社会基盤構造保全技術の立場から見た高精度製作法の検討

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
溶接構造物の保全のためには構造性能や寸法精度 などの各種品質を保障する事が重要である。例えば、 橋梁部材においては剛性を上げるために、リブ(ウェ ブ)を立てT型隅肉溶接を行う。その際に溶接変形 が生じ、溶接構造物の強度を低下させる。長大箱桁 橋の破壊落橋事故における直接原因に、主桁フラン ジ部の座屈が挙げられており [1]、溶接変形による座 屈強度低下は特に注意が必要となっている。そのた め、溶接変形の矯正作業を行わなければならないが、 矯正による残留応力の付加に伴って破壊強度や疲労 強度の低下が起こる [2]。また、矯正は溶接変形を改 善する工程にも関わらず、矯正作業により2次的な 変形が生じ、これが保全上問題となる場合すらある。 そのためにも、製作工程時に生じる溶接変形と溶接 残留応力の低減が求められ種々の研究がなされてき ている。しかし、現場では溶接変形や残留応力を低 減する方法は必ずしも確立しておらず、技術者の経 験と勘を頼りにし、溶接後の矯正が必要となってい るのが現状である。溶接変形の取り扱いを一層困難 にしている要因に切断・溶接時の変形量の部材ごと のバラツキが挙げられる。このバラツキは、施工上の要因以外に、鋼板の持つ初期残留応力分布の影響 が要因に挙げられる。初期残留応力分布がバラつく ことにより、切断・溶接変形のバラツキが大きくなっ ている。近年、初期残留応力分布のバラツキを均一 化にした残留応力制御型 TMCP 鋼板が開発された [3][4][5]。このような鋼板を用いることにより、変形 のバラツキを少なくし切断・溶接変形を再整理でき、 切断・溶接変形、さらには強度信頼性の予測・制御 方法につながると考えられ、保全のタイミングにも つながると考えられる。本研究では、橋梁部材であ るフランジパネルを製作する各工程での各種変形を 計測することにより、初期残留応力の切断・溶接変 形に及ぼす影響を検討する。2.実験要領 - 初期残留応力分布の均一化された鋼板とバラツキ を持つ鋼板の2種類の鋼板を使用して、フランジパ ネルの基本部材であるフランジ材とリブ材を製作す る切断工程においての各種変形計測(切断実験)を行 い、次に基本部材を組立ててフランジパネルを製作 する仮付け溶接、溶接、矯正工程においての各種変 形計測(溶接実験)を行う。Fig.1にフランジパネル の製作方法を示す。また、切断実験で計測した変形は、 リブ材に関してキャンバと縦収縮、フランジ材に関 しては縦収縮である。溶接実験では、縦収縮、縦曲り、 横収縮、角変形を各工程後に計測した。
Original plateCuttingFlangeRib2160260010000Tack weldingWelding Straightening1609950Flange panel2550Fig. 1 Method of fabricating flange panel. 3.実験結果 3.1 切断実験結果 ・リブ材製作での条切り切断時には初期残留応力が ほとんど解放する為、切断変形に、特にキャンバに 初期残留応力が大きく影響する事が明らかになった (Fig.2 参照)。また熱弾塑性解析結果より入熱量も同 様にキャンバに大きく影響を与える事が分かり、さ らに条切り切断後の残留応力はほぼ同じになる事も 分かった。フランジ材製作での四方端部切断におい て縦収縮への初期残留応力分布の影響は、端部に表 れる事が明らかになった。 13.2 溶接実験結果溶接時、初期残留応力の影響を受けやすいのは、 たわみ変形(面外変形)であるという事が分かった。 そして、切断時に生じた変形が組立工程の中で影響 を及ぼす事も分かった。また、矯正工程では、新た に縦曲り変形や溶接線方向への引き延ばしが生じ、 溶接変形を改善する工程にも関わらず変形を起こし ている事が明らかになった。4.結言 1 切断・溶接変形のバラツキが、初期残留応力の均 一化により抑えられる事が明らかになった。特に、 リブ(ウェブ)材を製作する際に生じる切断変形を 矯正した後、もしくはそのまま無理な組立溶接を行 えば、さらなる残留応力や溶接変形を引き起こす。 したがって、“初期残留応力分布の均一化”は橋梁部 材の初期工程である切断工程から溶接工程のみなら ず、最後の橋梁製作工程までの矯正作業を省力化で きるとともに、適切な保全活動を行うことにつなげ ることができる。In cutting15Due to heat inputCamber (mm)On123456789 10 11 12 13Rib number(a) Camber of rib made of developed steel.in cuttingCamber (mm)Leatmentainドランさい。112345678910 11 1213Rib number(b) Camber of rib made of conventional steel.Fig. 2 Camber of rib in cutting.謝辞 1. 本研究の一部は,文部科学省 21 世紀 COE プログ ラム「構造・材料先進材料デザイン拠点の形成(研究 代表者:馬越佑吉大阪大学教授)」 事業推進費補助金, ならびに科学研究費補助金・基盤研究 (B) : 課題番号 17360418 の補助を受けて実施したものである.参考文献 [1] 菊池洋一、“伊勢湾大橋と溶接橋梁の問題点”、 ・ 溶接学会誌、Vol.45、1976、pp.91-98 [2] 山川武人、“溶接変形の防止と制御”、溶接学会誌、Vol.67、1998、pp.121-125 [3] 谷徳孝(他)、“残留応力制御型 TMCP 鋼板の有効性検証 (1) スリットスロット切断時の変形に及ぼ す TMCP 鋼板の残留応力の影響”、日本造船学会論文集、Vol.189、2001、pp.299-307 [4] 谷徳孝(他)、“残留応力制御型 TMCP 鋼板の有効性検証 (2) 船体直線ブロック製作時の工作精度に 及ぼす TMCP 鋼板の残留応力の影響”、日本造船学会論文集、Vol.190、2001、pp.599-606 [5] 谷徳孝(他)、“残留応力制御型 TMCP 鋼板の有効性検証 (3)FCB 板継溶接時の幅収縮に及ぼす TMCP 鋼板の残留応力の影響”、日本造船学会論 文集、Vol.192、2002、pp.619-627147“ “社会基盤構造保全技術の立場から見た高精度製作法の検討“ “濱中 亮,Ryo HAMANAKA,和屋 裕士,Hiroshi SHIWAYA,望月 正人,Masahito MOCHIZUKI,豊田 政男,Masao TOYODA
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