海外原子力発電所で発生した不具合事象の傾向分析(2003年)
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カテゴリ: 第1回
1. はじめに
近年、米国の原子力発電所の設備利用率は90% を超え、わが国よりも高い値を示している。これは、 米国では、原子力発電運転協会(INPO)や世界 原子力発電事業者協会(WANO)が中心となって 不具合事象を収集し改善に結びつける不具合反映活 動が活発に行われ、安全性や設備利用率の向上が進 められていることも寄与していると思われる。原子力安全システム研究所(以下INSS)では、 設立以来、米国を中心に海外の原子力発電所で発生 した事故故障(以下、不具合事象という)に関する 情報を入手・分析評価して、関西電力と北海道電力 のPWR発電所に対する改善提言を行い、同種不具 合の発生防止を図ることによって発電所の安全・安定運転向上に貢献してきている。2003年には電 カより約2800件の情報提供を受け、分析評価し て9件の改善を電力に提言している。 1. 本稿では、2003年に実施した個別不具合事象 の分析結果の概要を示すとともに、個別分析結果に 基づく不具合事象全体の傾向を紹介する。分析対象 の事象約1600件を機械・電気・計装・運転の分 野毎に、不具合の原因・発生機器・故障部位・対策 内容等の傾向を分析した。これまでに海外の不具合事象に関する傾向分析も 幾つか行われてきたが[1]、[2]、[3]、[4]、全体を 総覧する傾向分析を行ったのが今回の特色である。
2. 不具合分析活動の概要
2. 1 不具合分析の流れ海外の原子力発電所で発生した不具合事象は 様々なルートや形態で発信されており、米国原子 力規制委員会(NRC)は不具合情報を公開して いるので一般でも入手することができる。INS Sでは、このNRC情報と、INPO、WANO が発信している不具合情報とを主な情報源として いる。INPO情報、WANO情報は非公開であ り入手は会員に限定されているが、INSSは電 力の一部としてこれらの情報を入手している。入手した不具合情報の流れを図1に示す。改 善提言はPWR発電所を対象にしているが、分析 する不具合事象としてはPWRとBWR両方を取 り扱っている。INSSNRC情報「INPO情報海外の不具合事象情報入手| 関電電中研スクリーニング関電、北電分析・評価対策案提言| WANO情報必要により問合せ(国内外 の発電所、メーカ、等)図1 不具合分析の流れ Fig.1 Flow of events analysis in 20032.2 入手情報量の変遷これまでに入手した1998~2003年の暦年 毎のNRC情報、INPO情報、WANO情報の入 手数の変遷を図2に示す。1908/03/18手情報件数O NRC WANO INPO暦年1998 1999 2000 2001 2002 2003 図2 海外からの入挙情報件数の推移 Fig.2 Trend of obtained overseas information.この図からは、米国のINPO情報発信数(=入 手情報件数)が年々増加し、あたかも不具合が増加 しているように見える。しかしながら、図3に示す ように、米国の設備利用率や安全系作動率は逆に 年々良くなっている。[5] このことから、実際の不 具合発生数は減少しており、単に不具合事象の発信 (開示)数が増加しているだけ、と見る方が正しい と考える。このように、些細な不具合情報まで発信 するようになったことが、直接間接的に設備利用率 や安全系作動率の改善に寄与していると推定される。1905/06/201999 2000 2001_ 2002暦年 設備利用率安全系作動 (%)(平均回/炉年)図3 米国の設備利用率と安全系作動率の推移 Fig.3 ' Trend of capability factor and safety system actuations in the US.2.3 2003年の不具合分析結果 - 2003年(1~12月)に入手した不具合情報 を分析し提言した結果を表1に示す。表1 2003年の分析結果 Table 1 Summary of events analysis in 2003入手情報数 評価対象事象数、 分析対象外) 分析対象(分析中) (対策不要) (対策要)2852件 (100%)2374件 (100%) 1768件 (32%) 1606件 (68%)(73件) (1527件)(6件)9件改善提言件数、 (過年度分を含む)入手情報数に対して評価対象事象数が少なくなっ ているのは、同一不具合事象に対して複数の情報が
“ “海外原子力発電所で発生した不具合事象の傾向分析(2003年)“ “宮崎 孝正,Takamasa MIYAZAKI,佐藤 正啓,Masahiro SATO,高川 健一,Kenichi, TAKAGAWA,伏見 康之,Yasuyuki FUSHIMI,島田 宏樹,Hiroki SHIMADA“ “海外原子力発電所で発生した不具合事象の傾向分析(2003年)“ “宮崎 孝正,Takamasa MIYAZAKI,佐藤 正啓,Masahiro SATO,高川 健一,Kenichi, TAKAGAWA,伏見 康之,Yasuyuki FUSHIMI,島田 宏樹,Hiroki SHIMADA
