リスクベースの設備管理(2)技術知識基盤の構築
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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
大事故や失敗、隠蔽問題などが多発しており、安全・ 安心に関する信頼が揺らいでいる。これらの問題の原 因として、情報の欠如、戦術(安全行為)の欠如、戦 略(安全認識)の欠如などが指摘されている。このよ うな課題を解決するためには、リスク(危険)を総合 的に管理し、合理的に低減するための経営手法である 「リスクマネジメント」(個々のリスクに対して、その 発生確率や被害の大きさからリスクを評価し、回避が 必要なリスクには対策を施し、全体のリスクを軽減す る)に関する技術の体系的な整備が急務である。 - 筆者らは、このような技術体系として、製品や技術、 サービスなどのライフサイクルに亙り、情報や知識を 蓄積・共有・活用する技術知識基盤(Technology Knowledge Infrastructure、略して TECHNO-INFRA と呼 ぶ) [1]を構築し、リスクマネジメントも含めたビジネス・プロセスの継続的な改革(PDCA サイクル)を提 案してきた[2-5]。技術知識基盤のベースとなる、知識 を蓄積・共有・活用するための知識記述モデル GIM (Generic Information & Knowledge Model)及びその実 装手段は、あらゆる産業や技術分野に適用でき、将来 への変更や拡張が容易で、柔軟性のあるものである。 これは、一般の製品や技術・サービスなどのライフサ イクル支援システムが抱える多くの問題を解決できる。本論文では、特に、リスクマネジメントを基本とす るプロセス・プラント設備管理分野への技術知識基盤 の適用について報告する。2. 技術知識基盤とは- あらゆる産業分野で、業務の効率化や製品の安全 性・信頼性向上などのため、コンピュータを利用した 業務支援が広範囲に行なわれている。 _ しかしながら、従来は都合がよく、効果の大きいと ころから情報システム開発や導入を推進してきた。こ
の結果、それぞれ情報を重複して持った情報システム の孤島になってしまった(Fig.1 参照)。現在は、これ らの情報システム間を連携する橋(データ交換)の工 事を行っている段階である。これからは、まず、情報システムの機能と情報を分 離する。次に、分離した情報を統合化し、共有化する 環境を構築する。さらに、これをグローバル標準にし てしまう。すなわち、情報のオーナーとしての立場を 明確にする。製品や技術、サービスなどのライフサイ クルに亙り、情報や知識をコンピュータのハードやソ フトメーカに依存することなく、蓄積・活用できる技 術知識基盤を構築する。こうすることにより、コンピュータのハードメーカ やソフトメーカは、技術知識基盤と連携せざるを得な くなる。さらに、このような基盤が整備されると、新 規参入が起こりやすくなる。この結果、安くて、性能 のよい最適なシステムを選択できることになる。The Past (Isolated System)A-island A-systemB-island B-systemC-island C-systemA-islandBridgeLA-system/L ITOThe Present (Data Exchange)B-island (B-systemIIIC-island C-systemThe Future (Data Cartridge)- Reduce cost - Select optimumapplication - Accumulate intellectual asset[A-Island A-systemB-islandC-island B-systemC-system IKKata/information 44122 Knowledge 4 S Technology Knowledge Infrastructure (TECHNO-INFRA)Separation of application and information/knowledgeFig.1 Strategy of TECHNO-INFRAまた、このことは IT の急劇な進展による陳腐化など にも対応できることを示している。自らのコア・コン ピタンスとなるような知的資産を、情報システムに依 存しない形式で、長期にわたり管理できるようになる。 このような戦略は、最近話題となっている EA (Enterprise Architecture) や SOA (Service Oriented Architecture)などの流れにも共通するものである。このような技術知識基盤を構築するためには、製品 や技術・サービスなどについての理論的な体系化及び 知識の蓄積・共有・活用の機構化が必要不可欠である。 また、技術知識基盤のベースとなる情報や知識を記述 するモデル及びその実装手段(データウェアハウス技 術、エージェント技術)を開発することが必要となる。 筆者らは、技術知識基盤のベース技術である、知識記述モデル GIM や GIM に基づいたデータウェアハウ ス技術を開発してきた。また、技術知識基盤として、 既存システム・アプリケーション群、情報や知識の蓄 積層(知識記述モデル、データウェアハウス技術)、情 報や知識の共有・活用層(Web サービス、エージェン ト技術)、技術知識基盤適用環境(オントロジー技術、 データ・マイニング技術、安全評価技術、環境への影 響評価技術)からなる4階層の基本アーキテクチャー を確立してきた (Fig.2 参照)。ImageKnowledge | WebSharing ServicesTree View | 2 Dimen- sion Tabular 1 13 Dimen Format sion 1Video| FNL GIM-XMUNatural LanguageIntellectual Creation | Process 1Support || (ontology)AudioGIM-Agent toolWebData MiningGleeとはこんなにう。Knowledge Internal Accumulation Structure DictionaryGMAuto is a part of mobile is classified as i body is congelad dengke21 GM-KAMILDWHITSafety and Environmental AssessmentTranslatorLife Cycle Existing System| Knowledge Applications ||CAD/CAMPDMERP SCM || KM ||Sales (nance)| Utilization Engineering BusinessService Fig.2 Architecture of TECHNO-INFRA技術知識基盤をプロセス・プラント分野に適用した 場合の戦略を Fig.3 に示す。技術知識基盤を中核として、 プロセス設計から基本設計、詳細設計、調達・建設、 運転・保全、廃棄に至るまでのプロセス・プラントの ライフサイクルに亙る主要なアクティビティ間で情報 や知識の共有が行われる。これらのアクティビティを 担う組織体として、許認可官庁、プラント・オーナー、 エンジニアリング会社、プラント・メーカー、機器・ 部品メーカーなど多くの企業が関与する。