渦電流を用いた構造物適応型非破壊評価技術の開発
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カテゴリ: 第1回
1. 緒言
価可能とする渦電流応用として,第一に, マル チュイル ECT プローブからなる高空間分解能 渦電流試験 (Eddy Current Testing, ECT)を ECT システムを紹介する。複数の ECT センサを 用いた非破壊評価は,金属構造物の欠陥検査, アレイ状に配置したプローブによって高い空 膜厚測定,導電率測定と多岐にわたる。とりわ 間分解能特性を実現し,ECT 信号を画像的に扱 け金属構造物の欠陥検査の分野では,ECT の優うことを可能とする[3]。 ECT の優れた表面欠陥 れた表面欠陥に対する検出性と迅速性より,加 の検出性に加え,検出困難である SCC など複雑 圧水型原子炉(PWR) の蒸気発生器内に存在する 形状のき裂の検出,さらには ECT 信号に対して 伝熱管(SG 管)の供用中検査に用いられてきた 画像処理的手法を応用することにより計算機 [1]。また,ECT に関する数値シミュレーション 支援検査技術の高度化を目指している[4]。第 技術の大幅な進展により計算機支援検査,すな 二に,厚肉金属部対応 ECT プローブを紹介する。 わち,き裂形状の定量的評価が可能となり,検 本来 ECT は,表皮効果の影響により厚肉金属部 査の高精度化が達成されている[2]。に対応することが困難であるが,2 ヶの励磁コ 金属構造物の内部および裏面の欠陥検査技 イルからなるECT プローブを用いることで検査 術は,超音波試験(Ultrasonic Testing, UT)が ・ 対象の深部に高い密度の渦電流を誘導するこ 主流であるが,最近の原子力発電関連プラント とが可能となり,従来検出限界であった深さ 金属構造物における応力腐食割れ (Stress 5mm 以上のき裂の検出能力が改善された [5] [6]。 Corrosion Cracking, SCC)問題や維持規格の法 計算機支援検査技術による深いき裂の定量的 制化などに起因して,非破壊評価技術の更なる評価と併せて, UT とベストミックスできる ECT 高度化が社会的に求められている。UT と ECT の 技術を目指している。 ベストミックスによる検査の信頼性向上を目2. マルチアレイ ECT システム 的に、特に、表層部欠陥に対しては、ECT を用 いた欠陥サイジング技術の検討が進められて 2.1 マルチコイル ECT プローブ いる。筆者の研究グループでは,PWR の SG 管欠 目標とする高空間分解能ECT システムをFig. 陥検査の分野で培ってきたセンサ技術と計算1に図示する。マルチコイル ECT プローブのコ 機支援検査技術を基盤にして,ECT の適用範囲 イルセンサ要素がレンズ,駆動周波数が絞り, の拡大と応用の展開を進めている。ECT 信号による画像がフィルム,計算機支援要 本稿では,渦電流を用いた非破壊評価法にお 素が現像及び写真というように,欠陥の検査過 いて,最近筆者の研究グループが進めてきた研程と写真の現像過程を対応させた““ECT カメラ” 究の成果を紹介する。金属構造物の健全性を評 を提案している[4]。
OS6-1劃??数ECT裸器出ないなんかを。き裂の可化ECT信号フィルム サイングFig. 1 Concept of ECT camera.高空間分解能 ECT システムの根幹をなすマル チコイル ECT プローブとして, Fig.2に示す 48ch マルチコイル ECT プローブを試作した。セ ンサ部は、2ヶのコイル列,35 ヶのコイルから 構成されており, ECT 信号が 2次元画像として 得られる。検出方法として,高 SN 比が期待で きる TR(Transmit-Receive)型を採用し, 水平方 向と垂直方向のき裂を区別して検出すること が可能である[7]。空間分解能 3mm を目標性能 とし,表層欠陥へも対応できるように駆動励磁 周波数は 20k~40kHz に設定した。計算機支援 設計よりコイル内径, 外径, 高さはそれぞれ 1.0, 2.4, 2.0mm と決定した。探傷器に内蔵されてい るマルチプレクサ回路のスイッチング制御に よって、コイル間の相互干渉を回避しながらス キャンすることが可能であるため,直接画像処 理等を応用し,複数近接き裂の数,位置,形状 の認識が期待できる。(204mm80.332JANUOVA- wwwwwwwwNEWトークン50Fig. 2 48・ch multi-coil ECT probe. 2.2 複数近接き裂の検出性能Fig.3は,試作したマルチコイル ECT プロー ブの空間分解能評価試験結果の一部を示す。空間 分解能を評価するために, SUS304 ステンレス鋼 板に放電加工機で模擬き裂(以下 EDM スリット と略記)を 3mm 間隔で5箇所施した試験体を作 製し,プローブを一方向に走査した。図中,出力 電圧 VR, VIは,それぞれ検出コイル出力電圧の 実部,虚部である。EDM スリットの位置に対応 する出力電圧のピークが得られ,空間分解能 3mm が達成された。い simitainseということになるんじゃんwiiiiiro深さ210及さ1mmOutpud voltage V (dBi深さ0.5mmerrandatationsie.si.commeriend~-
