炉内点検技術と高経年化プラントへの適用
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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
* 原子力プラントへの維持基準の導入により、高経年化 プラントの炉内構造物に対する健全性評価のための点 検・検査要求が高まっている。東芝では炉内構造物の検 査技術開発をいち早く開始し、優れた検査技術を積極的 に実機適用している)。近年の炉内構造物検査で適用した 検査技術には、BWR プラントのシュラウドや原子炉底部 に適用した水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術51415) や、PWR プラントの炉内計装筒管台に対して世界で初め て実機適用したレーザ超音波検査技術などがある。また、高放射線下の水中で実施される炉内構造物検査 には遠隔アクセス装置を用いることが必須となる。東芝 では、目視検査用 TV カメラや超音波探触子などを精度 良く目的の部位に設置し、検査するために、特別に開発 した各種の水中遠隔点検装置を使用している。さらに、 原子炉底部の高ニッケル合金溶接部など、クラッドの付 着が想定される箇所に対しては、水ジェット洗浄技術を 適用して検査面の前処理を行うなど、検査精度の向上を 図るための技術も導入している。
2.検査技術 2.1 水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術 * シュラウド等の炉内構造物や配管に応力腐食割れ(SCC)が発見されており、き裂がある状態で機器構造 の健全性を評価するために、超音波探傷によるき裂の深 さ測定が必要となっている。東芝では、溶接部表面の凹 凸の影響を受けにくい水浸フェーズドアレイ超音波探傷 技術を独自に開発し、水中での高い精度の検査を実現し ている1957。アレイ探触子も対象部に応じた多くのタイ プを保有しており、これまで超音波探傷が不可能であっ たシュラウド下部や原子炉底部の高ニッケル基合金溶接 部など、材料的に超音波が伝わりにくい複雑形状に対し ても、より適切な条件で探傷が可能となった。Fig.1 に東 芝が保有するアレイ探触子の一例(256ch、128ch、64ch) を示す。Fig.2 にシュラウド下部リング溶接部の探傷イメ ージと、SCC を探傷した結果の一例を示す。東芝では、 更なる水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術の高度化、 高速化を進めるとともに、検査員の技量向上を図るため の教育・訓練プログラムの充実にも注力し、積極的に取 組んでいる。17256ch128ch64chFig. 1 Example of array UT provesElectric ScanningDOVShroud H6a WeldmentMechanicalScanningShroud lower ringArray UT prove(a) Scanning imageFRUITSB-scanSurfaceandC-scanCrack EchoStraightStraightAngle BeamAnesteBeamA-scan(b) Example of UT result Fig. 2 Application of phased array UT techniqueto Shroud lower ring2.2 レーザ超音波探傷技術レーザ超音波技術とは、送信レーザ光を照射して検査 対象表面に超音波を励起させ、対象物中を伝播した超音 波を受信レーザ光で検出する技術である。この技術を応 用して、表面に開口したき裂からの反射波や、き裂を透 過する超音波の周波数特性の変化を感知することで、き 裂の検出及び深さ測定が可能である「17。 Fig. 3 にレーザ 超音波探傷技術の原理図を示す。この探傷技術には、以下のような特長がある。 ・探傷ヘッドが小型化でき、複雑・狭隘部の検査が可能 ・水中、気中など環境条件によらず、非接触で検査が可能・分解能が高く、表面に開口した微小き裂に対する検査 精度が高い表面に開口した微小き裂に対する検査Fig.4に小型探傷ヘッドの一例と、SCCの探傷結果の一 例を示す!。本技術は、(財)発電設備技術検査協会殿の 確性試験において、深さ 0.1mm 程度の欠陥でも検出でき る能力を持つこと、Fig.5 に示すように深さ約0.5~1.5mm のき裂に対して±0.2mm 程度のサイジング精度を有する ことが確認されている。本検査技術は、PWR プラントの炉内計装筒管台内面に 対する予防保全工事の施工前検査として、世界で初めて 実機プラントへ適用された1819。GenerationLaserDetectionLaserReflected(Echo)crackSignal amplitudeIncidenthqdent SAWITReflecied(Echo)Time(a) Reflection mode (crack detection)GenerationLaserDetection??efcrackSignal AmplitudeIraiisin ittedIncident SAWTimeTransmitted (b) Transmission mode (crack depth measurement)Fig. 3 Schematic illustrations of Laser-UTLaser-ultrasonic testingI SCCPTおもし(a) Compact optical head (b) Crack detectionFig. 