多点分析技術による配管サポート異常の検出
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1.背景
日本保全学会では平成18年度以降「状態監視技術の高度化に関する調査検討分科会(CMT分科会)」を設置し、海外調査、文献調査、検証・確認試験等を通じて状態監視技術及び状態基準保全に対する様々な調査、検討を行 ってきた。 平成27年度(第5フェーズ2年目)は、多点分析、多変量解析手法を応用し、診断技術の高度化を図ることがテーマとなっている。 本研究は CMT 分科会における技術ワーキンググループの活動として行われたものであり、地震の前後等を想定し、配管のサポート状態の変化をセンサ信号から検出することを目的として行われたものである。
2.配管サポート異常模擬試験 2.1 試験条件 水試験ループにおいて、サポートの状態および配管内 圧力を様々に変化させてポンプの運転を行った。 Fig.1 に試験ループの模式図を示す。主要なサポートは 3 箇所あり、それぞれの近傍に振動加速度計が設置されて おり、運転時の振動データが同時に収録される。 Fig.1 Test Water Loop センサの測定条件をTable 1 に示す。 Table 1 Measurement condition Sampling Rate 20kHz Sampling Duration 10sec Number of sampling 10times / condition Support 3 Accelerometer 3 Support 2 Accelerometer 2 Support 2 Accelerometer 2 Support 1 Accelerometer 1 Pump Tank 試験条件(配管内圧力及びサポート状態)の一覧をTable 2に示す。 連絡先: 角皆学、〒110-0008 東京都台東区池之端 2-7-17井門池之端ビル7F、電話 03-5814-5350 E-mail:tsunokai@iiu.co.jp - 81 - 異常検知可能であった例の1つとしてTable 3の(1)のケ ースの特徴量のグラフをFig.2 に示す。 0.35 0.30 Threshold 0 1 N S1 2 S2 3 S34 5 Fig. 2 Vibration Velocity RMS (Accelerometer 3, Pressure :0.08MPa) 異常検知が不可能であった例の1つとしてTable 3の(2) のケースの特徴量のグラフをFig.3に示す。 0Fig. 3 Vibration Velocity RMS (Accelerometer 3, Pressure :0.4MPa) Table 3から分かるように、振動加速度計2 から得られ る特徴量は比較的異常の検出性が高く、振動速度RMS ま たは振動変位RMS では、圧力状態の違いによらずサポー トの異常を検出出来ている。 一方、振動加速度計 1 または振動加速度計 3 では、圧 力状態の違いによらず全てのサポート異常を検出可能な 特徴量が(評価した 3 種類のうちでは)存在せず、検出 性が低いと言える。 Similarity Based Modeling による評価 3 箇所のデータを複合的に分析すれば高精度な状態診 断が可能と考えられるが、実用的な観点から使用する振 動センサは少ない方が望ましいため、ここでは1つの振 動センサから複数の情報を抽出することで、診断精度の 向上が可能であるか検討する。 そこで1回のデータ収録(20kHz, 10秒間)で得られる信 号から振動加速度RMS、振動速度RMS、振動変位RMS の 3 つの特徴量を計算し、それらの組み合わせを 1 つの 特徴ベクトルとして定義する。(Fig.4) Table 2 Experimental Conditions Pressure ID Support Condition 0.08MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released Pressure ID Support Condition 0.2MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released Pressure ID Support Condition 0.4MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released 2.2 試験結果 単一特徴量による評価 まず、単一センサにおける単一特徴量からサポート状 態の変化が検出可能かどうかを評価した。特徴量として は振動診断において一般的に用いられる振動加速度RMS、 振動速度RMS、振動変位RMS の3 種類を評価した。評 価結果をまとめた表をTable 3に示す。なお取得信号は振 動加速度であるが、これを数値積分することにより振動 速度、振動変位に変換し、振動速度 RMS 及び振動変位 RMS を計算している。図中の○は、その特徴量により全 ての異常状態が検出可能であったことを示す。全ての異 常が検出可能とは、サポートが全て固定された状態(N)に おける特徴量から求められる閾値(平均値+3σ)に対し て、サポートを外した状態であるS1, S2, S3 全てにおける 特徴量がその閾値を上回っていることを意味する。 