穴およびクラックがあいても漏れない容器の開発
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カテゴリ: 第2回
1.緒言
張する。このとき、吸水ポリマーは格子内に閉じこめられているので、格子内部に膨潤圧が発生する。 内部に液体あるいは気体の封入される構造体(容、また容器内水圧でポリマーが圧縮される。 器)に突起物が刺さり、破れた場合、あるいは材料 劣化により割れなどが発生すると、封入気体・液体 が漏れ出す。この問題は原子力機器をはじめ化学プ ラントにおける危険流体の保存容器などで重要な問Nail 題である。このような容器に対し、穴があいても自Repairing 己修復して漏れない容器があれば、安全性が極めて 高くなると思われるが、著者らの調べた限り、自己 修復型の容器は開発されていないように思われる。 自己修復構造に対して、著者らは2枚のシート間に 格子を作りそのなかに吸水ポリマーを充填することPolymer gel で、穴が空いても自己修復して水を漏らさない遮水 シートを開発した[1]。しかし、これは容器に対して は直ちに適用できず、また容器内の流体が水以外の 場合に利用できないという欠点があった。本研究でAfter repairing は、新たに容器からの流体漏洩を防止するための方 法を示し、その問題点を明らかにするとともに解決 法を提案し、穴があいても漏れない自己修復型の流 体封入容器を開発する。
2. 本容器の構造と自己修復の原理Fig.1 Principle of self repairingいま図1のように 2枚のシートに格子を作り、そ の中に水を吸うと膨張する吸水ポリマーをサンドイ ニッチしたシーラント層を考える。この中に水を注入 すると、内部の吸水ポリマーが半固体のゲル状に膨この状態で、釘を貫通すると、釘の太さ分だけゲ ル化した吸水ポリマーが押しのけられるが、釘を抜 いた瞬間に膨潤圧と容器内流体圧々がゲル化した吸 水ポリマーに作用して瞬時に穴を塞ぐ。このとき、 膨潤圧と水圧の和が水圧より大きければ水は漏れな連絡先:長屋幸助、〒376-1585 群馬県桐生市天神町 1-51、群馬大学工学部機械システム工学科、電話: 0277-30-1563、e-mail:nagaya@me.gunma-u.ac.jp「J239いことになる[1]。このような方法で水の漏洩を止め ることはできるが、吸水ポリマーを膨張させない油 とか気体の場合にはこの方法では効果が無い。そこ で、予めシーラント層に水を入れて吸水ポリマーを 膨潤させておくと、上記と同様の膨潤圧が常時シー ラント層に作用しているので、水のみならず他の流 体の漏洩も止めることができると考えられる。本研 究は基本的にこの原理を用いて、流体(気体・液体) の穴からの漏洩を止めるものである。5000:00-16Ka1b Outer wall of the vessel, 2 Polymer, 4a, 4b Sheets, 5 Net 3 Inner wall, Ka Sewing portionFig.2 Geometry of the self repairing vessel本研究で開発する容器の構造は図2に示すような もので、容器内壁面にシーラント層(Pb)が接着さ れる。空気とか水の漏洩を防止するときは、シーラ ント層にゴムとかプラスチックなどのカバーシート をシーラント層の内面に接着する。また、容器内面 にダメージを与えるような液体・気体を封入すると きは、Pb に接着させる材料をその流体に強い材料 を選ぶものとする。シーラント層は図2に示される ように2枚のシートの間に粉末状の吸水ポリマーが サンドイッチされており、適当な間隔で格子状に上 下面を縫い合わせてある。しかし、このままでは下 記に示す多くの問題点があるので、以下逐一問題点 を明らかにし、その解決法を示す。3 膨潤液の作成13.1 膨潤液の剣への影響本論では、熱による 蒸発とか凍結を防止することを考え、膨潤液として、 不凍液に水を混入する方法を採用する。したがって、 シーラント層には水で希釈した不凍液がポリマー内 に混入さる. この水分が容器に用いられる鋼を腐食 させる恐れがある.そこで、水で希釈した不凍液が 鋼壁に接触したときの錆の程度を実験により検証す る. 実験では, (a)水, (b)不凍液 30Wt.%, 水 70 wt %, (c)不凍液 50wt.%, 水 50wt.%, (d)不凍液 70wt%,水30wt%の四つのサンプル液を透明のペットボトルに 入れ,サンプル液に直径 5.2mm の軟鉄製の釘を入れ て4ヶ月間放置した後,取り出して検査を行った. なお,用いた不凍液は、エチレングリコール 95wt % | に防錆剤と消泡剤が含まれた市販の不凍液である. まず,釘の腐食を目視で観察したところ,不凍液を 含有しない水に浸した釘は明らかに赤錆を発生して いたが,それ以外のものの変化は目視では確認する ことができなかった.500\500Coolant: OwtoCoolant: TowtooSHIFig.3 Photograph of SEM and EPMAfor the surface of nails.図2は左から不凍液 0wt%と 50wt%の2例を示し たものである.70wt%についても観察したが, 50wt% の結果との差が見られなかったのでここでは省略す る.