rate Table 7から、放射線の線量が最も高い1.6MGyの場合 に硬さ変化率がわずかに5%を越えたが、線量が1.2MGy 以下では、すべて硬さ変化率は5%以下となり、圧縮永久 ひずみ試験での試料の硬化は見られなかった。従って、 今回の圧縮永久ひずみ試験で、放射線の線量が 1.2MGy 以下の場合、試料の弾性にあまり変化はないと考える。 5.考察 線量 0.8MGy または 1.2MGy で、200°C、168hr 後に温 度が 150°Cに下がって加熱が継続された場合に圧縮永久 ひずみはほとんど変わらない理由、機構を考える。温度、 時間が異なっても圧縮永久ひずみが同じ値の場合、発生 Radiation Test Heating Hr No. Timing Total Environ 1st 2nd 3rd dose -ment Temp. Time Temp. Time Temp. Time MGy °C hr °C hr °C hr % 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 2.1 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 3.1 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 2.3 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 1.8 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 0.5 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 0.8 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 0.2 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - -0.7 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - -0.6 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 2.7 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 3.0 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 2.8 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 3.8 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 4.3 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 4.3 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 4.9 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 4.7 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 4.6 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 4.3 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 5.4 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 0.7 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 3.0 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 3.1 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 1.6 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 2.7 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 4.1 - 452 - している永久ひずみは同じなので、ゴムの弾性を示す硬 さも大きな変化がなければ劣化状況は同じと考える。例 えば、150°Cと 200°Cで圧縮永久ひずみが同じ値ならば劣 化状態は同じと考えると、200°Cから 150°Cに温度が変わ った場合、150°Cに変わったときの 200°Cでの圧縮永久ひ ずみの値となる 150°Cでの圧縮永久ひずみの時間を求め、 150°Cに温度が変わってからの圧縮永久ひずみは求めた 150°Cでの時間からの変化になると考えられる。 ここで、Fig.5 から、水蒸気、150°C(0.8MGy)での対数 時間による圧縮永久ひずみの変化(Cs=aln(t)+b、 Cs:圧縮永久ひずみ、t:時間、a:直線の傾き、b: y切片)を考える。Fig.5 では、200°C、225°C、250°Cで直 線の傾きaはほぼ同じなので、150°Cでも直線の傾きaが 200°C、225°C、250°Cと同じになると考え、その平均値を 150°Cでの直線の傾きa:3.630 とする。次に、200°C、225°C、 250°Cの直線の傾きaを 150°Cと同じく 3.630 とし、時間 とそのときの各温度での圧縮永久ひずみから直線の式の 対数時間に対する各温度でのy切片の値を求め、温度と そのy切片の関係を求める。