維持基準の策定状況

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カテゴリ: 第1回
1.はじめに
2.維持規格の策定状況原子力発電設備の安全性と信頼性を確保す 日本機械学会では 1999年3月に維持規格分 る上で、設計建設基準と維持基準の両者を確立 科会を原子力専門委員会傘下の分科会として することが重要である。わが国では設計建設基設置して維持規格の検討を開始した。検討は発 準については、ASME Code Section IIIに対応し 電技検の POMS 原案を参考に行われ、まず、ク た通産省告示 501号が制定され用いられてきた ラス1容器・配管の欠陥評価規定を策定し 2000 が、設備の維持基準については、供用期間中検2年5月に維持規格[31として発行した。日本機械 査の基準が日本電気協会規程[1]として策定さ 学会での規格策定にいたるまでには、POMS 原 れていただけで、ASME Code Section XI に対応 案を告示 501 号に直接取り込む検討もなされた する欠陥評価基準や補修・取替基準は策定されが、そのまま国の基準に取り込むよりは民間規 ておらず、告示 501 号が運転開始後の構造維持格として規定しそれを引用し、民間規格は機動 基準としても適用されてきた。1980年代の半ば 的に改訂、追加を行うほうが望ましいとの判断 から日本でも欠陥評価基準を策定すべきとのがなされたのである。また、POMS 原案は各分 機運が高まり、ASME Code Meeting に出席し情 野の専門家が集まって検討されたものではあ 報の収集をする一方、日本の材料データを用いるが非公開の委員会で議論されたものである た亀裂進展評価や破壊評価の検討も行われ、発 こと、ASME との著作権の問題も民間の学会同 電設備技術検査協会において実施された国か士で処置することが合理的と判断されたこと らの受託調査の中で維持基準として検討され も背景にはあったと考えられる。 整理された[2]。この中では、欠陥評価基準だ 日本機械学会では公平な検討メンバー (大学、 けでなく、供用期間中検査の基準の改訂案も議 研究機関、産業界等の専門家がそれぞれ一定の 論された他、補修・取替の基準についても検討割合で参加)によって構成され公開された委員 され、現在の維持規格の原点とも言うべき維持会の場で審議を行い、書面投票、公衆審査など 基準原案(POMS 原案)が策定されている。 の手続きを経て、公平性、公正性、公開性を重ここではその後の維持規格の策定の経緯、国視したプロセスで民間規格の策定活動が行わ による技術評価の状況等について紹介すると れている。これには、学会が民間規格の策定に ともに、今後の課題について私なりの考えを述 おいて中心的な役割を演じるべきとしてその べることとしたい。構想を示した「21 世紀の原子力社会について議
| OS5-2 |した結果、実現したものである。また、この 早急に取り組むべき課題として、その妥当性を 言の中では、現在の規制の大きな流れとなっ 評価して健全性評価制度に用いるべく、2002 年 いる規制基準の性能規定化と民間基準の引 12 月から基準評価 WG において技術評価が行 につながる考え方も示しており、現在の規格 われた。ここでの技術評価は 2003 年6月には 準の活動に対して大きな指標となっている。 原子炉安全小委員会に報告[6]され、引き続き、 維持規格はその後、日本電気協会の規程であ 2003年5月から行われていた検査技術評価 WG た供用期間中検査の基準を取り込み、さらに、 での維持規格の第2版の技術評価もその結果 ュラウド、シュラウドサポートの検査評価基 7]が 2003年9月に報告され、ともに、2003年 を盛り込んで 2002 年 10月に第2版[4]として10月から規制基準に引用されることとなり、実 行されている。また、現在、補修・取替の基機の健全性評価に適用されている。 を加え、さらに、バッフルフォーマボルト等その後も、2003 年 10 月の維持規格引用の際 炉内構造物の検査基準、欠陥評価基準を盛り に除外されていた、BWR 再循環系配管に対す んだ第3版を策定しており、日本機械学会の る欠陥評価基準についても、基準評価 WG 及び 格委員会での議論を終え公衆審査を行って。 検査技術評価 WG において審議が行われ、この 論する会準備会」(朝田東京大学名誉教授他) の提言があって、それを実現すべく関係者が努 力した結果、実現したものである。また、この 提言の中では、現在の規制の大きな流れとなっ ている規制基準の性能規定化と民間基準の引 用につながる考え方も示しており、現在の規格 基準の活動に対して大きな指標となっている。 - 維持規格はその後、日本電気協会の規程であ った供用期間中検査の基準を取り込み、さらに、 シュラウド、シュラウドサポートの検査評価基 準を盛り込んで 2002 年 10月に第2版[4]として 発行されている。また、現在、補修・取替の基 準を加え、さらに、バッフルフォーマボルト等 の炉内構造物の検査基準、欠陥評価基準を盛り 込んだ第3版を策定しており、日本機械学会の 規格委員会での議論を終え公衆審査を行って いるところであり、年内発行を目指している (図1参照)。また、ASME でいうコードケー スに相当するものとして日本機械学会では事 例規格という名の規格を発行することとして おり、維持規格としては最初の事例規格として、 高ニッケル合金の亀裂進展評価曲線について 規格委員会での議論を終え公衆審査を行って 検査技術評価 WGにおいて審議が行われ、こ いるところであり、年内発行を目指している 6月の原子炉安全小委員会に技術評価結果が (図1参照)。また、ASME でいうコードケー 告され、現在、公衆審査に付されている。 スに相当するものとして日本機械学会では事 今後も民間規格は国の技術評価を受け規 例規格という名の規格を発行することとして 基準に引用されることになるが、維持規格の おり、維持規格としては最初の事例規格として、 野の規格については図2に示すような規格が 高ニッケル合金の亀裂進展評価曲線について。 定されている、もしくは策定が計画されていこの図では国に引用される民間規格のほか、 2004年版(作成中)主運用規格と考えられる規格についても示 ているが、これは民間規格のすべてが規制対 となるものではなく、事業者もしくは設計者 のガイドライン的な標準・指針とも言うべき置付けのものが存在し、これらは国による技 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー12評価を要しないと考えられるものがあるこ :--:-::::2002年版検査標準檢?炉内構造物會別檢?BWR炉内構造物」 |(シュラウド・シュラウドサポート)2000年版欠陥評価クラス1機器(容器・管)10002004年版(作成中) 2002年版検査標準檢??構造個別檢?BWR炉内構造物 |(シュラウド・シュラウドサポート)2000年版ほ欠館評クラス1機器(容器・管)疲労評価クラス2, 3機器(管))減肉評価」ぎ.一・ー・ー・補修・取替規定した事例規格も平行して策定し、公衆審査 中である。 中である。図1 日本機械学会維持規格の全体体系こ策 要 評待ら3.維持規格の規制基準への引用国は原子炉安全小委員会の基準化戦略 WGの 提言[5]をもとに、最新知見や新技術の迅速な反 映を可能とするべく、国の技術基準などの規制 基準を性能規定化し、学協会で作成された民間 規格を規制要求に対応した詳細規格として活、学協会で作成された民間 対応した詳細規格として活-122用することを推進している。維持規格について は、国の技術基準の性能規定化ができるまでに 早急に取り組むべき課題として、その妥当性を 評価して健全性評価制度に用いるべく、2002 年 12 月から基準評価 WG において技術評価が行 われた。ここでの技術評価は 2003 年6月には 原子炉安全小委員会に報告[6]され、引き続き、 2003年5月から行われていた検査技術評価 WG での維持規格の第2版の技術評価もその結果 [7が 2003年9月に報告され、ともに、2003 年 10月から規制基準に引用されることとなり、実 機の健全性評価に適用されている。その後も、2003年 10月の維持規格引用の際 に除外されていた、BWR 再循環系配管に対す る欠陥評価基準についても、基準評価 WG 及び 検査技術評価 WG において審議が行われ、この 6月の原子炉安全小委員会に技術評価結果が報 告され、現在、公衆審査に付されている。今後も民間規格は国の技術評価を受け規制 基準に引用されることになるが、維持規格の分 野の規格については図2に示すような規格が策 定されている、もしくは策定が計画されている。 この図では国に引用される民間規格のほか、自 主運用規格と考えられる規格についても示し ているが、これは民間規格のすべてが規制対象 となるものではなく、事業者もしくは設計者等 のガイドライン的な標準・指針とも言うべき位 置付けのものが存在し、これらは国による技術 評価を要しないと考えられるものがあること を示している。