保守最適化に向けた状態監視保全の運用支援技術およびシステムの開発
公開日:
カテゴリ: 第2回
1. 緒言
原子力発電プラントには高い信頼性と安全性は勿論 のこと、設備利用率の向上と保守費削減による発電原 価の低減が強く求められている。プラント機器の保守 に関しては、従来は信頼性維持のために一定周期で点 検を実施する時間計画保全方式が採用されてきたが、 近年では保守費削減と両立するために多くのプラント で機器の運転監視に基づいて点検の要否を定める状態 監視保全方式への移行が進められている[1]。状態監視保全の運用にあたっては、 ・ 状態監視保全の適用が可能で効果的な機器の選定 ・ 監視パラメータの選定とデータ収集の省力化 1. 膨大なフィールドデータの管理 . 経年劣化徴候の検知と点検時期の判定 が課題となる。筆者らは保守最適化を目指して、プラ ントの運転信頼性の観点から状態監視保全の適用戦略 を策定する方法を考案した。また、監視すべきパラメ ータの選定と効率的なデータ収集方法について検討し、 収集したフィールドデータを機器単位で管理するデー タベースと、劣化徴候の検知と適切な点検時期を推定 する機能を持つ状態監視保全適用支援システムを開発 した。以下に適用戦略の概要と本システムをフィール ドデータに適用した結果について述べる。
2. 状態監視保全の適用戦略2.1 機器の重要度分類プラントの運転信頼性に与える影響から、系統機器 の重要度を下記のように分類した。 ・ 重要度大:運転への影響が大きく、運転中保守が困難なもの ・ 重要度中:運転への影響はあるものの、ある制限のもとでは運転中保守が可能なもの ・ 重要度小:運転への影響が小さく、運転中保守が可能なもの - 格納容器内機器や主系統の多くの機器は重要度大と して従来どおりの時間計画保全、発電に直接関わらな い廃棄物処理系の機器は重要度小として事後保全とし、 残りの機器を状態監視保全の対象候補とした。個々の 機器への適用は、機器の種別や使用環境などを考慮し て決定する。ポンプを例にとると、運転中の監視が容 易か、内部流体は水・海水・懸濁液のいずれか、運転 中保守を行う場合の制限は何か、などを考慮して状態 監視保全の適用の可否を判断する。2.2 監視パラメータの選定 監視パラメータは運転中に計測が可能で、経年変化 による性能低下が検知できる信号を選ぶ必要がある。ポンプでは、振動、音響、温度、潤滑油の成分分析デ ータ等を監視する。フィールドデータの収集は人間系 で行うケースが多いため、作業の省力化が運用上の課 題である。現在は可搬型の収録装置を現場に持ち込ん でデータを採取しているが、今後は無線センサや光フ ァイバセンサを導入して多数の信号を一括計測できる ようにする計画である。3. 状態監視保全適用支援システム3.1 経年劣化徴候の監視 - 状態監視保全適用支援システムは、上述の運転監視 の他に、プロセス量、累積運転時間や起動停止頻度な どの運転履歴、点検修理や部品取替えなどの保守履歴 の情報を機器単位に管理するデータベースを持ち、長 期傾向トレンドの変化から経年劣化の徴候を検知する。 44台のポンプとファンの 16 年間にわたるフィールド データを対象として、システムの監視機能の有効性を 確認した[2]。徴候検知のしきい値は各々のパラメータ の実測値から、変化が認められるレベル、監視強化を 要するレベル、従来の警報レベルの3段階に設定した。 監視画面の例を Fig.1 に示す。サマリグラフ...」TE/プロセス データ振動 ・データamaポールでマン号機同比較達時間 データグラブルーライフルへていかれサイクル~Fig. 1 Operating Condition Monitoring3.2 点検時期の判定 - 分解点検の履歴から消耗品の経年劣化特性が得 られる場合には、長期傾向を予測するモデルを作成 して適切な点検時期を判定することができる。Fig.2 は横型ポンプの例で、・- ウェアリング間隔の実測 値を累積運転時間に対してプロットしたものである。 分解点検後の動作確認時に振動や温度が測定されており、このデータを統計解析することによって、累 積運転時間とインペラケーシングの振動データから、 軸ーウェアリング間隔を推定できることを確認した。 点検時期の判定は、軸- ウェアリング間隔の推定値の 確率分布を運転中に測定した振動値のばらつきから求 め、次回定検時点でしきい値を越える確率が 5%以下の 場合には、次々回の定期検査まで点検が省略できるも のとした。