福島第一原子力発電所使用済燃料プール貯蔵燃料及び燃料デブリ取出しに向けた取り組み

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カテゴリ: 第13回
1.はじめに
福島第一原子力発電所1号機、2 号機および3 号機は、 炉心が溶融し、核燃料が原子炉内部構造物の一部とともに燃料デブリとして、原子炉圧力容器(以下、RPV)底部から原子炉格納容器(以下、PCV)底部に落下した可能性がある。その取出しに先立ち、作業の障害となる使用済燃料プール内に貯蔵されている使用済燃料の取出しが急務であり、3 号機は2017年度に、2 号機は2020 年 度に開始する計画である。 また、燃料デブリの取出しは、号機ごとの燃料デブリの量、位置、性状や核分裂生成物の分布を把握するため、原子炉格納容器内調査を実施するとともに、解析等により推定される情報から取出し工法の実現性を評価し、工法を決定する必要がある。 本稿は、燃料取出しに向けた使用済燃料プール(以下、SFP)内の貯蔵燃料取出しと、今後に向けた PCV 内部調査の開発状況について報告する。
2.使用済燃料プール内の貯蔵燃料取出しへの取り組み
2.1 使用済燃料プール内の大型瓦礫撤去 撤去の検討を開始した2012年6月時点で3号機のSFP 内には、原子炉建屋の天井および壁の部材、SFP 周辺設 備が落下し、燃料交換機やジブクレーン、屋根トラス材、 デッキプレート、鉄筋、コンクリートの塊、手摺等が瓦 礫として散乱していた。中でも原子炉建屋の屋根トラス 材や燃料交換機の大部分といった大型瓦礫が SFP 内に落 下していた。SFP 周辺は毎時数十~数百ミリシーベルト の高線量のため現場調査ができなかった。そのため、SFP 内大型瓦礫の状況は、撮影したビデオ 2 次元画像から 3 次元画像を再構成して3次元CAD モデルを作成した。そ のモデルには鉄骨、鉄筋、デッキプレートなど瓦礫の構 成部材を識別する属性を与え、個々の瓦礫の重量や重心 を計算できるようにした(Fig.1[1])。 実機設備は遠隔操作可能な大型瓦礫撤去システムを構 連絡先: 東倉 一郎,〒235-8523神奈川県横浜市磯子区新 築し、大型瓦礫撤去手順のシミュレーション(Fig.2[2]) 杉田町 8 ,株式会社 東芝 エネルギーシステムソリュ および撤去時の監視方法を検討した。大型瓦礫撤去シス ーション社 原子力機械システム設計部 テムは、瓦礫取扱具、瓦礫取扱具操作機器、監視カメラ、 E-mail: ichiro.tokura@toshiba.co.jp - 470 - 監視カメラ操作機器、クレーン、クレーン操作機器、操 作信号を送受信する無線通信機器、操作信号変換器、重 要免震棟と 3 号機周辺を結ぶ通信ケーブルから構成され る。また、SFP近傍には人が立ち入れないため、福島第一 原子力発電所内免震重要棟から遠隔にて操作可能なシス テムとした。このような綿密な事前準備の結果、2015 年 8 月には、考案した燃料交換機取扱具を用いて約20トン の大きく変形した燃料交換機を撤去し、2015 年 11 月に 大型瓦礫撤去を完了した(Fig.3[2])。 Fig.1 3D-CAD models generated before the construction Fig.3 Fuel handling machine removal operation at site Fig.2 Simulation of fuel handling machine removal 2.2 使用済燃料プール内貯蔵燃料の取出し 3号機を安定した状態にするためには、SFP 内に堆積し た瓦礫(以下、小型瓦礫)を撤去した後、全ての燃料を 取り出す必要がある。 株式会社東芝は東京電力ホールディングス株式会社と 小型瓦礫を撤去し、安全に燃料を取り出し、その燃料を 構内用輸送容器に収納して蓋を閉め、原子炉建屋の地上 階まで輸送する設備を開発した(Fig.4[3])。 燃料取扱機は、小型瓦礫の把持、切断、燃料取り出し 作業の補助を行う 2 本のマニピュレータ、燃料を構内用 輸送容器へ装填する燃料把握機等を有している。マニピ ュレータ先端部および補助ホイストは、切断、把持など 作業に応じた適切な治具に遠隔で交換することができる。 クレーンは、垂直吊り具で構内用輸送容器を吊り上げ る主巻、構内用輸送容器の一次蓋の取り付け・取り外し を行う蓋締付装置等を吊り下げる補巻などから構成され、 燃料が収納された構内用輸送容器を使用済燃料プール内 から地上階まで輸送する。 - 471 - Fig.4 Fuel Removal System 本設備は、燃料取扱機とクレーンで構成され、遠隔で の操作を可能にするため多数のカメラを配置している。 3 号機は 2017 年度に SFP 内の燃料取出し完了を目指 しており、作業床上に設置される燃料取扱設備のうち、 燃料取扱機とクレーン等の主要設備と遠隔操作室を株式 会社東芝京浜事業所に設置し、遠隔操作訓練を2015 年2 月から12月に実施した。 3.燃料デブリ取出しに向けた取り組み 3.1 原子炉格納容器内部調査遠隔調査ロボットの開発 燃料デブリが落ちたと推定されているPCV内部の調査 は、燃料デブリの取出し方針及び工法を決定する上で重 要である。