Owner Co.Process DesignBasic DesignPreOperationOperationMainte-DecommnanceissionProcess propertyRegulatory Bodies& Safety Check Construction License& Services Procure, MaterialsSuppliers or FabricatorsFunctionalPhysical propettyproperty TECHNO-INFRADetail Construc | Pre ““Mainte Demolish Design tion | Operation|| nance || & RestoreEngineering Co. or Construction Co. Fig.3 Strategy of TECHNO-INFRA in a plant field204技術知識基盤では、プロセス・プラントのライフサ イクルの各アクティビティで必要となる情報を統合的 に管理し、業務に関係する人がだれでも、いつでも、 どこでも必要な情報を最適な表現形式で共有・活用す ることができる (Fig.4 参照)。ユーザーID やパスワー ドなどでセキュリティ管理されていることは言うまで もない。Detail design Process DesignGM/FNL Data Warehouse (DWH)*Valve Hv001OperationGIM/FNL Synect bPredicate-objectlyis a part of satellite is classified as propellantis connected to engine Basic designCreate data once, reuse many times, TECHNO-INFRAMaintenance Fig.4 Sharing of Information or Knowledge以下では、技術知識基盤のベース技術である、知識 記述モデル GIM や技術知識基盤のプロセス・プラント 設備管理分野への適用について説明する。3. 知識記述モデル GIM3.1 GIM の方法論情報や知識を共有・蓄積するために必要なことは、 情報や知識を表す用語(共通言語)を明確にすること である。このようなことは、ISO(International Organization for Standardization)や IEC (International Electrotechnical Commission)などの国際標準でも認識 されている。GIM では、さらに積極的に、このような 用語を汎用的に規定することを提案している。GIM では、対象となる製品のライフサイクル全般に わたり、ワークフローを分析し(各作業の入力情報や 出力情報を抽出)、情報モデルを構築し、情報や知識の 共有に必要な用語(用語の持つ概念的意味)や用語間 の分類、継承関連、実体(インスタンス)間の構成や 接続、属性所有などの関連(これも用語)を規定する。 このため、GIM では次の四段階の開発方法を採用して いる(Fig.5 参照)。|O GIM (Generic Information & Knowledge Model) MethodologyCoro Model Accumulates Knowledgeobjectsassociationooja Core Modelrole LLST12:71 contentOF LIST1:7 object, associatiod is described by RLrole DO-LIST|2:11 Scene RL:Reference LibrarySTRINGAM Everything Objects Prescription of the content with terminology Accumulation of brawledgewerkbythe.inMetationBPM(Business Process Model) : Analysis of the flow of informationLaspection InspectionPlan LifecyclaAIM Analysis of the flow of information Processing ofWork Flow ●Re-engineeringChange of Dain De Example: Modeling of Plant Llc-cycleRL(Reference Library): Produce Dictionary of the knowledge modelAIM Ex.:LSI Design Sharing of the concept by terminologyTidying of necessary Logical PhysicalObiectinformation Instance Class Association || Classification/structure systemsof information LIL2 R1,R2,R3 resistance _connected to Sharing of information ICI,C2,C3 condenser a property of (DictionaryDescription with the terminology of the contents of the drawing OFNL (Formal Natural Language): Description of knowledge model objects association objectS+V+O ENLNatural language Slis_a system LI is_a_part_of SI L1 is_connected to RIexpression Llis_4 line Riis_a_part_of SI RI is_connected to CiExpression that dose not R1 is a resistance C1 is a part of S1 C1 is connected to R2make stereotyped ci is a condenserR2 is connected_to LZ E :LST DesignAffinity nature for another formaSAIMEFig.5 Methodology of GIM(1) 知識記述モデル GIMGIM は、いろいろなデータ構造の基本要素(オブジ ェクトとオブジェクトの関連(アソシェーション)と いう要素)を抽出したもので、この基本要素を組み合 わせることにより、複雑な現実世界を記述しょうとす るものである(Fig.6 参照)。また、GIM は述語(動詞) を中心にした、意味ネットワークモデルであり、自然 言語の構文(ステートメント)も記述できる重要な特 徴がある。Object orientedData structureo Hierarchical S structureNatural language(statement) S +V + 0 Subjective H verb HobjLobjective case 1case Structure of sentenceTAERMNetwork structureWith case grammar theory,the case information is arranged focusing on the verbto extract the meaning.Tabular formatUMLYGIM/FNLDictionariesrole1Arole2 Obiect - Association| Subject+ Predicate +ObjectERM:Entity Relation Model UML: Unified Modeling LanguageFig.6 Principles of GIMGIM は、あらゆる製品や技術・サービスなどのライ フサイクルに亙り、情報や知識を蓄積・共有・活用・創出 することを支援する知識モデルで、従来のデータ構造 やデータベースなどの考え方を革新する技術でもある。GIM では、対象とするものすべてをオブジェクトと して捉える。