4 Example of Laser-UT results20Measured crack depth (mm)SCC ● EDM slit111.5 120.512.5Actual crack depth (mm)Fig.5 Crack depth measurement by Laser-UT183. 遠隔点検装置3.1 自走型遠隔点検装置 原子炉内部は放射線下の水中環境であることに加え、 多種の構造物が設置されて複雑かつ狭隘な空間となって いる。特に、シュラウドやシュラウドサポートの周辺、 原子炉底部などは、干渉する機器が多く、広範囲に渡る 検査が困難であった。この課題を解消するために、東芝 では自走式遠隔点検装置(ビークル)を開発し、炉内を 遠隔操作で自由に遊泳または走行することにより、炉内 構造物へのアクセス範囲を大幅に拡大した。さらに、検 査装置の走査精度を確保し、かつ検査の高速化も実現し ている。 以下に東芝で開発した主なビークルの概要を示す。(1) フラット型水中ビークルフラット型水中ビークルは、シュラウドの各溶接線を 対象に、広範囲の領域を短時間で超音波探傷あるいは目 視検査する目的で開発されたい。本装置は、アレイ探触 子や水中 TV カメラを搭載して炉内の検査対象部位へ遊 泳して接近し、超音波探傷や目視検査を行う際にはシュ ラウド面に吸着して精密走行する。シュラウド内外面へ の共用化を図るため、装置の寸法は炉心支持板穴やジェ ットポンプとシュラウドの隙間の寸法よりも小さい。 Fig.6に装置の外観を示す。本装置は全体が中性浮力化されているため、検査対象 部位に合わせて、アレイ探触子などの検査装置を自由な 位置に取り付けられる。また、万一、シュラウド面への 吸着力が失われた場合でも、直ちに装置が落下する危険 がない。なお、炉内点検以外にも、本装置の高い走行性能を生 かし、プール設備のライニング溶接部目視検査などに利 用されている。Fig. 6Flat-type ROV(2) 小型水中ビークル小型水中ビークルは、炉内でも比較的障害物の少ない 広域な部位や炉底部(シュラウドサポート下部や制御棒 駆動機構ハウジング周辺等)にアクセスするために開発 された遊泳式の炉内検査装置である。Fig.7に装置の外 観を示す。主な用途は炉内構造物の目視点検や状態観察 であるが、寸法が小さく、機動性に優れていることから、 炉内に限らず汎用的に使用できる。これまで貯水タンク 内部の塗膜検査などにも用いられている。また、最近では Fig.7(b)のように、専用の位置決めアー ムやマーカなどを取り付けることで、特定の検査対象部 位に対して高精度で走行したり、ビークル自体の位置を 正確に把握することも可能となっている。PositioningArmsMarkers(a) Base(b) With positioning armsand markersFig. 7 Compact-type ROV (TIS-30)(3) 走行式ビークル(クローラ型) 走行式ビークルはシュラウドサポートプレート上の狭 隘部を目視検査、吸引清掃するために開発された装置で ある。Fig. 8 に装置の外観を示す。本装置は、従来アク セスが困難であったジェットポンプ下端とシュラウド、 原子炉圧力容器の隙間においても走行が可能なように、 装置の全幅寸法を制限した設計となっている。ジェットポンプ下端の溶接部に対し、広い範囲で目視 検査する場合などには、溶接線よりも上方に配置されて いる構造物と TV カメラとの干渉が回避できるため、有 効である。Fig. 8 Crawler-type ROV193.2 その他炉内点検装置 - 維持基準の適用は、シュラウド以外にもシュラウドサ ポート、ジェットポンプ、炉心スプレイ配管などに広く 展開されており、今後これらの炉内構造物についても詳 細な点検・検査が必要となる。東芝では、これらのニー ズに対応できる装置の開発も進めている。(1) シュラウドサポート洗浄・点検装置 - シュラウドサポートは原子炉底部に位置するため、炉 心支持板やジェットポンプなどが干渉物となり、原子炉 上部からのアクセスが困難である。また、高ニッケル合 金製の構造物であるため、溶接部の目視検査を行うため には前処理として付着したクラッドの除去が必要となる。このようなアクセス性の悪い検査対象部に対して、ジ ェットポンプを通過してシュラウドサポートの下側にア クセスする洗浄装置及び目視検査装置を開発し、実機点 検に適用している。洗浄には水ジェット洗浄技術を適用 し、高効率かつ高速のクラッド除去を可能としている。 Fig.9に一例として、シュラウドサポートプレート下面用 の洗浄装置を示す。Water-jet NozzleFig. 9Cleaning device using water-jet(2) ジェットポンプ内面洗浄・点検装置ライザ管を含むジェットポンプ内面の点検を行うため、 ジェットポンプ上部の開口から挿入して内面の洗浄、目 視点検を実施する装置を開発し、溶接部の目視検査を実 施しているい。一例として、ディフューザ内面検査装置を Fig. 10 に示す。Device UnitFig. 10Jet pump diffuser inner-surface inspection device4.