i' TFig. 3 Spatial resolution of 48-ch multi-coil ECT probe. (40kHz, EDM slit interval:3mm) 2.3 き裂位置同定Fig.4は,前節の測定から得られる出力電圧 を画像化したものに対して,画像処理法の一つ であるテンプレートマッチングによる模擬き 裂位置の同定結果である。テンプレートマッチ ングによって,測定で得られる画像の中からき 裂形状が既知であるときの画像(テンプレート)を参照して,類似した画像部分を探索する ), [8]。その結果,図中の四角枠が同定位置を示すように5箇所のき裂を同定した。それぞれの模 擬き裂の間隔は左から 3.075mm, 3.075mm, 2.95mm, 3.075mm であり,良好な同定結果が 得られた。位置同定結果に基づいて,き裂形状 の定量的評価を詳細におこなうことができる。HighA ML深さ3mmテンプレート深さ0.5mm深さ1mm、深さ2mmLow Fig. 4 Template matching for crack position identification. (40kHz, EDM slit interval:3mm, VR signal is used.) 3.厚肉金属部対応 ECT プローブ 3.1 2 励磁方式 ECT センサFig.5は,2 励磁コイル方式を採用した厚肉 金属部対応 ECT プローブである。厚肉検査対 象の深部まで渦電流が分布するように2ヶの励 磁コイルを配置し,その中心に検出コイルを配置してある。励磁電流は,プローブ中心で磁束 - 132が相殺するように通電する[5]。これより,検出 出力電圧のピーク間隔はスリット長さに対応 コイルに近接する探傷表層部の渦電流密度を して広くなる。ピーク出力電圧は,スリット深 低くし,深部に起因する情報を取得することが さに対応して変化し,スリット深さが深いほど 可能となる。駆動励磁周波数を 1k~10kHz と 出力電圧は高くなることがわかる。 Fig. 6にお 設定し,渦電流場数値計算による計算機支援設 いて,スリット深さ 10mm と 15mm のプロー 計により, コイルの仕様・間隔を設計した。Fig. ブ出力差が 10.7%程度となり,位相差からも深 5に示す試作プローブにおいて,励磁コイル間さの識別可能である。 の間隔は 25mm である。また, 励磁および検出 コイルの仕様を Table1にまとめる[6]。Output voltage V[dB)検出コイルLepts Stim Vi Depth SmasVy Depth 10mm i Vi Deth 10mmVo:Dep150mm VDepth 15thtml53mm28mm励磁コイルInnerTurns6mm14mm4mm1281Pickup3mm7mm2mm1093yorm) Fig. 6 Detectability in depth. (1kHz, EDMslit length:10mm) Fig. 5 Double excitation coil probe for thick2)表面粗さの影響 metal structures.深さ10mm の EDM スリットで異なる表面粗 Table 1 Configuration of the probe in さをもつ試験体を用意し,表面粗さの影響を評 Fig. 5.価した。表面の粗さは,グラインダ(目の粗い Outer Heightものから#36, #60, #80) で実現した。比較のた Diameter Diameterめにフライス加工したものも用意した。フライ Excitationス加工とグラインダ#36 で表面粗さ,すなわち EDM スリット以外の部分での深さの変位は,それぞれ最大で 7.5μm と 23.0 μm であった。 3.2 深いき裂の検出性能Fig.7は,深さ検出性能の実験と同様に EDM 厚肉金属部対応 ECT プローブの性能評価試 スリットに対してプローブを走査したときの 験を実施するために, SUS304 板に異なる深さ出力信号である。スリット設置位置から離れて の EDM スリット,および表面加工を施し試験 いる位置で出力にばらつきが確認できるが,ス 体を作製した。試験は, 1) 深さ検出性能評価と,リットの部分でばらつきはほとんど認められ 2) 表面粗さの影響評価の 2 項目に関して実施 ないことがわかる。 