女川原子力発電所2号機ガスタービン発電機用燃料タンク設置工事の取り組みについて
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カテゴリ: 第13回
1.緒言
女川原子力発電所2号機では新規制基準への適合、ならびにより高いレベルの安全性確保に向けてさまざまな安全対策工事を実施している。 ここでは、各安全対策工事のうち、電源強化対策の一つである常設の交流電源設備として設置する、ガスタービン発電機用燃料タンク設置工事の取り組みについて紹介する。 2.燃料タンク設置検討
ガスタービン発電設備は、万が一の重大事故時に発電所の非常用電源をバックアップし、事故収束に必要な機器に給電する電源設備である。 女川原子力発電所 2 号機では 7,200kW のガスタービン 発電設備設置工事を進めており、現在はガスタービン発電機の燃料を貯蔵する地下式燃料タンク(以下、「タンク」 という。)全3基の設置が完了し、タンク室の上スラブ施工中である。 本設備は津波による影響の恐れのない海抜+60m 以上の 高台で、基準地震動Ssによる地震力が作用した場合にお いても十分な支持力を有する岩盤上に設置される。 また、タンクおよびタンク室においても、基準地震動 Ss に対し十分余裕のある耐震性を確保している。 表1 タンク仕様 2.1 官庁手続き タンク設置にあたっては、危険物(軽油)を貯蔵する ため、消防法に基づき危険物貯蔵所設置許可申請(以下、 「危険物申請」という。)の手続きが必要であった。 手続きにおいては消防法における「地下タンク貯蔵所 の位置、構造及び設備の基準」を満たす必要がある一方、 原子力特有の要求事項や設置場所の制約なども考慮し検 討、申請書の作成を実施する必要があった。 主な検討事項を以下に示す。 (1)燃料移送設備の設置場所 タンクからガスタービン発電機へ燃料を移送する燃 料移送設備(配管、ポンプ等)は、タンクの危険物貯 蔵所設置許申請書に含み申請した。 燃料移送設備はタンク室の基準地震動Ssに十分余裕 のある強固な構造を流用しタンク室上部へ設置することとした。 これにより燃料移送設備用の新たな基礎を不要とし耐震性を図った。
(2)点検への考慮 消防法において地下タンク貯蔵所は、タンクとタン ク室の空間に乾燥砂を充填することが定められている。 乾燥砂を充填した場合、タンク室への入室はできな くなる。 設置したタンクおよびタンク室内部にはタンク付属配管や自動火災検知器等の設備が設置されるため、定 期的な点検を実施する必要がある。そのため、危険物 申請段階において乾燥砂を充填しないことで所轄消防 と調整を行い、特例の適用を受けた。 乾燥砂を充填する目的としてはタンクの腐食防止や 室内の不燃性ガス滞留防止等を図るためだが、充填し ない場合においても定期的な点検、換気を行うことで 同様な防止が図れる。 図1 タンク設置概要図 3.タンク輸送 タンクは、大きさや重量、発電所までの道路状況を踏 まえ、発電所港湾まで海上輸送した。また、タンク設置 場所までは特殊車輌(L:18m×W:6m)を使用し輸送した。 構内輸送では防潮堤かさ上げ工事にて構内道路の切り 回しや港湾側道路を一部作業用構台としていたため、道 路幅や勾配、干渉物など現場状況が日々変化していた。 そのため、早い段階で関連工事との日程や現場調整を 行い現場状況に即した輸送ルート計画を立案した。 図1-1 タンク構内輸送状況(作業用構台) 保全学 Vol. , No. (2016) 1900/01/01図1-2 タンク構内輸送状況(特殊車輌) タンク室に吊り込むにあたっては、他の安全対策工事 や設置場所の環境上、重機の配置可能な場所が限られて いた。そのため、クレーンのブーム長さが必要であった ことから、600t級のクローラークレーンを使用した。 図2 タンク吊り下し状況 4.作業調整会 危険物申請書作成段階からメーカー設計部署も含め、 関係各所と定例的な作業調整会を実施した。 現場作業調整を始めとし、設計も含めた調整会を実施 することで、懸案・調整事項に対する迅速な提案が受け られるとともに各種書類への反映内容も詳細に調整する ことを可能とした。 これにより、タイムリーな回答が求められる所轄消防 との危険物申請調整の円滑化を図った。 5.結言 防潮堤(工事中) (海抜約+29m) できた。引続き、燃料移送設備およびガスタービン発電 タンクは計画通り、無事故・無災害で設置することが 機の設置が控えている。 安全対策設備は新規制基準の適合ならびに迅速な設置 が求められる一方、円滑な工事実施においては関係各所 との良好なコミュニケーションが重要である。 作業用構台 今後も関係各所とコミュニケーションを図りながら安 全・品質の向上を確保し工事に取り組んでいく。 (平成28年5月31日) - 464 -“ “女川原子力発電所2号機ガスタービン発電機用燃料タンク設置工事の取り組みについて “ “鈴木 秀好,Shuko SUZUKI,齊藤 靖広,Yasuhiro SAITO
