リスクインフォームド規格基準の策定における課題
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カテゴリ: 第1回
1.序
題点 1. 本稿では、我が国が導入しようとしている原 最良 子力発電へのリスクインフォームド規制につ。 いて、関連規格基準策定における課題について 述べる。リスクインフォームド規制とは、原子 一位 力の安全規制上の判断において、従来の決定論 的評価の知見と相互補完しつつ確率論的リス ク評価(Probabilistic Risk Assessment, PRA) して の知見を活用することによって安全重要度の い方 高い分野に重点的に規制資源を配分するとい 国に う規制体系である。これにより、安全規制の効, 組み 率化と事業者の不要な規制負担削減をねらい としている。米国原子力安全規制委員会(US_漠名 Nuclear Regulatory Commission, USNRC) は、 き見 1995年の政策声明でこのリスクインフォーム ド規制の実施を表明し[1]、その後リスクインフ ォームド規制実施計画を策定して規制体系の自作 整備を進めている[2]。近年、米国の原子力発電 が高い稼働率を達成しているその背景には、こ のリスクインフォームド規制に代表される規 制活動の効率化が大きな役割を占めている。一般に、米国の規制活動や事業者活動のやり 方には、現行の施策とその効果を絶えず監視下 におき、不合理あるいは不適切と思われる点が あれば、集中的な調査検討によって具体的な問 題点を把握して、それらに対応する適切な解決 措置をとる、という慣習がある(これはまさに 品質保証におけるPDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルである)。米国でのリスクイン フォームド規制の施策(適用先)は、まずそう
いったプロセスを通じて浮き彫りにされた問 題点の現状認識があり、それを解決するための 最良の方法を検討した結果、PRA 知見の応用に 行き着いた、と見ることができる。米国の実績に学ぶとすれば、まず我が国では 一体何をどう合理化・是正したいのか、具体的 な現状の問題点と解決の道筋を明確に把握す ることが必要である。そのような現状把握を通 してのみリスク評価の方法やリスク知見の使 い方が特定されていくはずである。現在の我が 国におけるリスクインフォームド手法の取り 組みは、そのようなプロセスとは逆の方向で進 んでいる。リスクインフォームド手法に対する 漠然とした期待感が先行し、我が国で解決すべ き問題や要因を把握しないまま、具体的適用先 をただ試行錯誤しているのみである。これでは、 「リスクインフォームド手法」を実施すること 自体が目的となり、そのような単なる儀礼的な リスク評価結果は本質的な判断根拠にもなら ず、そのうち事業者にとっては多大なる負担と 化してしまう恐れがある。 * 実効的なリスクインフォームド規制導入と するためには、現行原子力規制の問題点の把握 とそれを裏打ちする詳細な調査研究、そして解 決へ向けての明確な道筋の立案が必要不可欠 である。以下では、いくつかの米国リスクイン フォームドアプリケーションを、「問題点把握 と解決」という観点から捉えて我が国導入への 参考としたい。2.米国リスクインフォームドアプリケー米国リスクインフォションの背景と取り組み PRA の安全規制への応用は、「リスクインフ ォームドアプリケーション」という呼称が使わ れる以前から、1988年の個別プラント評価 (Individual Plant Examinations, IPE) に おける苛酷事故脆弱性評価などの例がある[3]。 しかし、ここでは、1995 年政策声明以後に実 施されたいくつかの代表的なアプリケーショ ンに絞って、米国原子力産業における問題提起 のアプローチの仕方を調べることにする。2.1 配管のリスクインフォームド供用期間中検査 米国の原子力配管の供用期間中検査は、連邦 規則 10CFR50.55a において米国機械学会 (ASME) Section XI の規格に従うよう定め られている。この規格は、設計条件の応力が高 い部位が疲労により割れるという状況を想定 して決められているが、原子力発電所の運転が 開始すると、そのように想定した部位ではほと んど破損が発生せず、その代わりに腐食・浸食 や応力腐食割れという環境要因により破損す る事例が多発するようになった。従来の検査方 法ではこれらの破損を検知することができな いため、NRC では、追加検査プログラムを策 定して、各発電所にこれを実施するよう要求し ている(例えば[4]-[6])。 - このように、設計条件から決められた検査箇 所・破損メカニズムと実際の破損部位・メカニ ズムとの乖離が大きな問題となってきたとき、 ASME では作業会を設置し、実態把握のための 詳細な調査を実施している[7]。この公開調査結 果は、その後 ASME を中心に展開されるコー ドケース策定においてリスクベースによる代 替 ISI 手法開発の出発点となった。また、代替 手法の開発に必要な、産業界大のメカニズム別 破損実態調査が EPRI で実施され[8]、リスクベ ース ISI に必要な配管破損メカニズム別の破断 可能性(確率)評価に用いられている。 - 現在、米国ではリスクインフォームド ISI 手 法として、EPRI の開発した手法[9]とウェステ ィングハウスの開発した手法(Westinghouse, 1999)とが NRC によって承認されている。これ らの手法は、配管セグメントの破損可能性(確率)については先の産業界の実態を反映しつつ NRC の追加要件プログラムを取り込んだ形を とり、当初問題となっていた破損実態との乖離 が是正されるような代替検査手法を提供して いる。米国では、上記で紹介した以前からも NRC がスポンサーとなって様々な配管破損の調査 を行っているが、そのような実態把握と現状認 識がリスクベース検査手法開発の基盤となっ ている。我が国の現状を振り返ったとき、果た してそのような公となった知見の蓄積の上に 議論が進められようとしているかどうか、大い に反省の余地がある。また、米国で ISI が合理化検討の対象となっ た背景についてもよく考えておく必要がある。 米国ではいわゆる「定期検査」というものはな く、炉停止するのは燃料交換のためだけであり、 その間の規制要件は主に配管 ISI やポンプ・弁 の IST がほとんどである。従って、ISI(や IST) の検査数を合理化することは炉停止期間の短 縮に直結し、運転保守の合理化の見通しがはっ きりしている。それゆえ、リスクインフォーム ド ISI は、リスクインフォームドアプリケーシ ョンの中でも成功を収めた部類であると評価 されている[11]。この米国事情を我が国の事情と比較検討した 上で、リスクインフォームド ISI の導入に大きな メリットがあるかどうかを判断する必要がある。 我が国では毎年定期検査の中で非常に多くの点 検保守を実施することになっているが、ISI にか けるコストが全体のうちのいかほどを占めるの か。また、クリティカル工程になっているわけで もない ISI の工程を短縮することがどれほどのメ リットを生み出すのか。そういった要素を考慮し た上で導入の当否や優先順位(他にメリットのあ るアプリケーションがあるかもしれない)を判断 するべきである」2.2 Technical Specifications (Tech.Spec.)の変更、特に安全機器の待機除外許容時間 (Allowed Outage Time, AOT)の延長と オンラインメンテナンス 非常用ディーゼル発電機(Emergency Diesel Generator, EDG)などの安全機器には、出力126運転中の事故後復旧作業時や予防保全による 供用除外時間を制限する AOT が Tech.Spec.に おいて定められており、供用除外時間が AOT を超過した場合(Limiting Condition for Operation, LCO)には速やかに炉停止すること が要求されている。 EDG の場合、通常 AOT は 72時間で、事後復旧や予防保全には短すぎるこ とが多いため、予防保全作業は燃料交換停止中 に実施されていた。しかしながら、EDG の予防保全作業や故障 によるアンアベイラビリティと炉停止リスク の調査研究[12]などから、次のような考え方が 出てきた。EDG が事故などにより供用除外されている 時、LCO を逸脱した場合の炉停止操作のリスク (炉心損傷の可能性)は思ったより大きく、停 止しないで保守・復旧するほうがかえってリス クを低くできる可能性がある。炉停止中も崩壊熱除去のためにバックアッ プ電源として EDG の確保は必要で、短い炉停 止中に EDG の予防保全をすべて実施するより は、出力運転中に一時待機除外して予防保全を 実施する(オンラインメンテナンス)ほうが、 1サイクルあたりの全リスクを低くできる可能 性がある。EDG の予防保全工程は炉停止期間のクリテ ※ィカル工程となるので、EDG の予防保全作業 を炉停止時から出力運転時に移行すれば(オン ラインメンテナンス) 炉停止期間を短縮するこ とができる(一例によると60日→20日)。こ れにより、炉停止中の作業負荷を減少できる、 発電所の設備利用率が上がる、というメリット がある。このような考え方を根拠として、安全機器の AOTの延長とその AOT を利用したオンライン メンテナンスの実施を NRC に申請する発電所 が多くなってきた。このアプリケーションもリ スクインフォームド規制の成功例のひとつと されている[12]。我が国においても、リスクインフォームドア プリケーションの候補として「オンラインメン テナンスへの活用、定検期間の短縮」などと 然と語られることが多いが、米国とは炉停止期 間の性質が異なるということを踏まえながら、定期点検期間を短縮できるのかどうか、作業負 荷の削減にどれほど寄与するのか、といった点 を見極めて導入の当否(あるいは他のアプリケ ーションはないか)を判断することが必要とな る。2.3 PRAの技術的妥当性 適用方法の話題ではないが、PRA の技術的妥当 性確保はリスクインフォームド規制において 最も重要な問題である。そもそも原子力安全規 制においては、複雑なシステムや低頻度事象に 起因する不確定要素の下に妥当な判断を下さ ねばならない。不確定要素を考慮するのに適し た方法が確率論的リスク評価である。