した。EDM スリットが存在する面を探傷面と して,スリット直上を長さ方向に対して平行に プローブを走査して測定する。プローブの向きVe Grinder #30 は、2個の励磁コイル円筒の中心を結ぶ直線が, EDM スリットと平行になるように設置し,検 査対象-プローブ間の距離リフトオフは 1.0mm とした。 1)深さ検出性能102040600 Fig.6は,深さ 5, 10, 15mm の EDM スリッyemm) トに対してプローブを走査したときの出力信 Fig. 7 Dependence on surface roughness of 号である。自己差動(プローブ中心での磁束相 the target. (1kHz, EDM slit length:10mm, 殺)のため,スリット中心の出力電圧は零であり, EDM slit depth:10mm)**** V, Ginder #36V Grinder #60 * VI Canant 160V.Grinder #80V. MabingOutput voltage V(dB)The-1334mm2mm3.3 き裂深さの定量的評価深さ検出性能での実験結果を用いて,き裂の 長さ及び深さを計算機支援により定量的に評 価した。有限要素法に基づく ECT 高速シミュ レーターを用い,計算した ECT 信号と測定 ECT 信号の最小二乗誤差を最小化する最急降 下法でき裂形状を推定した[9][10]。Table 2は 推定結果を定量的にまとめたものである。 EDM スリット長さ 10, 20mm, スリット深さ 5, 10, 15m いずれの場合においても良好な推定 結果を与える。最大誤差をもたらしたのは, EDM スリット長さ 10mm, 深さ 5mm のとき であり,き裂深さで最大 2mm 深く見積もる結 果となった。これは,厚肉金属部対応 ECT プ ローブが探傷表面の情報に関して多少鈍感で あることに起因していると考えられる。 ? 従来 ECT の適用範囲はき裂深さ 5mm 以内 であったが,厚肉金属部対応 ECT プローブの 出力電圧のみでも十分に深さ 10mm と 15mm のき裂が識別可能である。さらに,計算機支援 検査技術によるき裂形状推定により,き裂の深 さサイジングの高精度化が期待できる。Table 2 Summary of crack sizing (VT-Alpha667, Mem. : 512MByte)DOSL20DIOL 20DISL20DOSL 10DIOL 10DISL104.919.314|79915.3-0.7-12-0.10.3Reconstructed depth (mm)Entor of depth (mm) Reconstructed length (mm)Error of length (mm) Computing time (8)0.1 20 020201003003063054683704124.結言 * 本稿は渦電流を用いた非破壊評価法として, 第一に,マルチコイル ECT プローブからなる 高空間分解能 ECT システム,第二に,厚肉金 属部対応 ECT プローブについて紹介した。 ECT の優れた表面欠陥の検出性をさらに洗練 し,欠点の一つであった深いき裂に対する検出 能力の改善の糸口を見出した。謝辞本技術開発は「革新的実用原子力技術開発提 案公募事業」((財)エネルギー総合工学研究所) として実施した。参考文献 [1] 高松 洋,宮 健三,陳 振茂,““加圧水型原子力発電所における電磁非破壊検査技術 開発の経緯”, 日本 AEM 学会誌, 8-1, 2000,pp. 95-101. [2] T. Takagi, and H. Fukutomi, ““BenchmarkActivities of Eddy Current Testing for Steam Generator Tubes,” Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 17:Electromagnetic Nondestructive Evaluation (IV) (eds. S. S. Udpa et al.),IOS Press, 2000, pp.235-252. [3] 櫻井望,黄皓宇,高木敏行,内一哲哉,”数値シミュレーション支援によるアレイ マルチコイル型渦電流探傷プローブの開 発”,機械学会論文集,69-676, A, 2002,pp. 119-126. [4] 長屋嘉明,遠藤久,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,西水亮,小池正浩,松井哲也, ““構造物適応型ECT カメラに関する研究(1)マルチコイル ECT プローブの基礎特性-““,原子力学会秋季大会, 2003, p. 236. [5] 