Table 3 Evaluation Results with Single Feature Value Feature Pressure Accelerometer 10.250.20.152:24:000.05014:24:00Threshold 0 1 N S1 2 S2 3 S34 5 - 82 - 0.50 0.40.30.20.1Accelerometer 3 Vibration Acceleration RMS Accelerometer 2 0.08MPa ○ ○ ○ 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ? ? Vibration Velocity RMS 0.08MPa ○ ○ ○(1) 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ○ ?(2) Vibration Displacement RMS 0.08MPa ○ ○ ? 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ○ ○ Fig.4 Definition of Feature Vector この特徴ベクトルの変化を評価することで、サポート 状態の変化が検出可能であるかどうかを評価する。ここ では評価法としてベクトルの類似度を評価する手法であ るSimilarity Based Modeling (SBM)を適用する。 SBM の原理[1]-[3] 正常時のある時刻 tiにおけるm個の物理量のセットを 1つの特徴ベクトル x(ti)とし、正常時のn個のベクトル からなる行列を正常時のモデルM(m×n 行列)とする。 M=[x(t1) x(t2) x(t3) ...x(tn)] (1) ここである時刻の物理量のセット(実測値) y を正常 時のモデルx(t1)?x(tn)の一次結合で再現することを考 え、x(ti)に係る重みwiを成分とするベクトルwを用いて、 再現ベクトル y? を式(2)のように定義する。 y? ≡ M ? w (2) このwを以下の式により求める。 w = v ∑ vj nj=1 (3) v = ?M, M??1 ? ?M,y? (4) なお、?A, B?はij成分がAのi番目の列ベクトルAi及び Bの j 番目の列ベクトルBjの類似度〈Ai,Bj〉で定義される 行列であり、同様に?A,b?はi成分がA のi番目の列ベク トルAi及びbの類似度〈Ai,b〉で定義されるベクトルであ る。 なお2つのベクトルの類似度〈a,b〉は(5)式を用いた。 〈a,b〉 ≡ 1 1+|a ? b| (5) (3)式でサンプルベクトルの係数wの成分の合計を1と する規格化を行っていることから、正常時のモデルx(t1) ?x(tn)が張る空間の部分空間のみ再現可能となり、その 部分空間から逸脱した場合を異常として評価することが Raw Data Feature Vector 可能となる。ここでは実測値と再現値の残差 r を(6)のよ Acceleration RMS うに定義し、異常の程度を示す指標とする。 Velocity RMS r ≡ |y ? y?| (6) Displacement RMS SBM による評価結果 200,000 samples それぞれのセンサ、圧力状態ごとに正常時データの半 数を用いて個別に正常時のモデルを作成し、残りのデー タを対応する正常時モデルと比較して残差 r を求めた結 果を Fig.5 に示す。図中の閾値は、(モデル作成に使用し ていない)正常時データの残差の平均値+3σである。 0.08MPa 1000Accelerometer 1 1000Accelerometer 2 Accelerometer 3 rl audiseR1000 100 1001001011010 Threshold 1Threshold 1Threshold 0.10.10.11000 0 0.2MPa N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 1000010001000 rl audiseR100 10 100 100 Threshold 10Threshold 10 Threshold 110 1 N S1 2 S2 3 S3 4 0.4MPa 50.10 1 N S1 2 S2 3 S3 4 15 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 10001000100r l audiseR100 10 10010Threshold Threshold 10 Threshold 1110.10 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 Fig. 5 Averaged Value of Residual Fig.5から分かるように、いずれの条件でもS1,S2,S3に おける残差rは閾値を上回っており、全てのサポート異常 を検出可能となっており、単一特徴量の評価結果と比較 して明確に異常の検出性が向上した。 次に 3 つの異なる圧力状態を 1 つの状態とみなし、そ れぞれの圧力状態の正常データを含めて正常時モデルを 作成し、残りのデータを評価した結果をFig.6に示す。 