従って、 PRA の技術的妥当性は、不確定性の扱いが適切 か否かが重要な鍵である[13]。PRA における不確定性には2つの要素があ る。ひとつは人間による事象の把握が完全では あり得ないことによる不確定性、すなわち事象 のモデル化の不確定性であり、もうひとつは、 ランダム事象に起因する不確定性、すなわち故 障率やアベイラビリティなどのデータの不確 定性である。ここではデータの不確定性に話題 を絞る。PRA に使用する起因事象発生頻度や機器故 障率は、不確定性を表現するために、確率分布 の形で与える必要がある。そのための統計的手 法としては、頻度主義に基づく標本理論ではな く、ベイズ主義による主観確率の考え方が必要 である[14]。標本理論は、未知母数(想定母集 団の起因事象発生頻度や機器故障率)を定数と して扱う方法であって、確率分布として扱うこ とを前提としていないが、ベイズ推定では、未 知母数を評価者の degree of belief による確率 分布として推定する(主観確率たる所以)。ま た、ベイズ推定では、新しく観測したデータに よってこれまでの確率分布をより確からしい 分布に更新していくことができる。この確率分 布をフォールトッリーやイベントッリーの入 力データとしてモンテカルロ法等を用いるこ とにより、頂上事象(炉心損傷頻度など)の不 確定性を確率分布で表現することができる(ベ イズ推定の方法論については[15]などを参照の こと)。標本理論では未知母数の推定に観測デ127ータしか用いないが、ベイズ推定では評価者 (専門家)の判断を確率分布に含ませるので、 故障の観測件数が0であれば前者はほとんどお 手上げなのに対し、後者は人の判断によってこ れを補完することが可能である。ちなみに、日 本で唯一オーソライズされている機器故障率 データ[16]は標本理論による取り扱いなので、 ベイズ推定であればあまり悩む必要のない確 率分布の与え方や0件故障の扱いに苦慮してい るところがある。 1 米国では、PRA の基礎となる起因事象発生頻 度ならびに機器故障率を推定するため、NRC や民間により数多の信頼性調査研究が実施さ れている。PRA 手法のさきがけとなった原子炉 安全研究[17]の時代は運転経験が少なく、すべ ての故障率を対数正規分布にフィッティング するという扱いをしていたが[13]、シビアアク シデント研究[18]では対数正規分布の他に別の 分布の可能性にも触れている[19]。また、近年 でも起因事象発生頻度や安全機器の信頼性調 査研究が続けられている([20]、[21]など。こ こに挙げた例は氷山の一角である)。米国のデータに関して、我が国では誤解され ていると思われる注意点が幾つかある。ひとつ めは、これら信頼性研究におけるデータ評価は、 どれも規制への報告である Licensee Event Report(LER)と各発電所の運転記録に専門家の 意見を統合して人為的に作成したものである という認識が重要である。「米国の原子力発電 所は故障件数が多いから故障率データが算出 できている」というわけではないのである。ふたつめは、米国原子力発電所の PRA は、 モデルからデータまで個々の発電所ごとに整 備をしている、という事実である。日本では、 「米国の故障率データは NRC がオーソライズ した全国版の Generic Data があってそれを使 用している」という誤解が根強いが、根本的に リスク評価はプラント個別評価でなければ意 味がない、というのが NRC の基本的考え方で あり[22]、リスクインフォームドアプリケーシ ョンに個別プラントデータを用いず Generic Data しか用いないとすると、NRC からは一切 受け付けてもらえないということになる。 みっつめは、ふたつめとも関連するが、各発電所では定期的に PRA モデルやデータの更新 を行っているため、現在個々の発電所で使用さ れている故障率データは当該発電所の特徴を 反映したデータとなっているはずであり、「こ れが米国で一般に使われている故障率データ」 と呼べるような Generic Data は存在しない、 ということである。日本の定期安全レビューに おける PRA で使用されているデータは、米国 のデータと称してシビアアクシデント研究で 使用された NUREG/CR-4550 の値などが用い られているようであるが、おそらくすでに米国 の発電所でさえもこのデータをそのまま用い ているところはないであろう。我が国の PRA は、すでに米国でも使用されていないような古 いデータを根拠としており、当然ながらそれで は我が国の発電所機器の特性を反映している。 とは言えない。これで得られた結果が我が国の 原子力発電所のリスクを適切に表現している。 と言えるであろうか。こういう点について、リ スクインフォームド規制を導入する前に、よく 検討してみる必要がある。なお、共通要因故障、 ヒューマンエラー、フォールトッリー/イベント ツリーロジックモデルなどの不確定性につい ては故障率データ以上に検討課題が山積して いる。3.まとめ~日本における課題 米国のリスクインフォームド規制の背景や取 り組みと日本における現状を対比させて見る と、単なるルール作り(規格基準策定)以前に 検討すべき重要課題が明確になってくる。