図から,不凍液 0wt%では明らかに表面が荒れ ているのに対し.50wt%では,0wt%のような荒れは 見受けられない. しかし,この図だけでははっきり しないところもあるので,さらに EPMA 解析を試み た.その結果を,図2の下段に示す.まず,どんな 成分が含まれているかを調べるために定性分析を行 った.腐食によると考えられ,かつ,顕著に現れた ものは,酸素のみであったので、酸素について測定 してみた.図の下段で,白く分布しているものが酸 素である.不凍液が owt%に比べ 50wt%のときに酸 化した部分が極端に小さくなっていることが認めら れる. 50wt%のときでもわずかに酸化している点が 認められが,これと新しい釘との比較を行ったとこ ろ,その差は認められなかった.すなわち,50wt の 図の酸化している点は初期の釘が持っている酸化度240とほぼ同じものである。したがって,不凍液を 50wt% 以上とした膨潤液で鋼壁を酸化させることは無いと いえる。 13.2膨潤を考慮した不凍液の適正割合 吸水 ポリマーを不凍液そのもので膨張させることはでき ないので,膨潤を得るためにはそれに水を混入させ る必要がある.そこで,吸水ポリマーの膨張実験を 行い,釘が錆びない不凍液の濃度を用いてもポリマ ーが膨らむかを調べた.その結果,70wt%の不凍液 まではポリマーの膨潤を確認できた.よって,水 30wt%,不凍液 70wt%の波を膨潤液として用いるこ ととする. この割合のとき,鋼の腐食は無く,凍結 温度は-50°C以下である.4 ポリマー層の作成法- 格子を作る方法として,前報では、2枚のシート に吸水ポリマーをサンドイッチして,格子状に縫い 合わせる方法を提案した[1]. しかし,この方法では、 縫い目部の吸水ポリマーが縫製中に逃げるため、縫 い目が薄くなり,そこに釘が刺さった場合は,空気 漏れが発生する. 上記問題の縫い目厚を確保するに は、図2のようにカバーシートの間に縫い目厚保を 確保するネットを入れて縫製すると良い。しかし、 容器を膨らませる必要のあるときは、ネットは伸び ず、ネットの材料費が別にかかる。この場合、吸水 ポリマー同士が接着し,かつある程度の硬さがあれ ば縫製時に吸水ポリマーは逃げない。吸水ポリマー は若干でも水分を吸収すると,吸水ポリマー自体が 接着力を発現するが,水で接着してシート状にした とき,乾いた状態になると,硬く脆い板状になるの で,水だけでポリマー層を作ることはできない.し かし,吸水ポリマーに少量の不凍液を吹き付けて圧 力を与えると,粘着性が得られ,しなやかになるこ とが分かった.そこで,本研究では,吸水ポリマー に不凍液を吹き付けた後にポリマーに圧力を加えて 板状になったポリマーブロックを作成した. これを 2枚の加硫前のゴムシートに挟み、縫い合わせるこ とで膨潤液注入前のシーラント層を作成することが できた.このときのポリマーブロックはしなやかで はあるが,十分な硬さを持っており,縫い目がつぶ れ無いことを確認した.実際のポリマー層の作成で は、ローラによりシート状のものを作れば良い。15 膨潤液の自動注入法ポリマーに予め膨潤液を混入して膨潤させてから 格子を作るのでは格子内に膨潤圧が得られないので, 本シーラントは、ポリマーの格子を作った後に適量 の不凍液をポリマー層に一様に注入する必要がある. 前報では,注射器で強制的に膨潤液を注入している が[1],この方法で膨潤液を一様注入することは難し く,実用化に難点があった.そこで,膨潤液を満た したタンク内に表面のゴムシートに多数の小さな穴 をあけたシーラント層をドブ漬けし, タンク内を膨 潤液で加圧し,シーラント層内に膨潤波を強制注入 する方法を開発した.本実験では、円筒内を膨潤液 で満たし,その中にシーラント層を入れ、ポンプを 用いて加圧した.図4は本実験によりシーラント層 に注入された膨潤液の割合膨潤液の重量(ポリマー の重量+膨潤液の重量)×100)と加圧時間の関係を 表したものである.図4より,0.6MPa の加圧量で最 高の吸水量を示している. 一般的には,高圧をかけ た方が不凍液はポリマー層内に入り込み易いと考え られるが,結果は必ずしもそうはなっていない。圧 力 1.0MPa では,高圧のために不凍液はシーラント 層の中に入り込もうとするが,吸水ポリマーの膨潤 圧より外圧の方が高いため、吸水ポリマーの膨潤が 妨げられてしまうと考えられる.また,0MPa や 0.3MPa のように,加圧量が少ない場合,注入圧力が 小さいので,試験片の中まで膨潤液が入り込むこと ができなくなる.一方,0.6MPaの場合, 不凍液が試 験片の中に入り込もうとする圧力が,吸水ポリマー の膨潤圧より少しだけ小さく,水を吸収しやすくな っていると考えられる. このようにして膨潤液が注 入されたシーラント層は縫い目を境にした大きな凹 凸があり、このままでは容器内面に接着できない。 そこで、シーラント層を2枚のアルミ板に挟み、ボ ルトで圧縮して所定の厚さにしたところ、一様な厚 さのシーラント層が得られることが分かった.すな わち、実用上は、ローラなどで平らにすれば良い。図5は本実験の空気漏洩試験装置を示したもので 図中1は実験装置本体であり、アルミニウム製の円 筒に穴が掘られており、一端(左端)に試験片を入 れる円形の段が掘られている。その段の中に試験片 2が入れられる。その試験片の上に蓋3が被さりボ ルト4で蓋を本体に締め付けて結合する。