東京電力原子力のRCMへの取り組み(第二報)
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カテゴリ: 第2回
1. はじめに
東京電力では、米国原子力の好調の一要因と 言われる信頼性重視保全と状態監視保全の考 え方を取り入れ、保全管理の立場から設備信頼 性の向上を図るべく検討を進めている。昨年の 本学会講演会では、その考え方についての紹介 を行った。今回は、その後の検討の進展を踏ま え、その状況を第二報として報告する。
2. これまでの経緯当社では、昨年までに以下の点について有用 性を確認し、信頼性重視保全、状態監視保全と それを軸にしたプロセスを導入することとし た。また昨年、本店と発電所に専任準備組織を 設置し、導入に向けた準備検討に入っている。 (1)信頼性重視保全(RCM) |- 信頼性重視保全は、設備の機能評価、故障影 響分析と重要度評価に基づき、適切な保全手法 と頻度の組み合わせを科学的、合理的に決定す るための検討手法である。米国原子力では、 SRCM(Streamlined Reliability Centered Maintenance), PMO (Preventive Maintenance Optimization) などと呼ばれる方法が広く行わ れている。当社でも、その手法について平成1 4年から試行を含めた検討を行い、採用すべき ものであると判断した。 (2)状態監視保全(CBM)状態監視保全は、回転機器に対する振動監視 等の手法を駆使して設備状態を継続監視し、そ の傾向、故障兆候や設備健全性の評価を行うとElectric共に、点検の時期、方法を判断していく手法で ある。これは、時間計画方式の弱点を補うとと もに、設備運転中の状態を継続把握することで 設備信頼性の向上に大きく寄与するものと期 待されている。当社RCMの検討の結果からも、 状態監視と時間計画保全と適切な組み合わせ による保全計画とすべきことが示されている。 (3) フィードバックプロセス - 米国では、保全を通じた設備信頼性管理、フ ィードバックのプロセスが標準的なものとし て定義され、行われている。当社でも、定期検 査時の保全データ (As-found condition)による 保全計画への計画的なフィードバック、状態監 視結果にもとづく保全計画への日常的なフィ ードバックを行い、RCM・CBMによる保全 の最適化を継続実施してゆく方針である。3.実機展開の基本的考え方と整備事項- 前項のとおり、当社では基本的な手法等の確 認を完了し、平成18年度からの適用に向けた 準備段階に入っている。実機展開にあたっては、 保全基準の見直しを拙速に行うことを避け、保 全データ、監視データにもとづくフィードバッ クとデータ蓄積のプロセス実現をまず行うこ と、それによって業務としての成立性の検証を 確実に行うとともに、保全方式、基準決定のた めの確かな技術根拠を整備することを優先す ることとした。この方針で当面の目標とするプ ロセスを図1に示す。 . このプロセスは、米国での実績を参考にした ものである。その中で特に重要なポイントは以るロ229時間「画保全1は 理想 肉・ スタート As found 3RX と状態監視を付加化学アータ デンター」外にもとづく検証.ビューの後、映 ''''''''''''''''景種別保全準技術ペース 保全ガイドラインRE:M,オ入力につく保全計画の見直し、 時期・・ ・ データ <個体質の事RCME * 機器エンジニア「R:Mによる刃物分析養能分析 故障影響分析 中価フィドバック指示画保全は現状でスタート(リ・クーダ号〉監視を付加ず外にもとづく検証, レビューの後、反映安全法?葛最紅月・状態監視プロセス!| 女医監全作業 ・時間:1面による本格占 状態監視結果に基づく働時の点検 ・事後保全(故障対応)日常?全 ・別保全準 ・技術ペース スカイドウイン保全計道の見直し 時期・・ ・散データ個体質の基平)・リ・ベランステスト」1赤外線リーモグラフィ 11・潤滑油ジータ採取オンライン計測す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ の取5-5の採取 ・各行点検記録・各種の検記 . As found Condition運転中設備監型データ Aus-luft Conditiur. (手入れ前の状態)(子入れの状)RCM技点考 機器エンジニア不具合 光検知こよみみ物分析能分析 や影分町価機器/系統状態評価データ次計:チ入れ時のお材に応じ、的の方向を示す31分 考え方: レベルに比べ劣化小→過保全?/発化大保全不足?フィードバック指示設島/監視技供の担当員任意設題の監視、報告: :1図1. 設備信頼性管理のためのフィードバックプロセス「... maれる部分-下のとおりである。基準、計画へのフィードバックを確立させる。 (1)設備機器個体管理の最適化(4) 状態監視保全、運転中健全性管理 - 発電所設備の機器個別の運転条件や履歴に。 回転機器の振動監視診断に代表される状態 応じた管理を的確に行うために、個体毎の管理 監視技術を本格導入し、それをベースとして運 データ (カルテ)を作成し、履歴とRCMの考え 転中設備健全性管理プロセスの確立をめざす。 方で保全基準の最適化を継続してゆく。また、 ここで得られた情報は前項同様、保全基準へ 状態監視のプロセスにより、機器別の運転中健一 のフィードバックにも用いてゆく。 全性評価をルーチンとして確立させる。状態監視のために適用すべき技術は数多い - 初期のRCM分析による保全基準の検討は が、当面、米国のテンプレートでも基本技術と 単品機器と対応した形で実施しており、個体管して幅広く扱われている振動監視、潤滑油診断、 理のベースデータとなる。赤外線サーモグラフィーを優先整備中である。 (2)標準化、共通化による全体最適化 - 機器個別管理に加え、全体に共通的に適用可 4. 今後の見通し 能な保全基準を整備し、継続して改善してゆく。・ この導入プロジェクトは、我々にとって単な 米国で発達しているテンプレートの考え方を。 取り入れ、機種単位で集約した保全基準(内容、る技術導入ではなく、保全に対する新しい概念 周期と根拠、関連技術情報等)を整備することとこれまでにない業務スキームの導入第一歩であり、技術面はもとより、運営面ほかあらゆ によって、17ユニットの経験を総合的に活か すための基盤とするとともに、全体で共有できる面にわたって課題が潜んでいると考えられ る知識ベースとして確立させる。個別基準はこ うした共通情報に対し、個々の条件や履歴を加平成18年度以降、全17ユニットの実地経 味して差分を管理するという考え方により、両験が一巡するのは平成19年度下期の見込みである。それまでを第一段階とし、業務プロセ 立させていく。スの検証と課題の解決、データ蓄積と保全基準 (3)保全データの採取と評価ルーチンの技術ベース整備を行って、本格的な保全最適 - 定期検査時の分解点検等の際、手入れ調整後化プロセスの実現につなげてゆく。さらに、機 のデータだけでなく、手入れ前の状態器レベルの保全管理から枠を拡げ、系統機能レ (As-found condition)を確認することによって、ベル、プラントレベルの信頼性管理までを融合 それまでの保全基準の妥当性を確認するステした体系の整備を目指したい。 ップを設ける。これにより、保全データによるる。230“ “東京電力原子力のRCMへの取り組み(第二報)“ “橋本 哲,Satoshi HASHIMOTO
東京電力では、米国原子力の好調の一要因と 言われる信頼性重視保全と状態監視保全の考 え方を取り入れ、保全管理の立場から設備信頼 性の向上を図るべく検討を進めている。昨年の 本学会講演会では、その考え方についての紹介 を行った。今回は、その後の検討の進展を踏ま え、その状況を第二報として報告する。
2. これまでの経緯当社では、昨年までに以下の点について有用 性を確認し、信頼性重視保全、状態監視保全と それを軸にしたプロセスを導入することとし た。また昨年、本店と発電所に専任準備組織を 設置し、導入に向けた準備検討に入っている。 (1)信頼性重視保全(RCM) |- 信頼性重視保全は、設備の機能評価、故障影 響分析と重要度評価に基づき、適切な保全手法 と頻度の組み合わせを科学的、合理的に決定す るための検討手法である。米国原子力では、 SRCM(Streamlined Reliability Centered Maintenance), PMO (Preventive Maintenance Optimization) などと呼ばれる方法が広く行わ れている。当社でも、その手法について平成1 4年から試行を含めた検討を行い、採用すべき ものであると判断した。 (2)状態監視保全(CBM)状態監視保全は、回転機器に対する振動監視 等の手法を駆使して設備状態を継続監視し、そ の傾向、故障兆候や設備健全性の評価を行うとElectric共に、点検の時期、方法を判断していく手法で ある。これは、時間計画方式の弱点を補うとと もに、設備運転中の状態を継続把握することで 設備信頼性の向上に大きく寄与するものと期 待されている。当社RCMの検討の結果からも、 状態監視と時間計画保全と適切な組み合わせ による保全計画とすべきことが示されている。 (3) フィードバックプロセス - 米国では、保全を通じた設備信頼性管理、フ ィードバックのプロセスが標準的なものとし て定義され、行われている。当社でも、定期検 査時の保全データ (As-found condition)による 保全計画への計画的なフィードバック、状態監 視結果にもとづく保全計画への日常的なフィ ードバックを行い、RCM・CBMによる保全 の最適化を継続実施してゆく方針である。3.実機展開の基本的考え方と整備事項- 前項のとおり、当社では基本的な手法等の確 認を完了し、平成18年度からの適用に向けた 準備段階に入っている。