例では累積運転時間 3000 日に次回定期検 査があると想定し、軸ーウェアリング間隔の確率分布 を求めたもので、しきい値を越える確率は 13.5%で次 回定期検査時に分解点検を行うことを推奨している。判断アルゴリズムカット あっこ 10分振動データから予測した軸ーウェアリング間隔が! しきい値を超える確率 確率 > 5%:分解点検が必要 確率 5%:分解点検は不要.13.5%....カウチ1899/12/31 19:12:001900/01/19 21:36:00限大しきい値:1.5mm予測値の確率分布13,000日軸ーウェアリング間隔 (mm)点検時期の判定。ーウェアリング回帰の予感 値がしきい値を越える確率。●分解点検時の実測値 - 試運転時の振動データからの予測値 A 運転時の振動データからの予測値しきい値 :1.5mm 累積運転時間 :3,000日,:13.5%確事1904/02/081902/09/261909/07/311500200025003000 累積運転時間(日)「定:分解点検が必要。Fig. 2 Judgment of Inspection Interval3.結言原子力発電プラントの機器を対象として、状態監視 保全の適用戦略を策定した。状態監視保全適用支援シ ステムを開発し、フィールドデータに適用して機能の 有効性を確認した。これによって、コストパフォーマ ンスに優れた保全計画の立案が可能となる。参考文献[1] 飯田純、後村昌和、他、状態監視保全の実機への適用(その1)-女川原子力発電所における状態監 視保全の適用方針一、日本原子力学会 2001年秋の大会,予稿集 H20、pp.407. [2] Yukio SONODA, Yukinori HIROSE, et al.,Inspection and Condition Monitoring Service on the Internet for Nuclear Power Plants, Human-Computer Interaction 2003, 2003/6, pp1308-1312.1900/08/03“ “保守最適化に向けた状態監視保全の運用支援技術およびシステムの開発“ “園田 幸夫,Yukio SONODA,廣瀬 行徳,Yukinori HIROSE,榎本 光広,Mitsuhiro ENOMOTO,清水 俊一,Shunichi SHIMIZU
原子力発電プラントには高い信頼性と安全性は勿論 のこと、設備利用率の向上と保守費削減による発電原 価の低減が強く求められている。プラント機器の保守 に関しては、従来は信頼性維持のために一定周期で点 検を実施する時間計画保全方式が採用されてきたが、 近年では保守費削減と両立するために多くのプラント で機器の運転監視に基づいて点検の要否を定める状態 監視保全方式への移行が進められている[1]。状態監視保全の運用にあたっては、 ・ 状態監視保全の適用が可能で効果的な機器の選定 ・ 監視パラメータの選定とデータ収集の省力化 1. 膨大なフィールドデータの管理 . 経年劣化徴候の検知と点検時期の判定 が課題となる。筆者らは保守最適化を目指して、プラ ントの運転信頼性の観点から状態監視保全の適用戦略 を策定する方法を考案した。また、監視すべきパラメ ータの選定と効率的なデータ収集方法について検討し、 収集したフィールドデータを機器単位で管理するデー タベースと、劣化徴候の検知と適切な点検時期を推定 する機能を持つ状態監視保全適用支援システムを開発 した。以下に適用戦略の概要と本システムをフィール ドデータに適用した結果について述べる。
2. 状態監視保全の適用戦略2.1 機器の重要度分類プラントの運転信頼性に与える影響から、系統機器 の重要度を下記のように分類した。 ・ 重要度大:運転への影響が大きく、運転中保守が困難なもの ・ 重要度中:運転への影響はあるものの、ある制限のもとでは運転中保守が可能なもの ・ 重要度小:運転への影響が小さく、運転中保守が可能なもの - 格納容器内機器や主系統の多くの機器は重要度大と して従来どおりの時間計画保全、発電に直接関わらな い廃棄物処理系の機器は重要度小として事後保全とし、 残りの機器を状態監視保全の対象候補とした。個々の 機器への適用は、機器の種別や使用環境などを考慮し て決定する。ポンプを例にとると、運転中の監視が容 易か、内部流体は水・海水・懸濁液のいずれか、運転 中保守を行う場合の制限は何か、などを考慮して状態 監視保全の適用の可否を判断する。2.2 監視パラメータの選定 監視パラメータは運転中に計測が可能で、経年変化 による性能低下が検知できる信号を選ぶ必要がある。