0.01Fig. 6 Averaged Value of Residual (Pressure Difference Ignored) この場合も、いずれのセンサを用いた場合でも全ての 異常を検出出来ており、運転状態に変動がある場合にも 適用可能な手法であることを示している。 Accelerometer 1 Accelerometer 2 Accelerometer 3 100.00 10110r l audiseR1.00 Threshold Threshold Threshold 0.01 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 50 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 - 83 - 10.10.10 0.10 0.013 SBM による状態の特定 まとめ 正常時モデルだけでなく、各サポート異常状態で作成 地震前後等における配管サポート状態の変化を検 したモデルとベクトルの類似性を比較することで、異常 出する手法を検討するため、ポンプ運転状態及びサポ 原因の特定が可能になると考えられる。ここでは正常時 ート状態を様々に変化させる試験を行った。振動加速 のモデル作成同様、各サポート異常状態における測定デ 度計の RMS 等の単一指標を用いた場合、設置箇所に ータの半分をその異常状態のモデルデータとし、その他 よっては異常を検知できない結果となったが、振動波 の測定データを評価対象として異常原因の特定手法とし 形から複数の特徴量を抽出し、これを特徴ベクトルと ての有効性を検証する。 して正常時からの変化を SBM を用いて評価すること 圧力3 通り×サポート状態4 通り=計12 条件について で、振動加速度計の設置箇所によらず異常検知可能と データの半数を使用してモデルを作成し、残りのデータ なった。また、異なる圧力状態を含めて正常時モデル のそれぞれのモデルに対する類似度を評価した結果を を作成した場合にも異常の検知が可能であり、運転状 Fig.7に示す。なおFig.7は振動加速度計1の場合であり、 態が変動する場合にも適用可能な手法であることが示 類似度は残差r の逆数として定義している。、また類似度 された。さらに異常時のデータからモデルを作成する は1 を超える場合もあるが、Fig.7 では縦軸の範囲を1ま ことで、異常状態の特定も可能であることが示された。 でとして表示している。 以上から本手法は配管サポートの状態を評価する有効 図から分かるように、各評価対象データは、それに対 な手法であると言える。 応するモデルとの類似度が最も高い結果となっており、 状態の特定が可能であることを示している。 参考文献 [1] Stephan W. Wegerich, Robert M. Pipke, "Nonparametric Accelerometer1 Evaluation Target No. Modeling of Vibration Signal Features for Equipment 0.08MPa N S1 NO. 1 21 y tiralimiS0.50 1 0.57Health Monitoring" Aerospace Conference, 2003. S2 3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 S3 4 Comparison Model No. Proceedings. 2003 IEEE (Volume:7 ) 0.2MPa N 5 S1 6 08[2] Stephan W. Wegerich, " Similarity Based Modeling of 0 S2 7 S3 8 0.4MPa N 9 S1 10 10ytiralimiS0.52Time Synchronous Averaged Vibration Signals for 39Machinery Health Monitoring" Aerospace Conference, S2 11 S3 12 4102004. Proceedings. 2004 IEEE (Volume:6 ) [3] Stephan Wegerich " Similarity Based Modeling of 511Vibration Features for Fault Detection and Identification" Sensor Review, Vol. 25, No. 2. (February 2005), pp. 612114-122 Fig.7 Averaged Similarity to each model - 84 - 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ytiralimiS0 ytiralimiSytiralimiSy tiralimiS1 0.51 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.51 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 10.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