佐藤一彦,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,”厚肉材用渦電流探傷プローブの開発とき 裂の定量的評価”, 機械学会論文集, 69-678,A, 2003, pp. 455-462. [6] 遠藤久,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,西水亮,小池正浩,松井哲也,““渦電流探傷 に基づく厚肉材における深いき裂の定量 的評価““,非破壊検協会秋季大会講演概要集,2003, pp.75-77. [7] 福高広幸他,““渦電流法に基づくガスタービン動翼の非破壊損傷評価第3報:動翼 非破壊き裂検出装置の開発”, 電中研報告, http://criepi.denken.or.jp/jpn/kenkikaku/rd-info/pdf/T01045. pdf. [8] 長屋嘉明,高木敏行,黄皓宇,内一哲哉,”テンプレートマッチングを用いた画像処 理による渦電流探傷信号からの複数き裂 の同定““, 機械学会論文集, 69-684, A, 2003,pp. 1236-1243. [9] H. Huang and T. Takagi, ““InverseAnalyses for Natural and Multi-Cracks using Signals from a Differential Transmit-Receive ECT Probe,” IEEE TransMagn., 38, 2, 2002, pp. 1009-1012. 10] H. Huang, H. Fukutomi, T. Takagi, and J.Tani, ““Forward and Inverse Analyses of ECT Signals Based on Reduced Vector Potential Method using Database, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics14:Electromagnetic Nondestructive Evaluation (II), IOS Press, 1998, pp. 313-321.34“ “渦電流を用いた構造物適応型非破壊評価技術の開発 “ “高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI“ “渦電流を用いた構造物適応型非破壊評価技術の開発 “ “高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI
価可能とする渦電流応用として,第一に, マル チュイル ECT プローブからなる高空間分解能 渦電流試験 (Eddy Current Testing, ECT)を ECT システムを紹介する。複数の ECT センサを 用いた非破壊評価は,金属構造物の欠陥検査, アレイ状に配置したプローブによって高い空 膜厚測定,導電率測定と多岐にわたる。とりわ 間分解能特性を実現し,ECT 信号を画像的に扱 け金属構造物の欠陥検査の分野では,ECT の優うことを可能とする[3]。 ECT の優れた表面欠陥 れた表面欠陥に対する検出性と迅速性より,加 の検出性に加え,検出困難である SCC など複雑 圧水型原子炉(PWR) の蒸気発生器内に存在する 形状のき裂の検出,さらには ECT 信号に対して 伝熱管(SG 管)の供用中検査に用いられてきた 画像処理的手法を応用することにより計算機 [1]。また,ECT に関する数値シミュレーション 支援検査技術の高度化を目指している[4]。第 技術の大幅な進展により計算機支援検査,すな 二に,厚肉金属部対応 ECT プローブを紹介する。 わち,き裂形状の定量的評価が可能となり,検 本来 ECT は,表皮効果の影響により厚肉金属部 査の高精度化が達成されている[2]。に対応することが困難であるが,2 ヶの励磁コ 金属構造物の内部および裏面の欠陥検査技 イルからなるECT プローブを用いることで検査 術は,超音波試験(Ultrasonic Testing, UT)が ・ 対象の深部に高い密度の渦電流を誘導するこ 主流であるが,最近の原子力発電関連プラント とが可能となり,従来検出限界であった深さ 金属構造物における応力腐食割れ (Stress 5mm 以上のき裂の検出能力が改善された [5] [6]。 Corrosion Cracking, SCC)問題や維持規格の法 計算機支援検査技術による深いき裂の定量的 制化などに起因して,非破壊評価技術の更なる評価と併せて, UT とベストミックスできる ECT 高度化が社会的に求められている。UT と ECT の 技術を目指している。 ベストミックスによる検査の信頼性向上を目2. マルチアレイ ECT システム 的に、特に、表層部欠陥に対しては、ECT を用 いた欠陥サイジング技術の検討が進められて 2.1 マルチコイル ECT プローブ いる。