「保全工学」構築のアプローチ

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カテゴリ: 第1回
1.緒言
人類の活動が地球環境や地球活動に影響を与 えるようになった今日、人類の造り出す人工物 については、合理的に維持管理し長期間活用す る必要があるとの考え方に転換しつつあり、そ れを可能にしようとすることは、もはや喫緊の 課題となっている。 1 人工物に対する従来の保全活動は、保全管理 者の経験と勘とに大きく依存しており、これが 保全を最適化する上での大きな障害となって いた。例えばプラントの保全は、設計、運用、 管理に携わるエキスパートによりその内容が 立案され実施されている。また計画立案の際に 最も有効な情報は、エキスパートの実務経験に 基づく知識や、過去の運転実績であった。特に 原子力プラントの場合、他の産業と比較して歴 史が浅いことから、現場の人達の試行錯誤によ って保全計画の改善がなされてきた側面が強 い。しかしながら現在は、運転経験の蓄積に伴 い、従来の経験に基づく保全から理論に基づく 保全へと移行しようという気運が高まってい る。そして、この一連の流れに理論構築の枠組 みを与え体系化することにより、合理的効率的 に保全の最適解が得られることが強く期待さ れている[1]。 本検討では上記の観点から、保全工学の一部 と考えられる「検査システム工学」の構築に向 けたアプローチについて検討を実施した。
2.「検査システム工学」構築のアプローチ2.1 検査に関する主要な構成要素 検査計画を立案する場合に決定する必要があ る事項は、検査しようとする対象に対し、どこ をどのような方法で、いつ実施するかであり、 これらは「検査対象」「検査項目」「検査方法」 「検査時期」の4つの要素に対応している (Figl)。検査システム工学は、これら4要素を 合理的に決定する理論やツールを提供してく れる必要がある。検査対象る対象を定●経年変化の機関と発生予測部位 詳35:30の部分をはさなど)(300位の高さ、数など)予測部位の点検・検査さも! 検着を破壊検娘が温度の定など)後谷内容検査診断方法作業 ) ※検査モニタリング方法の種類に合格S停止期間 検査装置を検査員(分析装の組合せ 協 力 :サイシングルなどのかかり作家伊間平化!工事方法 無分解するが活か/足場を設などをどう使うか 工計画 作業の力道山S停止期●経年劣化の進際予測! 上記をまえた検査実施のタイミング決定経年変化の発生が予知される時点 ※経年変化の進展で出等の様に失が予測される前の時点Fig1 検査内容の主要な要素2.2 検査内容の合理的な決定手法 2.2.1 検査対象の選定方法 程度の差こそあれ、如何なる構造物も供用中-229に経年劣化する。そこで、構造物の健全性信頼 性を確保するために、その構成機器の全てを常 時監視し高頻度で検査することが考えられる。 しかし、膨大な数の機器を一律に検査するのは 合理的でなく現実的でもない。例えば、原子力 プラントを構成する系統のひとつを考えても、 そこには数多くの弁、配管、容器、ポンプ等、 幾種類もの機器が存在し、さらにポンプ1台を とらえても軸、軸受、羽根車等の数多くの部品 から構成されている。経年劣化の発生頻度や可 能性は、各機器の使用条件・環境等によって異 なり、またプラント運転上で機器が果たすべき 役割によっては、経年劣化が発生した時の社会 等への影響度も異なる。以上の検討から、機器 ごとに下記を考慮して検査を実施することが 合理的であると考えられる。1 機器の経年劣化の発生可能性、頻度 2 経年劣化による故障が発生した場合の影響度(安全性、経済性) なお、プラント運転上の各機器の重要度等も 勘案して保全の内容や頻度を合理的に決定す るのと同様に、安全上重要な機器は合理的な手法 で検査対象を選定し、計画的に検査を実施すべき であり、故障しても安全性の問題が無いか、影響 が小さい場合は検査などを実施せず、機器が故障 した後、事後保全として当該機器を修復した方が 合理的な場合があると考えられる。上記12を考慮して検査対象を決定する手 法として、現在、リスク評価手法が幾つかの産 業分野で開発され実用化されつつある[2]。これ らの手法を活用し、より一層合理的にかつ容易 に検査対象機器を選定することは可能である。2.2.2 検査内容(検査項目)の選定方法産業界で用いられている機器は、これまでの 研究や運転保守実績などからどの部位にどの ような経年劣化が発生する可能性があるか、ほ ぼ特定されている。たとえば、振動診断や潤滑 油分析など、設備診断活動を積極的に導入展開 している事業者には、経年劣化がどのように機 器の運転状態へ表れてくるのか等も含め独自 にデータベース化しているところも多い。また 原子力発電所の場合、機器の長期的な健全性を 評価するため、「高経年化対策検討」と称する機器の経年劣化評価を体系的に実施する手法 と仕組みが確立され、既にこれが実行、運用さ れている[2]。従って、これらの成果を利用して、 経年劣化が想定される部位と経年劣化モード を整理し特定できれば、その経年劣化状況を検 査するための検査内容(検査項目)を合理的に 決定することができる。2.2.3 検査方法の選定方法[2] - 検査方法の選定は、検査性能へ対する要求と 密接に関係すると考えられる。検査方法に要求 される性能/能力には、i)欠陥検出能力、ii) 欠陥位置同定能力、iii)欠陥方向特定能力、iv) 欠陥サイジング能力の4つが挙げられる。これ らの性能/能力に対し、如何なる場合でも一様 に高度なレベルが要求されるのは合理的では ない。このことについて、以下に欠陥サイジン グ能力を例にとり検討する。1き裂の深さと長さの情報が必要な場合検査では、検出されたき裂のサイズ(深さと 長さ)とその精度が問題である。その両者がそ の後に行う機器の健全性評価に直接影響する からである。機能低下劣化度機能喪失十分な安全率十分な時間余裕|ac:機能喪失に対応するき裂サイズa:次回点検までのき裂進展量き裂進展-:検査による測定誤差| as: 検査による測定値今回検査時次回検査時Fig2 機器の機能、経年劣化速度および検査精度の関係acFig2 に示すように、検査による欠陥の測定値 ao と測定誤算Eに対し、機器の機能喪失ま での裕度が十分確保されていれば、即ち次回点 検時までの間のき裂進展量4aを考慮しても 機能喪失に対応するき裂サイズacに達しなけ-230れば、運転継続は可能といえる。つまり次式が 成立すれば運転継続は可能である。ao+AE+Aa
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