日本保全学会では平成18年度以降「状態監視技術の高度化に関する調査検討分科会(CMT分科会)」を設置し、海外調査、文献調査、検証・確認試験等を通じて状態監視技術及び状態基準保全に対する様々な調査、検討を行 ってきた。 平成27年度(第5フェーズ2年目)は、多点分析、多変量解析手法を応用し、診断技術の高度化を図ることがテーマとなっている。 本研究は CMT 分科会における技術ワーキンググループの活動として行われたものであり、地震の前後等を想定し、配管のサポート状態の変化をセンサ信号から検出することを目的として行われたものである。
2.配管サポート異常模擬試験 2.1 試験条件 水試験ループにおいて、サポートの状態および配管内 圧力を様々に変化させてポンプの運転を行った。 Fig.1 に試験ループの模式図を示す。主要なサポートは 3 箇所あり、それぞれの近傍に振動加速度計が設置されて おり、運転時の振動データが同時に収録される。 Fig.1 Test Water Loop センサの測定条件をTable 1 に示す。 Table 1 Measurement condition Sampling Rate 20kHz Sampling Duration 10sec Number of sampling 10times / condition Support 3 Accelerometer 3 Support 2 Accelerometer 2 Support 2 Accelerometer 2 Support 1 Accelerometer 1 Pump Tank 試験条件(配管内圧力及びサポート状態)の一覧をTable 2に示す。 連絡先: 角皆学、〒110-0008 東京都台東区池之端 2-7-17井門池之端ビル7F、電話 03-5814-5350 E-mail:tsunokai@iiu.co.jp - 81 - 異常検知可能であった例の1つとしてTable 3の(1)のケ ースの特徴量のグラフをFig.2 に示す。 0.35 0.30 Threshold 0 1 N S1 2 S2 3 S34 5 Fig. 2 Vibration Velocity RMS (Accelerometer 3, Pressure :0.08MPa) 異常検知が不可能であった例の1つとしてTable 3の(2) のケースの特徴量のグラフをFig.3に示す。 0Fig. 3 Vibration Velocity RMS (Accelerometer 3, Pressure :0.4MPa) Table 3から分かるように、振動加速度計2 から得られ る特徴量は比較的異常の検出性が高く、振動速度RMS ま たは振動変位RMS では、圧力状態の違いによらずサポー トの異常を検出出来ている。 一方、振動加速度計 1 または振動加速度計 3 では、圧 力状態の違いによらず全てのサポート異常を検出可能な 特徴量が(評価した 3 種類のうちでは)存在せず、検出 性が低いと言える。 Similarity Based Modeling による評価 3 箇所のデータを複合的に分析すれば高精度な状態診 断が可能と考えられるが、実用的な観点から使用する振 動センサは少ない方が望ましいため、ここでは1つの振 動センサから複数の情報を抽出することで、診断精度の 向上が可能であるか検討する。 そこで1回のデータ収録(20kHz, 10秒間)で得られる信 号から振動加速度RMS、振動速度RMS、振動変位RMS の 3 つの特徴量を計算し、それらの組み合わせを 1 つの 特徴ベクトルとして定義する。(Fig.4) Table 2 Experimental Conditions Pressure ID Support Condition 0.08MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released Pressure ID Support Condition 0.2MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released Pressure ID Support Condition 0.4MPa N All supports fixed S1 Support1released S2 Support 1 and 2 released S3 Support 1, 2 and 3 released 2.2 試験結果 単一特徴量による評価 まず、単一センサにおける単一特徴量からサポート状 態の変化が検出可能かどうかを評価した。特徴量として は振動診断において一般的に用いられる振動加速度RMS、 振動速度RMS、振動変位RMS の3 種類を評価した。評 価結果をまとめた表をTable 3に示す。なお取得信号は振 動加速度であるが、これを数値積分することにより振動 速度、振動変位に変換し、振動速度 RMS 及び振動変位 RMS を計算している。図中の○は、その特徴量により全 ての異常状態が検出可能であったことを示す。全ての異 常が検出可能とは、サポートが全て固定された状態(N)に おける特徴量から求められる閾値(平均値+3σ)に対し て、サポートを外した状態であるS1, S2, S3 全てにおける 特徴量がその閾値を上回っていることを意味する。 