これをFig.9に示す。 Fig.9 Temperature and y-axis intercept Fig.9 から、温度とy切片は良い直線性を示しているの で、これから150°Cでのy 切片の値は、y=-7.868 とな る。従って、150°Cでの時間と圧縮永久ひずみの関係は下 記の推定式、 Cs=3.630ln(t)-7.868 となる。 今回の水蒸気、200°C(0.8MGy)での圧縮永久ひずみの結 果と上記の水蒸気、150°C(0.8MGy)での時間による圧縮永 久ひずみの変化の推定式をFig.10に示す。 Fig.10 Time and Compression set Table 4、Table No2-3から水蒸気、200°C(0.8MGy)、168hr の圧縮永久ひずみは21%、水蒸気、150°C(0.8MGy) 、744hr の圧縮永久ひずみは推定式から16%と求まる。このとき、 200°C、168hr後に150°C、744hrとなる場合の圧縮永久ひ ずみはTabl5、Test No3-7 から23%となるが、200°C、168hr の圧縮永久ひずみ21%と150°C、744hrの圧縮永久ひずみ 16%との和と考えると21+16=37%となり、実際の23%よ りも非常に大きな値となる。これは200°C、168hrの経過 で、試料にはすでに永久ひずみが発生しているのに永久 ひずみが発生していない試料の150°C、744hr後の圧縮永 久ひずみ 16%を加えたため圧縮永久ひずみを大きく見積 もってしまったことによると考える。 そこで、圧縮永久ひずみが同じ値では、150°Cと 200°C での試料の永久ひずみは同じになるので、圧縮永久ひず みが同じ値ならば、温度が異なっても同じ状態と考える と200°C、168hr 後、150°C、744hr経過した場合の圧縮永 久ひずみは、200°Cと 150°Cの圧縮永久ひずみを単純に加 算するのでなく、200°C、168hr の圧縮永久ひずみ 21%に なる150°Cでの時間から744hr経過したときの圧縮永久ひ ずみの値とすればよいことになる。 具体的に Fig.10 で説明する。水蒸気、150°C(0.8MGy) での圧縮永久ひずみの対数時間による変化の直線性から、 150°Cで圧縮永久ひずみが 21%になる時間を求めると 2,843hr となる。そこで、150°Cにおいて、2,843hr から、 さらに744hr 経過したときの圧縮永久ひずみを求めると、 下式のように22%となる。 Cs = 3.630Ln (2,843+744) ? 7.868 ≒ 22% これは、実際の値23%( Tabl5、Test No3-7)とほぼ同じとな り、200°C、168hr 後に150°C、744hr 経過しても200°C、 が圧縮永久ひずみは大きい。 ・乾熱よりも水蒸気の方が圧縮永久ひずみは大きい。 ・試験前に放射線照射した試料での圧縮永久ひずみ試 験よりも試料を治具にセットした圧縮状態で放射線 を照射した圧縮永久ひずみ試験の方が圧縮永久ひず みは非常に大きくなる。 ・試験前に放射線を照射した試料での圧縮永久ひずみ 試験では、放射線の線量が異なっても圧縮永久ひず みはほとんど変わらない。 ・試料を治具にセットした圧縮状態で放射線を照射し た圧縮永久ひずみ試験では、線量が大きい方が圧縮 永久ひずみは大きくなる。 ・水蒸気、200°C、168hr加熱した後、150°Cまで温度を 下げて加熱を継続した場合、圧縮永久ひずみは 200°C、168hr での値とほとんど変わらない。 参考文献 [1]? ? R.?Yamamoto,?K.?Watanabe,?K.?Hanashima:?“Endurance? test report of rubber sealing materials for the containment vessel”,?ICONE23-1610, JSME (2015) [2] 花島, “格納容器用改良EPDMゴム(EP-176)の高温・ 水蒸気シール性”, 日本保全学会第12回学術講演会 要旨集, pp.121-128 (2015) [3]? ? M.? Nakano,? H.? Sasaki:? ”Radiation? resistance? of? rubber? compounds for gaskets? (second? report)”,? ? ICONE20POWER2012-54985, ASME (2012) [4] 小林重雄, 谷田和雄: “ゴムガスケットのリーク試 験”, 真空技術, Vol.7, No.2, pp.101-112, ISSN1883-7182 (1956) [5] 加藤治, 三枝利有: “輸送キャスク密封装置の耐熱限 界の評価”, 電力中央研究所報告 U97101, 電力中央 研究所 (1998). - 453 - 168hr 後の圧縮永久ひずみは 21%とほとんど変わらない ことをよく説明している。 6.結言 以上から、改良 EPDM と呼ばれる EP-176 について、 シール性に関わる圧縮永久ひずみの挙動について、以下 のことが判った。 ・乾熱、水蒸気ともに温度が高く、加熱時間が長い方“ “格納容器用改良 EPDM ゴム(EP-176)の温度変化 による圧縮永久ひずみの挙動“ “花島 完治,Kanji HANASHIMA
