電磁現象を用いた片状黒鉛鋳鉄の黒鉛形態の推定

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
形態の推定を提案する。このために、黒鉛形態と組織 が異なる片状黒鉛鋳鉄について電磁特性として導電率 鋳鉄の機械的性質に影響する重要な因子は基地組および透磁率を評価し、電磁的非破壊評価手法の可能 織と黒鉛形態である。基地組織はそれぞれ機械的特性 性について検討した。 が異なるフェライト組織、パーライト組織およびチル2. 試験片 組織から成っている。これらの組織は電磁気的特性が 異なることが知られている[1]。このことにより、電磁 黒鉛形態を推定するために作製した円柱状試験片 非破壊評価手法の1つである渦電流法により球状黒鉛 の片状黒鉛鋳鉄を Fig.1 に示す。Tablel に示す3種類 鋳鉄のフェライト組織とパーライト組織の比率を推定 の化学成分の試験片を作成し(FC150、FC200 および することが可能である[2]。硬度はフェライト組織およ FC250)、それぞれについて鋳放し(as cast)、空冷 (air びパーライト組織の比率に依存するため、渦電流評価 cool)および炉冷 (furnace cool)の熱処理を施し、 で硬さの推定が可能である[3]。黒鉛の種類には球状黒 9種類の試験片を用意した。 鉛、CV 黒鉛、片状黒鉛などがあり、それぞれ機械的作製した試験片の黒鉛形態の組織観察を光学顕微 特性が異なる。片状黒鉛鋳鉄のような立体的に複雑で、 鏡より行った。Fig.3(a)に FC150 の炉冷、Fig.3(b)に かつ連続的な黒鉛を内在するような材料では、黒鉛の FC200 の炉冷、Fig.3(c)に FC250 の炉冷された円柱状試 形態が鋳鉄の機械的性質を決定する因子の1つとされ験片の組織写真を示す。それぞれの図において黒く片 ている。片状黒鉛鋳鉄は自動車のブレーキディスクの 状のものが黒鉛である。FC150 試験片では、片状黒鉛 材料として用いられており、その製造において黒鉛形が均一に分布し無方向に配列している。FC200 は 態を制御することは高品質な製品の鋳造における重要FC150 に比べ黒鉛サイズが小さくなっており、FC250 な要素の1つである。現在、黒鉛形態の把握は超音波は細かい共晶黒鉛が樹枝状晶の間に分布している。 音速値から推定できるが、そのためには被検体両面を平3. 電磁気特性評価 行に加工する必要があることおよび測定技術が超音波試 験に影響を与えることなどが課題点として挙げられる[4]。 1) 導電率評価 本研究では電磁現象を用いた片状黒鉛鋳鉄の黒鉛四端子法を用いて導電率測定を行った。直径 3mm、 連絡先: 野崎俊彦,〒980-8577 宮城県仙台市青葉区方長さ 30mm の棒状に加工した試験片を用いて、直流電 平2-1-1, 東北大学流体科学研究所,流 1A にて評価を行った。 e-mail: nozaki@wert.ifs.tohoku.ac.jp,試験片の導電率と硬さの関係を Fig.3 に示す。Fig.3
Hardness [HB]46mmFC150 as cast FC150 air cool FC150 furnace cool FC200 as cast FC200 air cool FC200 furnace cool FC250 as cast FC250 air cool FC250 furnace coolA9AHardness [HB]46mmFig.1 Gray cast iron specimen.6.0x10' 8.0x10'1.6x101.8x102.0x10°1.0x101.2x10 1.4x10*Conductivity (S/m]Gray cast iron specimen.nical composition of specimens.Fig.3 Cori (%) | Mn(%) | P(%) | S(%) | Mg(%)specimen 78 0.78 0 025 0015 In -Table1 Chemical composition of specimens.C(%) | Si(%) | Mn(%) | P(%) | S(%) | Mg(%)」 | FC150 | 3.77 12.78 10.78 10.025 10.015 10. | FC200 | 3.36 12.15 10.69 10.018 | 0.010 10 | FC250 | 3.13 | 1.66 10.72 0 .017 | 0.00210より FC150、FC200、FC250 において熱処理では基地 組織が変化し硬さに影響を与えていることがわかる。 しかし、熱処理前の導電率と熱処理後の導電率にはあ まり変化が見られないことから、片状黒鉛鋳鉄の導電 率は基地組織よりも黒鉛形態に大きく依存しているこ とがわかる。よって導電率を測定することにより黒鉛 形態の推定が可能であると考えられる。