蓋の中心241には直径8mm の穴が開けられている。本体の他端 にはホース5が結合されており、ホースの中間に圧 力計6とふたつのコック18が取り付けられている。 この図でコック1と2を開放し、パイプ5の右端よ りコンプレッサで空気を入れ、コック8を閉じると、 本体1内の空気圧が圧力計6に表示される。TTWeight of coolant (wt%]-0.6MPa510 15 Time[h] 1.0MPa- 0.3MPa Fig.4 Absorbed water weight versus timewhen our method is used.Fig.5 Experimental apparatus.この装置を用いた本シーラント層の空気漏洩試験 の結果を図6に示す。図で空気圧が下がっていなけ れば実験装置内容器からの空気漏れがないことを示 し,空気圧が下がる場合は空気漏れがあることを示 す.実験では、5.2mm の釘を用いて穴をあけた後引 き抜いている. 初期圧力を実験装置の最大測定圧力 0.5MPa とし, 5時間放置後の圧力を測定した図中 の数値(例えば 44wt%等)は全体重量(ポリマー+ 膨潤液重量)に対する膨潤液の重量割合を示したも のである。図で膨潤液の量が 44.0wt%では釘を引き 抜いてから漏れ続け,抜けきってしまっている. 53.3wt%では,釘を引き抜いた瞬間多めに抜けてし+ もぎまったが,5 時間放置後には 0.01MPa(2%程)の低下 に留まっている.また, 58.8wt% ~72.5wt%では,5 時間放置後に若干(1%程)圧力の低下がみられるが, これは釘を引き抜いた瞬間に漏れたことに起因する と思われる.その後自己修復し,空気漏れはみられ なかった.これらの結果より,膨潤液量が 53.3wt% 以上であれば、不凍液を多め(72.5wt%)に入れても釘 を抜いた瞬間以外,空気漏れがないことがわかる. 前報の実験では[1], 吸水ポリマーを固定するために 接着剤をポリマーに混入しており、膨潤液は接着剤 の量との関係から定まるため,膨潤液量が多ければ 良い訳ではなく,多く入れすぎると漏れてしまう傾 向があったが,本実験ではそれが見られない. これ は,本実験では、ポリマーに接着剤を混入していな いことから,吸水ポリマーが十分に膨潤できたため と思われる。58.8% .67.4%0.7250.533Pressure [MPa]0.44Time [h] Fig.6 Pressures versus time for various weightsof water diluted coolant fluid.ついで,この製造法を用いたシーラントに対し, 格子間隔を変化させたときの空気漏洩実験を行った. 図7は正方形の格子を縫い目でつくり,縫い目に穴 をあけ,格子間隔を変えたときの圧力変化を示した ものである.図で格子間隔が 25mm で初期圧力が 0.4MPaのときに空気漏れが認められるが,その他で は,ほとんど空気漏れが認められない。なお、ポリ マー層の厚さは 4mm が適当であった。 - 以上より,ポリマー層厚は 4mm(0.36g/cm 3,膨潤 液は 60wt%,格子間隔は 2cm 程度が適当といえる. このときの膨潤液注入圧力(タンク内圧力)は 0.6MPa,膨潤継続時間は約2時間が適当である.6 シーラント層の拡大法242容器を風船のように膨らませて用いる場合は、シ ーラント層も延ばさなければならない.しかし,上 記シーラント層を用いた場合,縫い糸が邪魔してシ ーラント層の延びを抑制する.-Lattice interval 15 mm ------- Lattice interval 20mm ------ Lattice interval 25mmPressure [MPa]02 Pressure 0,25MPa, Lattice interval 15mmPressure 0.25MPa, Lattice interval 20mmPressure 0.25MPa, Lattice interval 25mm O Pressure 0.40MPa, Lattice interval 15 mm A Pressure 0.40MPa, Lattice interval 20mm Pressure 0.40MPa, Lattice interval 25 mm 12:34Time [h] Fig. 7 Pressure versus time when nails break the sealant.(a) Figure before extension(b) Figure after extension Fig.8 Shape of sawing for the sealant.この問題を解決する方法として,格子を構成させ るための縫い方を斜めに,かつジグザグに緩く縫う 方法を考えた.この方法の縫い方を図 9(a)に,それ が延ばされた状態を図 9(b)に示す.実際にシーラン ト層を格子状に縫い,膨潤液を注入した後金型に挟 み込み,その状態で圧延し,そのままオーブンに入 れて加熱した.加熱後,縫製糸図 9 の圧延前のシーラント層の寸法は,50mm×50mm であるが,圧延後 の寸法は 80mm×80mm 程度であり,面積比で約 2.5 倍程度までこの方法でシーラント層を拡大できるこ とを確認した。17 空気漏洩試験.