すな わち、 ・ リスクインフォームド手法の導入の目的や効果が漠然としていないか? いかなる合 理化ビジョンを描いているのか? リスク インフォームド手法の導入以前に、明確な 問題把握ができているか? 現在の PRA を用いて安全規制上の判断を 下すのに相当の自信が持てるか? PRA の 技術的妥当性を確保しその使用に自信を持 てるためにどうすればよいか? 米国の例を見ると、問題の把握や評価手法の 妥当性確保にかなりの資源をつぎこんでいる 様子がうかがえる。我が国においても同様の態128度で臨まないと、実行的判断能力のない単なる 形式的なリスクインフォームド規制導入にな る恐れがある。これでは、この制度の本質的な 主旨とはまったく逆の不要な負担が増すばか りとなる。参考文献[1] USNRC, ““Use of Probabilistic RiskAssessment Methods in Nuclear Activities: Final Policy Statement,““ Federal Register, Vol.60, p. 42622 (60 FR 42622), August 16, 1995. [2] USNRC, “Risk-Informed RegulationImplementation Plan,““ SECY-00-0213, October 16, 2000; updated December 5, 2001 as SECY-01-0218, updated March 21, 2003 asSECY-03-0044. [3] USNRC, “Individual Plant Examination forSevere Accident Vulnerabilities - 10 CFR 50.54(F),* Generic Letter 88-20, November 23,1988. [4] USNRC, “NRC Position on IGSCC in BWRAustenitic Stainless Steel Piping,” GenericLetter 88-01, January 25, 1988. [5] USNRC, “Erosion/Corrosion-Induced PipeWall Thinning,” Generic Letter 89 -08, May 2,1989. [6] USNRC, “Service Water System ProblemsAffecting Safety-Related Equipment,” GenericLetter 89-13, July 18, 1989. [7] ASME, “Evaluation of Inservice InspectionRequirements for Class 1, Category B-J Pressure Relating Welds in Piping,” ASME Section XI Task Group on ISI Optimization, Report No.920101, Revision 0, December1994. [8] EPRI TR-110157, Final Report, “Evaluation ofPipe Failure Potential via DegradationMechanism Assessments,” May 1998. [9] EPRI TR-112657, Revision B-A Final Report,“Revised Risk-Informed Inservice InspectionEvaluation Procedure,““ December 1999. [10] Westinghouse Topical Report, WCAP-14572,Revision 1-NP-A, “Westinghouse Owners Group Application of Risk-Informed Methodston Piping Inservice Inspection TopicalReport,” February 1999. [11] Fleming, K.N., “Issues and Recommendationsfor Advancement of PRA Technology in Risk-Informed Decision Making,”NUREG/CR-6813, USNRC, April 2003. [12] Samanta, et.al., “Emergency Diesel Generator:Maintenance and Failure Unavailability, and Their Risk Impacts,” NUREG/CR-5994, BNL-NUREG-52363, USNRC, November1994. [13] Bohn, et.al., “Approaches to UncertaintyAnalysis in Probabilistic Risk Assessment,” NUREG/CR-4836, SAND87-0871, USNRC,January 1988. [14] Apostolakis, “The Concept