Table 3 Evaluation Results with Single Feature Value Feature Pressure Accelerometer 10.250.20.152:24:000.05014:24:00Threshold 0 1 N S1 2 S2 3 S34 5 - 82 - 0.50 0.40.30.20.1Accelerometer 3 Vibration Acceleration RMS Accelerometer 2 0.08MPa ○ ○ ○ 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ? ? Vibration Velocity RMS 0.08MPa ○ ○ ○(1) 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ○ ?(2) Vibration Displacement RMS 0.08MPa ○ ○ ? 0.2MPa ? ○ ? 0.4MPa ○ ○ ○ Fig.4 Definition of Feature Vector この特徴ベクトルの変化を評価することで、サポート 状態の変化が検出可能であるかどうかを評価する。ここ では評価法としてベクトルの類似度を評価する手法であ るSimilarity Based Modeling (SBM)を適用する。 SBM の原理[1]-[3] 正常時のある時刻 tiにおけるm個の物理量のセットを 1つの特徴ベクトル x(ti)とし、正常時のn個のベクトル からなる行列を正常時のモデルM(m×n 行列)とする。 M=[x(t1) x(t2) x(t3) ...x(tn)] (1) ここである時刻の物理量のセット(実測値) y を正常 時のモデルx(t1)?x(tn)の一次結合で再現することを考 え、x(ti)に係る重みwiを成分とするベクトルwを用いて、 再現ベクトル y? を式(2)のように定義する。 y? ≡ M ? w (2) このwを以下の式により求める。 w = v ∑ vj nj=1 (3) v = ?M, M??1 ? ?M,y? (4) なお、?A, B?はij成分がAのi番目の列ベクトルAi及び Bの j 番目の列ベクトルBjの類似度〈Ai,Bj〉で定義される 行列であり、同様に?A,b?はi成分がA のi番目の列ベク トルAi及びbの類似度〈Ai,b〉で定義されるベクトルであ る。 なお2つのベクトルの類似度〈a,b〉は(5)式を用いた。 〈a,b〉 ≡ 1 1+|a ? b| (5) (3)式でサンプルベクトルの係数wの成分の合計を1と する規格化を行っていることから、正常時のモデルx(t1) ?x(tn)が張る空間の部分空間のみ再現可能となり、その 部分空間から逸脱した場合を異常として評価することが Raw Data Feature Vector 可能となる。ここでは実測値と再現値の残差 r を(6)のよ Acceleration RMS うに定義し、異常の程度を示す指標とする。 Velocity RMS r ≡ |y ? y?| (6) Displacement RMS SBM による評価結果 200,000 samples それぞれのセンサ、圧力状態ごとに正常時データの半 数を用いて個別に正常時のモデルを作成し、残りのデー タを対応する正常時モデルと比較して残差 r を求めた結 果を Fig.5 に示す。図中の閾値は、(モデル作成に使用し ていない)正常時データの残差の平均値+3σである。 0.08MPa 1000Accelerometer 1 1000Accelerometer 2 Accelerometer 3 rl audiseR1000 100 1001001011010 Threshold 1Threshold 1Threshold 0.10.10.11000 0 0.2MPa N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 1000010001000 rl audiseR100 10 100 100 Threshold 10Threshold 10 Threshold 110 1 N S1 2 S2 3 S3 4 0.4MPa 50.10 1 N S1 2 S2 3 S3 4 15 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 10001000100r l audiseR100 10 10010Threshold Threshold 10 Threshold 1110.10 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 Fig. 5 Averaged Value of Residual Fig.5から分かるように、いずれの条件でもS1,S2,S3に おける残差rは閾値を上回っており、全てのサポート異常 を検出可能となっており、単一特徴量の評価結果と比較 して明確に異常の検出性が向上した。 次に 3 つの異なる圧力状態を 1 つの状態とみなし、そ れぞれの圧力状態の正常データを含めて正常時モデルを 作成し、残りのデータを評価した結果をFig.6に示す。 0.01Fig. 6 Averaged Value of Residual (Pressure Difference Ignored) この場合も、いずれのセンサを用いた場合でも全ての 異常を検出出来ており、運転状態に変動がある場合にも 適用可能な手法であることを示している。 