-3.4mm,Pressure 0.25MPa --- --4.2mm,Pressure 0.25MPa ------5.2mm,Pressure 0.25MPaPressure[MPa]3.4mm, Pressure 0.40MPa --- --4.2mm,Pressure 0.40MPa ------- 5.2mm, Pressure 0.40MPaFig.9Time[h] Pressure versus time for the sealant madeby the present method.以上のように作成した試験片について,空気漏洩 試験を行った.穴をあける釘の直径は 3.4mm, 4.2mm, 5.2mm の3種類であり、結果を図 10 に示す. 図から すべての釘径について,穴あけ後1時間までの間に 若干の空気圧の減少がみられるものの,その後は一 定となり,空気漏れが止まっていることがわかる. このときの空気漏洩による圧力低下は 7~10%程度 である.これまでの試験(図 6,図 7)で試験片の圧 延を行わなかったときは,釘を引き抜いた瞬間でも 空気漏れはなかったが,試験片を大きく圧延したと きは,釘を抜いた瞬間に漏れが多くなる.これは吸 水ポリマーが圧延時の圧力により強固に接着された ため,膨潤圧で穴の修復が行われるとき,接着力が 邪魔して穴の修復に時間がかかったものと考えられ る. この図で圧力低下は釘を抜いてから穴が自己修 復するまでの間に起こるものであるので,穴に洗剤 をたらして空気漏れが止まるまでの時間を測定した ところ、漏洩時間は1分にも満たないことが分かっ た.- 8 タイヤのパンクレス化本方法はタイヤへも応用できる。タイヤについて は、シーラント層に液体を用いたものが開発されて いるが[2]13]、貫通穴には、空気漏洩遮断が不完全243となり、またタイヤ側面を強化したランフラットタ イヤでも空気漏洩があり、パンク修理が必要である。 本研究では、穴があいても漏れないタイヤを開発す る。本タイヤの製造では、 バランスをとるため、タ イヤの対向する2カ所に上記方法で作成されたシー ラント層を図 10 のようにタイヤ内面にブチルゴム を用いて貼り付けた。まず,パンクレスの施してい ない通常のタイヤに 0.40MPa の空気を入れ,直径 5.2mm の釘を貫通させ引き抜いた後の圧力を測定し たところ,わずか 540 秒間で空気が無くなり圧力は 零となった.ついで, パンクレスを施したタイヤに, 初期圧力が 0.40Mpa になるまで空気を入れたあと、 直径 5.2mm の釘でタイヤを貫通させ引き抜いた。釘 を抜いた瞬間に「シュッ」という音があり、わずか な空気漏れはあったが、圧力計には現れず、また, その直後に洗剤により空気漏れを確認したが、漏れ は認められなかった.ついで,実際に自動車の1輪だけに,本パンクレ スタイヤを装着し,走行試験を行った.初期圧力を 0.25MPa とし,直径 5.2mmの釘でシーラント層のあ るタイヤ部分に穴を開け引き抜いた後の結果を求め た.その結果 40 日間(900Km の走行)で,0.01MPa 程 度の圧力低下が認められた. このように長い期間に おいて数パーセントの圧力低下が見られるが,この タイヤのパンク穴に洗剤液を垂らして空気漏れを観 察したかぎりでは,まったく空気漏れがみられない ことから,この圧力低下は計測時の空気漏れによる ものと考えられ, パンク穴は修復しているといえる.9結19 結言 * 本研究は,穴があいても漏れない容器の開発を行 ったものである。その内容を列記するとつぎのよう である.(1) 吸水ポリマーの性質を用いたポリマーブロッ クを成型した.このブロックを用いてシーラント層 を作成すると,格子構成のための縫い目における厚 みを十分に確保でき,縫い目に釘が刺さったときの 空気漏れを抑えることができた. (2)鋼製容器を腐食させず、かつ膨潤も得られる 水と不凍液濃度の割合、およびポリマーに対する適 切な膨潤液の割合を見いだした. (3) シーラントのポリマー層への膨潤波の自動注 入法を開発した.(4)使用中に膨らむ容器にも対応できる拡大でき るシーラント層の構成と製作方法を提案した. (5)実際の応用として、タイヤに対して本方法を 適用したところ、穴があいても漏れないタイヤを作 ることができた。Tire surface-SealantlayerRubberFig.10(a) Model of present tire.Tire surfaceSealant layer2018年10月5日(日)Seam for making latticesFig. 10(b) Cross section of the present tire.文献[1] 長屋幸助、超宇、和田誠、金田祐次、安藤嘉則、 村上岩範、穴があいても漏れない自己修復機能を有 する遮水シートの開発、機械学会論文集、 69-678(2003), pp.545-553. [2]山際登志夫,中山研吾,清田悟,田中明子,槇坂 昇,二輪車のパンク性向上チューブの開発,自動車 技術会講演会前刷集,No.976 (1997), pp.279-282. [3] ホンダの2輪技術 新しい防止液の効果,タフ アップチューブでパンク率が激減,自動車と整備, Vol.51, No.1 (1997),pp.40-41. 244“ “穴およびクラックがあいても漏れない容器の開発“ “長屋 幸助,Kosuke NAGAYA,村上 岩範,Iwanori MURAKAMI