女川原子力発電所2号機では新規制基準への適合、ならびにより高いレベルの安全性確保に向けてさまざまな安全対策工事を実施している。 ここでは、各安全対策工事のうち、電源強化対策の一つである常設の交流電源設備として設置する、ガスタービン発電機用燃料タンク設置工事の取り組みについて紹介する。 2.燃料タンク設置検討
ガスタービン発電設備は、万が一の重大事故時に発電所の非常用電源をバックアップし、事故収束に必要な機器に給電する電源設備である。 女川原子力発電所 2 号機では 7,200kW のガスタービン 発電設備設置工事を進めており、現在はガスタービン発電機の燃料を貯蔵する地下式燃料タンク(以下、「タンク」 という。)全3基の設置が完了し、タンク室の上スラブ施工中である。 本設備は津波による影響の恐れのない海抜+60m 以上の 高台で、基準地震動Ssによる地震力が作用した場合にお いても十分な支持力を有する岩盤上に設置される。 また、タンクおよびタンク室においても、基準地震動 Ss に対し十分余裕のある耐震性を確保している。 表1 タンク仕様 2.1 官庁手続き タンク設置にあたっては、危険物(軽油)を貯蔵する ため、消防法に基づき危険物貯蔵所設置許可申請(以下、 「危険物申請」という。)の手続きが必要であった。 手続きにおいては消防法における「地下タンク貯蔵所 の位置、構造及び設備の基準」を満たす必要がある一方、 原子力特有の要求事項や設置場所の制約なども考慮し検 討、申請書の作成を実施する必要があった。 主な検討事項を以下に示す。 (1)燃料移送設備の設置場所 タンクからガスタービン発電機へ燃料を移送する燃 料移送設備(配管、ポンプ等)は、タンクの危険物貯 蔵所設置許申請書に含み申請した。 燃料移送設備はタンク室の基準地震動Ssに十分余裕 のある強固な構造を流用しタンク室上部へ設置することとした。 これにより燃料移送設備用の新たな基礎を不要とし耐震性を図った。
(2)点検への考慮 消防法において地下タンク貯蔵所は、タンクとタン ク室の空間に乾燥砂を充填することが定められている。 乾燥砂を充填した場合、タンク室への入室はできな くなる。 設置したタンクおよびタンク室内部にはタンク付属配管や自動火災検知器等の設備が設置されるため、定 期的な点検を実施する必要がある。そのため、危険物 申請段階において乾燥砂を充填しないことで所轄消防 と調整を行い、特例の適用を受けた。 乾燥砂を充填する目的としてはタンクの腐食防止や 室内の不燃性ガス滞留防止等を図るためだが、充填し ない場合においても定期的な点検、換気を行うことで 同様な防止が図れる。 図1 タンク設置概要図 3.タンク輸送 タンクは、大きさや重量、発電所までの道路状況を踏 まえ、発電所港湾まで海上輸送した。また、タンク設置 場所までは特殊車輌(L:18m×W:6m)を使用し輸送した。 構内輸送では防潮堤かさ上げ工事にて構内道路の切り 回しや港湾側道路を一部作業用構台としていたため、道 路幅や勾配、干渉物など現場状況が日々変化していた。 そのため、早い段階で関連工事との日程や現場調整を 行い現場状況に即した輸送ルート計画を立案した。 図1-1 タンク構内輸送状況(作業用構台) 保全学 Vol. , No. (2016) 1900/01/01図1-2 タンク構内輸送状況(特殊車輌) タンク室に吊り込むにあたっては、他の安全対策工事 や設置場所の環境上、重機の配置可能な場所が限られて いた。そのため、クレーンのブーム長さが必要であった ことから、600t級のクローラークレーンを使用した。 図2 タンク吊り下し状況 4.作業調整会 危険物申請書作成段階からメーカー設計部署も含め、 関係各所と定例的な作業調整会を実施した。 現場作業調整を始めとし、設計も含めた調整会を実施 することで、懸案・調整事項に対する迅速な提案が受け られるとともに各種書類への反映内容も詳細に調整する ことを可能とした。 これにより、タイムリーな回答が求められる所轄消防 との危険物申請調整の円滑化を図った。 5.結言 防潮堤(工事中) (海抜約+29m) できた。引続き、燃料移送設備およびガスタービン発電 タンクは計画通り、無事故・無災害で設置することが 機の設置が控えている。 安全対策設備は新規制基準の適合ならびに迅速な設置 が求められる一方、円滑な工事実施においては関係各所 との良好なコミュニケーションが重要である。 作業用構台 今後も関係各所とコミュニケーションを図りながら安 全・品質の向上を確保し工事に取り組んでいく。 (平成28年5月31日) - 464 -“ “女川原子力発電所2号機ガスタービン発電機用燃料タンク設置工事の取り組みについて “ “鈴木 秀好,Shuko SUZUKI,齊藤 靖広,Yasuhiro SAITO