しかし、PCV 内部に調査装置を挿入すること は高線量環境下での作業やバウンダリ構築の観点で極め て困難なものであり、格納容器内の状況を段階的に把握 していき、最終的に燃料デブリの位置等の重要な情報の 取得を目指している。 2012 年1 月に2 号機格納容器内の映像を初めて取得、 2012 年3 月には、雰囲気線量等を測定、2013 年8 月に は、制御棒駆動機構搬送レール上の障害物の調査を行い、 滞留水のサンプリングを実施した。同様に、3 号機では 2015 年 10 月に、格納容器内の映像を取得、雰囲気線量 を測定し、滞留水のサンプリングを実施した。また、調 査用に設けた開口を利用し、2 号機及び 3 号機の格納容 器内を監視する常設計器を、それぞれ2014 年6 月、2015 年12 月に所定の位置に設置した。 引き続き、株式会社東芝と技術研究組合国際廃炉研究 開発機構(以下、IRID)は、燃料デブリ取出しに先立ち、 2 号機PCV 底部にアクセスし、内部の状況調査を可能に する技術開発を行った。PCV 周辺は高い放射線環境にあ り、その内部へのアクセスルートが限定されるが、約10 cmの穿孔(せんこう)可能な貫通部を選定した。この寸 法制約のなかで、広範囲な視野の確保と照明の位置調整 により視認性を向上させることができるよう、後方カメ ラと照明を“サソリ”の尾のように持ち上げる機構を持 つPCV 内部遠隔調査ロボット(Fig.5[2])を開発した。 Fig.5 Remote-controlled robot for internal primary containment vessel (PCV) investigation このロボットは、福島第一原子力発電所の廃止措置に 向け、資源エネルギー庁の「発電用原子炉等事故対応関 連開発費補助事業」の一環として、IRID とともに開発し たものである[4]。今後、この遠隔調査ロボットで、事故 後初めて燃料デブリの落下経路と想定されるエリアを調 査する計画である。 3.2 燃料デブリ取出しに向けて 燃料デブリ取出しは、2021 年内開始に向け、SFP 内に 貯蔵されている燃料の取出しを早期に開始し、燃料デブ リ取出しの開始までに完遂しなければならない。 そのためには、バウンダリ機能(一次、二次 バウンダ リを有する二重バウンダリ)構築後の姿を考慮の上、バ ウンダリ内に、燃料デブリ取出しのためのエリアを区分、 設定するとともに、必要に応じ SFP 内の燃料の取出し設 備や作業要領に反映する必要がある。 また、燃料デブリの位置等を把握するための実機調査 結果、解析等により推定される情報及び燃料デブリの収 納、移送、保管シナリオを反映させた燃料デブリ取出し 工法の実現性評価等を踏まえて、号機ごとの燃料デブリ 取出し方針を決定する必要がある。 この方針を受け、号機ごとの特性を考慮した研究開発、 実機適用のためのエンジニアリングを行い、2018 年度上 半期の燃料デブリの取り出し方法確定、2021 年内の初号 機の燃料デブリ取出し開始を目指し取り組んでいく。 4.おわりに 福島第一原子力発電所 SFP 貯蔵燃料及び燃料デブリ 取出しに向けた現地工事、研究開発等では、技術研究組 合国際廃炉研究開発機構、東京電力ホールディングス株 式会社をはじめとする関係者、大学等の有識者の皆様に ご指導を頂いており、この場をお借りして御礼申し上げ ます。 東芝グループは、今後も福島復興に向け、安全、確実、 合理的、かつ迅速に、現場を踏まえたリスク低減に取り 組んでいきます。 参考文献 [1] http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/20131128_01.html 経済産業省,”東京電力福島第一原子力発電所 廃炉 対策推進会議/事務局会議(第10回),資料3-5 使 用済燃料プール対策「1F-3使用済燃料プール内大 - 472 - 型瓦礫撤去作業の開始について(東京電力株式会 社)」”,平成25年11 月28日,p4 [2] 東芝レビュー71巻3号「2015年の技術成果」 [3] http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2016/index-j.html 東京電力株式会社,““福島第一原子力発電所 3 号機 使用済燃料プール内からの燃料取り出しに向けて~ 燃料取扱機・クレーンメディア公開~““,2016 年 1 月18日,p12 [4] 浦西 敦義,““原子炉格納容器内 遠隔調査ロボット の開発““,電気評論,2015年11月号,p28-32 - 473 -“ “福島第一原子力発電所使用済燃料プール貯蔵燃料及び燃料デブリ取出しに向けた取り組み“ “東倉 一郎,Ichiro TOKURA,篠崎 史人,Fumihito SHINOZAKI,鈴木 淳,Jun SUZUKI,浦西 敦義,Atsuyoshi URANISHI,大和 正樹,Masaki YAMATO,宮本 哲昌,Akimasa MIYAMOTO
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