電磁超音波探触子による探傷の解像度

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カテゴリ: 第1回
1.緒言
製品の品質向上やプラントの安全かつ安定 操業には構成部品や部材の信頼性や安全性が 必要とされる.それらを評価する技術として目 視や触診などの人的検査以外に放射線,電磁場, 超音波などを用いた非破壊評価法がある.これ らの方法は試験対象を破壊することなく内部 の情報を得ることができるが,放射線を用いた 方法は安全性や簡便性において,電磁場を用い た方法は透過限界における制約がある.一方, 超音波は透過性がよく,試料内に存在するき裂 やボイド,複合材料の接合部における剥離など の欠陥の検出に応用されている.さらに,様々 な物性の変化が伝播速度に影響を与えるため, 密度や力学的性質,応力などの非破壊測定にも 応用されている.ただし,圧電素子や磁歪素子 による超音波を用いた従来の方法は,滑らかな 面を持つ評価対象に結合剤を介して人為的に 接触させなければならないなどの制約がある. それに対して,コイルと永久磁石で構成される 電磁超音波探触子 (Electromagnetic Acoustic Transducer)は、評価対象内に直接超音波源を作 るため非接触で超音波の送受信が可能である. そのため,対象物が高温,動いている表面が 塗膜や錆に覆われているなどの場合でも使用
Lorenz type of Electro-Magnetic Acoustic unic imaging. Transmission and reception ve are formulated and numerically solved by with the size of the special division of FDM OK method. It is also shown from similarity Les if we use 1/n times smaller EMAT and nresolution of defect, ultrasonic detecting,, 京都大学大学院エネルギー科学研究科 y.kyoto-u.ac.jpできる.さらに高速スキャンや遠隔操作が可能 なため,過酷な環境での非破壊評価に応用が期 待されている [1]. * 本研究の EMAT は コイルに流れる電流が全 できる.さらに高速スキャンや遠隔操作が可能 なため,過酷な環境での非破壊評価に応用が期 待されている [1]. 1. 本研究の EMAT は, コイルに流れる電流が金 属材料内に渦電流を生じ,この渦電流と磁石に よる静磁場からローレンツ力が生じ,超音波が 励起される方法(ローレンツ型)である [2], [3]. このローレンツ型 EMAT による超音波の送信 機構はLudwigら [4]やThompson [5]により研究 され, Ogi ら[3]により有限要素法を用いた数値 解析も行われている. Mitsuda ら[6]は EMAT に よる受信機構を含めての超音波探傷のシミュ レーションを行った.さらに船岡ら[7]は EMAT による受信波形から欠陥の超音波画像を得る 方法を示した。 1. 本研究では,上記の船岡らにより提案された 欠陥の超音波画像化法を基に, ローレンツ型 EMAT による欠陥探傷の解像度について議論す る. LTH-NHANTUICII, -- I EMAT による欠陥探傷の解像度について議論す る。2. EMAT の送受信機構の基礎方程式2.1 超音波の送受信機構2.1 超音波の送受信機構EMAT の基本構成は,静磁場を発生させる永 久磁石と変動磁場を励起あるいは検出するコ -263イルからなる. Fig.1 は横波用のローレンツ型 EMAT の概略図である.コイルに高周波電流(紙 面と垂直な方向)が流れると,コイル周囲に変 動磁場が発生し,導体試料表面近傍では電磁誘 導の法則により,この変動磁場を打ち消す向き に渦電流が生じる。その際に永久磁石によるバ イアス磁場下で渦電流の担い手である自由電 子にローレンツ力が働く。このローレンツ力の 影響を受けた自由電子が試料内のイオンと衝 突することで弾性波が発生する.一方,受信過 程は送信過程とは逆の過程をたどる.送信過程 で生じた弾性波は試料内を伝ばし,欠陥や試料 底部で反射した後に EMAT 側の試料表面部分 に戻り,表面を振動させる.その振動が永久磁 石による静磁場下で起こることにより試料表 面近傍に渦電流が生じる.この渦電流の時間変 化が周囲の磁場変動を起こし,電磁誘導の法則 により EMAT コイルに電圧変化が生じる.この ときのコイルの電圧変化が EMAT による超音 波の受信信号となる(Fig.2 参照).mesamaMosts458Specimen AIULIAMagnetFig. 1Two dimensional sketch of EMATAVoltage [mV]1020 Time [us]40Fig. 2Received waveform by EMAT2.2 EMAT の支配方程式ローレンツ型 EMAT の解析には, 電磁場解析 と弾性波の伝ば解析が必要である.本節では, 文献[7], [8]に従い,基礎方程式を示すに留める. (i) EMAT コイル近傍の動的電磁場 EMAT の送受信過程の支配方程式は次式で与え られる.M - uovos a + ““ x 3.) -0 au - novo + + ““ x B.) -0 (1) vof vo+ .. - xs, 1-0 (2)P+дА ди-+ - Gi?ix-2-3このとき電流密度は次式で与えられるTHただし、送信過程の支配方程式は上式において, vX! の項を除いたものである.