原子力発電所の保全と高経年化対策

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カテゴリ: 第1回
1.はじめに
日本において初期の原子力発電所の運転が 開始されてから30年以上が経過した。日本の原子力発電所においては安全性・信頼 性確保の観点から,品質保証体制の下に保守管 理活動が行われ,様々な保全が継続的に実施さ れるとともに,国や独立行政法人により厳格な 検査,審査が実施されている状況にある。一方,原子力発電所の運転の長期化に対して は、安全性・信頼性のより一層の向上に向けた 取組みとして,高経年化対策(PLM)の活動が 実施されている。このような状況を踏まえ,原子力発電所にお ける保全,高経年化対策の実施状況や技術評価 内容等について述べるとともに,海外の状況に ついて紹介する。2. 原子力発電所の保全原子力発電所においては,運転監視や日常の 巡視点検等を実施するとともに,定期的に実施 される燃料交換による停止時に,各構築物や機 器に対し,設計条件や運転経験等に基づく計画
的な点検や検査が実施されている。また,国内外の他の発電所で発生した事故・ 故障の対策についても水平展開を行い,設備の 改善をはじめ,運転・保守運用等の改善が実施 されている。 - 特に事業者は,定期検査時等において実施す る点検計画を,構築物,系統及び機器の適切な 単位毎に保全方式を選定し,策定することとし ている。また,これらの保守管理の妥当性については, 高経年化対策の検討結果トラブル経験,故障 実績等の運転経験やリスク情報などの各種科 学的知見を考慮して定期的に評価し,改善する こととしている。 以下に保全方式を示す。1予防保全構築物,系統及び機器の故障を未然に防止 あるいは故障発生確率を低減するための保 全方法であり,以下の保全方式があげられる)時間計画保全 1 構築物,系統及び機器に対し定められた時間計画に従って点検・補修等の処置を行う-209保全であり,運転経験や故障及び劣化モー ド等により時間経過による保全が適切で ある場合に適用される保全方式i)状態監視保全 ・傾向監視保全構築物,系統及び機器の使用もしくは使 用中における状態確認あるいは傾向監視 を行うとともに,科学的知見により劣化の 進展状態、寿命の予測や評価を行い,これ に基づき妥当と判断される時期に点検・補 修等の処置を行う保全である。当該保全は、 使用もしくは使用中における監視パラメ ータを適切に採取及び評価でき,それらの 傾向を監視することにより,劣化の進展状 況や寿命の予測が可能であり,点検・補修 等の保全計画が策定可能である場合に適 用する保全方式 ・日常保全巡視点検,定例試験,その他の方法によ って構築物,系統及び機器の使用もしくは 使用中における状態を監視するとともに, 適宜,フィルタ等の清掃,消耗品の取替等 の処置を行う保全であり,巡視点検及び定 例試験等により,その機能の状態を日常的 に監視することが適切である場合に適用 する保全方式2事後保全構築物,系統及び機器の機能喪失発見後に 要求機能遂行状態に修復させるために行う 保全であり,機能喪失時にあっても,原子炉 の安全性維持に影響を与えることがない場 合に適用される保全方式なお,これらの保全方式の適用については, リスク評価の観点から,原子力発電所の施設が 機能喪失した場合における安全機能への影響 度を考慮し,その影響度が低い施設については 状態監視保全や事後保全を選択することが,効 果的かつ効率的な保全を実施する上で重要と されている。原子力発電所における保守管理の実施フロ ーを Fig.1に示す。品質保証保守管理経営者の責任 品質方針保守管理の実施方針及び目標| MR-3100文書管理 記録の管理文書管理記録 NR-6000保全の対象範囲の定「R-3200教育・要員の 教育y保全プログラムの策定 ・保全計画 ・確認・評価方法等MR-3300設計・開発WR-3400点検・補修等の実施」 ・点検・ ・補修・取替え・改造業務の計画 務の実_WR-3500 点検・補修等の結果の確認・評の可 人結の確認プロセスの確認評価及び改善 不適合管理改善 是正処置是正処徴MR-3600 ・原因究明 ・補修・取替え・改造等 ・保全プログラム等見直しMR-3700 保守管理の定期的な評価 ・定期検査時ごと ・定期的評価・運転経験 ・経年劣化傾向 ・各顔料学的知見Fig.1 保守管理の実施フロー(JEAC4209-2003)3. 原子力発電所の高経年化対策3.1 高経年化対策の実施状況原子力発電所の高経年化対策については,原 子力安全委員会が平成6年に策定した「原子力 の研究, 開発及び利用に関する長期計画」また, 平成6年に示された「総合エネルギー調査会原 子力部会中間報告」等でその必要性が指摘され 具体的な検討が開始された。