結言近年、炉内構造物にき裂が確認された場合でも、維持 基準が適用されるようになり、適切な検査と評価により、 き裂の進展を管理しながら運転を継続することが可能と なった。高経年化プラントの安全性の確保と安定運転の ため、高精度かつ高速の炉内点検技術の必要性はますま す高まるものと思われる。東芝では、このようなニーズを踏まえ、今後もより高 精度、高速、広範囲の検査を可能とする検査技術の開発 を推進し、原子力発電プラントの安定運転に寄与してい きたいと考えている。5. 参考文献[1] 大坪 徹他,火力原子力発電技術協会「平成 16 年度 --火力原子力発電大会研究発表要旨集」 2004, p.78-79 [2] 成瀬克彦他、日本保全学会「第 1 回学術講演会要旨集」2004, p.243-247 [3] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「第 8 回超音波による非破壊評価シンポジウム」, 2001, p.131-134 [4] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「平成13年度春季講演大会講演概要集」 2001, p.1-2 [5] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「平成 13 年度第1 1回超音波分科会講演概要集」2001
2001.6) [8] M.Tamura et al., 13th International Conference of NuclearEngineering (ICONE13-50141) (2005) [9] 佐伯綾一他,日本保全学会第2回学術講演会(本会) [10] M.Shimamura, et al, ““Underwater Remotely OperatedVehicle for Core Shroud Inspection““ 10th Robotics & System Mtg. Proceeding, Gainesville, Florida, March28-31, 2004 p183-190 | [11] M.Kimura et al., ““Compact Visual Inspection Submersiblefor NPP's““ Proceedings of ANS Topical Meeting on Robotics and Remote Systems, Monterey CA, Feb. 1995, p25-3120“ “炉内点検技術と高経年化プラントへの適用“ “山本 智,Satoshi YAMAMOTO,平澤 泰治,Taiji HIRASAWA,大坪 徹,Tooru OOTSUBO,落合 誠,Makoto OCHIAI,坂口 正武,Masatake SAKAGUCHI,亀山 育子,Ikuko KAMEYAMA
* 原子力プラントへの維持基準の導入により、高経年化 プラントの炉内構造物に対する健全性評価のための点 検・検査要求が高まっている。東芝では炉内構造物の検 査技術開発をいち早く開始し、優れた検査技術を積極的 に実機適用している)。近年の炉内構造物検査で適用した 検査技術には、BWR プラントのシュラウドや原子炉底部 に適用した水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術51415) や、PWR プラントの炉内計装筒管台に対して世界で初め て実機適用したレーザ超音波検査技術などがある。また、高放射線下の水中で実施される炉内構造物検査 には遠隔アクセス装置を用いることが必須となる。東芝 では、目視検査用 TV カメラや超音波探触子などを精度 良く目的の部位に設置し、検査するために、特別に開発 した各種の水中遠隔点検装置を使用している。さらに、 原子炉底部の高ニッケル合金溶接部など、クラッドの付 着が想定される箇所に対しては、水ジェット洗浄技術を 適用して検査面の前処理を行うなど、検査精度の向上を 図るための技術も導入している。
2.検査技術 2.1 水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術 * シュラウド等の炉内構造物や配管に応力腐食割れ(SCC)が発見されており、き裂がある状態で機器構造 の健全性を評価するために、超音波探傷によるき裂の深 さ測定が必要となっている。東芝では、溶接部表面の凹 凸の影響を受けにくい水浸フェーズドアレイ超音波探傷 技術を独自に開発し、水中での高い精度の検査を実現し ている1957。アレイ探触子も対象部に応じた多くのタイ プを保有しており、これまで超音波探傷が不可能であっ たシュラウド下部や原子炉底部の高ニッケル基合金溶接 部など、材料的に超音波が伝わりにくい複雑形状に対し ても、より適切な条件で探傷が可能となった。Fig.1 に東 芝が保有するアレイ探触子の一例(256ch、128ch、64ch) を示す。Fig.2 にシュラウド下部リング溶接部の探傷イメ ージと、SCC を探傷した結果の一例を示す。東芝では、 更なる水浸フェーズドアレイ超音波探傷技術の高度化、 高速化を進めるとともに、検査員の技量向上を図るため の教育・訓練プログラムの充実にも注力し、積極的に取 組んでいる。17256ch128ch64chFig. 