また、技術評価を要する規格で あっても、民間規格が学協会という透明性のあ る場で専門家の議論を経て策定されたもので あることから繰り返し純技術的な審査をする ことは重複であり、国による技術評価は規格の 策定プロセスの確認と、規制に使用する上で必 要な事項が適切に規定されているかを対象に 評価を行うべきであり、技術評価の高度化が期 待されるものである。さらに、図に示されるよ うに、現在は維持規格に関する規格は日本機械 学会と日本電気協会の両方に存在するが、将来 的には構造強度に関する規格は日本機械学会 に移行し、運用に関する規格は日本電気協会で 策定することが計画されている。ただ、当面の 間は検査関連の詳細規定については日本電気規制基準国に引用される民間規格 <自主運用規格(経済産業省)維持規格 2002年版配管における 高サイクル熱疲労」評価基準(維持規格分科会)省令62号 発電用原子力施設の技術基準日本機械学会供用期間中検査における 超音波探傷試験指針 JEAG4207-2000原子炉構造材の 監視試驗方法 JEAC4201-2000原子力用機器に対する 破壊靱性の確認試験方法」JEAC4206-2000超音波探傷檢?能力認定規格 SG伝熱管の供用期間中検査 における渦流探傷試験指針JEAG4207-2000日本電気協会(構造分科会)原子炉格納容器の漏えい試験 規程 JEAC4203-1994(構造分科会)省令77号 電気事業法施行規則原子力発電所の 保守管理規程 JEAC4209-2003軽水型原子力発電所の運転保守指針 JEAG4803-1999(運転保守分科会)原子力発電所における 保守管理に関する リスク情報活用指針注)実線は現存するもの. 波線は準備中のもの協会の構造分科会で規格策定が行われる予定 であり、最近話題になっている超音波探傷検査 能力認定規格、いわゆる PD 規格も日本電気協 会で策定されつつある。図2 規制基準・民間規格体系図(維持規格関係)協会の構造分科会で規格策定が行われる予定 - いて数年にわたって議論された成男 であり、最近話題になっている超音波探傷検査 されたものであることを忘れてはな 能力認定規格、いわゆる PD 規格も日本電気協 た、POMS 原案における議論が維持 会で策定されつつある。となっていることは述べたとおりで もこのような前広で充実した議論、である。また、さらにその前段階と 4.今後の課題的なバックデータを取得するため 維持規格については現在策定中の補修・取替 の実施が不可欠であり、先を見通し の基準が完成することにより、検査、欠陥評価、の計画、実施が望まれる。 補修・取替の3つの骨格がそろうことになり、 また、これまでの維持規格がそう る超音波探傷検査されたものであることをされたものであることを忘れてはならない。ま 規格も日本電気協 た、POMS 原案における議論が維持規格のもととなっていることは述べたとおりであり、今後 もこのような前広で充実した議論、蓄積が必要 である。また、さらにその前段階として、技術的なバックデータを取得するための試験研究 定中の補修・取替 の実施が不可欠であり、先を見通した試験研究 、検査、欠陥評価、 の計画、実施が望まれる。 一ろうことになり、 また、これまでの維持規格がそうであったよ より更なる充実がうに、今後も ASME Code Meeting での審議事 の発行形態につい 項が改訂の参考になることは疑いようがなく、 までは検査編、補 国による維持規格の技術評価の中でも、継続的 加に伴って、それ、 な情報の収集、反映検討が望まれることが指摘 改訂版の形で発行されている。現在、ASME Code Meeting では 口部分のみで審議、 Section XI の Subcommittee の2人をはじめ、傘 ASME のように1 下の Working Group等で日本機械学会の維持規 らいごとの Edition 格分科会の委員が中心となって、延べ8人の日えられる。また、 本人が正規の委員となって参加し ASME 規格 えてくることが予 策定の一翼を担っている。ASME も日本からの しての発行形態に 貢献を高く評価し、今後も更なる議論への参加、情報の提供、作業の分担を期待している。今後 ては、その技術的もASME との協力関係を維持し、日本の維持規 不可欠である。例 格への反映が行われていくことが期待されて 第3版で炉内構造いる。 実されているが、 一方では、規格策定には膨大な時間がかかり 技術協会において、 個人に対する負担も大きいため、参加する委員 平価ガイドライン に対する所属する組織の理解、評価が必要であ 学名誉教授)におり、また、ASME のように規格策定者に対する- 維持規格については現在策定中の補修・取替 の基準が完成することにより、検査、欠陥評価、 補修・取替の3つの骨格がそろうことになり、 今後はこれらの改訂、追加により更なる充実が 図られることとなるが、規格の発行形態につい て検討する必要がある。