オブジェクトは、概念やモノなど定義対 象の全てを記述するための入れ物(器)である。アソ205シェーションもオブジェクトの一つ(オブジェクトの サブタイプ)であり、オブジェクト間の関連付けを記 述する器で、アソシェーションからオブジェクトには 多数の手(ポインタ)を出すことができる。各々手に はそれぞれの役割 (role) があり、その役割の内容につ いても明示的に記述する(Fig.6 参照)。オブジェクトとアソシェーションの中身は、後で述 べる辞書 (リファレンス・ライブラリー)で規定する。 すなわち、アプリケーション分野ごとのリファレン ス・ライブラリーを用意することになる。アソシェー ションでは、知識モデルの主要な概念である分類や継 承、構成などの用語を規定する。 (2) ビジネス・プロセスの分析対象となる分野の業務内容や共有する情報や知識に ついて、関係者の間で共通の概念、理解を持つことが 必要である。このため、GIM では、ビジネス・プロセ スの分析を行う。ビジネス・プロセスの分析では、対 象とする分野のアクティビティの分析を行い、各アク ティビティと情報の流れを表現し、アクティビティへ の入力情報と出力情報を明確にする。GIMでは、ビジネス・プロセスの各アクティビティ も一つのオブジェクトとして規定する。すなわち、各 アクティビティもリファレンス・ライブラリーとして 規定する。これにより、各アクティビティ単位の情報 や知識をまとめて表現することができる。 (3)辞書(リファレンス・ライブラリー)の整備 このステップでは、ビジネス・プロセスで分析した 各アクティビティでの入出力情報をまとめ、対象とす る分野での情報や知識についての知識モデルを作成し、 これをリファレンス・ライブラリーとしてまとめる。 ・- リファレンス・ライブラリーは、さらに概念やモノ を規定するリファレンス・クラス・ライブラリー、ア ソシェーションを規定するリファレンス・アソシェー ション・ライブラリー、JIS などの標準部品を記述する エンジニアリング・スタンダード・ライブラリーに分 類する。リファレンス・ライブラリーは、人間が理解できる 電子ドキュメント(テキスト・ファイル)として自然言 語形式で記述する。 ・リファレンス・ライブラリーでは、記述対象となる オブジェクトの構成要素やその分類についての用語 (クラス)や、そのプロパティ(形状、材質、物理単 位など)、アソシェーション(述語)を定義する。分類や継承、構成、属性所有などの関係は、アソシェーシ ョンとして記述する。 (4) 制約自然言語 FNL(Formal Natural Language) 先にも述べたように、GIM には自然言語の構文も記 述できる特徴がある。GIM を自然言語の構文で記述す るのが制約自然言語 FNL である。Fig.7 で、主語、述 語、目的語の順につなげると一つの文章 (Regulating valve is classified as valve.)となる。文章や文書を組合 せることにより、知識を記述することができる。AssociationObjectRole2 classifierObject . Role 1 regulating h classified _valveinstance HV001is_classified_asvalveclassis_an_instance_ofregulating_valvepartwholeHV001|is_a_part_of9 P-S-001sidelside2HV001[is_connected_toPIPE-003Representation by FNL (Formal Natural Language)Regulating_valve is_classified_as valve. HV001 is an instance_of regulating_valve. HV001 is_a_part_of P-S-001. HV001 is_connected_to PIPE-003.Fig. 7 Example of GIM and FNL制約自然言語の基本構造は、主語+述語+目的語で、 主語や述語、目的語の取り得る内容をリファレンス・ ライブラリー(辞書)で制限する。これにより、一般 の自然言語処理の難しさを排除する。辞書は、英語、 日本語、中国語、韓国語などの多言語に対応できる。FNL は、情報システム間で情報や知識を共有するた め、リファレンス・ライブラリーとインスタンス(実 体で固有名称や具体的な数値を表す)をコンピュータ 内で処理するための外部表現形式である。FNL は、コ ンピュータだけでなく、人間にも理解できる自然言語 形式である。GIM では、人間の世界で規定したリファレンス・ラ イブラリーから自動的にコンピュータが解釈できる表 現形式(FNL で記述したクラス・ライブラリー、アソ シェーション・ライブラリー)に変換される仕掛けに なっており、用語や用語間の関連について、その矛盾 や誤りをパーサーでチェックする。 * 実体(インスタンス)は、各種情報システムのトラ ンスレータを介して、FNL として出力または、入力さ れる。インスタンスに対しても同様なチェックを行う ことができる。2063.2 GIM の特徴GIM は、情報や知識を共有するための知識記述モデ ルである。GIM は、情報や知識の表現方法(オブジェ クトとアソシエーションからなるシンプルな構造)を 共通にし、オブジェクトやアソシエーションの内容を ライブラリー (情報や知識を共有するための用語辞書) として規定(標準化)することにより、情報や知識を 表現するものである。このライブラリーを拡張・拡充 することにより、情報や知識を体系的に「積み上げる」 (オントロジー)[6]ことができる画期的な技術である。GIM は、オブジェクトとアソシエーションから成る 意味ネットワークモデルであり、人間の頭脳のように、 ニューロン(オブジェクト)とニューロンをシナプス (アソシエーション)で結合する単純なモデルと類似 している。このことはニューロンやシナプスを増やす ことで、将来の発展や拡張に対応できる可能性を秘め た、成長モデルと見ることもできる。GIM は、リファレンス・ライブラリーを替えること により、他の産業分野でも利用できる。他の分野に適 用するには、その分野固有の辞書を追加することにな る。この辞書を豊富にすることにより、知的資産の相 互運用性(Interoperability)が可能となる。4. プロセス・プラントへの適用 * 技術知識基盤の基本アーキテクチャーに基づき、 GIMやFNL、GIM-XML(eXtensible Markup Language)、 GIM データウェアハウス技術などを、リスクマネジメ ントを基本とするプロセス・プラントの設備管理分野 に適用した。プロセス設計システムや基本設計システム、詳細設 計システム、保全システムなどのデータベースの内容 と GIM の辞書(リファレンス・ライブラリー)を参照 し、マッピングテーブル(対応関係を記述する表)を 作成する。この場合、データベースにある内容が GIM の辞書にない場合は、GIM の辞書に新しい用語として 追加する。できあがったマッピングテーブルに基づき、 各データベースとデータウェアハウスとの GIM-XML トランスレータを開発した。GIM-XML トランスレー タにより、各種設計情報を既存のシステムからGIM デ ータウェアハウスに登録し、GIM による表現に統一し 蓄積した(Fig.8 参照)。 データウェアハウス内の GIM で統一された内容は、いろいろな視点から論理検索でき、2次元表示機能や 3次元表示機能、自然言語的表示機能などにより閲覧 できる。図形表示された内容は、Web 上で、コンポー ネント単位で指示(ピック)ができ、関連する情報を 検索・閲覧、加工することができ、Web 上での応用範 囲が飛躍的に拡大する。