of Probability inSafety Assessments of Technological Systems,” Science, Volume 250, pp.1359-1364,December 7, 1990. [15] Siiu, et.al., “Bayesian Parameter Estimation inProbabilistic Risk Assessment,” Reliability Engineering and System Safety, 62, pp.89-116,1998. [16](財)原子力安全研究協会、「PSA 用故障率データに関する調査」、原子力発電所信頼性データ調査専門委員会、平成9年3月 [17] USNRC, “Reactor Safety Study: AnAssessment of Accident Risks in US Nuclear Power Plants,” WASH-1400 (NUREG 75/014)1975[18] USNRC, “Severe Accident Risks: AnAssessment for Five U.S. Nuclear PowerPlants,““ NUREG-1150, 1990. [19] Drouin, et.al., “Analysis of Core damageFrequency from Internal Events, Methodology Guidelines: Volume 1,” NUREG/CR-4550,SAND-86-2084, 1990. [20] Poloski, et.al., “Rates of Initiating Events atU.S. Nuclear Power Plants: 1987-1995,” NUREG/CR-5750, INEEL/EXT-98-00401,February 1990. [21] Weirman, et.al., “Reliability Study: Babcock &Wilcox Reactor Protection System, 1984-1998,” NUREG/CR-5500, Volume 11,-129INEL/EXT-97-00740, November 2001. [22] USNRC, “An Approach for Using ProbabilisticRisk Assessment in Risk-Informed Decisions on Plant-Specific Changes to the LicensingBasis,” Regulatory Guide 1.174, July 1998. -130“ “リスクインフォームド規格基準の策定における課題 “ “吉田 智朗,Tomoaki YOSHIDA“ “リスクインフォームド規格基準の策定における課題 “ “吉田 智朗,Tomoaki YOSHIDA
題点 1. 本稿では、我が国が導入しようとしている原 最良 子力発電へのリスクインフォームド規制につ。 いて、関連規格基準策定における課題について 述べる。リスクインフォームド規制とは、原子 一位 力の安全規制上の判断において、従来の決定論 的評価の知見と相互補完しつつ確率論的リス ク評価(Probabilistic Risk Assessment, PRA) して の知見を活用することによって安全重要度の い方 高い分野に重点的に規制資源を配分するとい 国に う規制体系である。これにより、安全規制の効, 組み 率化と事業者の不要な規制負担削減をねらい としている。米国原子力安全規制委員会(US_漠名 Nuclear Regulatory Commission, USNRC) は、 き見 1995年の政策声明でこのリスクインフォーム ド規制の実施を表明し[1]、その後リスクインフ ォームド規制実施計画を策定して規制体系の自作 整備を進めている[2]。近年、米国の原子力発電 が高い稼働率を達成しているその背景には、こ のリスクインフォームド規制に代表される規 制活動の効率化が大きな役割を占めている。一般に、米国の規制活動や事業者活動のやり 方には、現行の施策とその効果を絶えず監視下 におき、不合理あるいは不適切と思われる点が あれば、集中的な調査検討によって具体的な問 題点を把握して、それらに対応する適切な解決 措置をとる、という慣習がある(これはまさに 品質保証におけるPDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルである)。米国でのリスクイン フォームド規制の施策(適用先)は、まずそう