ここで の, A, E, B, Jo, J., J, L, oはそれぞれスカラーポ テンシャル, ベクトルポテンシャル,電場, バ イアスの磁束密度, 強制電流,渦電流,電流密 度,透磁率,導電率であり,試料はu, o一定 の均質材料とする.(i) 導体表面近傍の渦電流分布12A OE%3D0at(ii) ローレンツ力はF = JexB-5(iv) 波動方程式 | 1. 弾性波伝による変形を2次元的であると 仮定し,変位を u=(u, y)と表す。 また Fig.1 より ローレンツカは2次元面内にあるので, SV 波 (変位の向きが入射面内にある横波)と P 波(縦 波)が生じる.aruラ = quau + (2 + Am7(u) +FPm-6-6-264ここで2, umはラーメの弾性定数,pmは物質密 度である。3. EMAT による探傷のシミュレーション3.1 シミュレーション条件 3. EMAT による探傷のシミュレーション3.1 シミュレーション条件Fig.1 のモデルの永久磁石, EMAT コイルによ り生じる静磁場,電磁場を有限要素法(解析領 域を1次三角要素で分割)で求め,試料中を伝 ぱする弾性波は差分法により計算する.なお, 静磁場,電磁場,弾性波の解析領域の最小長さ を L=0.5mm とする. EMAT の構成は Fig.1 の ようにコイル(1.0mm×1.0mm)を試料表面から 1.0mm 離し,6.0mm の間隔で設置し,磁極を互 いに逆にした 2 つの永久磁石(3.0mm×3.0mm) を4.0mm の間隔で平行に配置する.また永久磁 石には一様な磁束密度 1.0 [T]を与え, EMAT コ イル(銅)には最大振幅 107 [A/m2],周波数 1.05MHz]の正弦波駆動電流を与えた.3.2 内部欠陥の画像化 - EMAT を試料(アルミニウム)表面に沿って直 線状に走査し,欠陥の超音波画像化のシミュレ ーションを行う.本解析は EMAT を試料の中心 から 0.5mm 間隔ずつ左右に 64mm の範囲で走 査させたとき,それぞれの位置での EMAT コイ ルに生じる電圧変化を求めた. Fig.4(a), (b) は 試料中央から左に 52mm と 16mm, 右に 12mm と 48mm移動したそれぞれの位置に左から順に 1.0mm×1.0mm, 1.5mmx1.0mm, 2.0mmx1.0mm, 2.5mmx1.0mm の 4 種類の異なる大きさの欠陥 を横方向(スキャン方向)に配置し,さらに上 記の4つの欠陥を試料表面から奥(縦方向)に 向かって25mmの位置に配置したときの超音波 画像である. Fig.4(c), (d)は試料中央から左に 45mm と 15mm, 右に 15mm と 45mm 移動し, さらに左から順に試料表面から奥に向かって 10mm, 25mm, 35mm, 45mm の位置にそれぞ れ 0.5mm×0.5mm の欠陥を配置したときの超音 波画像である.これらは Fig.2 で与えられる受 信波形を,横軸が EMAT の位置(mm),縦軸が 時間(us)となるようにとり,受信波形の変位を濃淡で表現している.Fig.4(b), (d)のように超音波の拡散性と EMAT の指向性を考慮した(Fig.3 のように垂直 方向に最も感度がよい感度分布をもつ)ALOK 法を用いると欠陥の検出のみならず,欠陥の大 きさも判別できることがわかる.また欠陥以外 の像は、試料の底面での反射波である.次に欠 陥の大きさと反射波のピーク(Fig.2 の B) の関 係を4つの異なる深さ(試料表面から欠陥まで の距離)で調べた. Fig.5(a)から,等しい距離に ある欠陥サイズと反射波のピークには比例関 係があることが認められ, ピーク比と距離を知 ることにより欠陥の大きさを推定することが できる.なお Fig.5(a), (b)の縦軸は入射波のピ ーク(Fig.2 の A)に対する反射波のピーク(Fig.2 の B)の比を表し, Fig.5(a)の横軸は欠陥の大き さを表している.一方 Fig.5(b)の横軸は,試料 表面から欠陥までの距離Cと欠陥の大きさDを tan O(D/2C)で表している.この図から, EMAT より大きな欠陥に対して反射波のピーク比は, 欠陥の大きさにあまり依存せず, EMAT から見 た欠陥の角度幅に比例することが分かる. 1. 本研究により,探触子の 1/20 程度の大きさの 欠陥を検出することが可能であることと, 微小 な欠陥に対しても ALOK 法が有効であること が分かった.ただし今後の課題として,欠陥の 形状をより明確化させるために解析領域をさ らに細かく分割し,より解像度を高める必要が ある。10 (mm)Fig.3Directivity of EMAT-265がら[us][us]20日2013った...行10Shoussensess0TOTO0+ -64-56-48-40-32-24-16-80 8 16243240485664-64-56-48-40-32-24-16-80 a16243240 485664[mm][mm](a) Original image(b) ALOK method30[us][us]10日10--64-56-40-40-32-24-16-30 816 243240405664[mm]““Tails -in -do-te-za-ic - die dae no in so sa[mm] (c) Original imageFig. 