1 Example of array UT provesElectric ScanningDOVShroud H6a WeldmentMechanicalScanningShroud lower ringArray UT prove(a) Scanning imageFRUITSB-scanSurfaceandC-scanCrack EchoStraightStraightAngle BeamAnesteBeamA-scan(b) Example of UT result Fig. 2 Application of phased array UT techniqueto Shroud lower ring2.2 レーザ超音波探傷技術レーザ超音波技術とは、送信レーザ光を照射して検査 対象表面に超音波を励起させ、対象物中を伝播した超音 波を受信レーザ光で検出する技術である。この技術を応 用して、表面に開口したき裂からの反射波や、き裂を透 過する超音波の周波数特性の変化を感知することで、き 裂の検出及び深さ測定が可能である「17。 Fig. 3 にレーザ 超音波探傷技術の原理図を示す。この探傷技術には、以下のような特長がある。 ・探傷ヘッドが小型化でき、複雑・狭隘部の検査が可能 ・水中、気中など環境条件によらず、非接触で検査が可能・分解能が高く、表面に開口した微小き裂に対する検査 精度が高い表面に開口した微小き裂に対する検査Fig.4に小型探傷ヘッドの一例と、SCCの探傷結果の一 例を示す!。本技術は、(財)発電設備技術検査協会殿の 確性試験において、深さ 0.1mm 程度の欠陥でも検出でき る能力を持つこと、Fig.5 に示すように深さ約0.5~1.5mm のき裂に対して±0.2mm 程度のサイジング精度を有する ことが確認されている。本検査技術は、PWR プラントの炉内計装筒管台内面に 対する予防保全工事の施工前検査として、世界で初めて 実機プラントへ適用された1819。GenerationLaserDetectionLaserReflected(Echo)crackSignal amplitudeIncidenthqdent SAWITReflecied(Echo)Time(a) Reflection mode (crack detection)GenerationLaserDetection??efcrackSignal AmplitudeIraiisin ittedIncident SAWTimeTransmitted (b) Transmission mode (crack depth measurement)Fig. 3 Schematic illustrations of Laser-UTLaser-ultrasonic testingI SCCPTおもし(a) Compact optical head (b) Crack detectionFig. 4 Example of Laser-UT results20Measured crack depth (mm)SCC ● EDM slit111.5 120.512.5Actual crack depth (mm)Fig.5 Crack depth measurement by Laser-UT183. 遠隔点検装置3.1 自走型遠隔点検装置 原子炉内部は放射線下の水中環境であることに加え、 多種の構造物が設置されて複雑かつ狭隘な空間となって いる。特に、シュラウドやシュラウドサポートの周辺、 原子炉底部などは、干渉する機器が多く、広範囲に渡る 検査が困難であった。この課題を解消するために、東芝 では自走式遠隔点検装置(ビークル)を開発し、炉内を 遠隔操作で自由に遊泳または走行することにより、炉内 構造物へのアクセス範囲を大幅に拡大した。さらに、検 査装置の走査精度を確保し、かつ検査の高速化も実現し ている。 以下に東芝で開発した主なビークルの概要を示す。(1) フラット型水中ビークルフラット型水中ビークルは、シュラウドの各溶接線を 対象に、広範囲の領域を短時間で超音波探傷あるいは目 視検査する目的で開発されたい。本装置は、アレイ探触 子や水中 TV カメラを搭載して炉内の検査対象部位へ遊 泳して接近し、超音波探傷や目視検査を行う際にはシュ ラウド面に吸着して精密走行する。シュラウド内外面へ の共用化を図るため、装置の寸法は炉心支持板穴やジェ ットポンプとシュラウドの隙間の寸法よりも小さい。 Fig.6に装置の外観を示す。本装置は全体が中性浮力化されているため、検査対象 部位に合わせて、アレイ探触子などの検査装置を自由な 位置に取り付けられる。また、万一、シュラウド面への 吸着力が失われた場合でも、直ちに装置が落下する危険 がない。なお、炉内点検以外にも、本装置の高い走行性能を生 かし、プール設備のライニング溶接部目視検査などに利 用されている。Fig. 6Flat-type ROV(2) 小型水中ビークル小型水中ビークルは、炉内でも比較的障害物の少ない 広域な部位や炉底部(シュラウドサポート下部や制御棒 駆動機構ハウジング周辺等)にアクセスするために開発 された遊泳式の炉内検査装置である。Fig.7に装置の外 観を示す。主な用途は炉内構造物の目視点検や状態観察 であるが、寸法が小さく、機動性に優れていることから、 炉内に限らず汎用的に使用できる。これまで貯水タンク 内部の塗膜検査などにも用いられている。また、最近では Fig.7(b)のように、専用の位置決めアー ムやマーカなどを取り付けることで、特定の検査対象部 位に対して高精度で走行したり、ビークル自体の位置を 正確に把握することも可能となっている。