平成8年に資源エネルギー庁から「高経年化 に関する基本的な考え方」として,具体的な評 価手法,評価例が示され,事業者はこれに基づ き具体的な検討を開始している。平成 11 年には、我が国で最も初期に運転を 開始した軽水型商業用原子力発電所である,日 本原子力発電株式会社敦賀発電所1号機(営業 運転開始: 1970.3, 電気出力:357MW, 炉型:BWR), 関西電力株式会社美浜発電所1号機(営業運転 開始:1970.11, 電気出力:340MW,炉型:PWR), 東京電力株式会社福島第一原子力発電所1号機 (営業運転開始:1971.3, 電気出力: 460MW, 炉型:BWR)について,高経年化対策に関する-210事業者の検討が行われ,詳細な技術評価結果が めの保全活動が評価されている。 公表された。事業者においては,この考え方を取替容易な この活動は定期安全レビュー(PSR)に組み 機器を含めた原子力発電所の安全機能を有す 込み実施することとし,順次他プラントに展開るすべての構築物,機器に展開し評価が実施さ されている。昨年末には,関西電力株式会社高れている。 浜発電所 1.2 号機,中国電力株式会社島根原事業者において実施された技術評価内容(関 子力発電所1号機,九州電力株式会社玄海原子 西電力株式会社高浜発電所1号機の例)につい 力発電所1号機の高経年化対策に関する報告書て, 技術評価対象機器を Table 2 に示す。また, が公表され,これらを含め 5 事業者により, 9Fig.2 に経年変化事象の抽出及び技術評価手順 プラントにおいて実施されている。Table 1 に について示す。 高経年化対策の実施状況を示す。 - なお,事業者による高経年化対策に関する技Table 2 技術評価対象機器 術評価等は,自主的な保安活動の位置付けによ| 種類 |評価?象機器 り実施されてきたが,昨年9月に「実用発電用ターボポンプ(海水ポンプ等). 1次冷却材ポンプ真空ポンプ(復水器真空ポ ポンプンプ) 原子炉の設置,運転等に関する規則」が改正さ多管円筒型熱交換器(抽出水再生クーラ等), 蒸気発生器,直接接触式熱交 熱交換器換器(脱気器), 2重管式熱交換器(ROS 高温側サンプル冷却器) れ,その実施の義務規定が整備されるとともに,高圧ポンプモータ(海水ポンプモータ等), 低圧ポンプモータ(ほう酸ポンプモ ポンプモータータ等) 保安規定の要求事項となった。原子炉容器,加圧器(加圧器本体等), 原子炉格納容器(原子炉格納容器本 容器 体等) 補機タンク(アキュームレータ等)フィルタ(ほう酸フィルタ等)、脱塩「塔(脱ほう素塔等) プール型容器(使用済燃料ピット等) Table 1 高経年化対策の実施状況ステンレス配管(1次冷却系統配管等)、炭系配管(主基気系統配袋] 配管等)1次冷却材管,配管サポート一般弁本体部(仕切部等),一般井駆動部(電動装置等),特殊弁(主蒸気止」 営業運転 高経年化対策に関する報告書の公表弁 プラント名め弁等) 開始年月 1998年 1999年 2000年2001年 2002年 2003年 2004年炉内構造物 炉内構造物 敦賀発電所1号機 1970.3 BWR「高圧ケーブル(高圧 CA ケーブル等), 低圧ケーブル(PA ケーブル等) 同軸] ケーブルケーブル(三軸同軸ケーブル等) 美浜発電所1号機 1970.11特高開閉所設備(ガス遮断器等), 発電設備(タービン発電機等),配電設備 電氣設備(メタクラ等) 福島第一原子力BWR 発電所1号機高圧タービン,低圧タービン、主油ポンプ, 補助油ポンプターニング油ポン タービン設備プタービン調速装置・保安装置, タービン動補助給水ポンプタービン 美浜発電所2号機、コンクリートコンクリート及び鉄骨構造物及び鉄骨構造物 1974.3 BWRプロセス計測制御設備(1次冷却材圧力(広域)等), 制御設備(補助給水ポ 福島第一原子力計測制御設備 発電所2号機ンプ起動盤等)炉型PWR1971.31972.7PWR島根原子力 発電所1号機1974.7BWR高浜発電所1号機1974.11PWR空調設備ファン(制御建物屋送気ファン等) モータ(制御建屋送気ファンモータ等), 空 調ユニット(制御建物屋冷暖房ユニット等),ダクト(格納容器排気筒等),ダン パ(中央制御室送気隔離第1ダンパ等)弁(格納容器送気弁等)玄海原子力 発電所1号機1975.1PWR(05““)高浜発電所2号機」1975.11PWR(05““)機械設備●:事集者の公表時期を示す。口:営集運転開始後30年を示す。