BasicDetailMainte-Web Services Usernance etc.Tree View-Configuration -Process System -Area etc.InfomatGIM DWHDictionariesInstances (Component Level)ournesenGIM/FNL Dictionaries180103031 EVSO159261formanGIM-XML GIM-XML GIM-XML GIM-XMLTranslatorTranslator Translator Translator Reflection for TranslatorConfiguration Management terminologyAddition Terms Process Basic || Detail MainteMapping Design|| Design|| si nance Case of no term Legacy Application System Fig.8 Implementation Method of GIMFig.9 はデータ ウェアハウス内に蓄積した各種設計 情報を、インターネットを介してデータ ウェアハウス 内の情報を Web サービスであるエージェント基本ツー ルで検索・閲覧したものである。辞書(リファレンス・ ライブラリー)で規定した用語(プロセス・プラント の構成を表す用語) を表示(1)し、これをベースとして、 ライフサイクルに亘る情報や知識を検索・閲覧できる。 例えば、(1)から系統名をピックして、プロセス設計情 報である PFD (Process Flow Diagram)を表示(2)し、次 に、PFD に対応した基本設計情報である P&ID (Piping and Instrument Diagram)を表示(3)し、さらに、その系 統の3次元の詳細設計情報や施工図を表示(4)し、また、 (4)のある機器をピックして、その機器に関する保全管 理密度(Concentration rate of maintenance considerations) [7]を決定することやその仕様情報を確認すること(5) が容易にできる。以上、説明した以外にも図形に対する基本機能や機 器間の接続関係、保守点検時に必要となる系統隔離、 バルブ開閉時の流体可視化、関連法規の対応機器の色 分け表示、保全管理密度の色分け表示、減肉監視状況 の把握などの機能がある。技術知識基盤の構築により、プロセス・プラント設 備管理の情報や知識を一元的に蓄積、共有・活用でき、 設備管理業務支援の高度化を図ることができる。207(1)Tree View(2)Process Design(1) Retrieving and browsing of information and knowledge of lifecycle, based process plant configuration management (described by Dictionaries)(2) Retrieving and browsing of PFD(3) Retrieving and browsing of P&ID.| corresponded to PFD(2)(5)Determine concentration rate of maintenance considerationsで(3)Basic Design (4) Retrieving and browsing of 3D. corresponded to P&ID(3)(5)Maintenance (4)Detail Design Fig. 9 Sharing of the maintenance knowledge in actual plant技術知識基盤のベースとなる、GIM やその実装手段 は、あらゆる産業や技術分野に適用でき、将来への変 更や拡張が容易で、柔軟性のあるものである。これは、 一般の製品や技術・サービスなどのライフサイクル支 援システムが抱える多くの問題を解決できることを意 味している。 - 技術知識基盤のプロセス・プラント設備管理への展 開では、既存のオントロジーとして、ISO10303(STEP: Standard for the Exchange of Product Model Data)に注目 した。STEP では、製品や技術についての用語の整備が 既に行われており膨大な知的資産となっている。そこ で、STEP の基本リソースの部分を、GIM のリファレ ンス・ライブラリーとして展開している。現状では、 形状や物理単位などの共通化できる用語を中心に約4, 000語の整備が進んでいる。GIM は、述語を中心とする知識モデルであり、知識 処理の理論である述語論理として取り扱うことができ る。また、GIM は一つのオントロジーであり、知識と しての意味を表現できる。論理学に「意味の理論」 [6] であるオントロジーを加えることにより、様々な問題 解決を試みることの可能性が広がる。今後は、GIM の 応用としてこれを検討したい。5. 結言- リスクマネジメントを基本とする設備管理のための 技術知識基盤として、設備のライフサイクルに亙る情 報や知識を体系的に蓄積・共有・活用する技術フレー ムワークを実現した。これにより、業務をシームレス につなげることが可能となり、情報の重複入力やミス、 業務間で情報の欠落などを防ぐことができる。また、設備の網羅的な管理が可能となり、信頼性・安全性の 飛躍的な向上を期待できる。さらに、作業の効率化や 作業期間の短縮、これらを通じた大幅なコスト低減な どが期待できる。また、関係者間で設備のライフサイクルに亙る情報 や知識を体系的に共有できることにより、日常の設備 管理が効率化されるだけでなく、事故・トラブルに際 しても、関係者間での一貫した対応やその迅速化、水 平展開、原因究明の促進などにも役立つ。さらに、故 障やトラブルの事例を蓄積することにより、各種管理 指標の精度向上を図ることができ、リスクマネジメン トに基づいた設備管理の継続的な改革が可能となる。 ・リスクマネジメントを基本とした設備管理の導入は、 現在分断して行われている設計や運転、保全などの関 連業務に共通の価値観を与え、部分最適化の域を出な い現在の効率化を全体的な最適化に導くと共に、専門 家も含め、専門家でない市民や関係者にも理解できる 形で設備の運用実態を提示する透明性のある方法とし ても期待できる。謝辞「技術知識基盤」に関する技術開発は、MS (Intelligent Manufacturing Systems、経済産業省が実施 している国際共同研究開発プログラム)の「仮想企業 体ネットワーク (VIPNET: Virtual production Enterprise Network)」(2000~2004 年度)プロジェクトを推進し たものであり、この間、多くの方々のご協力、ご支援 がありました。ここに、感謝の意を表します。参考文献[1]仲: 技術情報基盤構築へ向けて, 化学工学会, Vol.62,No.4(1998) [2]太田,好永: IT による情報・知識の共有と蓄積,日本機械学会誌, Vol.103, No.977(2000) [3](財)製造科学技術センター IMS センター, 仮想企業体ネットワークに関する研究成果報告書(2001) [4]好永,太田ほか:仮想企業体ネットワーク, 平成 13 年度 IMS 研究成果報告会論文集(2001) [S]太田,好永ほか:技術情報基盤のための情報・知識記述モデル, 平成 13 年度 IMS 研究成果報告会論文集(2001) [6]溝口: オントロジー研究の基礎と応用, 人工知能学会誌, Vol.14, No.6(1999) [7]玉木:設備運用のトータル最適化, オートメーション, Vol.47, No.51(2002),~Vol.48, No.2(2003)208“ “リスクベースの設備管理(2)技術知識基盤の構築“ “太田 吉美,Yoshimi OTA,好永 俊昭,Toshiaki YOSHINAGA,仲 治,Yuji NAKA,芝尾 紘一,Koichi SHIBAO,玉木 悠二,Yuji TAMAKI,川中 勉,Tsutomu KAWANAKA