近年、米国の原子力発電所の設備利用率は90% を超え、わが国よりも高い値を示している。これは、 米国では、原子力発電運転協会(INPO)や世界 原子力発電事業者協会(WANO)が中心となって 不具合事象を収集し改善に結びつける不具合反映活 動が活発に行われ、安全性や設備利用率の向上が進 められていることも寄与していると思われる。原子力安全システム研究所(以下INSS)では、 設立以来、米国を中心に海外の原子力発電所で発生 した事故故障(以下、不具合事象という)に関する 情報を入手・分析評価して、関西電力と北海道電力 のPWR発電所に対する改善提言を行い、同種不具 合の発生防止を図ることによって発電所の安全・安定運転向上に貢献してきている。2003年には電 カより約2800件の情報提供を受け、分析評価し て9件の改善を電力に提言している。 1. 本稿では、2003年に実施した個別不具合事象 の分析結果の概要を示すとともに、個別分析結果に 基づく不具合事象全体の傾向を紹介する。分析対象 の事象約1600件を機械・電気・計装・運転の分 野毎に、不具合の原因・発生機器・故障部位・対策 内容等の傾向を分析した。これまでに海外の不具合事象に関する傾向分析も 幾つか行われてきたが[1]、[2]、[3]、[4]、全体を 総覧する傾向分析を行ったのが今回の特色である。
2. 不具合分析活動の概要
2. 1 不具合分析の流れ海外の原子力発電所で発生した不具合事象は 様々なルートや形態で発信されており、米国原子 力規制委員会(NRC)は不具合情報を公開して いるので一般でも入手することができる。INS Sでは、このNRC情報と、INPO、WANO が発信している不具合情報とを主な情報源として いる。INPO情報、WANO情報は非公開であ り入手は会員に限定されているが、INSSは電 力の一部としてこれらの情報を入手している。入手した不具合情報の流れを図1に示す。改 善提言はPWR発電所を対象にしているが、分析 する不具合事象としてはPWRとBWR両方を取 り扱っている。INSSNRC情報「INPO情報海外の不具合事象情報入手| 関電電中研スクリーニング関電、北電分析・評価対策案提言| WANO情報必要により問合せ(国内外 の発電所、メーカ、等)図1 不具合分析の流れ Fig.1 Flow of events analysis in 20032.2 入手情報量の変遷これまでに入手した1998~2003年の暦年 毎のNRC情報、INPO情報、WANO情報の入 手数の変遷を図2に示す。1908/03/18手情報件数O NRC WANO INPO暦年1998 1999 2000 2001 2002 2003 図2 海外からの入挙情報件数の推移 Fig.2 Trend of obtained overseas information.この図からは、米国のINPO情報発信数(=入 手情報件数)が年々増加し、あたかも不具合が増加 しているように見える。しかしながら、図3に示す ように、米国の設備利用率や安全系作動率は逆に 年々良くなっている。[5] このことから、実際の不 具合発生数は減少しており、単に不具合事象の発信 (開示)数が増加しているだけ、と見る方が正しい と考える。このように、些細な不具合情報まで発信 するようになったことが、直接間接的に設備利用率 や安全系作動率の改善に寄与していると推定される。1905/06/201999 2000 2001_ 2002暦年 設備利用率安全系作動 (%)(平均回/炉年)図3 米国の設備利用率と安全系作動率の推移 Fig.3 ' Trend of capability factor and safety system actuations in the US.2.3 2003年の不具合分析結果 - 2003年(1~12月)に入手した不具合情報 を分析し提言した結果を表1に示す。表1 2003年の分析結果 Table 1 Summary of events analysis in 2003入手情報数 評価対象事象数、 分析対象外) 分析対象(分析中) (対策不要) (対策要)2852件 (100%)2374件 (100%) 1768件 (32%) 1606件 (68%)(73件) (1527件)(6件)9件改善提言件数、 (過年度分を含む)入手情報数に対して評価対象事象数が少なくなっ ているのは、同一不具合事象に対して複数の情報が
“ “海外原子力発電所で発生した不具合事象の傾向分析(2003年)“ “宮崎 孝正,Takamasa MIYAZAKI,佐藤 正啓,Masahiro SATO,高川 健一,Kenichi, TAKAGAWA,伏見 康之,Yasuyuki FUSHIMI,島田 宏樹,Hiroki SHIMADA“ “海外原子力発電所で発生した不具合事象の傾向分析(2003年)“ “宮崎 孝正,Takamasa MIYAZAKI,佐藤 正啓,Masahiro SATO,高川 健一,Kenichi, TAKAGAWA,伏見 康之,Yasuyuki FUSHIMI,島田 宏樹,Hiroki SHIMADA