いったプロセスを通じて浮き彫りにされた問 題点の現状認識があり、それを解決するための 最良の方法を検討した結果、PRA 知見の応用に 行き着いた、と見ることができる。米国の実績に学ぶとすれば、まず我が国では 一体何をどう合理化・是正したいのか、具体的 な現状の問題点と解決の道筋を明確に把握す ることが必要である。そのような現状把握を通 してのみリスク評価の方法やリスク知見の使 い方が特定されていくはずである。現在の我が 国におけるリスクインフォームド手法の取り 組みは、そのようなプロセスとは逆の方向で進 んでいる。リスクインフォームド手法に対する 漠然とした期待感が先行し、我が国で解決すべ き問題や要因を把握しないまま、具体的適用先 をただ試行錯誤しているのみである。これでは、 「リスクインフォームド手法」を実施すること 自体が目的となり、そのような単なる儀礼的な リスク評価結果は本質的な判断根拠にもなら ず、そのうち事業者にとっては多大なる負担と 化してしまう恐れがある。 * 実効的なリスクインフォームド規制導入と するためには、現行原子力規制の問題点の把握 とそれを裏打ちする詳細な調査研究、そして解 決へ向けての明確な道筋の立案が必要不可欠 である。以下では、いくつかの米国リスクイン フォームドアプリケーションを、「問題点把握 と解決」という観点から捉えて我が国導入への 参考としたい。2.米国リスクインフォームドアプリケー米国リスクインフォションの背景と取り組み PRA の安全規制への応用は、「リスクインフ ォームドアプリケーション」という呼称が使わ れる以前から、1988年の個別プラント評価 (Individual Plant Examinations, IPE) に おける苛酷事故脆弱性評価などの例がある[3]。 しかし、ここでは、1995 年政策声明以後に実 施されたいくつかの代表的なアプリケーショ ンに絞って、米国原子力産業における問題提起 のアプローチの仕方を調べることにする。2.1 配管のリスクインフォームド供用期間中検査 米国の原子力配管の供用期間中検査は、連邦 規則 10CFR50.55a において米国機械学会 (ASME) Section XI の規格に従うよう定め られている。この規格は、設計条件の応力が高 い部位が疲労により割れるという状況を想定 して決められているが、原子力発電所の運転が 開始すると、そのように想定した部位ではほと んど破損が発生せず、その代わりに腐食・浸食 や応力腐食割れという環境要因により破損す る事例が多発するようになった。従来の検査方 法ではこれらの破損を検知することができな いため、NRC では、追加検査プログラムを策 定して、各発電所にこれを実施するよう要求し ている(例えば[4]-[6])。 - このように、設計条件から決められた検査箇 所・破損メカニズムと実際の破損部位・メカニ ズムとの乖離が大きな問題となってきたとき、 ASME では作業会を設置し、実態把握のための 詳細な調査を実施している[7]。この公開調査結 果は、その後 ASME を中心に展開されるコー ドケース策定においてリスクベースによる代 替 ISI 手法開発の出発点となった。また、代替 手法の開発に必要な、産業界大のメカニズム別 破損実態調査が EPRI で実施され[8]、リスクベ ース ISI に必要な配管破損メカニズム別の破断 可能性(確率)評価に用いられている。 - 現在、米国ではリスクインフォームド ISI 手 法として、EPRI の開発した手法[9]とウェステ ィングハウスの開発した手法(Westinghouse, 1999)とが NRC によって承認されている。これ らの手法は、配管セグメントの破損可能性(確率)については先の産業界の実態を反映しつつ NRC の追加要件プログラムを取り込んだ形を とり、当初問題となっていた破損実態との乖離 が是正されるような代替検査手法を提供して いる。米国では、上記で紹介した以前からも NRC がスポンサーとなって様々な配管破損の調査 を行っているが、そのような実態把握と現状認 識がリスクベース検査手法開発の基盤となっ ている。我が国の現状を振り返ったとき、果た してそのような公となった知見の蓄積の上に 議論が進められようとしているかどうか、大い に反省の余地がある。また、米国で ISI が合理化検討の対象となっ た背景についてもよく考えておく必要がある。 米国ではいわゆる「定期検査」というものはな く、炉停止するのは燃料交換のためだけであり、 その間の規制要件は主に配管 ISI やポンプ・弁 の IST がほとんどである。従って、ISI(や IST) の検査数を合理化することは炉停止期間の短 縮に直結し、運転保守の合理化の見通しがはっ きりしている。それゆえ、リスクインフォーム ド ISI は、リスクインフォームドアプリケーシ ョンの中でも成功を収めた部類であると評価 されている[11]。この米国事情を我が国の事情と比較検討した 上で、リスクインフォームド ISI の導入に大きな メリットがあるかどうかを判断する必要がある。 我が国では毎年定期検査の中で非常に多くの点 検保守を実施することになっているが、ISI にか けるコストが全体のうちのいかほどを占めるの か。また、クリティカル工程になっているわけで もない ISI の工程を短縮することがどれほどのメ リットを生み出すのか。そういった要素を考慮し た上で導入の当否や優先順位(他にメリットのあ るアプリケーションがあるかもしれない)を判断 するべきである」2.2 Technical Specifications (Tech.Spec.)の変更、特に安全機器の待機除外許容時間 (Allowed Outage Time, AOT)の延長と オンラインメンテナンス 非常用ディーゼル発電機(Emergency Diesel Generator, EDG)などの安全機器には、出力126運転中の事故後復旧作業時や予防保全による 供用除外時間を制限する AOT が Tech.Spec.