原子力安全基盤機構の活動

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カテゴリ: 第1回
1. 原子力安全基盤機構の概要
原子力安全基盤機構は、昨年 10月1日に 発足した独立行政法人で、規制行政を担う原 子力安全・保安院 とともに、原子力エネルギ ー利用における安全の確保を使命とする専門 家集団の機関である。これまで保安院は、原 子力の安全確保に関する専門的業務を原子力 発電技術機構などの財団法人に委託して行っ てきたが、公益法人改革の一環としてこれら 業務を全て引き上げ、一元的に行うための独 立行政法人として設立されたものである。 ・機構は独立行政法人として、経済産業大臣 から4年間(今期のみ3年半)の中期目標を 与えられ、これに対応した中期計画と各年度 計画を作成して業務に当たる。この成果を含 む業務内容は、独立行政法人評価委員会の評 価を受ける。平成 15 年度は半年間であった がすでにこの評価委員会の評価を受けた。公募採用約 60 人を含む各機関からの寄合 いで、国民からも注目される重要な業務を進 めるということで大変であったが、立ち上げ を乗り切り業務も軌道にのりつつある。
2.業務と組織
機構は行政改革の一環として設立されたも のであるが、一昨年8月の東電問題を契機に基調講演昨年 10 月に規制の改正があって検査業務な どで機構の役割が増えるなど当初計画より規 模も大きくなった。機構の専門的業務は大き く分けて、(1)安全規制に直接関係する事項、 (2)防災に関する事項、(3)安全規制に関する規 格基準指針類に関する事項、(4)安全に関する 国内外の情報の収集・分析と伝達に関する事 項、などに分けることが出来る。これら専門的業務を行うための組織として、 解析評価部、検査業務部、核燃料サイクル施 設検査本部、防災支援部、規格基準部、安全 情報部、の6つの部・本部が置かれ、その他 運営管理の為の企画管理部、及び全体を統括 する理事長以下理事や監事等が置かれている。 4月1日現在役職員総数は 421 名である。機 構の紹介としては文献[1] を参照されたい。3.安全規制に直接関係する業務規制行政に直接関係する専門事項に、許認 可等にかかわる施設の安全性解析評価や定期 検査等における施設の検査・審査等がある。 3.1 安全性解析評価 - 解析評価部が主に担当しており、原子炉施 設や核燃料サイクル施設等の安全性に関する 解析評価を行う。主な業務としては以下のも のがある。 -35・許認可等における安全性解析(クロスチェ ニック解析)とそのための解析コードや評価手 法の開発 ・事業者の自主保安活動などに対する安全性 評価として定期安全レビューやアクシデント マネージメントに係る評価とそのための解析 コードや評価手法の開発 ・トラブル事象などの安全解析評価 ・解析評価の面から、リスク情報活用に係わ る安全規制や検査制度等、今後の規制にかか わる事項の検討3.2 検査等の実施機構は法律に定められた規制にかかわる各 種検査、安全管理審査及び確認業務を行う。 このうち、原子力発電所に係る検査等を検査 業務部が、また核燃料サイクル施設にかかわ るものを六ヶ所村に置かれた核燃料サイクル 施設検査本部が担当しているが、検査員は両 部で 113 名(4月1日現在)である。検査員 は、法令で定められる9種の資格につき、要 件を満たす者が認定されて検査にあたる。 ・ 機構が行う検査等のうち国と機構が分担し て実施するものとして、使用前検査、定期検 査、燃料体検査、廃棄物埋設確認検査等があ る。これらの申請受付や結果通知など全て国 が行うが、検査項目のうち国は安全上重要な 項目のみを検査し、80~90%の専門的項目は 機構が実施し結果が国へ通知される。 - 機構が法令に基づいて全てを実施するもの に、定期安全管理審査、溶接安全管理審査、 溶接検査、廃棄物埋設や運搬物等の確認、が ある。10月からの新しい規制制度で行われて いる定期安全管理審査は、事業者が行う定期 事業者検査について審査するものであり、そ の結果は国に通知され、評定は国が行う。既 に九州電力玄海 4号、関西電力美浜1号と高 浜3号の評定が出された。4.防災支援 1防災支援部では、国の防災対策を専門的立 場から支援するが、主な業務を以下に示す。1936/01/01・全国に 19 カ所ある経済産業省所管の緊急 事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター) と経済産業省の緊急時対応センターの整備・ 維持管理・設備の改善 ・緊急時対策支援システム(ERSS)の管理と定 期的な運用試験及び設備の改善 ・毎年実施される原子力総合防災訓練におけ る進行計画や事故シナリオ等の作成、 ・緊急事態発生時のために、国、地方自治体、 関係機関の防災関係者に防災に関する研修や 訓練支援などの実施5.規格基準指針のための調査試験研究 - 原子力の安全確保のための法令・指針・基 準・規格等の作成に必要となる調査・試験・ 研究を担当しているのは規格基準部である。 