ポンプでは、振動、音響、温度、潤滑油の成分分析デ ータ等を監視する。フィールドデータの収集は人間系 で行うケースが多いため、作業の省力化が運用上の課 題である。現在は可搬型の収録装置を現場に持ち込ん でデータを採取しているが、今後は無線センサや光フ ァイバセンサを導入して多数の信号を一括計測できる ようにする計画である。3. 状態監視保全適用支援システム3.1 経年劣化徴候の監視 - 状態監視保全適用支援システムは、上述の運転監視 の他に、プロセス量、累積運転時間や起動停止頻度な どの運転履歴、点検修理や部品取替えなどの保守履歴 の情報を機器単位に管理するデータベースを持ち、長 期傾向トレンドの変化から経年劣化の徴候を検知する。 44台のポンプとファンの 16 年間にわたるフィールド データを対象として、システムの監視機能の有効性を 確認した[2]。徴候検知のしきい値は各々のパラメータ の実測値から、変化が認められるレベル、監視強化を 要するレベル、従来の警報レベルの3段階に設定した。 監視画面の例を Fig.1 に示す。サマリグラフ...」TE/プロセス データ振動 ・データamaポールでマン号機同比較達時間 データグラブルーライフルへていかれサイクル~Fig. 1 Operating Condition Monitoring3.2 点検時期の判定 - 分解点検の履歴から消耗品の経年劣化特性が得 られる場合には、長期傾向を予測するモデルを作成 して適切な点検時期を判定することができる。Fig.2 は横型ポンプの例で、・- ウェアリング間隔の実測 値を累積運転時間に対してプロットしたものである。 分解点検後の動作確認時に振動や温度が測定されており、このデータを統計解析することによって、累 積運転時間とインペラケーシングの振動データから、 軸ーウェアリング間隔を推定できることを確認した。 点検時期の判定は、軸- ウェアリング間隔の推定値の 確率分布を運転中に測定した振動値のばらつきから求 め、次回定検時点でしきい値を越える確率が 5%以下の 場合には、次々回の定期検査まで点検が省略できるも のとした。例では累積運転時間 3000 日に次回定期検 査があると想定し、軸ーウェアリング間隔の確率分布 を求めたもので、しきい値を越える確率は 13.5%で次 回定期検査時に分解点検を行うことを推奨している。判断アルゴリズムカット あっこ 10分振動データから予測した軸ーウェアリング間隔が! しきい値を超える確率 確率 > 5%:分解点検が必要 確率 5%:分解点検は不要.13.5%....カウチ1899/12/31 19:12:001900/01/19 21:36:00限大しきい値:1.5mm予測値の確率分布13,000日軸ーウェアリング間隔 (mm)点検時期の判定。ーウェアリング回帰の予感 値がしきい値を越える確率。●分解点検時の実測値 - 試運転時の振動データからの予測値 A 運転時の振動データからの予測値しきい値 :1.5mm 累積運転時間 :3,000日,:13.5%確事1904/02/081902/09/261909/07/311500200025003000 累積運転時間(日)「定:分解点検が必要。Fig. 2 Judgment of Inspection Interval3.結言原子力発電プラントの機器を対象として、状態監視 保全の適用戦略を策定した。状態監視保全適用支援シ ステムを開発し、フィールドデータに適用して機能の 有効性を確認した。これによって、コストパフォーマ ンスに優れた保全計画の立案が可能となる。参考文献[1] 飯田純、後村昌和、他、状態監視保全の実機への適用(その1)-女川原子力発電所における状態監 視保全の適用方針一、日本原子力学会 2001年秋の大会,予稿集 H20、pp.407. [2] Yukio SONODA, Yukinori HIROSE, et al.,Inspection and Condition Monitoring Service on the Internet for Nuclear Power Plants, Human-Computer Interaction 2003, 2003/6, pp1308-1312.1900/08/03“ “保守最適化に向けた状態監視保全の運用支援技術およびシステムの開発“ “園田 幸夫,Yukio SONODA,廣瀬 行徳,Yukinori HIROSE,榎本 光広,Mitsuhiro ENOMOTO,清水 俊一,Shunichi SHIMIZU