に おいて定められており、供用除外時間が AOT を超過した場合(Limiting Condition for Operation, LCO)には速やかに炉停止すること が要求されている。 EDG の場合、通常 AOT は 72時間で、事後復旧や予防保全には短すぎるこ とが多いため、予防保全作業は燃料交換停止中 に実施されていた。しかしながら、EDG の予防保全作業や故障 によるアンアベイラビリティと炉停止リスク の調査研究[12]などから、次のような考え方が 出てきた。EDG が事故などにより供用除外されている 時、LCO を逸脱した場合の炉停止操作のリスク (炉心損傷の可能性)は思ったより大きく、停 止しないで保守・復旧するほうがかえってリス クを低くできる可能性がある。炉停止中も崩壊熱除去のためにバックアッ プ電源として EDG の確保は必要で、短い炉停 止中に EDG の予防保全をすべて実施するより は、出力運転中に一時待機除外して予防保全を 実施する(オンラインメンテナンス)ほうが、 1サイクルあたりの全リスクを低くできる可能 性がある。EDG の予防保全工程は炉停止期間のクリテ ※ィカル工程となるので、EDG の予防保全作業 を炉停止時から出力運転時に移行すれば(オン ラインメンテナンス) 炉停止期間を短縮するこ とができる(一例によると60日→20日)。こ れにより、炉停止中の作業負荷を減少できる、 発電所の設備利用率が上がる、というメリット がある。このような考え方を根拠として、安全機器の AOTの延長とその AOT を利用したオンライン メンテナンスの実施を NRC に申請する発電所 が多くなってきた。このアプリケーションもリ スクインフォームド規制の成功例のひとつと されている[12]。我が国においても、リスクインフォームドア プリケーションの候補として「オンラインメン テナンスへの活用、定検期間の短縮」などと 然と語られることが多いが、米国とは炉停止期 間の性質が異なるということを踏まえながら、定期点検期間を短縮できるのかどうか、作業負 荷の削減にどれほど寄与するのか、といった点 を見極めて導入の当否(あるいは他のアプリケ ーションはないか)を判断することが必要とな る。2.3 PRAの技術的妥当性 適用方法の話題ではないが、PRA の技術的妥当 性確保はリスクインフォームド規制において 最も重要な問題である。そもそも原子力安全規 制においては、複雑なシステムや低頻度事象に 起因する不確定要素の下に妥当な判断を下さ ねばならない。不確定要素を考慮するのに適し た方法が確率論的リスク評価である。従って、 PRA の技術的妥当性は、不確定性の扱いが適切 か否かが重要な鍵である[13]。PRA における不確定性には2つの要素があ る。ひとつは人間による事象の把握が完全では あり得ないことによる不確定性、すなわち事象 のモデル化の不確定性であり、もうひとつは、 ランダム事象に起因する不確定性、すなわち故 障率やアベイラビリティなどのデータの不確 定性である。ここではデータの不確定性に話題 を絞る。PRA に使用する起因事象発生頻度や機器故 障率は、不確定性を表現するために、確率分布 の形で与える必要がある。そのための統計的手 法としては、頻度主義に基づく標本理論ではな く、ベイズ主義による主観確率の考え方が必要 である[14]。標本理論は、未知母数(想定母集 団の起因事象発生頻度や機器故障率)を定数と して扱う方法であって、確率分布として扱うこ とを前提としていないが、ベイズ推定では、未 知母数を評価者の degree of belief による確率 分布として推定する(主観確率たる所以)。ま た、ベイズ推定では、新しく観測したデータに よってこれまでの確率分布をより確からしい 分布に更新していくことができる。この確率分 布をフォールトッリーやイベントッリーの入 力データとしてモンテカルロ法等を用いるこ とにより、頂上事象(炉心損傷頻度など)の不 確定性を確率分布で表現することができる(ベ イズ推定の方法論については[15]などを参照の こと)。標本理論では未知母数の推定に観測デ127ータしか用いないが、ベイズ推定では評価者 (専門家)の判断を確率分布に含ませるので、 故障の観測件数が0であれば前者はほとんどお 手上げなのに対し、後者は人の判断によってこ れを補完することが可能である。ちなみに、日 本で唯一オーソライズされている機器故障率 データ[16]は標本理論による取り扱いなので、 ベイズ推定であればあまり悩む必要のない確 率分布の与え方や0件故障の扱いに苦慮してい るところがある。 1 米国では、PRA の基礎となる起因事象発生頻 度ならびに機器故障率を推定するため、NRC や民間により数多の信頼性調査研究が実施さ れている。PRA 手法のさきがけとなった原子炉 安全研究[17]の時代は運転経験が少なく、すべ ての故障率を対数正規分布にフィッティング するという扱いをしていたが[13]、シビアアク シデント研究[18]では対数正規分布の他に別の 分布の可能性にも触れている[19]。