筆者の研究グループでは,PWR の SG 管欠 目標とする高空間分解能ECT システムをFig. 陥検査の分野で培ってきたセンサ技術と計算1に図示する。マルチコイル ECT プローブのコ 機支援検査技術を基盤にして,ECT の適用範囲 イルセンサ要素がレンズ,駆動周波数が絞り, の拡大と応用の展開を進めている。ECT 信号による画像がフィルム,計算機支援要 本稿では,渦電流を用いた非破壊評価法にお 素が現像及び写真というように,欠陥の検査過 いて,最近筆者の研究グループが進めてきた研程と写真の現像過程を対応させた““ECT カメラ” 究の成果を紹介する。金属構造物の健全性を評 を提案している[4]。
OS6-1劃??数ECT裸器出ないなんかを。き裂の可化ECT信号フィルム サイングFig. 1 Concept of ECT camera.高空間分解能 ECT システムの根幹をなすマル チコイル ECT プローブとして, Fig.2に示す 48ch マルチコイル ECT プローブを試作した。セ ンサ部は、2ヶのコイル列,35 ヶのコイルから 構成されており, ECT 信号が 2次元画像として 得られる。検出方法として,高 SN 比が期待で きる TR(Transmit-Receive)型を採用し, 水平方 向と垂直方向のき裂を区別して検出すること が可能である[7]。空間分解能 3mm を目標性能 とし,表層欠陥へも対応できるように駆動励磁 周波数は 20k~40kHz に設定した。計算機支援 設計よりコイル内径, 外径, 高さはそれぞれ 1.0, 2.4, 2.0mm と決定した。探傷器に内蔵されてい るマルチプレクサ回路のスイッチング制御に よって、コイル間の相互干渉を回避しながらス キャンすることが可能であるため,直接画像処 理等を応用し,複数近接き裂の数,位置,形状 の認識が期待できる。(204mm80.332JANUOVA- wwwwwwwwNEWトークン50Fig. 2 48・ch multi-coil ECT probe. 2.2 複数近接き裂の検出性能Fig.3は,試作したマルチコイル ECT プロー ブの空間分解能評価試験結果の一部を示す。空間 分解能を評価するために, SUS304 ステンレス鋼 板に放電加工機で模擬き裂(以下 EDM スリット と略記)を 3mm 間隔で5箇所施した試験体を作 製し,プローブを一方向に走査した。図中,出力 電圧 VR, VIは,それぞれ検出コイル出力電圧の 実部,虚部である。EDM スリットの位置に対応 する出力電圧のピークが得られ,空間分解能 3mm が達成された。い simitainseということになるんじゃんwiiiiiro深さ210及さ1mmOutpud voltage V (dBi深さ0.5mmerrandatationsie.si.commeriend~-
i' TFig. 3 Spatial resolution of 48-ch multi-coil ECT probe. (40kHz, EDM slit interval:3mm) 2.3 き裂位置同定Fig.4は,前節の測定から得られる出力電圧 を画像化したものに対して,画像処理法の一つ であるテンプレートマッチングによる模擬き 裂位置の同定結果である。テンプレートマッチ ングによって,測定で得られる画像の中からき 裂形状が既知であるときの画像(テンプレート)を参照して,類似した画像部分を探索する ), [8]。その結果,図中の四角枠が同定位置を示すように5箇所のき裂を同定した。それぞれの模 擬き裂の間隔は左から 3.075mm, 3.075mm, 2.95mm, 3.075mm であり,良好な同定結果が 得られた。位置同定結果に基づいて,き裂形状 の定量的評価を詳細におこなうことができる。HighA ML深さ3mmテンプレート深さ0.5mm深さ1mm、深さ2mmLow Fig. 4 Template matching for crack position identification. (40kHz, EDM slit interval:3mm, VR signal is used.) 3.厚肉金属部対応 ECT プローブ 3.1 2 励磁方式 ECT センサFig.5は,2 励磁コイル方式を採用した厚肉 金属部対応 ECT プローブである。厚肉検査対 象の深部まで渦電流が分布するように2ヶの励 磁コイルを配置し,その中心に検出コイルを配置してある。励磁電流は,プローブ中心で磁束 - 132が相殺するように通電する[5]。これより,検出 出力電圧のピーク間隔はスリット長さに対応 コイルに近接する探傷表層部の渦電流密度を して広くなる。ピーク出力電圧は,スリット深 低くし,深部に起因する情報を取得することが さに対応して変化し,スリット深さが深いほど 可能となる。