張する。このとき、吸水ポリマーは格子内に閉じこめられているので、格子内部に膨潤圧が発生する。 内部に液体あるいは気体の封入される構造体(容、また容器内水圧でポリマーが圧縮される。 器)に突起物が刺さり、破れた場合、あるいは材料 劣化により割れなどが発生すると、封入気体・液体 が漏れ出す。この問題は原子力機器をはじめ化学プ ラントにおける危険流体の保存容器などで重要な問Nail 題である。このような容器に対し、穴があいても自Repairing 己修復して漏れない容器があれば、安全性が極めて 高くなると思われるが、著者らの調べた限り、自己 修復型の容器は開発されていないように思われる。 自己修復構造に対して、著者らは2枚のシート間に 格子を作りそのなかに吸水ポリマーを充填することPolymer gel で、穴が空いても自己修復して水を漏らさない遮水 シートを開発した[1]。しかし、これは容器に対して は直ちに適用できず、また容器内の流体が水以外の 場合に利用できないという欠点があった。本研究でAfter repairing は、新たに容器からの流体漏洩を防止するための方 法を示し、その問題点を明らかにするとともに解決 法を提案し、穴があいても漏れない自己修復型の流 体封入容器を開発する。
2. 本容器の構造と自己修復の原理Fig.1 Principle of self repairingいま図1のように 2枚のシートに格子を作り、そ の中に水を吸うと膨張する吸水ポリマーをサンドイ ニッチしたシーラント層を考える。この中に水を注入 すると、内部の吸水ポリマーが半固体のゲル状に膨この状態で、釘を貫通すると、釘の太さ分だけゲ ル化した吸水ポリマーが押しのけられるが、釘を抜 いた瞬間に膨潤圧と容器内流体圧々がゲル化した吸 水ポリマーに作用して瞬時に穴を塞ぐ。このとき、 膨潤圧と水圧の和が水圧より大きければ水は漏れな連絡先:長屋幸助、〒376-1585 群馬県桐生市天神町 1-51、群馬大学工学部機械システム工学科、電話: 0277-30-1563、e-mail:nagaya@me.gunma-u.ac.jp「J239いことになる[1]。このような方法で水の漏洩を止め ることはできるが、吸水ポリマーを膨張させない油 とか気体の場合にはこの方法では効果が無い。そこ で、予めシーラント層に水を入れて吸水ポリマーを 膨潤させておくと、上記と同様の膨潤圧が常時シー ラント層に作用しているので、水のみならず他の流 体の漏洩も止めることができると考えられる。本研 究は基本的にこの原理を用いて、流体(気体・液体) の穴からの漏洩を止めるものである。5000:00-16Ka1b Outer wall of the vessel, 2 Polymer, 4a, 4b Sheets, 5 Net 3 Inner wall, Ka Sewing portionFig.2 Geometry of the self repairing vessel本研究で開発する容器の構造は図2に示すような もので、容器内壁面にシーラント層(Pb)が接着さ れる。空気とか水の漏洩を防止するときは、シーラ ント層にゴムとかプラスチックなどのカバーシート をシーラント層の内面に接着する。また、容器内面 にダメージを与えるような液体・気体を封入すると きは、Pb に接着させる材料をその流体に強い材料 を選ぶものとする。シーラント層は図2に示される ように2枚のシートの間に粉末状の吸水ポリマーが サンドイッチされており、適当な間隔で格子状に上 下面を縫い合わせてある。しかし、このままでは下 記に示す多くの問題点があるので、以下逐一問題点 を明らかにし、その解決法を示す。3 膨潤液の作成13.1 膨潤液の剣への影響本論では、熱による 蒸発とか凍結を防止することを考え、膨潤液として、 不凍液に水を混入する方法を採用する。したがって、 シーラント層には水で希釈した不凍液がポリマー内 に混入さる. この水分が容器に用いられる鋼を腐食 させる恐れがある.そこで、水で希釈した不凍液が 鋼壁に接触したときの錆の程度を実験により検証す る. 実験では, (a)水, (b)不凍液 30Wt.%, 水 70 wt %, (c)不凍液 50wt.%, 水 50wt.%, (d)不凍液 70wt%,水30wt%の四つのサンプル液を透明のペットボトルに 入れ,サンプル液に直径 5.2mm の軟鉄製の釘を入れ て4ヶ月間放置した後,取り出して検査を行った. なお,用いた不凍液は、エチレングリコール 95wt % | に防錆剤と消泡剤が含まれた市販の不凍液である. まず,釘の腐食を目視で観察したところ,不凍液を 含有しない水に浸した釘は明らかに赤錆を発生して いたが,それ以外のものの変化は目視では確認する ことができなかった.500\500Coolant: OwtoCoolant: TowtooSHIFig.3 Photograph of SEM and EPMAfor the surface of nails.図2は左から不凍液 0wt%と 50wt%の2例を示し たものである.70wt%についても観察したが, 50wt% の結果との差が見られなかったのでここでは省略す る.図から,不凍液 0wt%では明らかに表面が荒れ ているのに対し.50wt%では,0wt%のような荒れは 見受けられない. しかし,この図だけでははっきり しないところもあるので,さらに EPMA 解析を試み た.