原子力発電所メンテナンスの直営化

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カテゴリ: 第1回
1.緒言
・優秀な人材の確保、効率的な育成、人材の多能工化、共通活用等により人材の有効活用を進 昨今のわが国の産業界においては、中国をめる 代表とするアジア諸国への製造拠点の移動に 伴う技術・技能の低下が懸念されている。また、ことを提言している。また報告書では、多層請 わが国を代表するような企業における事故、ト負体制緩和の手段として直営率(工事等を外注 ラブルが続き、わが国の産業の特徴であった優するのではなく、自社内で実施する割合)の増 秀かつ勤勉な人材に支えられた高い安全性と大をあげている。ここではこの多層請負体制の 信頼性がゆらぎ始めている。背景と、緩和手段としてのメンテナンス直営化 ・ 一方、わが国の原子力発電所の運転実績は、の意味合い、日本原子力発電(株)における実 不祥事に端を発した運転停止による毀損はあ績を述べる。 ったが、技術面からは計画外停止の少なさ等、(F19.1) 世界のトップレベルを維持している。しかし、 今後の電力自由化 (Fig.1 参照)や少子・高齢化
Electric Power Industry DeregulationDiscussion of Full の環境下においても、原子力発電所の運営におDeregulation will Start ける技術・技能を質・量とも十分なものに維持KK-X するためには、規制緩和や効率化、人材確保・育Extra-High-Voltage(26%) 成等の努力が欠かせない。1 (Above20kV and 2,000kW) 将来にわたる原子力界の技術・技能の維持・
High-Voltage 向上、人材の確保策を検討するため、日本原子(Above 6kV and 500kW) 力産業会議は基盤強化委員会の下に人材問題(63%) 小委員会(委員長:鷲見原電社長-当時)を設(Above 6kV and 50kW).......t... け、検討を行ない、平成 15 年6月に報告書を公 (Range of deregulation) 表した。(参考文献 参照) この報告書では、電力自由化や少子・高齢化2.多層構造のメンテナンス請負体制 の環境下で十分な質と量の人材を確保するた めに、わが国の電力会社は、メーカー・大手工事会社へメンテナンス工事を発注しているが、実際 ・規制や多層請負体制の緩和、工事方法の合理にはその下に下請となる工事会社があり、さら 化・省力化により、要員の合理化を図るにその下に地元企業などの孫請会社が加わる 1.緒言.....-ー.ー...昨今のわが国の産業界においては、中国を 代表とするアジア諸国への製造拠点の移動に 伴う技術・技能の低下が懸念されている。また、 わが国を代表するような企業における事故、ト ラブルが続き、わが国の産業の特徴であった優 秀かつ勤勉な人材に支えられた高い安全性と 信頼性がゆらぎ始めている。一方、わが国の原子力発電所の運転実績は、 不祥事に端を発した運転停止による毀損はあ ったが、技術面からは計画外停止の少なさ等、 世界のトップレベルを維持している。しかし、 今後の電力自由化 (Fig.1 参照)や少子・高齢化 の環境下においても、原子力発電所の運営にお ける技術・技能を質・量とも十分なものに維持 するためには、規制緩和や効率化、人材確保・育 成等の努力が欠かせない。将来にわたる原子力界の技術・技能の維持・ 向上、人材の確保策を検討するため、日本原子 力産業会議は基盤強化委員会の下に人材問題 小委員会(委員長:鷲見原電社長-当時)を設 け、検討を行ない、平成 15 年6月に報告書を公 表した。(参考文献 参照)この報告書では、電力自由化や少子・高齢化 の環境下で十分な質と量の人材を確保するた めに、 ・規制や多層請負体制の緩和、工事方法の合理 化・省力化により、要員の合理化を図るOS3-4-91Original contractorContractor BContractor CContractor D| P.Subc.E]P.SubcF|| P.Subc G|| P.SubcHPrimary subcontractorStreutifi-naminET.Subc.L.T.Subc.MIT.Subc.NET.Subc.O: ・・・・・・・・・・. ..!・・・・・・・・ ・・・・・・・・The thirdThe forthという多層化した構造となっているケースがり、これでは電力会社の技術力低下や管理能力 多い(Fig.2 参照)。この体制には歴史的な背景の低下を招くことになりかねない。 