大事故や失敗、隠蔽問題などが多発しており、安全・ 安心に関する信頼が揺らいでいる。これらの問題の原 因として、情報の欠如、戦術(安全行為)の欠如、戦 略(安全認識)の欠如などが指摘されている。このよ うな課題を解決するためには、リスク(危険)を総合 的に管理し、合理的に低減するための経営手法である 「リスクマネジメント」(個々のリスクに対して、その 発生確率や被害の大きさからリスクを評価し、回避が 必要なリスクには対策を施し、全体のリスクを軽減す る)に関する技術の体系的な整備が急務である。 - 筆者らは、このような技術体系として、製品や技術、 サービスなどのライフサイクルに亙り、情報や知識を 蓄積・共有・活用する技術知識基盤(Technology Knowledge Infrastructure、略して TECHNO-INFRA と呼 ぶ) [1]を構築し、リスクマネジメントも含めたビジネス・プロセスの継続的な改革(PDCA サイクル)を提 案してきた[2-5]。技術知識基盤のベースとなる、知識 を蓄積・共有・活用するための知識記述モデル GIM (Generic Information & Knowledge Model)及びその実 装手段は、あらゆる産業や技術分野に適用でき、将来 への変更や拡張が容易で、柔軟性のあるものである。 これは、一般の製品や技術・サービスなどのライフサ イクル支援システムが抱える多くの問題を解決できる。本論文では、特に、リスクマネジメントを基本とす るプロセス・プラント設備管理分野への技術知識基盤 の適用について報告する。2. 技術知識基盤とは- あらゆる産業分野で、業務の効率化や製品の安全 性・信頼性向上などのため、コンピュータを利用した 業務支援が広範囲に行なわれている。 _ しかしながら、従来は都合がよく、効果の大きいと ころから情報システム開発や導入を推進してきた。こ
の結果、それぞれ情報を重複して持った情報システム の孤島になってしまった(Fig.1 参照)。現在は、これ らの情報システム間を連携する橋(データ交換)の工 事を行っている段階である。これからは、まず、情報システムの機能と情報を分 離する。次に、分離した情報を統合化し、共有化する 環境を構築する。さらに、これをグローバル標準にし てしまう。すなわち、情報のオーナーとしての立場を 明確にする。製品や技術、サービスなどのライフサイ クルに亙り、情報や知識をコンピュータのハードやソ フトメーカに依存することなく、蓄積・活用できる技 術知識基盤を構築する。こうすることにより、コンピュータのハードメーカ やソフトメーカは、技術知識基盤と連携せざるを得な くなる。さらに、このような基盤が整備されると、新 規参入が起こりやすくなる。この結果、安くて、性能 のよい最適なシステムを選択できることになる。The Past (Isolated System)A-island A-systemB-island B-systemC-island C-systemA-islandBridgeLA-system/L ITOThe Present (Data Exchange)B-island (B-systemIIIC-island C-systemThe Future (Data Cartridge)- Reduce cost - Select optimumapplication - Accumulate intellectual asset[A-Island A-systemB-islandC-island B-systemC-system IKKata/information 44122 Knowledge 4 S Technology Knowledge Infrastructure (TECHNO-INFRA)Separation of application and information/knowledgeFig.1 Strategy of TECHNO-INFRAまた、このことは IT の急劇な進展による陳腐化など にも対応できることを示している。自らのコア・コン ピタンスとなるような知的資産を、情報システムに依 存しない形式で、長期にわたり管理できるようになる。 このような戦略は、最近話題となっている EA (Enterprise Architecture) や SOA (Service Oriented Architecture)などの流れにも共通するものである。このような技術知識基盤を構築するためには、製品 や技術・サービスなどについての理論的な体系化及び 知識の蓄積・共有・活用の機構化が必要不可欠である。 また、技術知識基盤のベースとなる情報や知識を記述 するモデル及びその実装手段(データウェアハウス技 術、エージェント技術)を開発することが必要となる。 筆者らは、技術知識基盤のベース技術である、知識記述モデル GIM や GIM に基づいたデータウェアハウ ス技術を開発してきた。また、技術知識基盤として、 既存システム・アプリケーション群、情報や知識の蓄 積層(知識記述モデル、データウェアハウス技術)、情 報や知識の共有・活用層(Web サービス、エージェン ト技術)、技術知識基盤適用環境(オントロジー技術、 データ・マイニング技術、安全評価技術、環境への影 響評価技術)からなる4階層の基本アーキテクチャー を確立してきた (Fig.2 参照)。ImageKnowledge | WebSharing ServicesTree View | 2 Dimen- sion Tabular 1 13 Dimen Format sion 1Video| FNL GIM-XMUNatural LanguageIntellectual Creation | Process 1Support || (ontology)AudioGIM-Agent toolWebData MiningGleeとはこんなにう。Knowledge Internal Accumulation Structure DictionaryGMAuto is a part of mobile is classified as i body is congelad dengke21 GM-KAMILDWHITSafety and Environmental AssessmentTranslatorLife Cycle Existing System| Knowledge Applications ||CAD/CAMPDMERP SCM || KM ||Sales (nance)| Utilization Engineering BusinessService Fig.2 Architecture of TECHNO-INFRA技術知識基盤をプロセス・プラント分野に適用した 場合の戦略を Fig.3 に示す。技術知識基盤を中核として、 プロセス設計から基本設計、詳細設計、調達・建設、 運転・保全、廃棄に至るまでのプロセス・プラントの ライフサイクルに亙る主要なアクティビティ間で情報 や知識の共有が行われる。これらのアクティビティを 担う組織体として、許認可官庁、プラント・オーナー、 エンジニアリング会社、プラント・メーカー、機器・ 部品メーカーなど多くの企業が関与する。