原子力発電所において、メルトダウンや冷却システム の破損などの“シビアアクシデント”の場合に格納容器は放射性物質の放散の防壁として重要な機能を備えている。格納容器は“シビアアクシデント”で発生する高温高圧の蒸気などのガスに対して高い気密性と抵抗性が要求され、格納容器の密封境界部を形成するドライウェルフランジやハッチフランジなども十分なシール性能を有することが必要である。 この格納容器の密封境界部のシール材としては、従来、 シリコーンゴムや EPDM ゴムが使われている。しかし、 シリコーンゴムは蒸気雰囲気下での耐久性に不安があり、 EPDMゴムは高温雰囲気下での耐久性に不安がある。 花島、山本らは「改良EPDMゴム」と呼ばれるEP-176に“シビアアクシデント”を想定して放射線照射した試料の高温蒸気環境の圧縮永久ひずみ試験やシール試験を 行い、従来のシリコーンゴムやEPDMゴムよりもより高い性能であることを示した[1],[2]。また、中野らは常温での圧縮永久ひずみ試験において、治具に試料をセット した圧縮状態で放射線照射を行った場合、試験前の試料に放射線照射を行ったものよりも圧縮永久ひずみが大きくなることを示した[3]。ここで、格納容器用のゴムガスケットは圧縮状態で使用されるため、“シビアアクシデント”での特性をよりよく評価するためには、花島、山本 らが行った放射線照射した試料の高温蒸気環境の圧縮永 久ひずみ試験だけでなく、治具に試料をセットした圧縮状態で放射線照射したものの高温蒸気環境の圧縮永久ひずみ試験でも評価を行う必要がある。 そこで、今回、今後の格納容器で使用するゴムガスケ ットである「改良EPDMゴム」EP-176 について、治具に セットした圧縮状態で“シビアアクシデント”を想定し た放射線照射を行った後、高温蒸気で加熱した圧縮永久ひずみ試験を行い、その挙動について検討した。 さらに、“シビアアクシデント”が終息し、温度が低下した後もゴムガスケットは十分なシール性能を有することが必要であるので、“シビアアクシデント”が終息した後に温度が低下した場合を想定した圧縮永久ひずみ試験 を行い、その挙動についても検討した。
2.ゴムガスケットのシール特性 2.1 ゴムガスケットのシール機構 小林らはゴムガスケットのガスの漏れには、明らかに 挙動が違う 2 種類の漏れがあることを確認した[4]。一つ はゴムガスケットの表面と接触しているフランジ面の隙 間をガスが通る接面漏れになる(Fig.1)。もう一つはゴムガ スケットの内部をガスが透過する浸透漏れになる(Fig.2)。 Fig.1 Contact surface leak Fig.2 Penetration leak 接面漏れは石鹸水を塗布すると泡が発生するような比 較的大規模な漏れであり、この時の漏洩率は 1× 10-5Pa-m3/s 以上になる[5]。通常、ゴムガスケットは 10~ 15%程度圧縮するとこの接面漏れはほとんどなくなるこ とが判っている[4]。それに対して、浸透漏れは石鹸水を 塗布しても泡が発生しない 1×10-5Pa-m3/s 未満の微小な 漏れになる。この浸透漏れはガスがゴムガスケットの内 部を通過(拡散)するので、漏れが発生するまでに時間もか かる。“シビアアクシデント”時、格納容器内の放射性物 質の外部への漏れを防止するには、密封境界部のゴムガ スケットを圧縮して接面漏れを防ぐことが重要になる。 2.2 圧縮永久ひずみとシール機構 ゴムガスケットは通常、フランジの溝に設置し、フラ ンジを締め切って圧縮して使用する。高温や水蒸気、放 射線環境で使用するとゴムが劣化してフランジを開放し てもゴムガスケットが使用前の厚さまで戻らなくなる。 この戻らないひずみ(永久ひずみ)の度合いを評価するの が、下式の圧縮永久ひずみCs になる。 Cs = (t0-t2) / (t0-t1) × 100 Cs:圧縮永久ひずみ (%) t0:試料厚さ (mm) t1:圧縮時厚さ (mm) t2:取出し後厚さ (mm) Fig.3 Compression set t0 t1 永久ひずみが発生するとフランジ開放時の復元量が小 さくなるとともに圧縮中の実質的な圧縮量も小さくなっ ているので、フランジ接触面の隙間を埋めているゴムガ スケットの応力が小さくなる。接触面の応力が小さくな ると隙間が発生しやすくなり、接面漏れによる大規模な 漏れの可能性が高くなる。 ここで、加藤らは大規模漏洩が発生する圧縮永久ひず みを推定し、温度と時間による圧縮永久ひずみの変化傾 向から、ゴムガスケットの使用限界を評価した[5]。また、 花島、山本らも実際に圧縮永久ひずみの温度と時間によ る変化からゴムガスケットの使用期間を推定した[1],[2]。 3.試験 3.1 試料 試料はニチアスで“シビアアクシデント”対策用に開 発した「改良 EPDM ゴム」EP-176 とする。一般特性を Table 1に示す Table 1 Typical properties Rubber Improvement EPDM Sample name EPDM-B NICHIAS Product No. NU2670-EP-01 NU2680-EP-01 NICHIAS Compound No. EP-176 Hardness JIS K 6253 A 82 Tensile Strength [MPa] JIS K 6251 13.1 Elongation [%] JIS K 6251 140 Compression set [%] 150°C x 72hr JIS K 6262 1900/01/063.2 圧縮永久ひずみ試験 圧縮永久ひずみ試験はJIS K 6262に準拠して行った。 放射線照射はすでに常温で照射した試料(圧縮前、Before) を試験治具に挟んで加熱する場合と試験治具に試料を挟 t2 んだ圧縮した状態の常温で照射した(圧縮中、During)後に 加熱する場合の二つから選択した。加熱は大気中の乾熱 と水蒸気の2種類の環境を選択した。さらに、“シビアア - 448 - クシデント”が終息した後、格納容器の温度が低下する ことを想定し、試験中に温度を低下させた圧縮永久ひず み試験も行った。試験条件を下記に示す。 ・試料形状:大型試験片外径φ29mm、厚さ12.5mm ・加熱環境:乾熱、蒸気 ・放射線照射:線量 0.8MGy 、1.2 MGy γ線(線源 Co60)、線量率10 kGy/hr ・水蒸気:試験温度での飽和蒸気 ・試験温度:150°C、200°C、250°C ・試験時間:24hr(1day)、72hr(3day)、168hr (7day)、 168hr→168hr( 7day)、720hr(30day)、 168hr→744hr(31day)、1272hr(53day)、 168hr→720hr(30day)→552hr(23day) Table 2 Test condition ・試験数:各条件3個(n=3) 試験結果は3個の平均値とする ・圧縮率[ (t0-t1)/t0 ]:25% Radiation Test Heating No. Timing Total Environ 1st 2nd 3rd dose -ment Temp. Time Temp. Time Temp. Time MGy °C hr °C hr °C hr 1-1 Before 0.8 Dry 200 24 - - - - 1-2 Before 0.8 Dry 200 72 - - - - 1-3 Before 0.8 Dry 200 168 - - - - 1-4 Before 0.8 Dry 225 24 - - - - 1-5 Before 0.8 Dry 225 72 - - - - 1-6 Before 0.8 Dry 225 168 - - - - 1-7 Before 0.8 Dry 250 24 - - - - 1-8 Before 0.8 Dry 250 72 - - - - 1-9 Before 0.8 Dry 250 168 - - - - 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - Before : The irradiation before compression During : The irradiation during compression - 449 - ・試験後厚さ測定 乾熱 試験治具を恒温槽から取り出し、速やか に試験治具から試料を開放する。開放し た試料は室温に 30 分間放置後に厚さを 測定する。 蒸気 試験時間経過後に恒温槽の温度を下げ、 80°C以下になってから試験治具を取り 出し、30分間、室温で放置する。その後、 試験治具から試料を開放し、厚さを測定 する。 3.3 硬さ測定 蒸気暴露した圧縮永久ひずみ試験前後の試料について、 平面部の硬さ測定を行う。試験前後の硬さの値から硬さ 変化率?Hr(Hardness rate)を求める。試験条件を下記に示す。 ・JIS K6253準拠 タイプAデュロメーター ・試験数:各条件3個(n=3) 試験結果は3個の平均値とする ・Hr=(試験後硬さ-試験前硬さ)/試験前硬さ 硬さ変化率が+:試験前よりも試料が硬くなる 硬さ変化率が-:試験前よりも試料が柔らかくなる 4.結果 4.1 圧縮永久ひずみ 放射線を事前照射した乾熱および水蒸気の加熱におけ る圧縮永久ひずみ試験の結果をTable3,4、Fig.4に示す。 Table 3 Compression set (1) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total dose MGy Environ 1st -ment Temp. Time °C hr 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 1-1 Before 0.8 Dry 200 24 - - - - 9 9 99 1-2 Before 0.8 Dry 200 72 - - - - 12 12 1212 1-3 Before 0.8 Dry 200 168 - - - - 20 19 1818 1-4 Before 0.8 Dry 225 24 - - - - 14 14 1414 1-5 Before 0.8 Dry 225 72 - - - - 16 15 1514 1-6 Before 0.8 Dry 225 168 - - - - 17 17 1717 1-7 Before 0.8 Dry 250 24 - - - - 15 14 1314 1-8 Before 0.8 Dry 250 72 - - - - 20 19 1919 1-9 Before 0.8 Dry 250 168 - - - - 24 24 2323Ave. Value Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ dose -ment MGy 1st Temp. Time °C hr 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 14 14 1415 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 17 17 1817 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 21 21 2121 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 16 16 1617 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 22 22 2222 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 26 25 2523 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 24 24 2424 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - 28 27 2626 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - 31 31 3031Ave. Value Table 4 Compression set (2) Fig.4 Compression set - 450 - Table 3,4 及びFig.4 から、放射線を圧縮永久ひずみ試験 前に照射(0.8MGy)した場合、加熱方法(乾熱および水蒸気) によらず、時間の経過(24hr,72hr,168hr)とともに圧縮永久 ひずみは大きくなった。