もあり合理性もあったが、昨今の少子・高齢化 また、多層構造の請負体制では、各層での管 や電力自由化等の環境下では、見直す必要が生 理やスタッフ要員を必要とするため、今後の少 じていると考えられる。子・高齢化の社会では、質・量とも十分な人材を ( Fig.2確保することがますます困難になると予想される。 Multi-layered Structure of Contractorsこの問題を改善するためには、多層構造の緩 Utility A和が必要であるが、従来の各企業の役割や機能 をそのまま引きずっては、なかなか改善されな いと考えられる。安全は勿論、信頼の確保にも 他産業にない厳しさが求められる原子力発電 においては、優秀な人材を集めた企業が従来の 枠を越えた役割を担って初めて構造改革が可能である。 F.Subc. P F Subc. Qこのように、各層における効率化を進め、最 終的には電力会社による直営又は発注者(電力会社)と受注者の2層の関係に移行して行くの 2.1 多層請負体制の背景が合理的と考えられる。 多層請負体制の背景には、一般の建設業に於また、多層構造の緩和は、地元雇用と両立さ ける請負体制と同様に、発電所の建設工事や定せながら進める必要があり、電力会社から直接 期検査等のピーク時の作業員確保の必要性が発注できる地元企業の確保などが今後の課題 ある。これには人数的な必要性と共に、多様なである。(Fig.3参照) 作業内容に対応した請負者の確保という側面( Fig.3 がある。特に原子力発電所の建設が急ピッチでIn-House Maintenance Work 進んだ時代は、設計や製造、管理に携わる人材Utility (Multi-layered と実際の工事を行なう人材の分化が進み、幾重Structure) もの請負体制が維持された。この時代、多層請Principal Manager(In-House Maintenance) 負体制には経済的合理性もあり、また地元の雇Utility 用拡大にもつながる時代に即した体制であっSupervisor たとも言える。しかし、原子力発電所の建設の 機会が減り、またメンテナンスのより一層の合| Crew | Crew || Crew || CrewChief worker 理化に努めている現在、以前の様な多層体制を 維持するのは困難になりつつある。Subcontractor ManagerMany Staffs(Safety Radiation Control. OA etc.)Worker Worker Worker Worker2.2 現状の問題点と改善策3.原電におけるメンテナンス直営化 * 電力自由化による競争環境下で、原子力発電 日本原子力発電(株)は、昭和32年に欧米 が今後も基幹電源として活用されるためには、 から原子力発電を導入する目的で設立され、原 経済的な競争力を確保することが必要である。 子力発電のパイオニアとして、日本初の商業炉 このためには、不合理な規制の緩和や技術開発 である東海発電所、日本初の軽水炉である敦賀 の必要性は勿論であるが、さらに他産業におけ 発電所1号機、大型炉の東海第二発電所、敦賀 る系列の排除や流通の簡素化と同様に、多層体 発電所2号機の建設・運転を手掛けてきた。ま 制の不合理な点を改善していくことが求めらた現在は、商業炉初の廃止措置となる東海発電 れる。特に多層請負体制では、電力会社の社員所(ガス炉)の解体を進めるとともに、敦賀3、 が現場で物を見る機会が少なくなりがちであ4号機(改良型PWR初号機)の建設、中小型1899/09/29炉などの新型炉開発を目指している。さらに、今後の既設発電所の効率的な運営が ますまます求められる時代に対応して、約3年 前より社員によるメンテナンスの直営作業へ の取組みを開始している。 前より社員によるメンテナン の取組みを開始している。3.1 実績原電では平成12年末に技術 3.1 実績、原電では平成12年末に技術力の維持・向上 を目的に、全社9名でメンテナンスの直営化に 取組み始めた。その後の直営作業の経験から、 様々な波及効果が期待できるため、体制の強化 に踏み切り、現在は東海、敦賀の両サイト計 80名以上の陣容で取組んでいる。初年度(平 成13年度)の点検機器台数は、ポンプ、モ ータを中心に3プラントで年間20台程度で あったが、直営員人数の増加とともに点検台 数・機種も増加し、平成15年度は年間約 260 台の点検を実施した。一あタっ.戸などの新型炉開発を目指している。さらに、今後の既設発電所の効率的な運営が 3.3 今後の取組み ますまます求められる時代に対応して、約3年 原電では定例工事の直営化により、多層請負 前より社員によるメンテナンスの直営作業へ体制の緩和と共に、状態監視保全(CBM) を初 の取組みを開始している。