原子力においても省令告示の機能性化と詳細 技術基準である学協会の作成する規格基準類 活用が進められつつあるが、規制に係わる多 岐にわたる調査試験研究を行うと共に、国の 指針・技術基準作成や学協会の規格基準作成 へ積極的に協力している。調査試験研究は、燃料加工、軽水炉、核燃 料輸送、中間貯蔵、解体・処理、再処理、廃 棄等全ての原子力の分野で、地震・耐震、材 料、ヒューマンファクター等も含んでいるが、 この詳細は西脇の講演 [2] で述べられる。6.安全情報の収集・分析・伝達 6.1 情報の収集分析 * 機構では安全情報部を中心に、国際的なネ ットワークも活用し、原子炉施設等の安全確 保に関する情報を収集・整備し、データベー スを構築すると共に、情報の分析を行ってい る。特に、国内外の類似施設で生じた故障や トラブル等の情報を有効に活用することが重 要で、これらの分析結果から安全確保のため に取るべき措置については国に提言などを行 っている。 * 情報の収集整備として、国内の原子炉施設 等の事故・故障につき、国に報告されたもの と事業者が自主的に公開する軽微な事象につきデータベース化すると共に、海外の事故・ 故障については IAEA や NRC 等各国の情報 を入手している。また、国に報告された運転 管理面の情報もデータベース化している。 1. 情報の分析評価では、事故故障に関し原因 対策等の調査検討を行い国に情報提供される が、重要な情報は保安院との安全情報検討会 で検討される。これら情報は「トラブルの運 転経験ハンドブック」としてまとめられる。 また、国際原子力事象評価尺度の評価に対し 国へ技術的支援を行っている。6.2 国際活動」安全確保に関する国際的な情報共有は重 要である。機構は専門家集団として、保安院 を支援し、また独自に、以下に示すような活 動を行っている。 ・IAEA や OECD/NEA 等の多国間協力への 保安院の支援、会合・委員会・WG への参加 等、及び多くの国際プロジェクトへの参加 ・アジア原子力安全ネットワーク日本ハブセ ンター運営 ・保安院が行う米英仏独中韓スエーデン等と の二国間協力における保安院支援と技術協力 ・機構と仏独韓台等の規制支援機関との協力 協定に基づく情報交換 ・原子力や廃棄物等の安全条約に関する国別 報告書取りまとめ、検討会合への参加等 ・原子力事故早期通報条約の業務 ・中国等への規制者研修等6.3 情報伝達活動れると共に、機構としての優れた成果が生み 専門家集団としての国民に対する社会的説 出され、かつ PDCA がうまく回る仕組みが出 明責任として、原子力の安全確保に関する情 来ると考えて努力している。 報の提供は重要である。専門家集団としての 機構の情報提供の対象は、国(保安院等)、学 参考文献 協会などの専門家集団、立地地域住民を含む [1] 成合英樹他、“「原子力安全基盤機構」 国民、そして海外がある。期待の船出”、エネルギーレビュー、2004-6、 国に対しては、規制に関する情報の伝達に pp.6-25. 関し連絡会(安全情報検討会、検査関連連絡 [2] 西脇由弘、“原子力安全基盤機構の規格 会など)で連携を密接に行っている。一方、 基準関連活動について”、本講演会講演番号 学協会・大学等の専門家には、機構で行われ OS5-1、2004-7.-37ている専門的事項に対し情報提供すると共に、 検討会・研究会などで適切な助言を受けてい るが、出来るだけ広い専門家の意見を得るこ とに努める。立地地域を含む一般国民に対し ては、専門的な事項を分かり易く提供する努 力をすると共に、ホームページ等で情報公開 を行い透明性を高めるようにしている。7.業務の特徴と今後の取り組み機構は、原子力の安全に関する専門家の機 関として、規制に責任を持つ保安院と連携し て原子力の安全確保に努める責務がある。そ の業務の特徴は、安全規制に係わる法律で定 められた事項を国に代行する形で行うことや、 クロスチェックなどのように専門的事項で国 をサポートする業務があると同時に、国が責 壬を持つ防災では、その設備整備維持や訓練 研修まで全面的な支援を行っている。これら の業務はどちらかというと法令規則類で定め られた通りに粛々と行う業務である。その一方で、検査のあり方、規制制度のあ り方、効率的効果的な防災のあり方、技術の 進歩に対応した法令・指針・規格基準類の整 南等々、現在の規制全般を高度化する方向を 示す専門家集団としての業務がある。そのた めには、国内外の情報を的確に把握・分析・ 整備しつつ活用しなければならない。機構の職員の専門家としての質は極めて高 いが、それが広範な業務を行う各部署に散ら ばっている。それら職員の能力を活用した部 署間の連携により、各業務の質の向上が図ら れると共に、機構としての優れた成果が生み 出され、かつ PDCA がうまく回る仕組みが出 来ると考えて努力している。“ “原子力安全基盤機構の活動“ “成合 英樹,Hideki NARIAI“ “原子力安全基盤機構の活動“ “成合 英樹,Hideki NARIAI
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