正森 滋郎 Shigero MASAMORI

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カテゴリ: 第1回
1.緒言
経済成長に伴いエネルギー需要が増大する 反面で、地球環境問題等への関心の高まりもあ り、現有の人工物を上手く、そして長く使うと いう文化に転換しつつあることは必然である。 そのため、人類が造り出す人工物を合理的に維 持管理して長期間活用できるようにすること は、もはや喫緊の課題となっている。 ・ 一方、従来の保全活動は、保全管理者の経験 と勘に大きく依存しており、これが保全を最適 化する上での大きな障害となっている。このた め、保全を学術として捉え、それを体系化する ことによって、合理的効率的に保全の最適解を 求められるようにすることが強く期待されて いる。人工物を合理的に維持管理できるように するための学術体系の整備、すなわち保全科学 や保全工学を包含する保全学を構築すべく積 極的な活動を展開することは時宜を得たこと と言える。以上のような背景の中で、保全学が、どのよ うな形式、構造を有するものであるか、どのよ うな体系を有するものか、について検討してみ たい。このような新しい試みを行う場合、既存 の学術体系がどのようになっているか、につい て考えてみることは極めて重要である。このた め、保全学や保全工学が既存の学術体系と類似 した形式、構造を有していることを想定しなが ら、それらのイメージを以下の検討で描いてみ たい。の保全活動の流れ適切な手法を選択 工学大系などの中から
当社会学、経済学) | 規格・基準等 3日学社会科学人文科学 保全工学自然学科保全科学、|3×3マトリックス実時間軸 式類?化?果91結合原理 2投射原理 5選択原理従来は保全専門家の. 経験によっていた。空間報図-1 保全生成の全体スコープ次に「投射原理」であるが、言語学から類推 すれば、「保全言語」を一定の法則に則って並 べ保全計画を立案することで、とでも言えるで あろうか。これを理論化・体系化するためのツ ・ールとして、時間軸(現在、過去、未来)と空2.保全学のイメージ このため、ここでは言語学の基本的考え方を 「保全」という行為に適用して、その中で保全 学のイメージを可能な限り明確にしてみたい と思う。 - 言語学の理論から見た「保全」の概念を図示 すると、図-1に示すようになる。この範囲がOS1-2保全学のカバーする範囲であると考え、これを ここでは「保全学」と呼ぶこととしたい。まず、言語学でいうところの「選択原理」に あたるのは、保全の内容を規定するある種のル ールあるいはツールの1つ1つや、物理学や数 学などの学術、機械工学や電気工学などの工学 大系、規格基準などから目的に応じて適切に選 択していることに相当するだろう。次に「投射原理」であるが、言語学から類推 すれば、「保全言語」を一定の法則に則って並 べ保全計画を立案することで、とでも言えるで あろうか。これを理論化・体系化するためのツ ールとして、時間軸(現在、過去、未来)と空 間(要素、関係、抽象)から成る3×3マトリ クスが有用であると考えられる。 - 最後に、「結合原理」である。これは、保全 を考えるときの「答え」を出すプロセスに相当 する。すなわち、この活動は保全を立案・計画 する流れに沿った行為であり、この流れに沿っ て検討した結果として特定の対象をどのよう に保全するのが最適か、についての答えを出す。 前述の「選択原理」「投射原理」に従って検討-471してきた成果の集大成であり、答えを出すステ ップである。3.保全学の構造 - 既存の学術体系から保全学の構造について 類推を試みた。そこから見えてくるのは、普遍 学(時間・空間に左右されることなく成り立つ 法則)である。自然科学・人文科学を基礎とし て、その上に応用学(機械工学など)があり、 さらに工業生産の効率化を図るための規格・基 準類が構成されているものといえる。 - この構造をもとにイメージされた保全学の 構造を図示すると、図-2のようになる。すな わち、普遍的な概念をもつ保全科学と、それに 基づく保全工学及び社会的コンセンサスを得 た規格基準から構成されると考えられる。社会的コンセンサスを得た規格,基草重要度ロ工学」故工学検査システム工学事故車架分析工学想システム工学規格工学放理保全工学事故対策工学全教育学保全産造学」安心会学保全活学保全工学保全社会図-2 保全学の構造4.保全科学の構造4.1 保全工学の構造 -保全対象(劣化部位、劣化事象)に対する点 検・検査(方法、精度、定量化)、劣化評価(健 全性)、対応措置(補修、取替、劣化緩和)か ら成っており、各々に対して考えてみる。 保全対象は、プラント、システム、機器、部品 であるが、最適化を図る上では、対象の重要度 を評価する「重要度評価工学」が必要となる。 また、劣化事象に対する健全性評価を行うため には、不具合を予防する「事故工学」、劣化の 進展度合いを考慮して適切な精度・定量性をも った検査を実施する「検査システム工学」、余 裕を持った供用可能範囲を決定するための安 全祐度の最適配分を可能とする「規格工学」が 必要になる。更に、劣化は不可逆事象であるこ とから、シミュレーション技術を活用して、劣 化の進展度合いやトラブルの予測を行う「仮想 システム工学」もトラブルの撲滅や最適保全方 式の選定に有効である。 さらに、不幸にもトラブルが発生した場合に必 要となる対応措置としてトラブルに対する効率的な原因究明を可能とする「事故事象分析工 学」が必要になる。また、対策立案にあたって、 経済性も考慮した最適な対応措置の選定のベ ースとなる「事故対策工学」も必要になる。 これらに加えて、経済性の観点からも最適化す るためには、保全行為を経済性(費用)によっ て一元的に比較できるようにする必要があり、 これを実現するには「数理保全工学」「保全経 済学」などが必要になる。4.2 保全社会学保全活動は、技術的な分野に留まらず、社会 的な分野にも跨っている。このため、社会的受 容性確保の観点から産業活動(たとえば、原子 力発電)に対する安心感の醸成を図るための 「安心社会学」のような学術が必要になる。ま た、保全活動は、人の行為から成り立っており、 且つ、我が国独特の産業構造に支えられている ことから、高齢化に対応する労働者確保(女 性・外国人労働者の採用も含む。)や工事実施 体制の下請多層構造に対応するための「保全教 育学」や「産業構造学」なども必要になると考 えられる。5.まとめ今回は、既存の学術体系を参考に保全学の構 造と体系に関する考察を試みた。その結果、保 全学は既存の学術体系の中でイメージするこ とが可能であり、今後構築することが期待され る保全工学及び保全社会学、更にそれを構成す る学術分野が具体的に想定されることを確認 した。 参考文献
(2002) 2.織田;保全学の必要性日本保全学会「保全学」Vol.2, No.1 (2003) 3.山下、酒井、青木;軽水炉炉内構造物の点検評価 ・ガイドラインの体系化 日本AEM学会「フォー“ “正森 滋郎 Shigero MASAMORI“ “ “正森 滋郎 Shigero MASAMORI“
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