実機展開にあたっては、 保全基準の見直しを拙速に行うことを避け、保 全データ、監視データにもとづくフィードバッ クとデータ蓄積のプロセス実現をまず行うこ と、それによって業務としての成立性の検証を 確実に行うとともに、保全方式、基準決定のた めの確かな技術根拠を整備することを優先す ることとした。この方針で当面の目標とするプ ロセスを図1に示す。 . このプロセスは、米国での実績を参考にした ものである。その中で特に重要なポイントは以るロ229時間「画保全1は 理想 肉・ スタート As found 3RX と状態監視を付加化学アータ デンター」外にもとづく検証.ビューの後、映 ''''''''''''''''景種別保全準技術ペース 保全ガイドラインRE:M,オ入力につく保全計画の見直し、 時期・・ ・ データ <個体質の事RCME * 機器エンジニア「R:Mによる刃物分析養能分析 故障影響分析 中価フィドバック指示画保全は現状でスタート(リ・クーダ号〉監視を付加ず外にもとづく検証, レビューの後、反映安全法?葛最紅月・状態監視プロセス!| 女医監全作業 ・時間:1面による本格占 状態監視結果に基づく働時の点検 ・事後保全(故障対応)日常?全 ・別保全準 ・技術ペース スカイドウイン保全計道の見直し 時期・・ ・散データ個体質の基平)・リ・ベランステスト」1赤外線リーモグラフィ 11・潤滑油ジータ採取オンライン計測す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ の取5-5の採取 ・各行点検記録・各種の検記 . As found Condition運転中設備監型データ Aus-luft Conditiur. (手入れ前の状態)(子入れの状)RCM技点考 機器エンジニア不具合 光検知こよみみ物分析能分析 や影分町価機器/系統状態評価データ次計:チ入れ時のお材に応じ、的の方向を示す31分 考え方: レベルに比べ劣化小→過保全?/発化大保全不足?フィードバック指示設島/監視技供の担当員任意設題の監視、報告: :1図1. 設備信頼性管理のためのフィードバックプロセス「... maれる部分-下のとおりである。基準、計画へのフィードバックを確立させる。 (1)設備機器個体管理の最適化(4) 状態監視保全、運転中健全性管理 - 発電所設備の機器個別の運転条件や履歴に。 回転機器の振動監視診断に代表される状態 応じた管理を的確に行うために、個体毎の管理 監視技術を本格導入し、それをベースとして運 データ (カルテ)を作成し、履歴とRCMの考え 転中設備健全性管理プロセスの確立をめざす。 方で保全基準の最適化を継続してゆく。また、 ここで得られた情報は前項同様、保全基準へ 状態監視のプロセスにより、機器別の運転中健一 のフィードバックにも用いてゆく。 全性評価をルーチンとして確立させる。状態監視のために適用すべき技術は数多い - 初期のRCM分析による保全基準の検討は が、当面、米国のテンプレートでも基本技術と 単品機器と対応した形で実施しており、個体管して幅広く扱われている振動監視、潤滑油診断、 理のベースデータとなる。赤外線サーモグラフィーを優先整備中である。 (2)標準化、共通化による全体最適化 - 機器個別管理に加え、全体に共通的に適用可 4. 今後の見通し 能な保全基準を整備し、継続して改善してゆく。・ この導入プロジェクトは、我々にとって単な 米国で発達しているテンプレートの考え方を。 取り入れ、機種単位で集約した保全基準(内容、る技術導入ではなく、保全に対する新しい概念 周期と根拠、関連技術情報等)を整備することとこれまでにない業務スキームの導入第一歩であり、技術面はもとより、運営面ほかあらゆ によって、17ユニットの経験を総合的に活か すための基盤とするとともに、全体で共有できる面にわたって課題が潜んでいると考えられ る知識ベースとして確立させる。個別基準はこ うした共通情報に対し、個々の条件や履歴を加平成18年度以降、全17ユニットの実地経 味して差分を管理するという考え方により、両験が一巡するのは平成19年度下期の見込みである。それまでを第一段階とし、業務プロセ 立させていく。スの検証と課題の解決、データ蓄積と保全基準 (3)保全データの採取と評価ルーチンの技術ベース整備を行って、本格的な保全最適 - 定期検査時の分解点検等の際、手入れ調整後化プロセスの実現につなげてゆく。さらに、機 のデータだけでなく、手入れ前の状態器レベルの保全管理から枠を拡げ、系統機能レ (As-found condition)を確認することによって、ベル、プラントレベルの信頼性管理までを融合 それまでの保全基準の妥当性を確認するステした体系の整備を目指したい。 ップを設ける。これにより、保全データによるる。230“ “東京電力原子力のRCMへの取り組み(第二報)“ “橋本 哲,Satoshi HASHIMOTO