Hardness [H]1000m100ml100m10、100mまた、100m、 (a) FC150 (6) FC200 (c) FC250Fig.2 Microscopic observation of specimens.Fig.4 Corn specimenより FC150、FC200、FC250 において熱処理では基地 組織が変化し硬さに影響を与えていることがわかる。 しかし、熱処理前の導電率と熱処理後の導電率にはあ まり変化が見られないことから、片状黒鉛鋳鉄の導電 率は基地組織よりも黒鉛形態に大きく依存しているこ とがわかる。よって導電率を測定することにより黒鉛 形態の推定が可能であると考えられる。2) 磁気特性評価透磁率の 織よりも た。また さく、導 ることが当日は 果につい透磁率の測定では B-Hアナライザーを使用し、導電 率の測定の際に使用した試験片を用いた。円柱状試験 片の透磁率と硬さの関係を Fig.4 に示す。Fig.4 より FC150、FC200、FC250 において熱処理前の透磁率と熱 処理後の透磁率の間には大きな変化が見られない。片 状黒鉛鋳鉄の透磁率についても基地組織より黒鉛形態 に大きく依存していることが考えられる。しかし、導 電率に比べ透磁率は基地組織の影響を受けていると考 えられる。参考文献 [1] 井川状黒 1991[2] 阿部よるpp.6 [3] T. Uc7結言透磁率の測定では B-Hアナライザーを使用し、 率の測定の際に使用した試験片を用いた。円柱状) 片の透磁率と硬さの関係を Fig.4 に示す。Fig.4 片の透磁率と硬さの関係を Fig.4 に示す。Fig.4 より FC150、FC200、FC250 において熱処理前の透磁率と熱 処理後の透磁率の間には大きな変化が見られない。片 状黒鉛鋳鉄の透磁率についても基地組織より黒鉛形態 に大きく依存していることが考えられる。しかし、導 電率に比べ透磁率は基地組織の影響を受けていると考 えられる。 * 本研究では、電磁現象を用いて片状黒鉛鋳鉄の黒鉛 形態の推定を非破壊で評価することを提案し、その可 能性について議論した。具体的には、黒鉛形態と基地 組織が異なる片状黒鉛鋳鉄試験片について、導電率と Fig.3 Correlation between conductivity and hardness of cylindrical260240A2202001AFC150 as cast FC150 air cool FC150 furnace cool FC200 as cast FC200 air cool FC200 furnace cool FC250 as cast FC250 air cool FC250 furnace cool180160A1.5055606570758E+23PermiabilityFig.4 Correlation between permeability and hardness of cylindrical透磁率の評価を行った。導電率、透磁率ともに基地組 織よりも黒鉛形態に大きく依存していることを確認し た。また、導電率は透磁率に比べ基地組織の影響は小 さく、導電率を測定することにより黒鉛形態を推定す ることが可能であると考えられる。当日は、ブレーキディスクの四端子法による測定結 果についても報告する予定である。[1] 井川克也, 喜多新男, 草川隆次, 新山英輔, 松本弘, 球状黒鉛鋳鉄の基礎と応用, 丸善株式会社, pp.52-60,1992. [2] 阿部利彦, 内一哲哉, 高木敏行, 多田周二, 渦電流法による鋳鉄の材質評価, 鋳造工学, 第 75 巻, 第 10 号,pp.675-681, 2003. (3] T. Uchimoto, T. Takagi, S. Konoplyuk, T. Abe, H. Huang, M.Kurosawa, Eddy current evaluation of cast irons for material characterization, Journal of Magnetism and MagneticMaterials, 258-259,pp493-496, 2003. 41 永吉英昭, 小方智寿, 嶋俊博, 大城桂作, 薄肉球状黒鉛鋳鉄溶湯のチル化評価への超音波試験の適用, 鋳造工 - 学, 第69巻, 第3号, pp.221-226, 1997.- 176 -“ “電磁現象を用いた片状黒鉛鋳鉄の黒鉛形態の推定“ “野崎 俊彦,Toshihiko NOZAKI,佐藤 武志,Takeshi SATO,阿部 利彦,Toshihiko ABE,内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI
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