リスク情報を活用した配管保全手法の高度化に関する検討

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
現在、我が国においては、原子力の安全規制にリス ク情報を活用するための方針として、原子力安全委員 会より「リスク情報を活用した原子力安全規制の導入 の基本方針について(平成 15 年 11 月 10 日)」が、原 子力安全・保安院より「原子力安全規制への「リスク情 報」活用の基本的考え方(最終案)(平成17年5月 31 日)」が発行され、具体的な検討が行われている。 * 原子力の安全規制および保守管理の高度化へのリス ク情報の活用の分野で先行している米国における活用 例としては 、RI-IST (Risk-Informed In-Service Testing),RI-ISI(Risk-Informed In-Service Inspection)や T-Spec(Technical Specification) の変更といった申請が、 事業者から NRC(U.S. Nuclear Regulatory Commission) に対して数多くなされており、実プラントへの適用が 既になされ、昨今の米国の原子力プラントの稼働率の 向上等に少なからず寄与していると考えられる。このような背景から、日本の原子力プラントにおい て、科学的合理性に基づき、より効率的・効果的な保 全を目指す観点から、米国における活用例に対する我 が国の原子力プラントへの適用性を検討することは、 非常に重要かつ有意義なことであると思われる。そこ で、上記の活用例のうち、RI-ISI に着目し、米国で実連絡先:前原啓吾、 〒530-8270 大阪市北区中之島3丁目6番16号、 原子力事業本部 安全技術グループ、電話: 06-7501-0149、 e-mail:maehara.keigo@a3.kepco.co.jp施されている手法を採用した場合の適用性に関する検 討を、PWR2 ループプラントを対象に行った。2. RI-ISI の実施概要 2.1 実施手順 - 米国において、RI-ISI を実施するにあたり用いるア プローチは、米国 R.G.1.178[1]に示されているように、 大きく分けて2つ存在している。一つは、EPRI の開発 した手法と、WOG(Westinghouse Owners Group)が開 発した手法がある。本検討においては、EPRI 手法と言 われる手法とほぼ同様の評価を実施した。その評価ス テップは、以下に示すとおりで、図1に示すようなフ ローチャートで表される。・ 対象範囲の選定および配管セグメントの同定 ・ 配管セグメントの損傷モード評価 * . 配管セグメントの配管破損時影響評価・ 配管セグメントのリスク重要度の分類 1リスクインパクト解析対象範囲の選定及び | 配管セグメントの同定配管セグメントの 損傷モード評価| 配管セグメントの 破損時影響評価配管セグメントのリスク重要度の分類| リスクインパクト解析) 図1:本検討の実施手順
2.2 対象範囲の選定およびセグメントの同定 - 本検討での評価対象範囲は通商産業省令告示第 501号[2]に定義される第1種配管および第3種配管と し、具体的には、一次冷却材系統、安全注入系統、 余熱除去系統、格納容器スプレイ系統、化学・体積 制御系統、主蒸気/主給水系統を対象範囲とした。こ れらの系統について、流体の合流もしくは分岐点、 配管サイズが変更される点、配管の破断が発生した 際に隔離することが可能となるような機器が設置さ れている点などを分割点として設定し、セグメント 分類を行った。2.3 各セグメントの損傷モード評価セグメントに分類された配管が有する損傷モード については、プラントの固有の配管損傷、産業界で の運転経験、配管の材料、運転状態等を考慮して、 各セグメントに発生する可能性のある損傷モードを 評価した。EPRI 手法においては、損傷モードの評価 においては、評価用のテンプレートが与えられてお り、そのテンプレートに従い、評価を行うこととな っているが、この評価には、当社においてオリジナ ルに開発した”配管総合保全プログラム”から得られ る知見を活用した。当該プログラムでは、Fig-2 に示 すようなフローチャートに従い、各セグメントにお いて発生する可能性のある損傷モードを判定するこ とができる。ステンレス鋼劣化メカニズム:02SCCNo閉塞ラインか?」YES所定の温度以上か?」YES0,感受性は高いか?」YESE発生の可能性あり発生の可能性なし |図2:配管損傷可能性評価例なお、当該プログラムで分類している損傷モード」 は、Table-1 に示すとおりである。Table-1 : Degradation Mechanism defined in “Whole Maintenance Program for Piping” ProgramDegradation MechanismContributing factorsMechanical Vibration VibrationFluid VibrationThermal Stratification ? due to cavity flowdue to valve set leakage Thermal Cycledue to valve gland leakagedue to operating practices Fluctuation in Temperature at Junction of Hot and Cold WaterPWSCC SCCChloride SCC Oxygen SCCErosion/Corrosion ErosionErosion due to 2 Phase Flow Cavitation ErosionSeawater Corrosion CorrosionSurface Corrosion OthersThermal Aging ・各損傷モードにより配管の破断が発生する可能性 を Table-2 に示すように分類した。また、2.6にお いて述べるリスクインパクト解析においては、配管 の破断の可能性も定量的な評価を行うことから、損 傷の可能性について各々10/炉年、10~炉年、109 炉年を割り当てることとした。