遠隔運転保守支援技術の開発及び実機適用
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カテゴリ: 第1回
1.はじめに
原子力発電所は、信頼性と安全性の維持、向上 に加え、昨今の電力自由化を背景に、運転保守に 関わる費用の抑制や経済性向上が要望されてい る。一方、運転員や保守員の数や熟練者が減少傾 向にある状況において、発電所業務の一層の品質 向上や法令遵守、及びプラント運用情報の客観性 と透明性の確保が重要視されつつある。このようなことから発電所の運転保守支援は、 より一層の効率化・迅速化及び発電所の幅広い業 務への適用拡大が要望されている。 - 東芝は、プラントメーカーとしてこのような要 望及び環境の変化に対応するため、遠隔地より発 電所の運転保守業務を支援する「東芝リモート保 全サービス(e-TOPSTM ; e-Toshiba Operating Plant Service、図1参照)」を構築し、 2002年より運用を開始している[1]。このサービスは、インターネット、モバイルな どのITと、原子力計測・診断技術およびセキュリティ技術の融合により、遠隔地からの多様な運 転保守サービスを実現している。以下に、これら サービスの概要と、監視、検査、診断、技術支援 における具体的なサービス事例について紹介する。
+サービス WEB サイト電力、 事務所公衆技術支援サービス《インターネット PHS等)遠隔監視・検査・ 診断サービス現場他ユニット監視・診断ツール」 提供サービスserviceFig. 1 Configuration of remote O&M(e-TOPSTM)2.リモート保全サービスの概要原子力発電所の運転保守業務を遠隔地より支 援するサービス(e-TOP STM) は、以下の観 点から、従来の現地派遣に基づくサービスと比較 して多大の効果が期待できる。 (1)設計技術者など専門家のいるエンジニアリングセンターや工場より各発電所に対し、詳細で多面的な評価を迅速に提供できる。 (2)複数プラントに関わる設備データの集中管理により、プラント横並びの比較による精度の 高い評価が可能となる。 (3)設備の集約、専門家の移動などを最小化・最適化して、業務全体の品質と効率を向上できる。これを実現する具体的な手段として、発電所の 運転保守業務を支援するサービス・コンテンツと その活用効果を図2に示す。<サービス活用効果>遠隔監視サービス ◆現場移動時間の削減● 作業管理の確実化 「遠隔検査サービス ◆ 検査作業の省力化◆ 検査記録の確実化 「遠隔診断サービス◆ 振動監視作業の合理化 |◆ 状態監視保全の確実化点検周期延長の判断支援 【技術支援サービス ◆ 運転保守活動に対する 技術コンサルティング<運転・保守業務> S10 機器分解・部品検査 13 評価立会 10 機器復旧 >5 試運転NO 運転 ・パトロール ・状態監視保全異常発生時Fig. 2 Objectives of remote O&M service system - 本サービスでは、以下のコンテンツの提供とセ キュリティの提供を実現している。 1) 発電所内に既設のPHS回線網を活用して、プラント機器のプロセスデータだけでなく、 機器の振動・音響データ、点検時の現場映像 (動画、静止画)などの多様で多量な現場情 報を、遠隔地の事務所やプラントメーカーに伝送可能としている。 2) 伝送された情報に基づく、監視、検査、診断による評価結果や対応策などの技術支援情 報を、PHSやインターネット回線網を通じ て、迅速に現地に返送、提示するサービスを可能としている。 3) 伝送された現場情報などを一元的、体系的に管理し、点検周期の最適化など保守合理化の 判断支援に有効な情報サービスの提供を可能としている。 4) 現場情報の伝送においては、原子力発電プラントの重要な情報を扱うことを考慮し、2重 のファイアウォールによる管理や、物理乱数 コードを用いた暗号化方式による、より高度 なセキュリティ確保を可能としている。 以上より、技術支援サービスを中核として、遠 隔監視・検査・診断の各サービス提供を実現して おり、発電所における様々な運転保守業務の支援 を可能としている。