PositioningArmsMarkers(a) Base(b) With positioning armsand markersFig. 7 Compact-type ROV (TIS-30)(3) 走行式ビークル(クローラ型) 走行式ビークルはシュラウドサポートプレート上の狭 隘部を目視検査、吸引清掃するために開発された装置で ある。Fig. 8 に装置の外観を示す。本装置は、従来アク セスが困難であったジェットポンプ下端とシュラウド、 原子炉圧力容器の隙間においても走行が可能なように、 装置の全幅寸法を制限した設計となっている。ジェットポンプ下端の溶接部に対し、広い範囲で目視 検査する場合などには、溶接線よりも上方に配置されて いる構造物と TV カメラとの干渉が回避できるため、有 効である。Fig. 8 Crawler-type ROV193.2 その他炉内点検装置 - 維持基準の適用は、シュラウド以外にもシュラウドサ ポート、ジェットポンプ、炉心スプレイ配管などに広く 展開されており、今後これらの炉内構造物についても詳 細な点検・検査が必要となる。東芝では、これらのニー ズに対応できる装置の開発も進めている。(1) シュラウドサポート洗浄・点検装置 - シュラウドサポートは原子炉底部に位置するため、炉 心支持板やジェットポンプなどが干渉物となり、原子炉 上部からのアクセスが困難である。また、高ニッケル合 金製の構造物であるため、溶接部の目視検査を行うため には前処理として付着したクラッドの除去が必要となる。このようなアクセス性の悪い検査対象部に対して、ジ ェットポンプを通過してシュラウドサポートの下側にア クセスする洗浄装置及び目視検査装置を開発し、実機点 検に適用している。洗浄には水ジェット洗浄技術を適用 し、高効率かつ高速のクラッド除去を可能としている。 Fig.9に一例として、シュラウドサポートプレート下面用 の洗浄装置を示す。Water-jet NozzleFig. 9Cleaning device using water-jet(2) ジェットポンプ内面洗浄・点検装置ライザ管を含むジェットポンプ内面の点検を行うため、 ジェットポンプ上部の開口から挿入して内面の洗浄、目 視点検を実施する装置を開発し、溶接部の目視検査を実 施しているい。一例として、ディフューザ内面検査装置を Fig. 10 に示す。Device UnitFig. 10Jet pump diffuser inner-surface inspection device4.結言近年、炉内構造物にき裂が確認された場合でも、維持 基準が適用されるようになり、適切な検査と評価により、 き裂の進展を管理しながら運転を継続することが可能と なった。高経年化プラントの安全性の確保と安定運転の ため、高精度かつ高速の炉内点検技術の必要性はますま す高まるものと思われる。東芝では、このようなニーズを踏まえ、今後もより高 精度、高速、広範囲の検査を可能とする検査技術の開発 を推進し、原子力発電プラントの安定運転に寄与してい きたいと考えている。5. 参考文献[1] 大坪 徹他,火力原子力発電技術協会「平成 16 年度 --火力原子力発電大会研究発表要旨集」 2004, p.78-79 [2] 成瀬克彦他、日本保全学会「第 1 回学術講演会要旨集」2004, p.243-247 [3] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「第 8 回超音波による非破壊評価シンポジウム」, 2001, p.131-134 [4] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「平成13年度春季講演大会講演概要集」 2001, p.1-2 [5] 平澤泰治他,日本非破壊検査協会「平成 13 年度第1 1回超音波分科会講演概要集」2001
2001.6) [8] M.Tamura et al., 13th International Conference of NuclearEngineering (ICONE13-50141) (2005) [9] 佐伯綾一他,日本保全学会第2回学術講演会(本会) [10] M.Shimamura, et al, ““Underwater Remotely OperatedVehicle for Core Shroud Inspection““ 10th Robotics & System Mtg. Proceeding, Gainesville, Florida, March28-31, 2004 p183-190 | [11] M.Kimura et al., ““Compact Visual Inspection Submersiblefor NPP's““ Proceedings of ANS Topical Meeting on Robotics and Remote Systems, Monterey CA, Feb. 1995, p25-3120“ “炉内点検技術と高経年化プラントへの適用“ “山本 智,Satoshi YAMAMOTO,平澤 泰治,Taiji HIRASAWA,大坪 徹,Tooru OOTSUBO,落合 誠,Makoto OCHIAI,坂口 正武,Masatake SAKAGUCHI,亀山 育子,Ikuko KAMEYAMA