また、温度が高い方が圧縮永久 ひずみは大きくなった。さらに、同じ時間、温度で、加 熱環境が乾熱よりも水蒸気の方が圧縮永久ひずみは大き くなった。これらは、以前の報告と同様の結果となって いる[1],[2]。 水蒸気での加熱の場合の加熱時間の対数と圧縮永久ひ ずみの関係をFig.5に示す。 Fig.5 Time and Compression set (steam) Fig.5 から、加熱時間の対数と圧縮永久ひずみの関係は 良い直線性(R2:0.93~0.96)を示しており、各温度での加 熱時間の対数と圧縮永久ひずみの直線の傾きはほぼ同じ 傾き(3.31~4.26)を示している。このことは、水蒸気加熱 での時間による圧縮永久ひずみの増加は今回の温度範囲 で同一の機構により発生していると示唆される。 次に、加熱温度を途中で下げて水蒸気加熱を継続した ときの圧縮永久ひずみ試験(1st:1段階目加熱、2nd:2段 階目加熱、3rd:3段階目加熱)の結果Table5、Fig.6,7に示 す。 Table 5 Compression set (3) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ 1st dose -ment Temp. Time MGy °C hr Fig.6 Compression set (2steps-heat) Fig.7 Compression set (2steps, 3steps-heat) 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 18 17 1817 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 22 23 2322 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 22 22 2222 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 21 21 2119 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 16 18 1819 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 26 22 2119 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 24 23 2222 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 26 23 2222 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 25 24 2423 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 26 25 2425 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 19 20 1920Ave. Value - 451 - Table 5、Fig.6の2段階目(2nd)の加熱時間が744hr まで の場合、圧縮永久ひずみ試験前に照射する放射線の線量 0.8MGy と1.2MGy であまり変わりなく、1.6MGyになる とわずかに大きくなった。また、2段階目の加熱時間が長 くなると圧縮永久ひずみ率はわずかに大きくなる傾向が 見られるが、2段階目の加熱を行っていないものの圧縮永 久ひずみとほとんど変わらなかった。 Table 5、Fig.7 の 2 段階目の加熱がより長期の 1,272hr までの場合(2 段階目 100°Cまたは 150°C)と 2 段階目の加 熱を 150°C、720hr として 3 段階目の加熱を 100°C、 552hr(720hr+552hr=1,272hr)とした場合で、圧縮永久ひず みはほとんど変わらなかった。 以上から、水蒸気加熱において、200°C、168hr 加熱後 に温度を下げて加熱を継続しても圧縮永久ひずみは 200°C、168hr 加熱のものとほとんど変わらないことが判 った。 次に、放射線を圧縮中に照射した試料の圧縮永久ひず み試験の結果をTable6、Fig.8 に示す。 