JAEA における核鑑識技術開発の取組み

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カテゴリ: 第13回
1.はじめに
核鑑識技術とは、核物質やその他の放射性物質に 含まれる不純物、粒子形状、同位体等の分析により、 その物質の出所・履歴・使用目的等を特定する手段 である。核テロリズムの脅威が高まる中、国際原子 力機関(IAEA)においては、核鑑識技術を、国家が 備えるべき核セキュリティ基盤の重要な構成要素と 位置付けている。我が国に関しては、2010 年の核セ キュリティサミットにおけるナショナルステートメ ントの中で、核鑑識技術開発を行い、その成果を国 際社会と共有することが述べられたことが端緒とな って、日本原子力研究開発機構(JAEA)における核 鑑識技術開発が開始された。 核セキュリティサミット(2010 年、ワシントン)
2. JAEA における核鑑識技術開発 JAEA では、平成 26 年度までに、核鑑識に必要な 基本的分析技術(1核物質の同位体比組成分析、2 核物質に含まれる不純物分析、3粒子形状分析、4 ウランの精製年代測定、5核鑑識ライブラリを用い - 65 - た属性評価手法)を開発し、その成果を国内外に発 信してきた。 また、核鑑識の国際比較試験や国際机上演習への 参加、および米国エネルギー省および欧州原子力共 同体の研究機関との共同研究の中で、確立した技術 についての検証を行ってきた。核鑑識の国際技術ワ ーキンググループである ITWG(Nuclear Forensics International Technical Working Group)は、加盟国の 核鑑識技術の向上を目的としたエクササイズを実施 している。4回目の開催となった CMX-4 (4th Collaborative Material Exercise) では、分析対象物質 が低濃縮ウラン(燃料ペレットと、その粉砕試料) であったため、試料輸送が比較的に容易であったこ とから、過去最高の 15 か国からの参加があった。 CMX-4 は、主催の ITWG によれば、核鑑識技術の向 上を目的としたエクササイズと説明されているが、 未知試料の分析結果に基づく核鑑識事象の解析を行 うため、ラウンドロビン(同一試料を複数の研究グ ループが測定し、結果を比較する試験)としての側 面を持つ。また、欧州および米国の国研等の核鑑識 分析に多くの実績を持つ研究機関と分析結果の照合 を行えるため、JAEA では CMX-4 を国際比較試験と して位置付けている。ウラン同位体比測定およびウ ラン年代測定については、高精度なデータを提出で きた。ITWG は、試料の分析技術を含むエクササイ ズの他に、データベースを使った属性評価手法に関 する机上演習も実施している。JAEA は、この机上 体制構築の必要性も強く認識されている。このため、 EU としての核鑑識対応体制に加えて、各国独自の 取組みも実施されている。また、2001 年の同時多発 テロを経験した米国においては、核テロ対策として、 関係省庁が連携した取り組みが実施されてきた。核 鑑識技術開発および体制構築を先導する欧州および 米国は、新規に取組を開始した国への支援も活発に 行っている。また、ウランの主要産出国であるカナ ダにおいては、2012 年に開始した、カナダ核鑑識能 力構築プロジェクトが成功しており、運用を視野に 入れたプロジェクト計画の有効性が示されている。 4. 核鑑識技術の維持および高度化 核鑑識技術は、国家が備えるべき核セキュリティ 基盤の重要な構成要素と位置付けられ、その必要性 は存在し続けるものの、我が国で核鑑識事象が発生 する可能性は低いことが予想されている。しかし、 フルスケールの核燃料サイクルを展開し、多くの原 子力施設を持つ国として、核鑑識技術開発への貢献 が期待されることは当然である。今後も、開発テー マの一つとして興味を持ち続け、新しい技術の取り 込みを含めた技術の高度化を図っていく必要がある。 - 66 - 演習にも参加し、高い解析能力を実証している。 3. 各国の核鑑識体制構築への取組み 核鑑識技術が、国家の核セキュリティ基盤の一つ として機能するためには、核鑑識技術を備えるだけ では不十分であり、核鑑識事象(核物質の押収等) に対する初動対応から、試料の分析と鑑定結果の報 告、裁判における証言を含めた、一連の核鑑識対応 体制を備えることが必要である。IAEA は対応体制 を整備するための指針を発行している。国境が近接 する欧州においては、核鑑識事象の発生頻度も高く、“ “JAEA における核鑑識技術開発の取組み “ “大久保 綾子,Ayako OOKUBO,木村 祥紀,Yoshiki KIMURA,篠原 伸夫,Nobuo SHINOHARA,玉井 広史,Hiroshi TAMAI,富川 裕文,Hirofumi TOMIKAWA,、臼田 重和,Shigekazu USUDA
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