配管減肉管理システム

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
プラント配管の減肉を原因とする破断漏洩事故を未 然に防止することは非常に重要な課題である。特に、 原子力プラントにおいては、安全性の問題等、社会的 影響が非常に大きいことに加えて、事故時の対策の為 のプラント停止による経済的損失が大きいことからも 明らかである。従来の原子力発電所における配管の減肉管理は、 独立した図書として管理された諸情報を収集・集約し て、検討・評価を行っていた。従って、配管に関する 定期検査時及びトラブル発生時における対応は、関係 する図書の情報を複数の設計者が手作業で収集・整理 していた為、膨大な時間と労力を要していた。この改善策として、プラント予防保全の業務合理化 及び信頼性向上の為に、IT活用によるシステム開発 を進めている。その一環として、配管減肉管理へIT を適用し、2次元ラスターデータ(スキャナーデータ) を利用して情報の統合化・アクセスの容易化及び管理の高精度化を実現するシステムを開発した。 1建設後、長期間経過したプラントでは、図面が紙情 報としてしか残っていないことが多く、これをスキャ ニングしたイメージデータを図面データとして活用し ている。定期検査時に実施する配管減肉管理は、この 図面データをもとに計画図の作成等を行い、部品情報 や測定箇所・記録等を重ね書きして使用している。 その際、重ね書きするデータが直接元の図面データに 書き込まれてしまうと、原本が改変され、以後の使用 の際に不都合を生じる。その為、従来は、重ね書きの データを、元の図面データ上に電子的に記載または描 画する上書き機能を使用して資料作成を行っていた。 本来、元の図面に上書きされる情報は属性を持ち、 元の図面と互いに依存関係を有する。例えば配管の 撤去作業の情報を新しく上書きして表現した場合、 元の図面及び元の図面に上書きしたデータとしてそれ ぞれ独立に管理する従来の方法では、必要とするデー タを手作業で検索せざるを得ず、未だ処理に時間を要していた。今回、図面データに必要な情報を重ね書きして管理 する方法に加え、ユーザが指定した部品に関連する 属性データを付加し、表示・設定を効率よく実施する ことが可能な配管減肉管理システムを構築したので、 本稿にて紹介する。
2. 配管減肉管理システムの概要
2.1 配管減肉管理の問題点及び課題 従来の配管減肉管理においては、下記の問題点及び 課題があった。 (1) 配管減肉管理対象箇所は、系統・内部流体条件 (流速・温度・湿り度等)・配管経路等により選定される為、これらの条件を一括して処理する必要がある。 (2) 修理を行った配管の最新状態が常に反映され、かつ修理前の管理情報も参照可能とする必要がある。 (3) 配管減肉管理対象となる部位は、曲がり部や絞り部等であるが、同一ライン上に複数箇所存在する為、これらを全て考慮する必要がある。 (4) 配管減肉管理は、格子状の各測定点に対し、超音波厚み計により測定した肉厚を管理しており、建設後、 長期間経過したプラントにおいては、測定結果は紙の 記録でしか存在していない。この為、これらの記録を必要に応じて即座に参照することができなかった。 (5) 適切な配管減肉管理を実施する為に、肉厚測定点の寿命・測定経緯・対象箇所の絞込み等の迅速な処理を可能にする必要がある。 (6) 個々に管理された図書及びデータのリンク付けがない為、変更等が生じた場合、各々の図書やデータ に対して修正を行わなければならず、作業の効率化 が図れなかった。2.2 配管減肉管理システムの機能及び管理方法の概要 作業フロー及びシステム機能を図1に示す。 以下、今回構築した配管減肉管理システムの機能と 管理方法の概要を説明する。(1)選定フロー作成機能・・・図1(A)従来は、減肉に対する材料選定と実機実績を加味し た選定フローに基づき、各配管の管理区分を決定して いたが、減肉管理区分選定フローは紙資料として個別 管理していた。本システムによれば、選定条件をシス テム上で設定し、設計仕様データに基づき、その結果 の表示が可能となる。 (2)アイソメ図の最新化維持・・・図1(B)従来は、アイソメ図作成のエビデンスである配管施 工図は紙資料として個別に管理されていたが、本シス テムにより、アイソメ図を作成した配管施工図を電子 データとして取込み、それぞれの接続関係を可視化 し、アイソメ図とリンクさせることにより、配管施工 図と同期化した管理が可能となる。 (3)点検報告書管理・・・図1(C)従来は、点検報告書は紙資料として個別に管理され ていたが、本システムによれば、点検報告書を主とし て、その他減肉管理に関わるドキュメントを電子デー タとして取込み、測定実績回数や測定箇所番号等に リンクしたエビデンス管理の実施が可能となる。 (4)測定データの表示・・・図1(D)従来は、測定した生データを点検報告書に添付して 報告していたが、本システムによれば、測定した 生データ(1格子点単位の肉厚値)を電子化して処理 することにより、可視化され、配管の肉厚値及び 周方向・長手方向における減肉の分布状況の確認が 可能となる。 (5)余寿命推定グラフの表示・・・図1(D)従来は、評価結果一覧を点検報告書に添付して報告 していたが、本システムによれば、測定した生デー タ・公称肉厚値・必要最小肉厚値等を用いて、減肉率 を算出し、余寿命評価結果の表示が可能となる。 (6)各種帳票の表示・・・図1(D・E) - 従来は、独立した表ベースで設計仕様・測定実績の 有無を管理していたが、本システムによれば、減肉管 理に関わる全てのデータをデータベース化し、そこか ら必要な項目を選択して出力が可能となる。138開始配管減肉管理システム電子フローの設定対象箇所選定 フローの設定●設計仕様データ(ラインリスト情報整備) 流速、運転モード、溶存 酸素、温度、湿り度等 (配管仕様情報整備) 口径、公称肉厚、必要 最小肉厚、製造最小肉厚データインプットフロー作成機能等管理区分アウトプット管理区分の決定ラスターデータの取込対象範囲系統図作成ラスターデータの取込最新版配管施工図の収集ラスターデータの取込管理用アイソメ図 (スケルトン図)作成系統図・アイソメ図・ 配管施工図・点検リストのリンク機能リストアウトプット点検リスト作成ラスターデータの取込点検報告書の収集ドキュメント管理機能測定データの取込測定実績調査減肉率/余寿命 表示・評価機能計画機能評価・計画結果アウトプット検査計画図1: 作業フロー及びシステム機能139今回構築した配管減肉管理システムにおいては、 重ね書きされたレイヤー(データを保管・表示する階層)(7)管理系統図及びアイソメ図のシステム取込・表示 今戸人形 機能・・・図1(B)[1] 公開特許公報(特開 2004-62696) 図書管理方法及 従来は、管理系統図・アイソメ図・点検リストが個別び装置 に管理されていたが、本システムによれば、全てを電子 [2] 公開特許公報(特開 2002-89800) プラント配管の データとして取込み、キー番号によるリンク管理が可能 減肉可視化プログラムが記憶されたコンピュータ となり、双方向での電子的な一元的管理が可能となる。取り込み可能な記録媒体及びプラント配管の減肉可視化方法[3] 特許公報(特許第 3075564号) 配管減管理評価シス 尚、本システムの特徴は、上記(7)である。即ち、テム 今回構築した配管減肉管理システムにおいては、元図面に 重ね書きされたレイヤー(データを保管・表示する階層)上◆連絡先:小貝 真名美〒317-8511 茨城県日立市幸町 3-1-1 のデータを他のレイヤーとリンクし、かつ他のレイヤーからの(株)日立製作所日立事業所 利用を可能とする為に、レイヤー編集装置として、以下の原子力プラント部プラント設計グループ 機能を付与した。電話:0294-55-4740 a) 元になる図面のイメージデータ及び、イメージデータの E-mail : manami_kogai@pis.hitachi.co.jp上に重ねられるレイヤーデータに対し、これらの相互の 対応関係を管理し、特定のレイヤー上の特定位置への 操作が行われた際、その操作箇所に対応する図面イメ ージデータに対応した別のレイヤーデータを検索し、レ イヤーデータの取得と、入力されたデータとの関連付けを行う機能 b) 元になる図面のイメージデータにおける指定領域に基づき、関連したレイヤーデータを表示させる機能3. 結言(1)図面データに必要な情報を重ね書きして管理する 方法に加え、ユーザが指定した部品に関連するレイヤ ーデータの表示・設定を効率よく実施可能な配管減肉 管理システムを構築した。 (2) 今回開発した配管減肉管理システムにより、個別に 管理されていた図書情報の一元管理が可能となり、デー タベース内の情報の関連付けにより、的確な配管の点検 計画及び減肉対策計画を事前に立案可能となった。 (3)今後は、3次元 CAD との連携を含めた展開を行っていージデータに対応した別のレイヤーデータを検索し、 元になる図面のイメージデータにおける指定領域に 管理されていた図書情報の一元管理が可能となり、 計画及び減肉対策計画を事前に立案可能となった。◆連絡先:小貝 真名美 〒317-8511 茨城県日立市幸町 3-1-1(株)日立製作所日立事業所 原子力プラント部プラント設計グループ 電話:0294-55-4740 E-mail : manami_kogai@pis.hitachi.co.jp- 140 -“ “配管減肉管理システム“ “小貝 真名美,Manami KOGAI,阪田 浩志,Koushi SAKATA,久恒 眞一,Masakazu HISATSUNE,折谷 尚彦,Naohiko ORITANI
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