意機器サポート(原子炉容器サポート等), 空気圧縮装置(計器用空気圧縮 装置),燃料取扱設備(燃料取替クレーン等),原子炉容器上蓋附属設備(制 御棒駆動装置等) 非核燃料炉心構成品(制御棒クラスタ等), 基礎ボルト(ス タッドボルト等) 非常用ディーゼル発電設備(非常用ディーゼル発電機等)、喧流電源装置, 計器用電源設備(無停電電源等)、制御棒駆動装置用電源設備(M/Gセット 発電機等) |廃液蒸発装置, アスファルト固化装置,雑固体焼却設備蜜源設備3.2 高経年化対策の概要その他設備3.2 高経年化対策の概要原子力発電所の高経年化対策については,平 成8年の資源エネルギー庁「高経年化に対する 基本的な考え方」において,安全上重要でかつ 補修取替が困難な機器・構築物(加圧水型原子 炉(PWR): 8 機器, 1 構築物,沸騰水型原子炉 (BWR): 6 機器, 1 構築物)を評価対象とし, 技術評価にあたっては,考慮すべき経年変化事 象に対し,現状が適切に管理されているか,あ るいは発生・進展の可能性があるか,運転期間 中の健全性に対し十分な裕度を有するかなど について評価が行われ,高経年化に対応するための保全活動が評価されている。事業者においては,この考え方を取替容易な 機器を含めた原子力発電所の安全機能を有す るすべての構築物,機器に展開し評価が実施さ れている。事業者において実施された技術評価内容(関 西電力株式会社高浜発電所1号機の例)につい て, 技術評価対象機器を Table 2に示す。また, Fig.2 に経年変化事象の抽出及び技術評価手順 について示す。-211経年変化事象の抽出一般的ネクリーニング個別条件下での抽出:}第一段階第二段階第三段階・工学的に想定 される経年変化 事象のうち、 子力強の成か れている現を 考し、原子力で! 想定される経年 変化平象を抽出。・原子力で想定さ れる経年変化 象について、国 内外の過去数十 年の運転故等 を略まえ、 を見通して生 する可能性につ いて・各種器別の条件(設計・ 保全上の配慮,転実) を略まえ代当に される物に対して、その 機能特に国連する主要 なすべての部品に展開した 上で、マトリックス形式によ り考慮すべき部位・早慶 化事象を抽出経年変化事象の評価技術部,現状保全」し健全性評価 高品料化を考慮した場合の経年変化率 のしさ度合いについての評価 ・M的データによる評価 ・近の技術的知見に基づいた評価 ・郡野の定量的評価安)・点検内容(, ・関感する他験内容 ・ ・取得技術高経年化への対応ト・点検・検査の充実,0正化 ・現状保全の ・長期運転にしての留意点抽出 ・技術開発題の松町Fig.2 経年変化事象の抽出及び技術評価手順3.3 高経年化対策の評価結果 1 事業者の評価結果(関西電力株式会社高浜発 電所1号機の例)では,高経年化に関する技術 評価結果から,大部分の機器については現状の 保全を継続することにより長期的な健全性が 確保されることが確認された。しかしながら, 一部の機器については,今後の高経年化を考慮 した場合,現状実施している保全に加えさらに 充実すべき対応事項が抽出された。これらの新たな保全策については長期保全 計画としてとりまとめられている。事業者は、 この長期保全計画については,保守管理活動の 一環として,発電所の具体的な保全計画に反映 し,計画的に実施していくこととしている。 同時に,今後更に充実すべき技術開発課題につ いて以下の事項が抽出されている。関西電力株式会社高浜発電所1号機におけ る長期保全計画の例を Fig.3 に示す。なお,高経年化に関する評価は,現在の最新 知見に基づき実施されたものであり,今後 10 年を超えない期間ごとに新たな知見を踏まえ て再評価が実施される。- 技術開発課題(高浜発電所1号機の例) 1 原子炉容器中性子照射脆化の上部棚吸収エネルギー低下に関する評価技術の整備 原子炉容器中性子照射脆化に関する関連 * 温度上昇に対する脆化予測式の精度向上 3 原子炉容器中性子照射脆化に関する使用済試験片再生技術の確立 4 ステンレス鋼の照射誘起型応力腐食割れ評価技術の確立 6 ケーブルの絶縁低下に関する実機環境を模擬した評価手法の確立高浜発電所1号機高経年化対策検討に基づく長期保全計画 機種名 機器名経年変化事象長期健全性評価結果現状保全 |長期保全計画 総合評価保全項目実施時期 「ケーシング現時点の知見にお (ケーシング「れみ価を行い、安定的な内面目はない、神領130回数の期待いて発生の可能性」 ポンプ本 余熱除去 カバーを含 「れ果校係数が1以上視検査 む)は過渡回数に依ビュー |阪労割れ存する。目視検査に より検知可能。現時点の知見にお 定期的な内面目いて発生の可能性視検査、配管用はない。疲労評価疲れ評価を行い、彼 1次冷却ケーシング[機部超音波探傷は過渡回数に依れ累積係数が1以 材ポンプ疲労割れ検査及び脚部存する。 