Owner Co.Process DesignBasic DesignPreOperationOperationMainte-DecommnanceissionProcess propertyRegulatory Bodies& Safety Check Construction License& Services Procure, MaterialsSuppliers or FabricatorsFunctionalPhysical propettyproperty TECHNO-INFRADetail Construc | Pre ““Mainte Demolish Design tion | Operation|| nance || & RestoreEngineering Co. or Construction Co. Fig.3 Strategy of TECHNO-INFRA in a plant field204技術知識基盤では、プロセス・プラントのライフサ イクルの各アクティビティで必要となる情報を統合的 に管理し、業務に関係する人がだれでも、いつでも、 どこでも必要な情報を最適な表現形式で共有・活用す ることができる (Fig.4 参照)。ユーザーID やパスワー ドなどでセキュリティ管理されていることは言うまで もない。Detail design Process DesignGM/FNL Data Warehouse (DWH)*Valve Hv001OperationGIM/FNL Synect bPredicate-objectlyis a part of satellite is classified as propellantis connected to engine Basic designCreate data once, reuse many times, TECHNO-INFRAMaintenance Fig.4 Sharing of Information or Knowledge以下では、技術知識基盤のベース技術である、知識 記述モデル GIM や技術知識基盤のプロセス・プラント 設備管理分野への適用について説明する。3. 知識記述モデル GIM3.1 GIM の方法論情報や知識を共有・蓄積するために必要なことは、 情報や知識を表す用語(共通言語)を明確にすること である。このようなことは、ISO(International Organization for Standardization)や IEC (International Electrotechnical Commission)などの国際標準でも認識 されている。GIM では、さらに積極的に、このような 用語を汎用的に規定することを提案している。GIM では、対象となる製品のライフサイクル全般に わたり、ワークフローを分析し(各作業の入力情報や 出力情報を抽出)、情報モデルを構築し、情報や知識の 共有に必要な用語(用語の持つ概念的意味)や用語間 の分類、継承関連、実体(インスタンス)間の構成や 接続、属性所有などの関連(これも用語)を規定する。 このため、GIM では次の四段階の開発方法を採用して いる(Fig.5 参照)。|O GIM (Generic Information & Knowledge Model) MethodologyCoro Model Accumulates Knowledgeobjectsassociationooja Core Modelrole LLST12:71 contentOF LIST1:7 object, associatiod is described by RLrole DO-LIST|2:11 Scene RL:Reference LibrarySTRINGAM Everything Objects Prescription of the content with terminology Accumulation of brawledgewerkbythe.inMetationBPM(Business Process Model) : Analysis of the flow of informationLaspection InspectionPlan LifecyclaAIM Analysis of the flow of information Processing ofWork Flow ●Re-engineeringChange of Dain De Example: Modeling of Plant Llc-cycleRL(Reference Library): Produce Dictionary of the knowledge modelAIM Ex.:LSI Design Sharing of the concept by terminologyTidying of necessary Logical PhysicalObiectinformation Instance Class Association || Classification/structure systemsof information LIL2 R1,R2,R3 resistance _connected to Sharing of information ICI,C2,C3 condenser a property of (DictionaryDescription with the terminology of the contents of the drawing OFNL (Formal Natural Language): Description of knowledge model objects association objectS+V+O ENLNatural language Slis_a system LI is_a_part_of SI L1 is_connected to RIexpression Llis_4 line Riis_a_part_of SI RI is_connected to CiExpression that dose not R1 is a resistance C1 is a part of S1 C1 is connected to R2make stereotyped ci is a condenserR2 is connected_to LZ E :LST DesignAffinity nature for another formaSAIMEFig.5 Methodology of GIM(1) 知識記述モデル GIMGIM は、いろいろなデータ構造の基本要素(オブジ ェクトとオブジェクトの関連(アソシェーション)と いう要素)を抽出したもので、この基本要素を組み合 わせることにより、複雑な現実世界を記述しょうとす るものである(Fig.6 参照)。また、GIM は述語(動詞) を中心にした、意味ネットワークモデルであり、自然 言語の構文(ステートメント)も記述できる重要な特 徴がある。Object orientedData structureo Hierarchical S structureNatural language(statement) S +V + 0 Subjective H verb HobjLobjective case 1case Structure of sentenceTAERMNetwork structureWith case grammar theory,the case information is arranged focusing on the verbto extract the meaning.Tabular formatUMLYGIM/FNLDictionariesrole1Arole2 Obiect - Association| Subject+ Predicate +ObjectERM:Entity Relation Model UML: Unified Modeling LanguageFig.6 Principles of GIMGIM は、あらゆる製品や技術・サービスなどのライ フサイクルに亙り、情報や知識を蓄積・共有・活用・創出 することを支援する知識モデルで、従来のデータ構造 やデータベースなどの考え方を革新する技術でもある。GIM では、対象とするものすべてをオブジェクトと して捉える。オブジェクトは、概念やモノなど定義対 象の全てを記述するための入れ物(器)である。