以下、これらサービス事例に ついて紹介する。2.1 遠隔監視サービス * 従来、原子力発電プラントの起動時における機 器健全性の確認作業や、定期検査での機器分解点 検作業では、対象機器に関わる専門家を現地に派 遣している。しかし近年は、プラント数の増加に 伴いプラント起動や定期検査は集中化してきて おり、遠隔地から同等の支援ができれば、運転保 守業務の効率化だけでなく、複数の専門家の確認 による点検作業の質の向上も図れる。このため、遠隔監視サービスでは、図3に示す ように、ウェアラブル計算機、ディジタルビデオ カメラ、PHSなどを利用して、現場の映像(動 画、静止画)と音声を複数の遠隔地に同時に伝送 する遠隔監視システムを開発・使用している。靈力豪事務所指示用ポインタ現場情報 リアルタイム送信」ウェアラブルPCLAN遠隔立会ビデオカメラ | 遠隔監視システムPHS 公衆回線東芝 e-TOPS 這篇技術支援めカメラ内蔵PDA情報提示 作業指示LANPHS | コンパクト遠隔監視ツール」Fig. 3 Outline of remote monitoring servicesystem using voice and movies 遠隔地から現場への指示は HMD (Head mounted display)とヘッドフォンを介して行い、現場か らは圧縮処理した動画像による点検状況などの-250<現状>電力股 ・記録確認電力殿 ・現場確認 | 膨大な現場 ・立会い 移動時間(全体の1/3)1789ニアの世界全}×18~3503紙形式による 部門別分散管理現場で下書き事務所で清春現場 ・点検工事実施 ・点検記録採取 現場主体の作業管理 人間系による記録採取 紙管理での作業確認人間系による転記、作成 (転記ミス等可能性有り) |品質記? (スケッチ、良否確認等) 定性的な記録による確認<適用後>意力殿 ・遠隔現場確認」 ・遠隔立会い電力殿(本店等) ・遠隔記録確認リアルタイム同時確認遠隔監視システム |動画情報による 作業状況確認現場 ・点検工事実施し ・点検記録採取現場移動 時間の削減タイムリーな作業管理(事務所連携) 記録採取の電子化 作業履歴の電子化/自動蓄積現場(映像、音声)データー元管理~50m点検画像による定量記?確認 品質記? (点検記録画像)Fig. 4 Objectives of remote monitoring service system 伝送に加え、高分解能の静止画を必要に応じて伝子的なエビデンスに基づく客観性と透明性の確 送することで、高精度の支援を実現可能としてい保に貢献できる。 る。このシステムは限られた情報伝送速度の下で、 また、図4に示す遠隔監視システムは、発電所 現場の状況をリアルにかつ高精度で伝送できる内の多様な業務の効率化に活用も可能である。例 点が特徴である。実際の保守点検作業においても、 えば、事務所から現場作業の管理や各種試験の立 従来の技術員派遣時と同等以上の的確性・迅速性 会などを遠隔で対応することにより、現場への移 が客先に好評を得ておりシステムの有効性が確 - 動時間や待ち時間といった非効率的な作業の時 認されている[2]。間短縮を可能としている。 更に、より簡便かつ小型のツールとして、現場 の映像を同様に複数の遠隔地に伝送するコンパ 2.2 遠隔検査サービス クト遠隔監視ツールも開発・使用している。現場 * 原子力発電プラントでは、配管や圧力容器のよ における簡単なメモ代わりとして手軽さが認め うな静的機器は、定期検査時の分解点検において、 られており、パトロール時の現場確認といった実目視点検や超音波、渦電流などの非破壊検査が適 際の運転保守業務での活用が進められている。 用されている。特に目視検査は、検査作業全体の遠隔監視システムでは、図4に示すように、現 約6~7割を占める主要な作業であり、直接的あ 場の映像及び音声情報の伝送と共に、これらの情るいは間接的な映像情報を用いた目視により実 報を電子データとして記録し一元管理すること 施されているが、検査員のスキルに大きく依存す が可能となっている。これにより、従来の人間の るため、検査の客観性の保持が課題となっている。 主観に依存した定性的な記録の確認、管理に代わこのため、遠隔検査サービスでは、人間の目視 って、電子データによる定量化及び自動蓄積を実 に代わって、ディジタル画像処理技術を適用する 現可能としており、保守点検記録や作業記録の電 ことにより、目視検査の自動化を実現する方法を-251提案している[3]。この方法では、図5に示すよ うなe-TOPSTMの枠組みの中で、画像を専門 家のいる遠隔地に伝送し解析処理を実施するこ とにより、目視検査の精度を大きく向上させるこ とを可能としている。すなわち、電力会社殿など のユーザーからの検査画像を、e-TOPSTMの Webサイトに送付する。送付された画像にディ ジタル画像処理を適用し、例えば、腐食面積の自 動計算や、スケッチ画像化などの処理を行い、検 査報告書の形式でユーザーに返送する。このよう なサービスにより、検査結果の客観性を維持しつ つ報告書作成の効率化と品質の向上も実現でき る。さらに、検査画像を数値として定量的に表現 することで、例えば、腐食面積の傾向変化の監視 や評価などに活用することも可能となる。発電所」東芝 e-TOPS■入力原画像インターネット 送信画像館 マスク処理這個檢? サービス 提供10400返信■腐食などの欠陥形状 ■欠陥の面積/寸法 ■スケッチ図記録検査結果Fig. 5 Outline of remote inspection service systemapplied Image processing technologies また、図5に示す遠隔検査サービスは、従来の スケッチやデータシートでの検査員(人)による 記録方法における記載ミスや転記ミスといった ヒューマン・エラーの介在を防止し、客観的なエ ビデンス情報としての検査記録を管理できると いう点でも効果が期待できる。2.3 遠隔診断サービス原子力発電プラントにおいて、ホンプやモータ などの動的機器の保守は重要であり、軸受やシー ル部などの消耗部品の交換や耐久部品の点検の ために定期的な分解点検が必要となっている。ま た、その点検周期を最適化するために、運転中の 振動、温度、潤滑油などの状態を定期的に監視す る状態監視保全が行われている。特に、運転中の 振動監視は、回転機の劣化予測や、異常早期検出に有効であり、実用が進んでいる。このため、遠隔診断サービスでは、図6に示す ように、PHSやLANなどの無線デバイスを用 いて、回転機の振動をリアルタイムに当社エンジ ニアリングセンターなどに伝送し、集中管理と診 断を行える可搬型の遠隔振動監視・診断システム を開発しており、振動データの簡易な遠隔計測を 実現可能としている。「現場」| 東芝 e-TOPS |隔データ 採取/診断診斷用計算機 PHS、(監視診断用 LANソフト搭載) 遠隔診断ユニット (リモート監視、注意通報) アンプユニット+通信器材るパトロール用ユニット (現場との情報共有) 携帯用PC(ソフト)+アンプユニットFig. 6 Outline of remote vibration monitoring anddiagnosis system このシステムは、リサージュ、スペクトルトレ ンドの表示や、故障原因と対策などの診断結果を 提示することができる。さらに、計測データを、 回転機の動解析モデルによる結果と比較するこ とで、回転軸にかかる負荷を推定し、劣化をより 高精度で評価することも可能としている[4]。また、機器の点検周期や点検範囲の最適化は、 保守コストの削減という観点だけではなく、機器 の重要度に応じた合理的な保守により、システム 全体としての信頼性向上を図ることが重要とな る。そのためには、故障率と故障影響などをリス クと、稼働率などの性能指標をベネフィットとい う形で定量的に評価し、保守戦略の最適化に役立 てることが必要となる。このためには、設計情報 と運転・保守に関わる現場情報を融合した支援シ ステムが不可欠と考え、当社は、機器カルテ管理 システムを開発している[5]。このシステムは、図7に示すように、運転に 関わる重要パラメータ、機器状態を監視するた めの振動や温度などのパラメータ、さらに、定 期検査時の点検情報などを統合的に管理する ことができる。また、管理された多様なデータ を基に、回帰分析や因子分析などの統計解析を-252適用した一次処理から、機器の劣化傾向を評価 することができる。ファイルのカップリンサマリグラフプロセスデータ・すorestpressックスター タンタンクトップにwitterhonenetratiここか....ローボンブルビーオン1141....ね」号機間比較 データ111111111111!! 運転時間1 | データ家ンFig. 7 Examples of the device Kartemanagement system displays2.4 技術支援サービス最後に、電力会社殿の運転保守活動で生じた 多様な技術的課題に対応する技術支援サービ スについて紹介する。このサービスは、従来、 現地駐在員が受けた個々の依頼に対して、遠隔 地にいる設計技術者とEメールやファックス で連絡を取り、その結果を駐在員がとりまとめ て回答するという個別対応が主であり、情報の 授受や質問内容の確認に時間を要していた。年1月21日にはTOSHIBAのお店スタッフTOP3サービス1000mailess thattoneer/trueTOSHIBA今のセーフDiet・TOP3サービストップページ!入場方Fig. 8 Examples of technical question andanswer web system displays - e-TOP STMのWebサイトを介した技 術支援サービスでは、電力担当者の自席パソコ ンから質問事項・回答の入出力が可能となり、 迅速かつ効率的なサービスの提供を実現して いる。質問の確認に正確性を期すため、図8に 示すような正式依頼前の事前調整での受送信履歴の提示機能や、依頼済みの内容とその回答 の確認機能も有している。3.あとがき* 本報で紹介したリモート保全サービスeTOPSTMは、従来の現地派遣に代わる新たな サービスとして、実際の業務で活用され、その 有効性が確認されているが、原子力プラントの 運転保守業務は多様かつ複雑であり、更なるサ ービス・コンテンツとして、水質診断、熱効率 診断、予備品手配、保守訓練教育、設備改善の 提案などのサービス拡充を進めている。また、 これらのサービス展開に備えて、当社の磯子エ ンジニアリングセンターにe-TOPSTMの ・集中管理センターを開設予定である。今後は、原子力発電プラントの信頼性と安全 性の維持、向上に加え、合理化や経済性向上を 実現していく上で重要なテーマとなる定期検 査期間の短縮化、オンラインメンテナンスや状 態監視保全の導入、合理的な保全計画の策定な どに寄与する幅広いサービスの充実を図って いく予定である。参考文献 [1] “東芝レビュー特集2001年の技術成果,技術成果の総覧.保全サービスWebサイト構築”、東芝レビュー.57,3,2002,p.70. [2] 佐久間正剛,ほか. “PHS を用いた遠隔・検査システム”.平成 13 年度電気学会,電子・ 情 報・システム部門大会予稿集 ( II ) ,TC7-3,2001-8, 電 気 学会.p.157-160. [3] 久保克巳,ほか.“デジタル画像処理による目視観察の自動化”.日本非破壊検査協会, 平成11年度秋季大会講演概要集.1999-10,日本非破壊検査協会.p.99-102. [4] 渡部幸夫,ほか“回転機の劣化予測技術の開発”.JAST トライボロジー会議予稿集,E29.東京,2002-5,JAST.p.339-340. 「5] 園田幸夫,ほか.“状態監視保全の実機への適用(その3)-機器カルテ管理システム と経年劣化の傾向予測技術の開発-”.日 本原子力学会 2001 年秋の大会,H20~ H22.2001-09, 日本原子力学会.p.409.-253“ “遠隔運転保守支援技術の開発及び実機適用 “ “山本 博樹,Hiroki YAMAMOTO,日隈 幸治,Koji HIGUMA,清水 俊一,Shinichi SHIMIZU,佐久間 正剛,Masatake SAKUMSA,園田 幸夫,Yukio SONODA,兼本 茂,Shigeru KANEMOTO“ “遠隔運転保守支援技術の開発及び実機適用 “ “山本 博樹,Hiroki YAMAMOTO,日隈 幸治,Koji HIGUMA,清水 俊一,Shinichi SHIMIZU,佐久間 正剛,Masatake SAKUMSA,園田 幸夫,Yukio SONODA,兼本 茂,Shigeru KANEMOTO
原子力発電所は、信頼性と安全性の維持、向上 に加え、昨今の電力自由化を背景に、運転保守に 関わる費用の抑制や経済性向上が要望されてい る。一方、運転員や保守員の数や熟練者が減少傾 向にある状況において、発電所業務の一層の品質 向上や法令遵守、及びプラント運用情報の客観性 と透明性の確保が重要視されつつある。このようなことから発電所の運転保守支援は、 より一層の効率化・迅速化及び発電所の幅広い業 務への適用拡大が要望されている。 - 東芝は、プラントメーカーとしてこのような要 望及び環境の変化に対応するため、遠隔地より発 電所の運転保守業務を支援する「東芝リモート保 全サービス(e-TOPSTM ; e-Toshiba Operating Plant Service、図1参照)」を構築し、 2002年より運用を開始している[1]。このサービスは、インターネット、モバイルな どのITと、原子力計測・診断技術およびセキュリティ技術の融合により、遠隔地からの多様な運 転保守サービスを実現している。以下に、これら サービスの概要と、監視、検査、診断、技術支援 における具体的なサービス事例について紹介する。
+サービス WEB サイト電力、 事務所公衆技術支援サービス《インターネット PHS等)遠隔監視・検査・ 診断サービス現場他ユニット監視・診断ツール」 提供サービスserviceFig. 1 Configuration of remote O&M(e-TOPSTM)2.リモート保全サービスの概要原子力発電所の運転保守業務を遠隔地より支 援するサービス(e-TOP STM) は、以下の観 点から、従来の現地派遣に基づくサービスと比較 して多大の効果が期待できる。 (1)設計技術者など専門家のいるエンジニアリングセンターや工場より各発電所に対し、詳細で多面的な評価を迅速に提供できる。 (2)複数プラントに関わる設備データの集中管理により、プラント横並びの比較による精度の 高い評価が可能となる。 (3)設備の集約、専門家の移動などを最小化・最適化して、業務全体の品質と効率を向上できる。これを実現する具体的な手段として、発電所の 運転保守業務を支援するサービス・コンテンツと その活用効果を図2に示す。<サービス活用効果>遠隔監視サービス ◆現場移動時間の削減● 作業管理の確実化 「遠隔検査サービス ◆ 検査作業の省力化◆ 検査記録の確実化 「遠隔診断サービス◆ 振動監視作業の合理化 |◆ 状態監視保全の確実化点検周期延長の判断支援 【技術支援サービス ◆ 運転保守活動に対する 技術コンサルティング<運転・保守業務> S10 機器分解・部品検査 13 評価立会 10 機器復旧 >5 試運転NO 運転 ・パトロール ・状態監視保全異常発生時Fig. 2 Objectives of remote O&M service system - 本サービスでは、以下のコンテンツの提供とセ キュリティの提供を実現している。 1) 発電所内に既設のPHS回線網を活用して、プラント機器のプロセスデータだけでなく、 機器の振動・音響データ、点検時の現場映像 (動画、静止画)などの多様で多量な現場情 報を、遠隔地の事務所やプラントメーカーに伝送可能としている。 2) 伝送された情報に基づく、監視、検査、診断による評価結果や対応策などの技術支援情 報を、PHSやインターネット回線網を通じ て、迅速に現地に返送、提示するサービスを可能としている。 3) 伝送された現場情報などを一元的、体系的に管理し、点検周期の最適化など保守合理化の 判断支援に有効な情報サービスの提供を可能としている。 4) 現場情報の伝送においては、原子力発電プラントの重要な情報を扱うことを考慮し、2重 のファイアウォールによる管理や、物理乱数 コードを用いた暗号化方式による、より高度 なセキュリティ確保を可能としている。 以上より、技術支援サービスを中核として、遠 隔監視・検査・診断の各サービス提供を実現して おり、発電所における様々な運転保守業務の支援 を可能としている。以下、これらサービス事例に ついて紹介する。2.1 遠隔監視サービス * 従来、原子力発電プラントの起動時における機 器健全性の確認作業や、定期検査での機器分解点 検作業では、対象機器に関わる専門家を現地に派 遣している。しかし近年は、プラント数の増加に 伴いプラント起動や定期検査は集中化してきて おり、遠隔地から同等の支援ができれば、運転保 守業務の効率化だけでなく、複数の専門家の確認 による点検作業の質の向上も図れる。このため、遠隔監視サービスでは、図3に示す ように、ウェアラブル計算機、ディジタルビデオ カメラ、PHSなどを利用して、現場の映像(動 画、静止画)と音声を複数の遠隔地に同時に伝送 する遠隔監視システムを開発・使用している。靈力豪事務所指示用ポインタ現場情報 リアルタイム送信」ウェアラブルPCLAN遠隔立会ビデオカメラ | 遠隔監視システムPHS 公衆回線東芝 e-TOPS 這篇技術支援めカメラ内蔵PDA情報提示 作業指示LANPHS | コンパクト遠隔監視ツール」Fig. 3 Outline of remote monitoring servicesystem using voice and movies 遠隔地から現場への指示は HMD (Head mounted display)とヘッドフォンを介して行い、現場か らは圧縮処理した動画像による点検状況などの-250<現状>電力股 ・記録確認電力殿 ・現場確認 | 膨大な現場 ・立会い 移動時間(全体の1/3)1789ニアの世界全}×18~3503紙形式による 部門別分散管理現場で下書き事務所で清春現場 ・点検工事実施 ・点検記録採取 現場主体の作業管理 人間系による記録採取 紙管理での作業確認人間系による転記、作成 (転記ミス等可能性有り) |品質記? (スケッチ、良否確認等) 定性的な記録による確認<適用後>意力殿 ・遠隔現場確認」 ・遠隔立会い電力殿(本店等) ・遠隔記録確認リアルタイム同時確認遠隔監視システム |動画情報による 作業状況確認現場 ・点検工事実施し ・点検記録採取現場移動 時間の削減タイムリーな作業管理(事務所連携) 記録採取の電子化 作業履歴の電子化/自動蓄積現場(映像、音声)データー元管理~50m点検画像による定量記?確認 品質記? (点検記録画像)Fig. 4 Objectives of remote monitoring service system 伝送に加え、高分解能の静止画を必要に応じて伝子的なエビデンスに基づく客観性と透明性の確 送することで、高精度の支援を実現可能としてい保に貢献できる。 る。このシステムは限られた情報伝送速度の下で、 また、図4に示す遠隔監視システムは、発電所 現場の状況をリアルにかつ高精度で伝送できる内の多様な業務の効率化に活用も可能である。例 点が特徴である。実際の保守点検作業においても、 えば、事務所から現場作業の管理や各種試験の立 従来の技術員派遣時と同等以上の的確性・迅速性 会などを遠隔で対応することにより、現場への移 が客先に好評を得ておりシステムの有効性が確 - 動時間や待ち時間といった非効率的な作業の時 認されている[2]。間短縮を可能としている。 更に、より簡便かつ小型のツールとして、現場 の映像を同様に複数の遠隔地に伝送するコンパ 2.2 遠隔検査サービス クト遠隔監視ツールも開発・使用している。現場 * 原子力発電プラントでは、配管や圧力容器のよ における簡単なメモ代わりとして手軽さが認め うな静的機器は、定期検査時の分解点検において、 られており、パトロール時の現場確認といった実目視点検や超音波、渦電流などの非破壊検査が適 際の運転保守業務での活用が進められている。 用されている。特に目視検査は、検査作業全体の遠隔監視システムでは、図4に示すように、現 約6~7割を占める主要な作業であり、直接的あ 場の映像及び音声情報の伝送と共に、これらの情るいは間接的な映像情報を用いた目視により実 報を電子データとして記録し一元管理すること 施されているが、検査員のスキルに大きく依存す が可能となっている。これにより、従来の人間の るため、検査の客観性の保持が課題となっている。 主観に依存した定性的な記録の確認、管理に代わこのため、遠隔検査サービスでは、人間の目視 って、電子データによる定量化及び自動蓄積を実 に代わって、ディジタル画像処理技術を適用する 現可能としており、保守点検記録や作業記録の電 ことにより、目視検査の自動化を実現する方法を-251提案している[3]。この方法では、図5に示すよ うなe-TOPSTMの枠組みの中で、画像を専門 家のいる遠隔地に伝送し解析処理を実施するこ とにより、目視検査の精度を大きく向上させるこ とを可能としている。すなわち、電力会社殿など のユーザーからの検査画像を、e-TOPSTMの Webサイトに送付する。送付された画像にディ ジタル画像処理を適用し、例えば、腐食面積の自 動計算や、スケッチ画像化などの処理を行い、検 査報告書の形式でユーザーに返送する。このよう なサービスにより、検査結果の客観性を維持しつ つ報告書作成の効率化と品質の向上も実現でき る。さらに、検査画像を数値として定量的に表現 することで、例えば、腐食面積の傾向変化の監視 や評価などに活用することも可能となる。発電所」東芝 e-TOPS■入力原画像インターネット 送信画像館 マスク処理這個檢? サービス 提供10400返信■腐食などの欠陥形状 ■欠陥の面積/寸法 ■スケッチ図記録検査結果Fig. 5 Outline of remote inspection service systemapplied Image processing technologies また、図5に示す遠隔検査サービスは、従来の スケッチやデータシートでの検査員(人)による 記録方法における記載ミスや転記ミスといった ヒューマン・エラーの介在を防止し、客観的なエ ビデンス情報としての検査記録を管理できると いう点でも効果が期待できる。2.3 遠隔診断サービス原子力発電プラントにおいて、ホンプやモータ などの動的機器の保守は重要であり、軸受やシー ル部などの消耗部品の交換や耐久部品の点検の ために定期的な分解点検が必要となっている。ま た、その点検周期を最適化するために、運転中の 振動、温度、潤滑油などの状態を定期的に監視す る状態監視保全が行われている。特に、運転中の 振動監視は、回転機の劣化予測や、異常早期検出に有効であり、実用が進んでいる。このため、遠隔診断サービスでは、図6に示す ように、PHSやLANなどの無線デバイスを用 いて、回転機の振動をリアルタイムに当社エンジ ニアリングセンターなどに伝送し、集中管理と診 断を行える可搬型の遠隔振動監視・診断システム を開発しており、振動データの簡易な遠隔計測を 実現可能としている。「現場」| 東芝 e-TOPS |隔データ 採取/診断診斷用計算機 PHS、(監視診断用 LANソフト搭載) 遠隔診断ユニット (リモート監視、注意通報) アンプユニット+通信器材るパトロール用ユニット (現場との情報共有) 携帯用PC(ソフト)+アンプユニットFig. 6 Outline of remote vibration monitoring anddiagnosis system このシステムは、リサージュ、スペクトルトレ ンドの表示や、故障原因と対策などの診断結果を 提示することができる。さらに、計測データを、 回転機の動解析モデルによる結果と比較するこ とで、回転軸にかかる負荷を推定し、劣化をより 高精度で評価することも可能としている[4]。また、機器の点検周期や点検範囲の最適化は、 保守コストの削減という観点だけではなく、機器 の重要度に応じた合理的な保守により、システム 全体としての信頼性向上を図ることが重要とな る。そのためには、故障率と故障影響などをリス クと、稼働率などの性能指標をベネフィットとい う形で定量的に評価し、保守戦略の最適化に役立 てることが必要となる。このためには、設計情報 と運転・保守に関わる現場情報を融合した支援シ ステムが不可欠と考え、当社は、機器カルテ管理 システムを開発している[5]。このシステムは、図7に示すように、運転に 関わる重要パラメータ、機器状態を監視するた めの振動や温度などのパラメータ、さらに、定 期検査時の点検情報などを統合的に管理する ことができる。また、管理された多様なデータ を基に、回帰分析や因子分析などの統計解析を-252適用した一次処理から、機器の劣化傾向を評価 することができる。ファイルのカップリンサマリグラフプロセスデータ・すorestpressックスター タンタンクトップにwitterhonenetratiここか....ローボンブルビーオン1141....ね」号機間比較 データ111111111111!! 運転時間1 | データ家ンFig. 7 Examples of the device Kartemanagement system displays2.4 技術支援サービス最後に、電力会社殿の運転保守活動で生じた 多様な技術的課題に対応する技術支援サービ スについて紹介する。このサービスは、従来、 現地駐在員が受けた個々の依頼に対して、遠隔 地にいる設計技術者とEメールやファックス で連絡を取り、その結果を駐在員がとりまとめ て回答するという個別対応が主であり、情報の 授受や質問内容の確認に時間を要していた。年1月21日にはTOSHIBAのお店スタッフTOP3サービス1000mailess thattoneer/trueTOSHIBA今のセーフDiet・TOP3サービストップページ!入場方Fig. 8 Examples of technical question andanswer web system displays - e-TOP STMのWebサイトを介した技 術支援サービスでは、電力担当者の自席パソコ ンから質問事項・回答の入出力が可能となり、 迅速かつ効率的なサービスの提供を実現して いる。質問の確認に正確性を期すため、図8に 示すような正式依頼前の事前調整での受送信履歴の提示機能や、依頼済みの内容とその回答 の確認機能も有している。3.あとがき* 本報で紹介したリモート保全サービスeTOPSTMは、従来の現地派遣に代わる新たな サービスとして、実際の業務で活用され、その 有効性が確認されているが、原子力プラントの 運転保守業務は多様かつ複雑であり、更なるサ ービス・コンテンツとして、水質診断、熱効率 診断、予備品手配、保守訓練教育、設備改善の 提案などのサービス拡充を進めている。また、 これらのサービス展開に備えて、当社の磯子エ ンジニアリングセンターにe-TOPSTMの ・集中管理センターを開設予定である。今後は、原子力発電プラントの信頼性と安全 性の維持、向上に加え、合理化や経済性向上を 実現していく上で重要なテーマとなる定期検 査期間の短縮化、オンラインメンテナンスや状 態監視保全の導入、合理的な保全計画の策定な どに寄与する幅広いサービスの充実を図って いく予定である。参考文献 [1] “東芝レビュー特集2001年の技術成果,技術成果の総覧.保全サービスWebサイト構築”、東芝レビュー.57,3,2002,p.70. [2] 佐久間正剛,ほか. “PHS を用いた遠隔・検査システム”.平成 13 年度電気学会,電子・ 情 報・システム部門大会予稿集 ( II ) ,TC7-3,2001-8, 電 気 学会.p.157-160. [3] 久保克巳,ほか.“デジタル画像処理による目視観察の自動化”.日本非破壊検査協会, 平成11年度秋季大会講演概要集.1999-10,日本非破壊検査協会.p.99-102. [4] 渡部幸夫,ほか“回転機の劣化予測技術の開発”.JAST トライボロジー会議予稿集,E29.東京,2002-5,JAST.p.339-340. 「5] 園田幸夫,ほか.“状態監視保全の実機への適用(その3)-機器カルテ管理システム と経年劣化の傾向予測技術の開発-”.日 本原子力学会 2001 年秋の大会,H20~ H22.2001-09, 日本原子力学会.p.409.-253“ “遠隔運転保守支援技術の開発及び実機適用 “ “山本 博樹,Hiroki YAMAMOTO,日隈 幸治,Koji HIGUMA,清水 俊一,Shinichi SHIMIZU,佐久間 正剛,Masatake SAKUMSA,園田 幸夫,Yukio SONODA,兼本 茂,Shigeru KANEMOTO“ “遠隔運転保守支援技術の開発及び実機適用 “ “山本 博樹,Hiroki YAMAMOTO,日隈 幸治,Koji HIGUMA,清水 俊一,Shinichi SHIMIZU,佐久間 正剛,Masatake SAKUMSA,園田 幸夫,Yukio SONODA,兼本 茂,Shigeru KANEMOTO