4 Ultrasonic image of defects by EMATALOK methodPosition of defects0 10mm | 25nnn △ 35mm X 45mm| Position of defects0 10mm0.8HD25mm■スXRelative amplitude B/ARelative amplitude B/A※ol500.30.40.5|005 1 1520_ 0. 1 0 .2 0 Defect sizetan 8 (a)(b) Fig. 5 Relation between defect size and peak ratio of incidence and reflective waves-2664. EMAT の相似則について - 前章で示した欠陥の超音波画像や欠陥サイ ズと受信波形の関係は 3.2 節で示した特定のサ イズの EMAT,試料,欠陥および特定の周波数 の駆動電流について得られたものである.これ らの尺度を変化させた場合でもそれらが適当 な関係(相似則)を満たせば,前章で得られた 結果をそのまま適用することが可能となる.Fig.1 における座標を(x, y), 時刻を tとして, これらを次のように変換する x' = ax, y' = ay It's bt(8) ここで a, b は定数である.このとき(7)式と(8) 式を(6)式の波動方程式に代入すると aru' (alfu aru' (a + us) aru' atz (5) ip aret pr. at'oy'( 24 20 ) )Pmax'2 Lとなる.上式から、 a = b(10) を保ったまま空間と時間のスケールを変換し ても同じ形の方程式が得られることが分かる. 言い換えれば a=b=0.1 とすれば,前章で得られ た結果は空間座標を 1/10 とした結果と見なす ことができる.ただし EMAT の寸法も 1/10 に しなければならないことに注意する.上の計算では時間のスケールも 1/10 とした ので,波の伝ば時間も 1/10 となっているはずで ある.しかしながら前章の結果は特定の周波数 (1MHz)の入射波についての結果であった.した がって空間のスケールが 1/10で周波数が 1MHz の問題に適用するためには、元のスケールの問 題を 0.1MHz の入射波に対して解かなければな らなかった.逆に前章の結果をそのまま適用す るためには,周波数が 10MHz の波であると見 なせばよいことになる. (9)式をみれば相似則 (10)式が成立する場合に弾性波の伝ば速度は, 空間と時間のスケールを変換した後でも一定 であることが分かる.このことから波の波長と 振動数の関係-11-11を用いれば振動数が 10 倍の波の波長は変換後 に 1/10 となることが分かり, 空間のスケール 1/10に変換しているので空間と波長との比を保 ったままスケールが変換されていることが分 かる.ここで1は波長, vは弾性波の速度であ る. *以上の相似則を用いれば,前章で得られた欠 陥の解像度を 1/10 にするためには EMAT のス ケールを 1/10 に駆動電流の周波数を 10倍にす ればよいことが分かる. 参考文献 [1] 日本材料科学会編, 先端材料シリーズ,超音波と材料,裳華房, 1992. [2] 超音波便覧編集委員会編,超音波便覧,丸善,1999. [3] H. Ogi, M. Hirao, K. Minoura and H. Fukuoka,Quasi- Nonlinear Analysis of Lorentz-Type EMAT by Finite Element Method, Trans. JSME,Vol. 61A, pp. 638-645, 1995. [4] R. Ludwig and X.-W. Dai, J. Appl. Phys., Vol.60,pp.89-98, 1991. [5] R. B. Thompson, Physical Axoustics 19, AcademicPress, New York, 1988. [6] Takahiro Mitsuda and Eiji Matusmoto, NumericalAnalysis of Ultrasonic Inspection using Electromognetic Acoustic Transducer, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 23,pp.60-67, 2002. [7] 船岡,松本,電磁超音波探触子を用いた内部欠陥の画像化シミュレーション, 日本 AEM 学会誌, Vol.10, No.4, pp.378-383,2002. [8] 坪井始編著,数値電磁解析法の基礎,養賢堂,1994-267“ “電磁超音波探触子による探傷の解像度 “ “大下 敬之,Takayuki OSHITA,松本 英治,Eigi MATSUMOTO“ “電磁超音波探触子による探傷の解像度 “ “大下 敬之,Takayuki OSHITA,松本 英治,Eigi MATSUMOTO
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