アソ205シェーションもオブジェクトの一つ(オブジェクトの サブタイプ)であり、オブジェクト間の関連付けを記 述する器で、アソシェーションからオブジェクトには 多数の手(ポインタ)を出すことができる。各々手に はそれぞれの役割 (role) があり、その役割の内容につ いても明示的に記述する(Fig.6 参照)。オブジェクトとアソシェーションの中身は、後で述 べる辞書 (リファレンス・ライブラリー)で規定する。 すなわち、アプリケーション分野ごとのリファレン ス・ライブラリーを用意することになる。アソシェー ションでは、知識モデルの主要な概念である分類や継 承、構成などの用語を規定する。 (2) ビジネス・プロセスの分析対象となる分野の業務内容や共有する情報や知識に ついて、関係者の間で共通の概念、理解を持つことが 必要である。このため、GIM では、ビジネス・プロセ スの分析を行う。ビジネス・プロセスの分析では、対 象とする分野のアクティビティの分析を行い、各アク ティビティと情報の流れを表現し、アクティビティへ の入力情報と出力情報を明確にする。GIMでは、ビジネス・プロセスの各アクティビティ も一つのオブジェクトとして規定する。すなわち、各 アクティビティもリファレンス・ライブラリーとして 規定する。これにより、各アクティビティ単位の情報 や知識をまとめて表現することができる。 (3)辞書(リファレンス・ライブラリー)の整備 このステップでは、ビジネス・プロセスで分析した 各アクティビティでの入出力情報をまとめ、対象とす る分野での情報や知識についての知識モデルを作成し、 これをリファレンス・ライブラリーとしてまとめる。 ・- リファレンス・ライブラリーは、さらに概念やモノ を規定するリファレンス・クラス・ライブラリー、ア ソシェーションを規定するリファレンス・アソシェー ション・ライブラリー、JIS などの標準部品を記述する エンジニアリング・スタンダード・ライブラリーに分 類する。リファレンス・ライブラリーは、人間が理解できる 電子ドキュメント(テキスト・ファイル)として自然言 語形式で記述する。 ・リファレンス・ライブラリーでは、記述対象となる オブジェクトの構成要素やその分類についての用語 (クラス)や、そのプロパティ(形状、材質、物理単 位など)、アソシェーション(述語)を定義する。分類や継承、構成、属性所有などの関係は、アソシェーシ ョンとして記述する。 (4) 制約自然言語 FNL(Formal Natural Language) 先にも述べたように、GIM には自然言語の構文も記 述できる特徴がある。GIM を自然言語の構文で記述す るのが制約自然言語 FNL である。Fig.7 で、主語、述 語、目的語の順につなげると一つの文章 (Regulating valve is classified as valve.)となる。文章や文書を組合 せることにより、知識を記述することができる。AssociationObjectRole2 classifierObject . Role 1 regulating h classified _valveinstance HV001is_classified_asvalveclassis_an_instance_ofregulating_valvepartwholeHV001|is_a_part_of9 P-S-001sidelside2HV001[is_connected_toPIPE-003Representation by FNL (Formal Natural Language)Regulating_valve is_classified_as valve. HV001 is an instance_of regulating_valve. HV001 is_a_part_of P-S-001. HV001 is_connected_to PIPE-003.Fig. 7 Example of GIM and FNL制約自然言語の基本構造は、主語+述語+目的語で、 主語や述語、目的語の取り得る内容をリファレンス・ ライブラリー(辞書)で制限する。これにより、一般 の自然言語処理の難しさを排除する。辞書は、英語、 日本語、中国語、韓国語などの多言語に対応できる。FNL は、情報システム間で情報や知識を共有するた め、リファレンス・ライブラリーとインスタンス(実 体で固有名称や具体的な数値を表す)をコンピュータ 内で処理するための外部表現形式である。FNL は、コ ンピュータだけでなく、人間にも理解できる自然言語 形式である。GIM では、人間の世界で規定したリファレンス・ラ イブラリーから自動的にコンピュータが解釈できる表 現形式(FNL で記述したクラス・ライブラリー、アソ シェーション・ライブラリー)に変換される仕掛けに なっており、用語や用語間の関連について、その矛盾 や誤りをパーサーでチェックする。 * 実体(インスタンス)は、各種情報システムのトラ ンスレータを介して、FNL として出力または、入力さ れる。インスタンスに対しても同様なチェックを行う ことができる。2063.2 GIM の特徴GIM は、情報や知識を共有するための知識記述モデ ルである。GIM は、情報や知識の表現方法(オブジェ クトとアソシエーションからなるシンプルな構造)を 共通にし、オブジェクトやアソシエーションの内容を ライブラリー (情報や知識を共有するための用語辞書) として規定(標準化)することにより、情報や知識を 表現するものである。このライブラリーを拡張・拡充 することにより、情報や知識を体系的に「積み上げる」 (オントロジー)[6]ことができる画期的な技術である。GIM は、オブジェクトとアソシエーションから成る 意味ネットワークモデルであり、人間の頭脳のように、 ニューロン(オブジェクト)とニューロンをシナプス (アソシエーション)で結合する単純なモデルと類似 している。このことはニューロンやシナプスを増やす ことで、将来の発展や拡張に対応できる可能性を秘め た、成長モデルと見ることもできる。GIM は、リファレンス・ライブラリーを替えること により、他の産業分野でも利用できる。他の分野に適 用するには、その分野固有の辞書を追加することにな る。この辞書を豊富にすることにより、知的資産の相 互運用性(Interoperability)が可能となる。4. プロセス・プラントへの適用 * 技術知識基盤の基本アーキテクチャーに基づき、 GIMやFNL、GIM-XML(eXtensible Markup Language)、 GIM データウェアハウス技術などを、リスクマネジメ ントを基本とするプロセス・プラントの設備管理分野 に適用した。プロセス設計システムや基本設計システム、詳細設 計システム、保全システムなどのデータベースの内容 と GIM の辞書(リファレンス・ライブラリー)を参照 し、マッピングテーブル(対応関係を記述する表)を 作成する。この場合、データベースにある内容が GIM の辞書にない場合は、GIM の辞書に新しい用語として 追加する。できあがったマッピングテーブルに基づき、 各データベースとデータウェアハウスとの GIM-XML トランスレータを開発した。GIM-XML トランスレー タにより、各種設計情報を既存のシステムからGIM デ ータウェアハウスに登録し、GIM による表現に統一し 蓄積した(Fig.8 参照)。 データウェアハウス内の GIM で統一された内容は、いろいろな視点から論理検索でき、2次元表示機能や 3次元表示機能、自然言語的表示機能などにより閲覧 できる。図形表示された内容は、Web 上で、コンポー ネント単位で指示(ピック)ができ、関連する情報を 検索・閲覧、加工することができ、Web 上での応用範 囲が飛躍的に拡大する。