今までは検査編、補 修・取替編と大きな基準の追加に伴って、それ ぞれ第2版、第3版と全体を改訂版の形で発行 してきたが、今後は改訂、追加部分のみで審議、 承認されることから、規格は ASME のように1 年ごとの Addenda や 3年くらいごとの Edition の形で発行することなどが考えられる。また、 事例規格としての発行も増えてくることが予 想され、日本機械学会規格としての発行形態に ついて検討する必要がある。 1規格の修正、追加にあたっては、その技術的 な根拠を準備していることが不可欠である。例 えば、維持規格では第2版、第3版で炉内構造 物の検査規定、評価規定が充実されているが、 その根拠は、火力原子力発電技術協会において 組織された炉内構造物検査評価ガイドライン| 検討会(委員長・朝田東京大学名誉教授)にお 構造物検査評価ガイドラインに対する所属する組織の理解、評価が必要であ ・朝田東京大学名誉教授)におり、また、ASME のように規格策定者に対する-1233]が反映 いて数年にわたって議論された成果[8]が反映 されたものであることを忘れてはならない。ま た、POMS 原案における議論が維持規格のもと となっていることは述べたとおりであり、今後 もこのような前広で充実した議論、蓄積が必要 である。また、さらにその前段階として、技術 的なバックデータを取得するための試験研究 の実施が不可欠であり、先を見通した試験研究 の計画、実施が望まれる。また、これまでの維持規格がそうであったよ うに、今後も ASME Code Meeting での審議事 項が改訂の参考になることは疑いようがなく、 国による維持規格の技術評価の中でも、継続的 な情報の収集、反映検討が望まれることが指摘 されている。現在、ASME Code Meeting では Section XI の Subcommittee の2人をはじめ、傘 下の Working Group 等で日本機械学会の維持規 格分科会の委員が中心となって、延べ8人の日 本人が正規の委員となって参加し ASME 規格 策定の一翼を担っている。ASME も日本からの 貢献を高く評価し、今後も更なる議論への参加、 情報の提供、作業の分担を期待している。今後 も ASME との協力関係を維持し、日本の維持規 格への反映が行われていくことが期待されて を維持し、 いくこと いる。一方では、規格策定には膨大な時間がかかり 個人に対する負担も大きいため、参加する委員 に対する所属する組織の理解、評価が必要であ り、また、ASME のように規格策定者に対する社会的評価が向上していくことが期待される。 また、直接的なメリットが見えにくい大学など 学界からの参加者に対するインセンティブに ついても今後考慮されなければならないと思 われる。 - 以上のように、民間規格としての維持規格の 策定は未だその道半ばであり、今後もその維持、 充実のために検討していくべきことは山積し ており、日本保全学会をはじめ各界からの参加、 協力に期待したい。参考文献 [1] “電気技術規程 軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査”、JEAC 4205-2000、日本電気協会、2000. [2]“原子力プラント機器高度安全化対策技術事業報告書「健全性確保及び維持に係る技術等の調査”、発電設備技術検査協会、2003. [3] “発電用原子力設備規格 維持規格”、JSMESNA-1 2000、日本機械学会、2000. [4] “発電用原子力設備規格 維持規格(2002 年改訂版)”、JSME S NA-1 2002、日本機械学会、 2002. [5] “原子力発電施設の技術基準の性能規定化と民間規格の活用に向けて”、原子炉安全小委 員会、2002年7月22日. [6] “日本機械学会「維持規格 (JSME S NA1-2000)」に関する技術評価書”、原子力安全・保安院、2003年6月12日. 「7“日本機械学会「維持規格 (JSME SNA1-2002)」に関する技術評価書”、原子力安全・保安院、2003年9月10日. [8] 山下裕宣他、“軽水炉炉内構造物の点検評価ガイドラインの体系化”、フォーラム保全学、Vol.1、No.1、日本保全学会、2002. -124“ “維持基準の策定状況 “ “野村 友典,Tomonori NOMURA“ “維持基準の策定状況 “ “野村 友典,Tomonori NOMURA
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