Accelerometer 1 Accelerometer 2 Accelerometer 3 100.00 10110r l audiseR1.00 Threshold Threshold Threshold 0.01 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 0 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 50 N 1 S1 2 S2 3 S3 4 5 - 83 - 10.10.10 0.10 0.013 SBM による状態の特定 まとめ 正常時モデルだけでなく、各サポート異常状態で作成 地震前後等における配管サポート状態の変化を検 したモデルとベクトルの類似性を比較することで、異常 出する手法を検討するため、ポンプ運転状態及びサポ 原因の特定が可能になると考えられる。ここでは正常時 ート状態を様々に変化させる試験を行った。振動加速 のモデル作成同様、各サポート異常状態における測定デ 度計の RMS 等の単一指標を用いた場合、設置箇所に ータの半分をその異常状態のモデルデータとし、その他 よっては異常を検知できない結果となったが、振動波 の測定データを評価対象として異常原因の特定手法とし 形から複数の特徴量を抽出し、これを特徴ベクトルと ての有効性を検証する。 して正常時からの変化を SBM を用いて評価すること 圧力3 通り×サポート状態4 通り=計12 条件について で、振動加速度計の設置箇所によらず異常検知可能と データの半数を使用してモデルを作成し、残りのデータ なった。また、異なる圧力状態を含めて正常時モデル のそれぞれのモデルに対する類似度を評価した結果を を作成した場合にも異常の検知が可能であり、運転状 Fig.7に示す。なおFig.7は振動加速度計1の場合であり、 態が変動する場合にも適用可能な手法であることが示 類似度は残差r の逆数として定義している。、また類似度 された。さらに異常時のデータからモデルを作成する は1 を超える場合もあるが、Fig.7 では縦軸の範囲を1ま ことで、異常状態の特定も可能であることが示された。 でとして表示している。 以上から本手法は配管サポートの状態を評価する有効 図から分かるように、各評価対象データは、それに対 な手法であると言える。 応するモデルとの類似度が最も高い結果となっており、 状態の特定が可能であることを示している。 参考文献 [1] Stephan W. Wegerich, Robert M. Pipke, "Nonparametric Accelerometer1 Evaluation Target No. Modeling of Vibration Signal Features for Equipment 0.08MPa N S1 NO. 1 21 y tiralimiS0.50 1 0.57Health Monitoring" Aerospace Conference, 2003. S2 3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 S3 4 Comparison Model No. Proceedings. 2003 IEEE (Volume:7 ) 0.2MPa N 5 S1 6 08[2] Stephan W. Wegerich, " Similarity Based Modeling of 0 S2 7 S3 8 0.4MPa N 9 S1 10 10ytiralimiS0.52Time Synchronous Averaged Vibration Signals for 39Machinery Health Monitoring" Aerospace Conference, S2 11 S3 12 4102004. Proceedings. 2004 IEEE (Volume:6 ) [3] Stephan Wegerich " Similarity Based Modeling of 511Vibration Features for Fault Detection and Identification" Sensor Review, Vol. 25, No. 2. (February 2005), pp. 612114-122 Fig.7 Averaged Similarity to each model - 84 - 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ytiralimiS0 ytiralimiSytiralimiSy tiralimiS1 0.51 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.51 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 10.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 110.50.50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12