結晶粒形状に注目した強度特性評価による材質制御・材料保全法の検討

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
1 構造物の破損事例中、SCC や疲労に起因する事故は 高い比率を占め[1]、これらの問題は、力学、材料、環 境の諸因子が同時に働くことによって起こる。材料強 度特性は組織形態と密接に関連することが知られてお り、材料保全の観点から組織形態と局所的な応力一歪 場特性との関係を解明することは重要である。そこで 上記の問題解決のための基礎的研究として、本研究で は結晶粒形状に注目し、実際の結晶粒形状を反映させ た数値解析モデルによって組織形態と強度特性との関 係を検討した。2. 結晶粒形状の定量化結晶粒形状を定量的に評価するために、フェライト 鋼を対象に結晶粒の粒径、アスペクト比、主軸角度を EBSP-OIM 法により測定した。結晶粒形状は結晶粒を 楕円に近似することにより定量化した。結晶粒径は面 積が等しい円と仮定した場合の直径、アスペクト比は 楕円の“短軸の長さ/長軸の長さ”、主軸角度は楕円の 長軸と水平方向の角度と定義した。測定の結果、結晶 粒径は対数正規分布、アスペクト比が正規分布に従い、 主軸角度が不規則な分布を呈しているということが分 かった。
3. 結晶粒形状のモデル化した。結晶粒形状を数学的に表現する方法として一般図形 ボロノイ図[2]を利用する方法を提案した。一般図形ボ ロノイ図とは Fig. 1に示すように、平面上に生成元と よばれる図形(点線)を互いに共通部分をもたないよう に配置したとき、平面上の点をどの生成元に最も近い かに従って分割した図(実線)である。生成元となる図形 に結晶粒径、アスペクト比、主軸角度の分布を反映さ せた楕円を用いれば、分割後の図形は、楕円に比べ若 干粒径は大きくなるものの、アスペクト比や主軸角度 はほぼ等しくなり、実際の鋼材に近い結晶粒形状を得 ることができる。Fig. 1Example of generalized Voronoi diagram.Fig. 11504. 結晶粒形状と強度特性との関係の検討1結晶粒の粒径、アスペクト比、主軸角度の3つの因 子が強度特性に及ぼす影響を検証するため汎用コー ドABAQUS ver6.4 を使用して解析を実施した。Fig. 2 に示すような 30 個の結晶粒の集合に、引張荷重を加 えた場合の応力分布、伸びを調べた。各結晶粒の境界 面ではすべりを考慮しているが、界面は剥離しないと 仮定した。また、すべての結晶粒の応力-歪特性を均 一とし、結晶粒形状因子の分布の影響を考慮するため、 Table 1 に示す結晶粒形態の条件で解析を行った。→ Load[Pa] 11.0x108474[km]474[um] Boundary condition for FE-analysis.Fig. 2Table 1 Condition of grain shape for FE-analysis.Distribution type case Grain Aspect Graindiameter ratio orientation LognormalNormal 2 ConstantConstant Random(Mean 5 | Lognormal value)Constant (0°) NormalConstant (90°)67各ケースにおける伸び、負荷方向の塑性域の割合を Fig.3 に示す。結晶粒形状が異なると強度特性にも違 いが生じることがわかる。結晶粒径が一定である場合 の方が対数正規分布に従っている場合と比べて伸び が大きく、塑性域の割合は2倍以上の差が見られる。 またアスペクト比が一定であるケースの方が正規分 布に従っている場合と比べて伸び、塑性域共に 1.5倍 以上大きい。アスペクト比を一定にした場合では、結晶粒が偏平になるに従って高応力領域、伸びともに大 きくなっている。主軸角度が引張方向の水平および垂 直方向に揃うと主軸角度が揃っていない場合と比べ て3重点において応力集中が起こる箇所が多くなるこ とがわかった。また垂直方向に揃えた場合では引張方 向と垂直な粒界で引張の応力集中が起こる箇所が多 くなり、大きな伸びを示している。VIZ ElongationElongation(um)Plastic Zone (%)11345CaseFig. 3Effect of grain shape on strength properties.5.結言1) フェライト鋼において結晶粒の粒径、アスペクト比、 主軸角度を測定し、それぞれが特定の分布に従っていることを確かめた。 2) 結晶粒形状の分布を考慮できる結晶粒形態モデル 化手法として一般図形ボロノイ図を利用した方法を提案した。 3) 提案したモデル化手法を用いて解析を実施し、結晶 粒の粒径、アスペクト比、主軸角度の3つの因子が 強度特性に及ぼす影響を検証した。謝辞本研究の一部は、文部科学省 21 世紀 COE プログラ ム「構造 材料先進材料デザイン拠点の形成(研究代表 者:馬越祐吉大阪大学教授)」 事業推進費補助金、なら びに科学研究費補助金・基盤研究(B) : 課題番号 17360418 の補助を受けて実施したものである。参考文献 [1] T. G “腐食事例”編著、応力腐食割れの事例の収集と解析、日本材料学会防食部門委員会編、1978、p.15. [2] 杉原 厚吉、“FORTRAN 計算幾何プログラミング”、岩波書店(1998),151
“ “結晶粒形状に注目した強度特性評価による材質制御・材料保全法の検討“ “原田 直樹,Naoki HARADA,勝山 仁哉,Jinya KATSUYAMA,樋口 良太,Ryota HIGUCHI,望月 正人,Masahito MOCHIZUKI,豊田 政男,Masao TOYODA
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