Table-2 : Pipe rapture potential ranking and Frequency applied to degradation mechanismDegradation Pipe Rapture | Estimated Frequency MechanismPotential of Pipe Rapture Flow-Accelerated10 CorrosionHigh (Erosion/Corrosion)[/Reactor ・ Year] Other Degradation105Medium mechanism[/Reactor ・ Year] No Degradation mechanismLow[/Reactor ・ Year]1002.4 配管破損時の影響評価 - 配管破損時の影響評価は、2.2で実施した分類化さ れたセグメントごとに、そのセグメントにおいて破断 が発生したことを仮定し、その影響がプラントに及ぼ す影響を評価するものである。 本検討では、その影響評価に確率論的安全評価 (PSA:Probabilistic Safety Assessment) 手法を用いて算 出される炉心損傷頻度(CDF: Core Damage Frequency) を指標として用いることとした。具体的には、当該配 管が破断することにより、1炉心損傷につながるよう1900/08/05な起因事象(例:一次冷却材喪失事故など)が発生す る、2炉心損傷につながるような事象を緩和する機能 が喪失する、3起因事象も発生し、緩和機能も喪失す るという 3 つのグループ分けを考慮した上で、全配管 セグメントの破断を仮定した場合の、条件付炉心損傷 確率(CCDP: Conditional Core Damage Probability)を 算出した。これを指標として、配管破損時の影響評価 として、Table-3 に示すように、3つのグループ(High, Medium, Low) に分類した。なお、本検討においては、 上記2のグループにおいて、配管が損傷することに伴 い発生する溢水や蒸気の噴出などが原因で機能が損傷 するという間接的な影響評価は行わず、配管が損傷す ることで当該系統全体又は部分的に機能が喪失する直 接的な影響評価を対象とした。Table-3 Range of CCDP for Consequence Category | Consequence Category 1 CCDP(X) Range HighCCDP >1E-4 Medium1E-6< CCDP S1E-4 LowCCDP 31E-6 Note:(X)Conditional Core Damage Propability2.5 リスク重要度分類各配管セグメントにおいて各々配管破損発生の可能 性およびその破断時の影響を評価した結果に対して、 Table-4 に示すようなリスクマトリックスを適用し、各 セグメントのリスク上の重要度分類を行った上で、各 セグメントの検査割合について、リスク上の重要度分 類が、「High」,「Medium」, 「Low」に対して各々「25%/ 年」,「10%/年」,「検査不要」という割り当てを行った。この結果、JEAC-4205[3]に従った場合の検査箇所数 が 10年間あたり約 320 箇所に対して、RI-ISI による検 査箇所数は 210 箇所程度となり、検査が必要と判断さ れる検査箇所数は、3 割程度低減可能という結果が得 られた。Tabale-4 EPRI Matrix for Segment Risk CharacterizationPotential For Consequences of Pipe Rapture Pipe Rapture| NONE | LOW MIDIUM HIGH | HIGH | LOW / MED HIGH | HIGH MEDIUM LOW | LOW | MED HIGHLOW | LOW | LOW | LOW | MEDI2.6 リスクインパクト解析2.5 で実施した検査要素の選定方法および、従来の 検査要素の選定方法(JEAC-4205 に基づくもの)に従 って実施した場合のプラントへのリスクに及ぼす方法 を以下の式(1)に基づき算出した。ACDF = (No.1 - No. )2, ・CCDP, ...... (1) | ACDE, :RI-ISI 導入によるセグメント i のリスク変動(/炉年)) NS :RI-ISI 導入前のセグメント i の検査箇所数(個) Nai :RI-ISI 導入後のセグメントiの検査箇所数(個)11 :セグメントiの破損頻度(/炉年) CCDP : セグメント i に対する条件付炉心損傷確率(-) |各セグメントに対して、Noi,Naおよび配管破損頻度、 条件付炉心損傷確率から、A CDF; を算出し、全てのセ グメントのA CDF; を算出した結果、約 107炉年程度低 減する結果となった。3. 結言1) 米国で用いられている EPRI 手法をベースとした RI-ISI が国内プラントに対して適用可能であること を確認するため、PWR2 ループプラントを対象に評価を実施した。 2) 米国 RI-ISI 手法を適用した場合において、JEAC-4205 に基づいて実施する場合に比べて、検査 箇所数を低減することが可能となり、かつプラントリスクも増加しない結果となる見込みが得られた。 3) 今後、配管の破損頻度や機器故障率等のデータ、及び PSA の評価手法の高度化により、更に現実的な評 価を行うことで、配管保全の最適化・高度化に資す ることができると考える。参考文献 [1] Regulatory Guide1.178, ““An Approach_forPlant-Specific Risk-Informed Decisionmaking for Inservice Inspection of Piping,““ USNRC, RegulatoryGuide 1.178, Revision 1, September 2003. [2] 発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年10月30日 通商産業省告示 501 号) [3] JEAC-4205-1996「軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査」(社)日本電気協会219“ “リスク情報を活用した配管保全手法の高度化に関する検討“ “前原 啓吾,Keigo MAEHARA,浦田 茂,Shigeru URATA,倉本 孝弘,Takahiro KURAMOTO,豊嶋 謙介,Kensuke TOYOSHIMA
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