その結果を,図2の下段に示す.まず,どんな 成分が含まれているかを調べるために定性分析を行 った.腐食によると考えられ,かつ,顕著に現れた ものは,酸素のみであったので、酸素について測定 してみた.図の下段で,白く分布しているものが酸 素である.不凍液が owt%に比べ 50wt%のときに酸 化した部分が極端に小さくなっていることが認めら れる. 50wt%のときでもわずかに酸化している点が 認められが,これと新しい釘との比較を行ったとこ ろ,その差は認められなかった.すなわち,50wt の 図の酸化している点は初期の釘が持っている酸化度240とほぼ同じものである。したがって,不凍液を 50wt% 以上とした膨潤液で鋼壁を酸化させることは無いと いえる。 13.2膨潤を考慮した不凍液の適正割合 吸水 ポリマーを不凍液そのもので膨張させることはでき ないので,膨潤を得るためにはそれに水を混入させ る必要がある.そこで,吸水ポリマーの膨張実験を 行い,釘が錆びない不凍液の濃度を用いてもポリマ ーが膨らむかを調べた.その結果,70wt%の不凍液 まではポリマーの膨潤を確認できた.よって,水 30wt%,不凍液 70wt%の波を膨潤液として用いるこ ととする. この割合のとき,鋼の腐食は無く,凍結 温度は-50°C以下である.4 ポリマー層の作成法- 格子を作る方法として,前報では、2枚のシート に吸水ポリマーをサンドイッチして,格子状に縫い 合わせる方法を提案した[1]. しかし,この方法では、 縫い目部の吸水ポリマーが縫製中に逃げるため、縫 い目が薄くなり,そこに釘が刺さった場合は,空気 漏れが発生する. 上記問題の縫い目厚を確保するに は、図2のようにカバーシートの間に縫い目厚保を 確保するネットを入れて縫製すると良い。しかし、 容器を膨らませる必要のあるときは、ネットは伸び ず、ネットの材料費が別にかかる。この場合、吸水 ポリマー同士が接着し,かつある程度の硬さがあれ ば縫製時に吸水ポリマーは逃げない。吸水ポリマー は若干でも水分を吸収すると,吸水ポリマー自体が 接着力を発現するが,水で接着してシート状にした とき,乾いた状態になると,硬く脆い板状になるの で,水だけでポリマー層を作ることはできない.し かし,吸水ポリマーに少量の不凍液を吹き付けて圧 力を与えると,粘着性が得られ,しなやかになるこ とが分かった.そこで,本研究では,吸水ポリマー に不凍液を吹き付けた後にポリマーに圧力を加えて 板状になったポリマーブロックを作成した. これを 2枚の加硫前のゴムシートに挟み、縫い合わせるこ とで膨潤液注入前のシーラント層を作成することが できた.このときのポリマーブロックはしなやかで はあるが,十分な硬さを持っており,縫い目がつぶ れ無いことを確認した.実際のポリマー層の作成で は、ローラによりシート状のものを作れば良い。15 膨潤液の自動注入法ポリマーに予め膨潤液を混入して膨潤させてから 格子を作るのでは格子内に膨潤圧が得られないので, 本シーラントは、ポリマーの格子を作った後に適量 の不凍液をポリマー層に一様に注入する必要がある. 前報では,注射器で強制的に膨潤液を注入している が[1],この方法で膨潤液を一様注入することは難し く,実用化に難点があった.そこで,膨潤液を満た したタンク内に表面のゴムシートに多数の小さな穴 をあけたシーラント層をドブ漬けし, タンク内を膨 潤液で加圧し,シーラント層内に膨潤波を強制注入 する方法を開発した.本実験では、円筒内を膨潤液 で満たし,その中にシーラント層を入れ、ポンプを 用いて加圧した.図4は本実験によりシーラント層 に注入された膨潤液の割合膨潤液の重量(ポリマー の重量+膨潤液の重量)×100)と加圧時間の関係を 表したものである.図4より,0.6MPa の加圧量で最 高の吸水量を示している. 一般的には,高圧をかけ た方が不凍液はポリマー層内に入り込み易いと考え られるが,結果は必ずしもそうはなっていない。圧 力 1.0MPa では,高圧のために不凍液はシーラント 層の中に入り込もうとするが,吸水ポリマーの膨潤 圧より外圧の方が高いため、吸水ポリマーの膨潤が 妨げられてしまうと考えられる.また,0MPa や 0.3MPa のように,加圧量が少ない場合,注入圧力が 小さいので,試験片の中まで膨潤液が入り込むこと ができなくなる.一方,0.6MPaの場合, 不凍液が試 験片の中に入り込もうとする圧力が,吸水ポリマー の膨潤圧より少しだけ小さく,水を吸収しやすくな っていると考えられる. このようにして膨潤液が注 入されたシーラント層は縫い目を境にした大きな凹 凸があり、このままでは容器内面に接着できない。 そこで、シーラント層を2枚のアルミ板に挟み、ボ ルトで圧縮して所定の厚さにしたところ、一様な厚 さのシーラント層が得られることが分かった.すな わち、実用上は、ローラなどで平らにすれば良い。図5は本実験の空気漏洩試験装置を示したもので 図中1は実験装置本体であり、アルミニウム製の円 筒に穴が掘られており、一端(左端)に試験片を入 れる円形の段が掘られている。その段の中に試験片 2が入れられる。その試験片の上に蓋3が被さりボ ルト4で蓋を本体に締め付けて結合する。蓋の中心241には直径8mm の穴が開けられている。