Table 6 Compression set (4) Test Radiation Heating Cs % No Timing Total Environ 1st dose -ment Temp. Time MGy °C hr Fig.8 Compression set (Radiation Timing) 2nd Temp. Time °C hr 3rd Temp. Time °C hr Actual Value 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 47 43 3747 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 51 51 4951 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 53 53 5452 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 58 58 5859 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 63 62 6161 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 61 61 1916/08/04Ave. Value Table 6、Fig.8 から、圧縮永久ひずみ試験中(During)に放 射線照射すると試験前(Before)に放射線照射したものよ り圧縮永久ひずみは非常に大きくなった。特に試験中に 放射線照射すると加熱しない常温の状態でも圧縮永久ひ ずみは非常に大きくなった。さらに、試験中に放射線照 射したものは線量が高い1.2MGyの方が0.8MGyのものよ りも圧縮永久ひずみが大きくなった。 4.2 硬さ 水蒸気加熱の場合の圧縮永久ひずみ試験前後の硬さの 変化率HrをTable7に示す。 Table7 Hardness rate Table 7から、放射線の線量が最も高い1.6MGyの場合 に硬さ変化率がわずかに5%を越えたが、線量が1.2MGy 以下では、すべて硬さ変化率は5%以下となり、圧縮永久 ひずみ試験での試料の硬化は見られなかった。従って、 今回の圧縮永久ひずみ試験で、放射線の線量が 1.2MGy 以下の場合、試料の弾性にあまり変化はないと考える。 5.考察 線量 0.8MGy または 1.2MGy で、200°C、168hr 後に温 度が 150°Cに下がって加熱が継続された場合に圧縮永久 ひずみはほとんど変わらない理由、機構を考える。温度、 時間が異なっても圧縮永久ひずみが同じ値の場合、発生 Radiation Test Heating Hr No. Timing Total Environ 1st 2nd 3rd dose -ment Temp. Time Temp. Time Temp. Time MGy °C hr °C hr °C hr % 2-1 Before 0.8 Steam 200 24 - - - - 2.1 2-2 Before 0.8 Steam 200 72 - - - - 3.1 2-3 Before 0.8 Steam 200 168 - - - - 2.3 2-4 Before 0.8 Steam 225 24 - - - - 1.8 2-5 Before 0.8 Steam 225 72 - - - - 0.5 2-6 Before 0.8 Steam 225 168 - - - - 0.8 2-7 Before 0.8 Steam 250 24 - - - - 0.2 2-8 Before 0.8 Steam 250 72 - - - - -0.7 2-9 Before 0.8 Steam 250 168 - - - - -0.6 3-1 Before 0.8 Steam 200 168 150 168 - - 2.7 3-2 Before 0.8 Steam 200 168 150 720 - - 3.0 3-3 Before 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 2.8 3-4 Before 1.2 Steam 200 168 - - - - 3.8 3-5 Before 1.2 Steam 200 168 150 168 - - 4.3 3-6 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 - - 4.3 3-7 Before 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 4.9 3-8 Before 1.2 Steam 200 168 150 1272 - - 4.7 3-9 Before 1.2 Steam 200 168 100 1272 - - 4.6 3-10 Before 1.2 Steam 200 168 150 720 100 552 4.3 3-11 Before 1.6 Steam 200 168 150 168 - - 5.4 4-1 During 0.8 No heat - - - - - - 0.7 4-2 During 0.8 Steam 200 168 - - - - 3.0 4-3 During 0.8 Steam 200 168 150 744 - - 3.1 4-4 During 1.2 No heat - - - - - - 1.6 4-5 During 1.2 Steam 200 168 - - - - 2.7 4-6 During 1.2 Steam 200 168 150 744 - - 4.1 - 452 - している永久ひずみは同じなので、ゴムの弾性を示す硬 さも大きな変化がなければ劣化状況は同じと考える。例 えば、150°Cと 200°Cで圧縮永久ひずみが同じ値ならば劣 化状態は同じと考えると、200°Cから 150°Cに温度が変わ った場合、150°Cに変わったときの 200°Cでの圧縮永久ひ ずみの値となる 150°Cでの圧縮永久ひずみの時間を求め、 150°Cに温度が変わってからの圧縮永久ひずみは求めた 150°Cでの時間からの変化になると考えられる。 ここで、Fig.5 から、水蒸気、150°C(0.8MGy)での対数 時間による圧縮永久ひずみの変化(Cs=aln(t)+b、 Cs:圧縮永久ひずみ、t:時間、a:直線の傾き、b: y切片)を考える。