駆動励磁周波数を 1k~10kHz と 出力電圧は高くなることがわかる。 Fig. 6にお 設定し,渦電流場数値計算による計算機支援設 いて,スリット深さ 10mm と 15mm のプロー 計により, コイルの仕様・間隔を設計した。Fig. ブ出力差が 10.7%程度となり,位相差からも深 5に示す試作プローブにおいて,励磁コイル間さの識別可能である。 の間隔は 25mm である。また, 励磁および検出 コイルの仕様を Table1にまとめる[6]。Output voltage V[dB)検出コイルLepts Stim Vi Depth SmasVy Depth 10mm i Vi Deth 10mmVo:Dep150mm VDepth 15thtml53mm28mm励磁コイルInnerTurns6mm14mm4mm1281Pickup3mm7mm2mm1093yorm) Fig. 6 Detectability in depth. (1kHz, EDMslit length:10mm) Fig. 5 Double excitation coil probe for thick2)表面粗さの影響 metal structures.深さ10mm の EDM スリットで異なる表面粗 Table 1 Configuration of the probe in さをもつ試験体を用意し,表面粗さの影響を評 Fig. 5.価した。表面の粗さは,グラインダ(目の粗い Outer Heightものから#36, #60, #80) で実現した。比較のた Diameter Diameterめにフライス加工したものも用意した。フライ Excitationス加工とグラインダ#36 で表面粗さ,すなわち EDM スリット以外の部分での深さの変位は,それぞれ最大で 7.5μm と 23.0 μm であった。 3.2 深いき裂の検出性能Fig.7は,深さ検出性能の実験と同様に EDM 厚肉金属部対応 ECT プローブの性能評価試 スリットに対してプローブを走査したときの 験を実施するために, SUS304 板に異なる深さ出力信号である。スリット設置位置から離れて の EDM スリット,および表面加工を施し試験 いる位置で出力にばらつきが確認できるが,ス 体を作製した。試験は, 1) 深さ検出性能評価と,リットの部分でばらつきはほとんど認められ 2) 表面粗さの影響評価の 2 項目に関して実施 ないことがわかる。 した。EDM スリットが存在する面を探傷面と して,スリット直上を長さ方向に対して平行に プローブを走査して測定する。プローブの向きVe Grinder #30 は、2個の励磁コイル円筒の中心を結ぶ直線が, EDM スリットと平行になるように設置し,検 査対象-プローブ間の距離リフトオフは 1.0mm とした。 1)深さ検出性能102040600 Fig.6は,深さ 5, 10, 15mm の EDM スリッyemm) トに対してプローブを走査したときの出力信 Fig. 7 Dependence on surface roughness of 号である。自己差動(プローブ中心での磁束相 the target. (1kHz, EDM slit length:10mm, 殺)のため,スリット中心の出力電圧は零であり, EDM slit depth:10mm)**** V, Ginder #36V Grinder #60 * VI Canant 160V.Grinder #80V. MabingOutput voltage V(dB)The-1334mm2mm3.3 き裂深さの定量的評価深さ検出性能での実験結果を用いて,き裂の 長さ及び深さを計算機支援により定量的に評 価した。有限要素法に基づく ECT 高速シミュ レーターを用い,計算した ECT 信号と測定 ECT 信号の最小二乗誤差を最小化する最急降 下法でき裂形状を推定した[9][10]。Table 2は 推定結果を定量的にまとめたものである。 EDM スリット長さ 10, 20mm, スリット深さ 5, 10, 15m いずれの場合においても良好な推定 結果を与える。最大誤差をもたらしたのは, EDM スリット長さ 10mm, 深さ 5mm のとき であり,き裂深さで最大 2mm 深く見積もる結 果となった。これは,厚肉金属部対応 ECT プ ローブが探傷表面の情報に関して多少鈍感で あることに起因していると考えられる。 ? 従来 ECT の適用範囲はき裂深さ 5mm 以内 であったが,厚肉金属部対応 ECT プローブの 出力電圧のみでも十分に深さ 10mm と 15mm のき裂が識別可能である。さらに,計算機支援 検査技術によるき裂形状推定により,き裂の深 さサイジングの高精度化が期待できる。