本体の他端 にはホース5が結合されており、ホースの中間に圧 力計6とふたつのコック18が取り付けられている。 この図でコック1と2を開放し、パイプ5の右端よ りコンプレッサで空気を入れ、コック8を閉じると、 本体1内の空気圧が圧力計6に表示される。TTWeight of coolant (wt%]-0.6MPa510 15 Time[h] 1.0MPa- 0.3MPa Fig.4 Absorbed water weight versus timewhen our method is used.Fig.5 Experimental apparatus.この装置を用いた本シーラント層の空気漏洩試験 の結果を図6に示す。図で空気圧が下がっていなけ れば実験装置内容器からの空気漏れがないことを示 し,空気圧が下がる場合は空気漏れがあることを示 す.実験では、5.2mm の釘を用いて穴をあけた後引 き抜いている. 初期圧力を実験装置の最大測定圧力 0.5MPa とし, 5時間放置後の圧力を測定した図中 の数値(例えば 44wt%等)は全体重量(ポリマー+ 膨潤液重量)に対する膨潤液の重量割合を示したも のである。図で膨潤液の量が 44.0wt%では釘を引き 抜いてから漏れ続け,抜けきってしまっている. 53.3wt%では,釘を引き抜いた瞬間多めに抜けてし+ もぎまったが,5 時間放置後には 0.01MPa(2%程)の低下 に留まっている.また, 58.8wt% ~72.5wt%では,5 時間放置後に若干(1%程)圧力の低下がみられるが, これは釘を引き抜いた瞬間に漏れたことに起因する と思われる.その後自己修復し,空気漏れはみられ なかった.これらの結果より,膨潤液量が 53.3wt% 以上であれば、不凍液を多め(72.5wt%)に入れても釘 を抜いた瞬間以外,空気漏れがないことがわかる. 前報の実験では[1], 吸水ポリマーを固定するために 接着剤をポリマーに混入しており、膨潤液は接着剤 の量との関係から定まるため,膨潤液量が多ければ 良い訳ではなく,多く入れすぎると漏れてしまう傾 向があったが,本実験ではそれが見られない. これ は,本実験では、ポリマーに接着剤を混入していな いことから,吸水ポリマーが十分に膨潤できたため と思われる。58.8% .67.4%0.7250.533Pressure [MPa]0.44Time [h] Fig.6 Pressures versus time for various weightsof water diluted coolant fluid.ついで,この製造法を用いたシーラントに対し, 格子間隔を変化させたときの空気漏洩実験を行った. 図7は正方形の格子を縫い目でつくり,縫い目に穴 をあけ,格子間隔を変えたときの圧力変化を示した ものである.図で格子間隔が 25mm で初期圧力が 0.4MPaのときに空気漏れが認められるが,その他で は,ほとんど空気漏れが認められない。なお、ポリ マー層の厚さは 4mm が適当であった。 - 以上より,ポリマー層厚は 4mm(0.36g/cm 3,膨潤 液は 60wt%,格子間隔は 2cm 程度が適当といえる. このときの膨潤液注入圧力(タンク内圧力)は 0.6MPa,膨潤継続時間は約2時間が適当である.6 シーラント層の拡大法242容器を風船のように膨らませて用いる場合は、シ ーラント層も延ばさなければならない.しかし,上 記シーラント層を用いた場合,縫い糸が邪魔してシ ーラント層の延びを抑制する.-Lattice interval 15 mm ------- Lattice interval 20mm ------ Lattice interval 25mmPressure [MPa]02 Pressure 0,25MPa, Lattice interval 15mmPressure 0.25MPa, Lattice interval 20mmPressure 0.25MPa, Lattice interval 25mm O Pressure 0.40MPa, Lattice interval 15 mm A Pressure 0.40MPa, Lattice interval 20mm Pressure 0.40MPa, Lattice interval 25 mm 12:34Time [h] Fig. 7 Pressure versus time when nails break the sealant.(a) Figure before extension(b) Figure after extension Fig.8 Shape of sawing for the sealant.この問題を解決する方法として,格子を構成させ るための縫い方を斜めに,かつジグザグに緩く縫う 方法を考えた.この方法の縫い方を図 9(a)に,それ が延ばされた状態を図 9(b)に示す.実際にシーラン ト層を格子状に縫い,膨潤液を注入した後金型に挟 み込み,その状態で圧延し,そのままオーブンに入 れて加熱した.加熱後,縫製糸図 9 の圧延前のシーラント層の寸法は,50mm×50mm であるが,圧延後 の寸法は 80mm×80mm 程度であり,面積比で約 2.5 倍程度までこの方法でシーラント層を拡大できるこ とを確認した。17 空気漏洩試験.