BasicDetailMainte-Web Services Usernance etc.Tree View-Configuration -Process System -Area etc.InfomatGIM DWHDictionariesInstances (Component Level)ournesenGIM/FNL Dictionaries180103031 EVSO159261formanGIM-XML GIM-XML GIM-XML GIM-XMLTranslatorTranslator Translator Translator Reflection for TranslatorConfiguration Management terminologyAddition Terms Process Basic || Detail MainteMapping Design|| Design|| si nance Case of no term Legacy Application System Fig.8 Implementation Method of GIMFig.9 はデータ ウェアハウス内に蓄積した各種設計 情報を、インターネットを介してデータ ウェアハウス 内の情報を Web サービスであるエージェント基本ツー ルで検索・閲覧したものである。辞書(リファレンス・ ライブラリー)で規定した用語(プロセス・プラント の構成を表す用語) を表示(1)し、これをベースとして、 ライフサイクルに亘る情報や知識を検索・閲覧できる。 例えば、(1)から系統名をピックして、プロセス設計情 報である PFD (Process Flow Diagram)を表示(2)し、次 に、PFD に対応した基本設計情報である P&ID (Piping and Instrument Diagram)を表示(3)し、さらに、その系 統の3次元の詳細設計情報や施工図を表示(4)し、また、 (4)のある機器をピックして、その機器に関する保全管 理密度(Concentration rate of maintenance considerations) [7]を決定することやその仕様情報を確認すること(5) が容易にできる。以上、説明した以外にも図形に対する基本機能や機 器間の接続関係、保守点検時に必要となる系統隔離、 バルブ開閉時の流体可視化、関連法規の対応機器の色 分け表示、保全管理密度の色分け表示、減肉監視状況 の把握などの機能がある。技術知識基盤の構築により、プロセス・プラント設 備管理の情報や知識を一元的に蓄積、共有・活用でき、 設備管理業務支援の高度化を図ることができる。207(1)Tree View(2)Process Design(1) Retrieving and browsing of information and knowledge of lifecycle, based process plant configuration management (described by Dictionaries)(2) Retrieving and browsing of PFD(3) Retrieving and browsing of P&ID.| corresponded to PFD(2)(5)Determine concentration rate of maintenance considerationsで(3)Basic Design (4) Retrieving and browsing of 3D. corresponded to P&ID(3)(5)Maintenance (4)Detail Design Fig. 9 Sharing of the maintenance knowledge in actual plant技術知識基盤のベースとなる、GIM やその実装手段 は、あらゆる産業や技術分野に適用でき、将来への変 更や拡張が容易で、柔軟性のあるものである。これは、 一般の製品や技術・サービスなどのライフサイクル支 援システムが抱える多くの問題を解決できることを意 味している。 - 技術知識基盤のプロセス・プラント設備管理への展 開では、既存のオントロジーとして、ISO10303(STEP: Standard for the Exchange of Product Model Data)に注目 した。STEP では、製品や技術についての用語の整備が 既に行われており膨大な知的資産となっている。そこ で、STEP の基本リソースの部分を、GIM のリファレ ンス・ライブラリーとして展開している。現状では、 形状や物理単位などの共通化できる用語を中心に約4, 000語の整備が進んでいる。GIM は、述語を中心とする知識モデルであり、知識 処理の理論である述語論理として取り扱うことができ る。また、GIM は一つのオントロジーであり、知識と しての意味を表現できる。論理学に「意味の理論」 [6] であるオントロジーを加えることにより、様々な問題 解決を試みることの可能性が広がる。今後は、GIM の 応用としてこれを検討したい。5. 結言- リスクマネジメントを基本とする設備管理のための 技術知識基盤として、設備のライフサイクルに亙る情 報や知識を体系的に蓄積・共有・活用する技術フレー ムワークを実現した。これにより、業務をシームレス につなげることが可能となり、情報の重複入力やミス、 業務間で情報の欠落などを防ぐことができる。また、設備の網羅的な管理が可能となり、信頼性・安全性の 飛躍的な向上を期待できる。さらに、作業の効率化や 作業期間の短縮、これらを通じた大幅なコスト低減な どが期待できる。また、関係者間で設備のライフサイクルに亙る情報 や知識を体系的に共有できることにより、日常の設備 管理が効率化されるだけでなく、事故・トラブルに際 しても、関係者間での一貫した対応やその迅速化、水 平展開、原因究明の促進などにも役立つ。さらに、故 障やトラブルの事例を蓄積することにより、各種管理 指標の精度向上を図ることができ、リスクマネジメン トに基づいた設備管理の継続的な改革が可能となる。 ・リスクマネジメントを基本とした設備管理の導入は、 現在分断して行われている設計や運転、保全などの関 連業務に共通の価値観を与え、部分最適化の域を出な い現在の効率化を全体的な最適化に導くと共に、専門 家も含め、専門家でない市民や関係者にも理解できる 形で設備の運用実態を提示する透明性のある方法とし ても期待できる。謝辞「技術知識基盤」に関する技術開発は、MS (Intelligent Manufacturing Systems、経済産業省が実施 している国際共同研究開発プログラム)の「仮想企業 体ネットワーク (VIPNET: Virtual production Enterprise Network)」(2000~2004 年度)プロジェクトを推進し たものであり、この間、多くの方々のご協力、ご支援 がありました。ここに、感謝の意を表します。参考文献[1]仲: 技術情報基盤構築へ向けて, 化学工学会, Vol.62,No.4(1998) [2]太田,好永: IT による情報・知識の共有と蓄積,日本機械学会誌, Vol.103, No.977(2000) [3](財)製造科学技術センター IMS センター, 仮想企業体ネットワークに関する研究成果報告書(2001) [4]好永,太田ほか:仮想企業体ネットワーク, 平成 13 年度 IMS 研究成果報告会論文集(2001) [S]太田,好永ほか:技術情報基盤のための情報・知識記述モデル, 平成 13 年度 IMS 研究成果報告会論文集(2001) [6]溝口: オントロジー研究の基礎と応用, 人工知能学会誌, Vol.14, No.6(1999) [7]玉木:設備運用のトータル最適化, オートメーション, Vol.47, No.51(2002),~Vol.48, No.2(2003)208“ “リスクベースの設備管理(2)技術知識基盤の構築“ “太田 吉美,Yoshimi OTA,好永 俊昭,Toshiaki YOSHINAGA,仲 治,Yuji NAKA,芝尾 紘一,Koichi SHIBAO,玉木 悠二,Yuji TAMAKI,川中 勉,Tsutomu KAWANAKA