めとした保全高度化技術の運用と連携し、保全の適正化、効率化に努めている。このため、現 3.1 実績、在の80数名の保修直営員を平成 18 年度末に 原電では平成12年末に技術力の維持・向上 は150名規模にする予定であり、東海ガス炉 を目的に、全社9名でメンテナンスの直営化に の廃止措置工事直営員50名と合わせて、全社 取組み始めた。その後の直営作業の経験から、 で直営要員200名を確保する。この廃止措置 様々な波及効果が期待できるため、体制の強化 工事直営員と保修直営員は、相互に乗り入れて こ踏み切り、現在は東海、敦賀の両サイト計業務応援を行なっており、そのために必要な研 80名以上の陣容で取組んでいる。初年度(平 修も併せて実施している。 成13年度)の点検機器台数は、ポンプ、モ また、直営作業への従事は技術的なセンスを ータを中心に3プラントで年間20台程度で養う貴重な機会でもあり、今後は若手技術系社 あったが、直営員人数の増加とともに点検台 員のキャリアパスに位置付けることを計画し 数・機種も増加し、平成15年度は年間約 260 ている。 台の点検を実施した。4.結言3.2 成果わが国で商用原子力発電所の運転を開始し メンテナンス直営作業への取組みにより、単 て以来、今年で38年が経過しようとしている。 こ技術・技能の向上だけではなく、メンテナン 原子力発電の海外からの導入当初は、国をあげ ス業務全般への成果もあがっている。特に、保 ての取組みであり、マスコミ各社も新たな時代 全の適正化に向けた様々なアイディアの提案のホープとして報道していた。そのような時代、 や、業務への取組み意識の向上などに大きな効原子力発電には多くの優秀な技術者、技能者が 果が期待できるようになっている。(Fig.4 参 かかわってきたが、その多くがリタイアした現 照)在、今後の原子力発電を支える人材の確保は大 きな課題である。これは、わが国だけの問題ではなく、欧米の原子力発電先進国の共通の 得られた成果課題であり、各国とも若手人材の確保・育成に官民を上げて取組むようになっている。大型、重要機器の工事実施 業 経験の蓄積これに加え、わが国では多層請負体制の問 作業効率の向上題があり、この構造改革を進めつつ人材の 里全般への効果確保・育成を行ない、適正な数の優秀な人材 保全の適正化に支えられた原子力発電へと移行していくことが求められる。これには、人材の育成 保守工事の効率化・経済性向上や雇用の問題など多くの課題があるが、日 P発電所保全の高度化。 本原子力発電(株)では、今後も原子力発電 工事監理業務への反映が基幹電源としてエネルギーの安定確保や地球環境問題の解決に役立つよう、メンテ 安全意識の向上ナンスの直営化を推進していく予定である。機器構造の理解、機器の個性・弱点把握、作業要領見直し、 技量向上、資格取得、工具の工夫、機器への愛着頻度・検査項目の適正化、CBMへの移行 交換から劣化状態に基づく交換5要領書の簡索化、記録類の標準化、人工積算能力日本ペイントの把握、作業に対する理解(センタリングの難しさ等) 者の気持ちを理解(待ち時間のもどかしさ、作業環境の厳しさ)生に対する心構えの変化、危険箇所・危険作業の把握、 の段取り・4Sの重要性の理解参考文献[1] 日本原子力産業会議 「基盤強化委員会 人材問題小委員会 報告書」平成 15年6月[1] 日本原子力産業会議 「基盤強化委員会 人材問題小委員会報告書」平成15年6月 933 今後の取組み 原電では定例工事の直営化により、多層請負 制の緩和と共に、状態監視保全(CBM)を初 っとした保全高度化技術の運用と連携し、保全 適正化、効率化に努めている。このため、現 の80数名の保修直営員を平成 18 年度末に 150名規模にする予定であり、東海ガス炉 廃止措置工事直営員50名と合わせて、全社 ・直営要員200名を確保する。この廃止措置 事直営員と保修直営員は、相互に乗り入れて 三務応援を行なっており、そのために必要な研 も併せて実施している。 また、直営作業への従事は技術的なセンスを う貴重な機会でもあり、今後は若手技術系社 のキャリアパスに位置付けることを計画し いる。楽扮心抜を行なっており、ていた。 修も併せて実施している。また、直営作業への従事は技術的 養う貴重な機会でもあり、今後は若 員のキャリアパスに位置付けるこ“ “原子力発電所メンテナンスの直営化 “ “異良 隆,Yoshitaka TATSUMI“ “原子力発電所メンテナンスの直営化 “ “異良 隆,Yoshitaka TATSUMI
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