-3.4mm,Pressure 0.25MPa --- --4.2mm,Pressure 0.25MPa ------5.2mm,Pressure 0.25MPaPressure[MPa]3.4mm, Pressure 0.40MPa --- --4.2mm,Pressure 0.40MPa ------- 5.2mm, Pressure 0.40MPaFig.9Time[h] Pressure versus time for the sealant madeby the present method.以上のように作成した試験片について,空気漏洩 試験を行った.穴をあける釘の直径は 3.4mm, 4.2mm, 5.2mm の3種類であり、結果を図 10 に示す. 図から すべての釘径について,穴あけ後1時間までの間に 若干の空気圧の減少がみられるものの,その後は一 定となり,空気漏れが止まっていることがわかる. このときの空気漏洩による圧力低下は 7~10%程度 である.これまでの試験(図 6,図 7)で試験片の圧 延を行わなかったときは,釘を引き抜いた瞬間でも 空気漏れはなかったが,試験片を大きく圧延したと きは,釘を抜いた瞬間に漏れが多くなる.これは吸 水ポリマーが圧延時の圧力により強固に接着された ため,膨潤圧で穴の修復が行われるとき,接着力が 邪魔して穴の修復に時間がかかったものと考えられ る. この図で圧力低下は釘を抜いてから穴が自己修 復するまでの間に起こるものであるので,穴に洗剤 をたらして空気漏れが止まるまでの時間を測定した ところ、漏洩時間は1分にも満たないことが分かっ た.- 8 タイヤのパンクレス化本方法はタイヤへも応用できる。タイヤについて は、シーラント層に液体を用いたものが開発されて いるが[2]13]、貫通穴には、空気漏洩遮断が不完全243となり、またタイヤ側面を強化したランフラットタ イヤでも空気漏洩があり、パンク修理が必要である。 本研究では、穴があいても漏れないタイヤを開発す る。本タイヤの製造では、 バランスをとるため、タ イヤの対向する2カ所に上記方法で作成されたシー ラント層を図 10 のようにタイヤ内面にブチルゴム を用いて貼り付けた。まず,パンクレスの施してい ない通常のタイヤに 0.40MPa の空気を入れ,直径 5.2mm の釘を貫通させ引き抜いた後の圧力を測定し たところ,わずか 540 秒間で空気が無くなり圧力は 零となった.ついで, パンクレスを施したタイヤに, 初期圧力が 0.40Mpa になるまで空気を入れたあと、 直径 5.2mm の釘でタイヤを貫通させ引き抜いた。釘 を抜いた瞬間に「シュッ」という音があり、わずか な空気漏れはあったが、圧力計には現れず、また, その直後に洗剤により空気漏れを確認したが、漏れ は認められなかった.ついで,実際に自動車の1輪だけに,本パンクレ スタイヤを装着し,走行試験を行った.初期圧力を 0.25MPa とし,直径 5.2mmの釘でシーラント層のあ るタイヤ部分に穴を開け引き抜いた後の結果を求め た.その結果 40 日間(900Km の走行)で,0.01MPa 程 度の圧力低下が認められた. このように長い期間に おいて数パーセントの圧力低下が見られるが,この タイヤのパンク穴に洗剤液を垂らして空気漏れを観 察したかぎりでは,まったく空気漏れがみられない ことから,この圧力低下は計測時の空気漏れによる ものと考えられ, パンク穴は修復しているといえる.9結19 結言 * 本研究は,穴があいても漏れない容器の開発を行 ったものである。その内容を列記するとつぎのよう である.(1) 吸水ポリマーの性質を用いたポリマーブロッ クを成型した.このブロックを用いてシーラント層 を作成すると,格子構成のための縫い目における厚 みを十分に確保でき,縫い目に釘が刺さったときの 空気漏れを抑えることができた. (2)鋼製容器を腐食させず、かつ膨潤も得られる 水と不凍液濃度の割合、およびポリマーに対する適 切な膨潤液の割合を見いだした. (3) シーラントのポリマー層への膨潤波の自動注 入法を開発した.(4)使用中に膨らむ容器にも対応できる拡大でき るシーラント層の構成と製作方法を提案した. (5)実際の応用として、タイヤに対して本方法を 適用したところ、穴があいても漏れないタイヤを作 ることができた。Tire surface-SealantlayerRubberFig.10(a) Model of present tire.Tire surfaceSealant layer2018年10月5日(日)Seam for making latticesFig. 10(b) Cross section of the present tire.文献[1] 長屋幸助、超宇、和田誠、金田祐次、安藤嘉則、 村上岩範、穴があいても漏れない自己修復機能を有 する遮水シートの開発、機械学会論文集、 69-678(2003), pp.545-553. [2]山際登志夫,中山研吾,清田悟,田中明子,槇坂 昇,二輪車のパンク性向上チューブの開発,自動車 技術会講演会前刷集,No.976 (1997), pp.279-282. [3] ホンダの2輪技術 新しい防止液の効果,タフ アップチューブでパンク率が激減,自動車と整備, Vol.51, No.1 (1997),pp.40-41. 244“ “穴およびクラックがあいても漏れない容器の開発“ “長屋 幸助,Kosuke NAGAYA,村上 岩範,Iwanori MURAKAMI