また、近年 でも起因事象発生頻度や安全機器の信頼性調 査研究が続けられている([20]、[21]など。こ こに挙げた例は氷山の一角である)。米国のデータに関して、我が国では誤解され ていると思われる注意点が幾つかある。ひとつ めは、これら信頼性研究におけるデータ評価は、 どれも規制への報告である Licensee Event Report(LER)と各発電所の運転記録に専門家の 意見を統合して人為的に作成したものである という認識が重要である。「米国の原子力発電 所は故障件数が多いから故障率データが算出 できている」というわけではないのである。ふたつめは、米国原子力発電所の PRA は、 モデルからデータまで個々の発電所ごとに整 備をしている、という事実である。日本では、 「米国の故障率データは NRC がオーソライズ した全国版の Generic Data があってそれを使 用している」という誤解が根強いが、根本的に リスク評価はプラント個別評価でなければ意 味がない、というのが NRC の基本的考え方で あり[22]、リスクインフォームドアプリケーシ ョンに個別プラントデータを用いず Generic Data しか用いないとすると、NRC からは一切 受け付けてもらえないということになる。 みっつめは、ふたつめとも関連するが、各発電所では定期的に PRA モデルやデータの更新 を行っているため、現在個々の発電所で使用さ れている故障率データは当該発電所の特徴を 反映したデータとなっているはずであり、「こ れが米国で一般に使われている故障率データ」 と呼べるような Generic Data は存在しない、 ということである。日本の定期安全レビューに おける PRA で使用されているデータは、米国 のデータと称してシビアアクシデント研究で 使用された NUREG/CR-4550 の値などが用い られているようであるが、おそらくすでに米国 の発電所でさえもこのデータをそのまま用い ているところはないであろう。我が国の PRA は、すでに米国でも使用されていないような古 いデータを根拠としており、当然ながらそれで は我が国の発電所機器の特性を反映している。 とは言えない。これで得られた結果が我が国の 原子力発電所のリスクを適切に表現している。 と言えるであろうか。こういう点について、リ スクインフォームド規制を導入する前に、よく 検討してみる必要がある。なお、共通要因故障、 ヒューマンエラー、フォールトッリー/イベント ツリーロジックモデルなどの不確定性につい ては故障率データ以上に検討課題が山積して いる。3.まとめ~日本における課題 米国のリスクインフォームド規制の背景や取 り組みと日本における現状を対比させて見る と、単なるルール作り(規格基準策定)以前に 検討すべき重要課題が明確になってくる。すな わち、 ・ リスクインフォームド手法の導入の目的や効果が漠然としていないか? いかなる合 理化ビジョンを描いているのか? リスク インフォームド手法の導入以前に、明確な 問題把握ができているか? 現在の PRA を用いて安全規制上の判断を 下すのに相当の自信が持てるか? PRA の 技術的妥当性を確保しその使用に自信を持 てるためにどうすればよいか? 米国の例を見ると、問題の把握や評価手法の 妥当性確保にかなりの資源をつぎこんでいる 様子がうかがえる。我が国においても同様の態128度で臨まないと、実行的判断能力のない単なる 形式的なリスクインフォームド規制導入にな る恐れがある。これでは、この制度の本質的な 主旨とはまったく逆の不要な負担が増すばか りとなる。参考文献[1] USNRC, ““Use of Probabilistic RiskAssessment Methods in Nuclear Activities: Final Policy Statement,““ Federal Register, Vol.60, p. 42622 (60 FR 42622), August 16, 1995. [2] USNRC, “Risk-Informed RegulationImplementation Plan,““ SECY-00-0213, October 16, 2000; updated December 5, 2001 as SECY-01-0218, updated March 21, 2003 asSECY-03-0044. [3] USNRC, “Individual Plant Examination forSevere Accident Vulnerabilities - 10 CFR 50.54(F),* Generic Letter 88-20, November 23,1988. [4] USNRC, “NRC Position on IGSCC in BWRAustenitic Stainless Steel Piping,” GenericLetter 88-01, January 25, 1988. [5] USNRC, “Erosion/Corrosion-Induced PipeWall Thinning,” Generic Letter 89 -08, May 2,1989. 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