医学から類推される保全学の構造と体系
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カテゴリ: 第1回
1.緒言
保全学の構造と体系については、既存学術か らの類推を実施している例もあるが、保全学と して必要な学問は何かということが今後の保 全学を構築する上で、必要になると考えられる。 従って、本稿では保全学との類似性が強いと考 えられている医学から保全学として必要な学 男を類推してみる。
2.医学とのアナロジー..1 医学と保全との類似性 ・ 従来から医療と保全の類似性については 色々と議論されているが、ここでは、対象・目 的・方法(活動)という観点で、その類似性を 考えてみる。先ず、対象は人間とプラントである。何れも、 色な部品からなる複雑な系が対象となってい るが、大きな類似点は、「実時間を考えねばな らない事象を取り扱う」及び「人間系を取り扱 う」ということである。物理学等の基礎学科は 虚時間を取り扱うが、医療・保全では実時間を 取り扱うために、一度行った行為は後戻りでき ないという不可逆性がある。又、両者とも人間 系を対象とするため、社会科学的学問体系が必 要となってくる。医学では後述するように社会 医学という領域の学問が早くから発展してお り、今後の保全学を構築する上での大きな参考 になると考えられる。次に、目的は、医学では「生体の構造・機能 及び疾病を研究し、疾病の診断・治療・予防及
PS 1 - 2び社会復帰の方法を開発する。」ことであり、 保全学では「経年劣化現象のメカニズムを研究 し、プラントの劣化診断・補修・取替による機 能回復、劣化緩和等の予防措置などの手法を開 発する。又、これらを活用することにより、プ ラントの安全性・信頼性を維持する。」ことで ある。又、両者とも初期段階においては、事後措置 が主流であったが、除々に予防措置に重きが置 かれるようになり、予防措置に関する研究・開 発が熱心に行われている。 ※ 但し、人間の寿命は物理的に限度があり、医 療をもってしても永遠の命を得ることは出来 ない。一方、プラントの寿命は構成する機器・ 部品を取り替えることにより延ばすことは可 能であるが、経済的な観点から決定されるとい う大きな違いがあることも忘れてはならない 点である。又、人体の老化と機器の経年劣化は 類似性を感じさせるものがあるが、そのメカニ ズムは全く異なるものである。即ち、学問体系 や構造の類似性から保全学が如何あるべきか というような議論をすることは問題無いが、保 全の説明にあたって、単純に人体や医療行為と 比較することは誤解を与える可能性があるこ とに十分に注意を払う必要がある。表-1 医療活動及び保全活動の類似性 項目 医療保全 定期的核?定期健康診断 「定期検査/自主点検随向監視 概略 点候問診巡視点校 単体点検|胃カメラ、内視鏡 |ファイバースコー 機器分解点検に相当プ点検するものは医療では、機器分解点検 なく、手術になる。 単体非破壊検査 MRI、CTPT.UT、RT 能「視力、聴力 「性能確認検査 「運動機能作動確認試驗 全体検査、血液検査| 水質管理 断病名確定劣化モード、メカ 病状の進行予測ニズム 治療方法の選定 劣化進展速度 治療方針保全措置方法の選定対魔加措置投票手術保全措置方針 水質改善 | 補修、取替 「機器取替
“ “医学から類推される保全学の構造と体系“ “三牧 英仁,Hidehito MIMAKI“ “医学から類推される保全学の構造と体系“ “三牧 英仁,Hidehito MIMAKI
保全学の構造と体系については、既存学術か らの類推を実施している例もあるが、保全学と して必要な学問は何かということが今後の保 全学を構築する上で、必要になると考えられる。 従って、本稿では保全学との類似性が強いと考 えられている医学から保全学として必要な学 男を類推してみる。
2.医学とのアナロジー..1 医学と保全との類似性 ・ 従来から医療と保全の類似性については 色々と議論されているが、ここでは、対象・目 的・方法(活動)という観点で、その類似性を 考えてみる。先ず、対象は人間とプラントである。何れも、 色な部品からなる複雑な系が対象となってい るが、大きな類似点は、「実時間を考えねばな らない事象を取り扱う」及び「人間系を取り扱 う」ということである。物理学等の基礎学科は 虚時間を取り扱うが、医療・保全では実時間を 取り扱うために、一度行った行為は後戻りでき ないという不可逆性がある。又、両者とも人間 系を対象とするため、社会科学的学問体系が必 要となってくる。医学では後述するように社会 医学という領域の学問が早くから発展してお り、今後の保全学を構築する上での大きな参考 になると考えられる。次に、目的は、医学では「生体の構造・機能 及び疾病を研究し、疾病の診断・治療・予防及
PS 1 - 2び社会復帰の方法を開発する。」ことであり、 保全学では「経年劣化現象のメカニズムを研究 し、プラントの劣化診断・補修・取替による機 能回復、劣化緩和等の予防措置などの手法を開 発する。又、これらを活用することにより、プ ラントの安全性・信頼性を維持する。」ことで ある。又、両者とも初期段階においては、事後措置 が主流であったが、除々に予防措置に重きが置 かれるようになり、予防措置に関する研究・開 発が熱心に行われている。 ※ 但し、人間の寿命は物理的に限度があり、医 療をもってしても永遠の命を得ることは出来 ない。一方、プラントの寿命は構成する機器・ 部品を取り替えることにより延ばすことは可 能であるが、経済的な観点から決定されるとい う大きな違いがあることも忘れてはならない 点である。又、人体の老化と機器の経年劣化は 類似性を感じさせるものがあるが、そのメカニ ズムは全く異なるものである。即ち、学問体系 や構造の類似性から保全学が如何あるべきか というような議論をすることは問題無いが、保 全の説明にあたって、単純に人体や医療行為と 比較することは誤解を与える可能性があるこ とに十分に注意を払う必要がある。表-1 医療活動及び保全活動の類似性 項目 医療保全 定期的核?定期健康診断 「定期検査/自主点検随向監視 概略 点候問診巡視点校 単体点検|胃カメラ、内視鏡 |ファイバースコー 機器分解点検に相当プ点検するものは医療では、機器分解点検 なく、手術になる。 単体非破壊検査 MRI、CTPT.UT、RT 能「視力、聴力 「性能確認検査 「運動機能作動確認試驗 全体検査、血液検査| 水質管理 断病名確定劣化モード、メカ 病状の進行予測ニズム 治療方法の選定 劣化進展速度 治療方針保全措置方法の選定対魔加措置投票手術保全措置方針 水質改善 | 補修、取替 「機器取替
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