Fig.5 では、200°C、225°C、250°Cで直 線の傾きaはほぼ同じなので、150°Cでも直線の傾きaが 200°C、225°C、250°Cと同じになると考え、その平均値を 150°Cでの直線の傾きa:3.630 とする。次に、200°C、225°C、 250°Cの直線の傾きaを 150°Cと同じく 3.630 とし、時間 とそのときの各温度での圧縮永久ひずみから直線の式の 対数時間に対する各温度でのy切片の値を求め、温度と そのy切片の関係を求める。これをFig.9に示す。 Fig.9 Temperature and y-axis intercept Fig.9 から、温度とy切片は良い直線性を示しているの で、これから150°Cでのy 切片の値は、y=-7.868 とな る。従って、150°Cでの時間と圧縮永久ひずみの関係は下 記の推定式、 Cs=3.630ln(t)-7.868 となる。 今回の水蒸気、200°C(0.8MGy)での圧縮永久ひずみの結 果と上記の水蒸気、150°C(0.8MGy)での時間による圧縮永 久ひずみの変化の推定式をFig.10に示す。 Fig.10 Time and Compression set Table 4、Table No2-3から水蒸気、200°C(0.8MGy)、168hr の圧縮永久ひずみは21%、水蒸気、150°C(0.8MGy) 、744hr の圧縮永久ひずみは推定式から16%と求まる。このとき、 200°C、168hr後に150°C、744hrとなる場合の圧縮永久ひ ずみはTabl5、Test No3-7 から23%となるが、200°C、168hr の圧縮永久ひずみ21%と150°C、744hrの圧縮永久ひずみ 16%との和と考えると21+16=37%となり、実際の23%よ りも非常に大きな値となる。これは200°C、168hrの経過 で、試料にはすでに永久ひずみが発生しているのに永久 ひずみが発生していない試料の150°C、744hr後の圧縮永 久ひずみ 16%を加えたため圧縮永久ひずみを大きく見積 もってしまったことによると考える。 そこで、圧縮永久ひずみが同じ値では、150°Cと 200°C での試料の永久ひずみは同じになるので、圧縮永久ひず みが同じ値ならば、温度が異なっても同じ状態と考える と200°C、168hr 後、150°C、744hr経過した場合の圧縮永 久ひずみは、200°Cと 150°Cの圧縮永久ひずみを単純に加 算するのでなく、200°C、168hr の圧縮永久ひずみ 21%に なる150°Cでの時間から744hr経過したときの圧縮永久ひ ずみの値とすればよいことになる。 具体的に Fig.10 で説明する。水蒸気、150°C(0.8MGy) での圧縮永久ひずみの対数時間による変化の直線性から、 150°Cで圧縮永久ひずみが 21%になる時間を求めると 2,843hr となる。そこで、150°Cにおいて、2,843hr から、 さらに744hr 経過したときの圧縮永久ひずみを求めると、 下式のように22%となる。 Cs = 3.630Ln (2,843+744) ? 7.868 ≒ 22% これは、実際の値23%( Tabl5、Test No3-7)とほぼ同じとな り、200°C、168hr 後に150°C、744hr 経過しても200°C、 が圧縮永久ひずみは大きい。 ・乾熱よりも水蒸気の方が圧縮永久ひずみは大きい。 ・試験前に放射線照射した試料での圧縮永久ひずみ試 験よりも試料を治具にセットした圧縮状態で放射線 を照射した圧縮永久ひずみ試験の方が圧縮永久ひず みは非常に大きくなる。 ・試験前に放射線を照射した試料での圧縮永久ひずみ 試験では、放射線の線量が異なっても圧縮永久ひず みはほとんど変わらない。 ・試料を治具にセットした圧縮状態で放射線を照射し た圧縮永久ひずみ試験では、線量が大きい方が圧縮 永久ひずみは大きくなる。 ・水蒸気、200°C、168hr加熱した後、150°Cまで温度を 下げて加熱を継続した場合、圧縮永久ひずみは 200°C、168hr での値とほとんど変わらない。 参考文献 [1]? ? R.?Yamamoto,?K.?Watanabe,?K.?Hanashima:?“Endurance? test report of rubber sealing materials for the containment vessel”,?ICONE23-1610, JSME (2015) [2] 花島, “格納容器用改良EPDMゴム(EP-176)の高温・ 水蒸気シール性”, 日本保全学会第12回学術講演会 要旨集, pp.121-128 (2015) [3]? ? M.? Nakano,? H.? Sasaki:? ”Radiation? resistance? of? rubber? compounds for gaskets? (second? report)”,? ? ICONE20POWER2012-54985, ASME (2012) [4] 小林重雄, 谷田和雄: “ゴムガスケットのリーク試 験”, 真空技術, Vol.7, No.2, pp.101-112, ISSN1883-7182 (1956) [5] 加藤治, 三枝利有: “輸送キャスク密封装置の耐熱限 界の評価”, 電力中央研究所報告 U97101, 電力中央 研究所 (1998). - 453 - 168hr 後の圧縮永久ひずみは 21%とほとんど変わらない ことをよく説明している。 6.結言 以上から、改良 EPDM と呼ばれる EP-176 について、 シール性に関わる圧縮永久ひずみの挙動について、以下 のことが判った。 ・乾熱、水蒸気ともに温度が高く、加熱時間が長い方“ “格納容器用改良 EPDM ゴム(EP-176)の温度変化 による圧縮永久ひずみの挙動“ “花島 完治,Kanji HANASHIMA