Table 2 Summary of crack sizing (VT-Alpha667, Mem. : 512MByte)DOSL20DIOL 20DISL20DOSL 10DIOL 10DISL104.919.314|79915.3-0.7-12-0.10.3Reconstructed depth (mm)Entor of depth (mm) Reconstructed length (mm)Error of length (mm) Computing time (8)0.1 20 020201003003063054683704124.結言 * 本稿は渦電流を用いた非破壊評価法として, 第一に,マルチコイル ECT プローブからなる 高空間分解能 ECT システム,第二に,厚肉金 属部対応 ECT プローブについて紹介した。 ECT の優れた表面欠陥の検出性をさらに洗練 し,欠点の一つであった深いき裂に対する検出 能力の改善の糸口を見出した。謝辞本技術開発は「革新的実用原子力技術開発提 案公募事業」((財)エネルギー総合工学研究所) として実施した。参考文献 [1] 高松 洋,宮 健三,陳 振茂,““加圧水型原子力発電所における電磁非破壊検査技術 開発の経緯”, 日本 AEM 学会誌, 8-1, 2000,pp. 95-101. [2] T. Takagi, and H. Fukutomi, ““BenchmarkActivities of Eddy Current Testing for Steam Generator Tubes,” Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 17:Electromagnetic Nondestructive Evaluation (IV) (eds. S. S. Udpa et al.),IOS Press, 2000, pp.235-252. [3] 櫻井望,黄皓宇,高木敏行,内一哲哉,”数値シミュレーション支援によるアレイ マルチコイル型渦電流探傷プローブの開 発”,機械学会論文集,69-676, A, 2002,pp. 119-126. [4] 長屋嘉明,遠藤久,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,西水亮,小池正浩,松井哲也, ““構造物適応型ECT カメラに関する研究(1)マルチコイル ECT プローブの基礎特性-““,原子力学会秋季大会, 2003, p. 236. [5] 佐藤一彦,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,”厚肉材用渦電流探傷プローブの開発とき 裂の定量的評価”, 機械学会論文集, 69-678,A, 2003, pp. 455-462. [6] 遠藤久,黄皓宇,内一哲哉,高木敏行,西水亮,小池正浩,松井哲也,““渦電流探傷 に基づく厚肉材における深いき裂の定量 的評価““,非破壊検協会秋季大会講演概要集,2003, pp.75-77. [7] 福高広幸他,““渦電流法に基づくガスタービン動翼の非破壊損傷評価第3報:動翼 非破壊き裂検出装置の開発”, 電中研報告, http://criepi.denken.or.jp/jpn/kenkikaku/rd-info/pdf/T01045. pdf. [8] 長屋嘉明,高木敏行,黄皓宇,内一哲哉,”テンプレートマッチングを用いた画像処 理による渦電流探傷信号からの複数き裂 の同定““, 機械学会論文集, 69-684, A, 2003,pp. 1236-1243. [9] H. Huang and T. Takagi, ““InverseAnalyses for Natural and Multi-Cracks using Signals from a Differential Transmit-Receive ECT Probe,” IEEE TransMagn., 38, 2, 2002, pp. 1009-1012. 10] H. Huang, H. Fukutomi, T. Takagi, and J.Tani, ““Forward and Inverse Analyses of ECT Signals Based on Reduced Vector Potential Method using Database, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics14:Electromagnetic Nondestructive Evaluation (II), IOS Press, 1998, pp. 313-321.34“ “渦電流を用いた構造物適応型非破壊評価技術の開発 “ “高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI“ “渦電流を用いた構造物適応型非破壊評価技術の開発 “ “高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI