インコネル600部位予防保全技術
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カテゴリ: 第1回
1.緒言
発生したことを受け、国内においても出入口管 インコネル 600 合金の応力腐食割れ(SCC) 台セーフエンド部を新しい短管(スプールピー については、1991 年の Bujey-3 (フランス)の ス)と取り替えるスプールピース取替技術の開 原子炉容器蓋用管台(母材)からの漏えいを契 発を行っている。また、温度条件の厳しい出口 機に、RCS 耐圧バウンダリにおける使用部位に 管台に対しては環境遮断を目的として管台内 対して評価・補修・検査の各分野において、研 面溶接部に耐 SCC 性に優れたインコネル 690 究・開発に取り組んできている。本報では、こ 合金で肉盛を行うクラッデイング技術を開発 れまでに当社で開発した、又は開発途中にある中である。(Fig.1 参照) 予防保全技術について紹介する。 2.予防保全技術- Inconel 600 RCS耐圧バウンダリにおいてインコネル 600 合金が使用されている部位としては、原子/Low Alloy steel / SS 316 炉容器の蓋用管台、出入口及び安全注入管台、 炉内計装筒、加圧器の各管台(サージ、スプレInconel 690 イ、安全弁用、逃がし弁用)、蒸気発生器の伝 熱管、出入口管台がある。Fig.1 Concept of Cladding method 2.1 原子炉容器に対する予防保全 国内プラントの原子炉容器蓋用管台の対策 炉内計装筒については、管台内面の引張残留 としては、初期型プラントについては上部蓋の 応力状態を圧縮応力状態に改善するため、水中 取替を順次実施するとともに、比較的新しいプ 環境下であることを利用したウォータジェッ ラントについては頂部温度低減(T-cold 化)を トピーニング (WJP) 技術を適用することによ 実施している。りSCCに対する劣化緩和対策を実施してい また、2000 年の V.C Summer (米国)の RV る。ウォータジェットピーニング技術とは、水 出口管台セーフェンド継手部からの漏えいが 中にて高圧水を噴射することにより、高圧水と
PS6-4Inconel 600Low Alloy steel l /SS 316Inconel 690Fig.1 Concept of Cladding methodConcept周囲の静止水との境界に渦流を生成し、この渦 流中心部で水が蒸発する際に発生するキャビ テーション気泡群が瞬時に崩壊する時の衝撃 圧を利用して金属表面を塑性変形させ、圧縮応 力を付与する技術である。(Fig.2 参照)Ir nozzlewatercavitation impactwater jet including cavitationplastic strain caused by,cavitation impactswirlVW materialHTTPSランク COPAC/amateriar/Fig.2 Principle of water jet peeningまた、本技術を利用して出入口管台、安全注入 管台及び炉内計装筒J溶接部についてもWJ Pの適用を計画中である。 12.2 加圧器に対する予防保全先の V.C Summer での事象を契機として、 加圧器管台の中では最も取替の困難なサージ 管台を対象とした劣化緩和技術の開発に着手 し、管台内面の引張残留応力状態を圧縮応力状 態に改善する外面急速加熱法を確立している。 外面急速加熱法とは、管台外面に高周波加熱用 コイルを取り付け、誘導加熱により極短時間で 内外面に一定の温度差を付けることで内面に 圧縮応力を付与する技術である。(Fig.3 参照)Heating coilWeld」ビビビビHigh-frequency heating power sourceFig.3 Concept of induction heating-2582.3 蒸気発生器に対する予防保全初期型プラントにおける蒸気発生器の伝熱 管においては、製造時の管板拡管作業に起因す ると考えられるSCC損傷が確認されており、 この損傷に対しては伝熱管に施栓を実施する ことで安全上、機能上も問題ないが、施栓本数 の増大に伴い、作業員の被ばく増大、工期延長 による稼働率低下を引き起こすことになるた め、更なる信頼性向上の観点から蒸気発生器取 替を実施している。また、SCCの懸念が考えられる伝熱管拡管 部に対しては、ショットビーニング技術の適用 により拡管部に生じている引張残留応力状態 から圧縮応力状態に改善することでSCCに 対する劣化緩和対策を行っている。ショットピ ーニング技術とは、微小なビーズ(インコネル 材)を高速度で金属表面に衝突させることによ り、金属表面を塑性変形させ、圧縮応力を付与 する技術である。出入口管台の劣化緩和対策としては、気中環 境で施工が可能であることから、超音波振動を 利用したショットピーニング又はワイヤーピ ーニングの適用を検討中である。さらに、原子 炉容器出口管台と同様に環境遮断を目的とし た管台内面へのクラッディング技術適用の検 討も行なっている。 3.結言RCS耐圧バウンダリにおけるインコネル」 600 合金使用部位に対して、これまで当社が取 り組んできた予防保全技術について紹介した。 今後もプラントの安全性・信頼性の維持向上と いうニーズに応えていくために、これらの技術 の実機適用とより一層の高度化に取り組んで いきたい。“ “インコネル600部位予防保全技術 “ “谷口 優,Masaru TANIGUCHI,山上 真広,Mahiro YAMAGAMI,山本 和秀,Kazuhide YAMAMOTO,杉本 憲昭,Noriaki SUGIMOTO“ “インコネル600部位予防保全技術 “ “谷口 優,Masaru TANIGUCHI,山上 真広,Mahiro YAMAGAMI,山本 和秀,Kazuhide YAMAMOTO,杉本 憲昭,Noriaki SUGIMOTO
発生したことを受け、国内においても出入口管 インコネル 600 合金の応力腐食割れ(SCC) 台セーフエンド部を新しい短管(スプールピー については、1991 年の Bujey-3 (フランス)の ス)と取り替えるスプールピース取替技術の開 原子炉容器蓋用管台(母材)からの漏えいを契 発を行っている。また、温度条件の厳しい出口 機に、RCS 耐圧バウンダリにおける使用部位に 管台に対しては環境遮断を目的として管台内 対して評価・補修・検査の各分野において、研 面溶接部に耐 SCC 性に優れたインコネル 690 究・開発に取り組んできている。本報では、こ 合金で肉盛を行うクラッデイング技術を開発 れまでに当社で開発した、又は開発途中にある中である。(Fig.1 参照) 予防保全技術について紹介する。 2.予防保全技術- Inconel 600 RCS耐圧バウンダリにおいてインコネル 600 合金が使用されている部位としては、原子/Low Alloy steel / SS 316 炉容器の蓋用管台、出入口及び安全注入管台、 炉内計装筒、加圧器の各管台(サージ、スプレInconel 690 イ、安全弁用、逃がし弁用)、蒸気発生器の伝 熱管、出入口管台がある。Fig.1 Concept of Cladding method 2.1 原子炉容器に対する予防保全 国内プラントの原子炉容器蓋用管台の対策 炉内計装筒については、管台内面の引張残留 としては、初期型プラントについては上部蓋の 応力状態を圧縮応力状態に改善するため、水中 取替を順次実施するとともに、比較的新しいプ 環境下であることを利用したウォータジェッ ラントについては頂部温度低減(T-cold 化)を トピーニング (WJP) 技術を適用することによ 実施している。りSCCに対する劣化緩和対策を実施してい また、2000 年の V.C Summer (米国)の RV る。ウォータジェットピーニング技術とは、水 出口管台セーフェンド継手部からの漏えいが 中にて高圧水を噴射することにより、高圧水と
PS6-4Inconel 600Low Alloy steel l /SS 316Inconel 690Fig.1 Concept of Cladding methodConcept周囲の静止水との境界に渦流を生成し、この渦 流中心部で水が蒸発する際に発生するキャビ テーション気泡群が瞬時に崩壊する時の衝撃 圧を利用して金属表面を塑性変形させ、圧縮応 力を付与する技術である。(Fig.2 参照)Ir nozzlewatercavitation impactwater jet including cavitationplastic strain caused by,cavitation impactswirlVW materialHTTPSランク COPAC/amateriar/Fig.2 Principle of water jet peeningまた、本技術を利用して出入口管台、安全注入 管台及び炉内計装筒J溶接部についてもWJ Pの適用を計画中である。 12.2 加圧器に対する予防保全先の V.C Summer での事象を契機として、 加圧器管台の中では最も取替の困難なサージ 管台を対象とした劣化緩和技術の開発に着手 し、管台内面の引張残留応力状態を圧縮応力状 態に改善する外面急速加熱法を確立している。 外面急速加熱法とは、管台外面に高周波加熱用 コイルを取り付け、誘導加熱により極短時間で 内外面に一定の温度差を付けることで内面に 圧縮応力を付与する技術である。(Fig.3 参照)Heating coilWeld」ビビビビHigh-frequency heating power sourceFig.3 Concept of induction heating-2582.3 蒸気発生器に対する予防保全初期型プラントにおける蒸気発生器の伝熱 管においては、製造時の管板拡管作業に起因す ると考えられるSCC損傷が確認されており、 この損傷に対しては伝熱管に施栓を実施する ことで安全上、機能上も問題ないが、施栓本数 の増大に伴い、作業員の被ばく増大、工期延長 による稼働率低下を引き起こすことになるた め、更なる信頼性向上の観点から蒸気発生器取 替を実施している。また、SCCの懸念が考えられる伝熱管拡管 部に対しては、ショットビーニング技術の適用 により拡管部に生じている引張残留応力状態 から圧縮応力状態に改善することでSCCに 対する劣化緩和対策を行っている。ショットピ ーニング技術とは、微小なビーズ(インコネル 材)を高速度で金属表面に衝突させることによ り、金属表面を塑性変形させ、圧縮応力を付与 する技術である。出入口管台の劣化緩和対策としては、気中環 境で施工が可能であることから、超音波振動を 利用したショットピーニング又はワイヤーピ ーニングの適用を検討中である。さらに、原子 炉容器出口管台と同様に環境遮断を目的とし た管台内面へのクラッディング技術適用の検 討も行なっている。 3.結言RCS耐圧バウンダリにおけるインコネル」 600 合金使用部位に対して、これまで当社が取 り組んできた予防保全技術について紹介した。 今後もプラントの安全性・信頼性の維持向上と いうニーズに応えていくために、これらの技術 の実機適用とより一層の高度化に取り組んで いきたい。“ “インコネル600部位予防保全技術 “ “谷口 優,Masaru TANIGUCHI,山上 真広,Mahiro YAMAGAMI,山本 和秀,Kazuhide YAMAMOTO,杉本 憲昭,Noriaki SUGIMOTO“ “インコネル600部位予防保全技術 “ “谷口 優,Masaru TANIGUCHI,山上 真広,Mahiro YAMAGAMI,山本 和秀,Kazuhide YAMAMOTO,杉本 憲昭,Noriaki SUGIMOTO