目視検査、実過食回数の独の容期安全レ 部浸透探傷検|超音波探傷検査及び浸透探傷検査に より検知可能。短期:2004年~2008年までに実施中長期:2004年~2013年までに実施、定期安全レビュー:定期安全レビューで実施Fig.3 長期保全計画(例)4. 海外の状況- 海外においても同様に原子力発電所の運転 期間の長期化に対する取り組みが実施されて いる。以下に概要を述べる。 4.1 米国 - 原子力発電所の運転期間は原子力法により」 40年と定められており,運転認可更新規則によ りさらに 20 年までの期間の延長が認められて いる。運転認可更新規則等によると米国におけ る技術評価の概要は以下のとおりである。1)評価対象機器 11 設計基準事象時及びその後も,以下の機能を 保証するために機能遂行が維持されていなく てはならない安全関連の系統,構築物及び機器 . 原子炉冷却材バウウンダリの健全性 1. 原子炉の安全停止機能損傷すると安全関連の機器の機能に直接支 障を来すすべての安全関連の系統, 構築物, 機器 他-2122)評価内容 ・評価対象機器の抽出 ここでは,評価対象機器のうち,静的 (Passive) で, 長寿命 (Long-Lived)の機器の みを対象としている。これは、動的な機器は 保守規則(Maintenance Rule)により,その 機能遂行性を確認するように定めており,ま た,その機能遂行性は通常のモニタリングで 容易に確認できることから,圧力バウンダリ のように静的で,その機能遂行性が容易に確 認できないものについて評価を行うよう求 めている。 ・経年変化事象の評価 対象となる経年劣化事象が運転延長期間中 適切に管理されることを保証する。 ・期間限定経年劣化解析 設計等に時間の因子を考慮したものについ て,運転延長期間についても問題ないと再評 価するか,運転延長期間中適切に管理できる ことを評価する。3)評価対象の経年変化事象主な経年変化事象として以下があげられて いる。 ・炭素鋼機器の腐食 ・ステンレス鋼,高ニッケル合金のSCC ・疲労(環境疲労含む) ・ステンレス鋼鋳鋼の熱時効 ・炉内構造物の IASCC 他4)経年劣化事象の管理方法 1 経年劣化事象の管理については,以下の内容 があげられている。 ・新規管理プログラムの策定 ・期間限定経年劣化解析の実施 ・1回検査(評価で有意と判断しなかった事象 が発生していないことの確認)5)運転認可更新の状況米国における運転認可更新の申請及び認可 状況を Table 3に示す。(平成 16年2月末現在) - 運転認可更新申請済みのプラントは 42 基あ り,そのうち認可取得済み 23 基,審査中 19 基となっている。Table 3 米国Table 3 米国運転認可更新に係る申請済みプラントプラント名 Calvert Cliffs-1,2 Oconee-1,2,3 ANO-1 Hach-1,21998.4 | 1998.72000.1 2000.2| 2000.3 2000.5 2001.6 2002.1Turkey Point-3.4 Surry-1,2 North Anna-1,2 Catawba-1.2 McGuire-1,2 Peach Bottom-2,3 St.Lucie-1,2 Fortcalhoun設置者炉型 Constellation Nuclear CE-PWR Duke Energy Corp. B&W-PWR Entergy Corp.B&W-PWR Southern Nuclear BWR Operating Co. FP&L Co.WH-PWR | Virginia Power Co. WH-PWR Virginia Power Co. WH-PWR Duke Energy Corp. WH-PWR Duke Energy Corp. WH-PWR ExelonBWR FP&L Co.CE-PWR Omaha Public Power CE-PWR District CP&L Co.WH-PWR RG&EWH-PWR SCE&GWH-PWR ExelonBWR ExelonBWR Southern Nuclear WH-PWR Operating Co. Entergy Corp.CE-PWR Indiana Michigan Power WH-PWR 「TVABWR DominionCE-PWRWH-PWR NMCWH-PWR2000.9 2001.5 [2001.5 [2001.6 | 2001.6 2001.7 2001.11 | 2002.12002.6 2003.3 2003.3 | 2003.12 2003.12 2003.5 2003.10 | 2003.10H.B.Robinson Ginna Summer Dresden-2,3 Quad ities-1,2 Farley-1,2| 2002.62002.7 | 2002.8 2003.1 2003.1 2003.9(審査中) (審査中) (審査中)」 (審査中) (審査中) (審査中)| ANO-2 D.C.Cook-1,2 Browns Ferry-1,2,3 Millstone-2,32003.10 | 2003.10 2003.12(審査中) (審査中)」 (審査中) | (審査中)| 2004.1Point Beach-1,22004.2(審査中)4.2 欧州 1)フランス規制によるプラント運転期間の制限はない。 - 定期安全レビューとして,安全要件への適合 性が評価され,必要に応じてプラント変更措置 が摘出されている。なお,この定期安全レビュ ーにおいて,経年劣化事象に係る評価・検討は 実施されていない。 - フランスでは、経年劣化事象に対する評価・ 検討は,ライフタイムプロジェクトと称して実 施されている。これは、 フランス電力公社 (EDF) がフラマトム社の支援のもと,経年劣化事象に 関する研究を実施し,評価対象機器の抽出や, これらの機器に対する経年劣化管理プログラ ムの策定を実施するとともに経年劣化関連知 識のデータベース化を図るものである。2) ドイツ - 2002 年の原子力法改正により, 32 年運転相 当の総発電量に到達した時点で運転終了とさ れており,運転延長はない。-213一定期安全レビューを実施し,プラント安全状 態の評価として,最新の安全基準及び慣行との 比較評価が実施されている。また,確率論的安 全評価(PSA)が実施されている。(PSA: Probabilistic Safety Assessment)3)イギリス規制によるプラント運転期間の制限はない。 - 定期安全レビューを実施し,最新基準との比 較として,安全解析書等の再評価,プラント寿 命を制限しうる経年劣化事象の抽出が実施さ れている。5. おわりに- 原子力発電所の保全及び高経年化対策につ いて述べた。原子力発電所の安全性・信頼性確保のため, 様々な保全の実施等による保守管理活動が実 施されている状況にある。限られた資源を基に, 保守管理の最適化を追求するためには,高経年 化対策の評価結果、トラブル経験,故障実績等 の運転経験やリスク情報などの科学的知見を 考慮し,如何に効果的でかつ効率的に実施され るかが重要である。そのためには,保守管理の Plan-Do-Check-Action サイクルを適切に廻し ていくとともに,高経年化対策やトラブル経験 等の運転経験や技術的な知見等の的確な評 価・検討がなされ,原子力発電所の保守管理に 対し効果的な反映がなされることが重要であ る。 - 特に高経年化対策については,主要国におい ても同様の技術評価が実施されおり,豊富な運 転経験をベースに膨大な技術情報が扱われて いることを踏まえ,この技術情報に関するデー タベースを構築することにより,各国の規制者 側・事業者側等に対し,適時,最良の情報が提 供されることで,高経年化対策はもとより保守 管理のさらなる最適化が図れるものと期待で きる。Fig.4 にイメージを記す。規制者側・事業者側が評価・検討に参照経年劣化事象に関するデータベース(World Wide) ? 経年劣化事象の抽出 ・ 経年劣化事象の評価手法経年劣化事象の管理手法等| *ANK““ | | |本米国 LR※1 情報日本 PLM※2情報| | MES欧州 PSR※3情報※1:LR(License Renewal:運転認可更新) ※2:PLM(Plant Life Management:高経年化対策) ※3:PSR(Periodic Safety Review:定期安全レビュー)Fig.4 経年劣化事象に関するデータベース参考文献 [1] 資源エネルギー庁“高経年化に関する基本的な考え方”平成8年4月。 [2] 社団法人火力原子力発電技術協会“発電設備の予防保全と余寿命診断”IV. 原子力発電所の高経年化対策。 [3] 社団法人日本電気協会“原子力発電所の保守管理規定(JEAC 4209-2003)”。 [4] 関西電力株式会社“美浜発電所2号機定期安全レビュー(第2回)報告書”平成13年6月。 [5] 関西電力株式会社“高浜発電所1号機高経年化対策に関する報告書”平成15年12月。-214
“ “原子力発電所の保全と高経年化対策 “ “西田 泰信,Yasunobu NISHIDA“ “原子力発電所の保全と高経年化対策 “ “西田 泰信,Yasunobu NISHIDA
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