美浜3号機二次系配管破損事故と今後の対応
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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
美浜3号機において、2004年8月 9 日(定格熱 出力で運転中)、2 次系配管の破損事故が発生した。 この事故により、8月14日から始まる定期検査の準 備作業に従事していた作業員 11 人が火傷を負い、う ち、5人の方が死亡した。被災者の方々、ご家族の方々に心から、陳謝する とともに、このような事故が再び発生させないため の再発防止対策をとるように努めたいと考えている。
2. 事象および調査
破損場所は、第4低圧給水加熱器と脱気器の間の A系統復水ラインであり、復水流量を測定するため のオリフィスの下流部にあたる。(Fig.1)破損配管は、直径 558.8mm(ノミナル値)、配管 肉厚 10mm(ノミナル値)の炭素鋼製である。破損 時、肉厚は、最小ポイントにおいて、0.4mm まで減 肉していた。 ・ 当社は以下のとおり、破損部について調査を実施 し、配管破損メカニズムを特定した。連絡先:伊藤肇 〒530-8270 大阪府大阪市北区中 之島3丁目 6番 16 号、関西電力株式会社 原子力 事業本部機械技術グループ、電話:06-7501-0157、 e-mail:ito. hajime@c2. kepco.co.jpA一水配管破損箇所おなね水配管、※水増の仕様後:約580さ:1000 後ろ肉:41:27:00 温度:約10°C 変:1,200かーうFig.1 破損箇所(1)配管調査 a.外観観察A系配管(破損配管)は頂上部近傍で軸方向およ び周方向に大きく破口し、破口幅は、軸方向に約 515mm、周方向に約930mmであった。(Fig.2)下流側に向かって、右方向に進展した周方向き裂 は、上流側、下流側ともに溶接部直近で停止し、左 方向に進展した周方向き裂は、管底部近傍で停止し ていた。251A復水配管破口部の状況(写真)方向盤内は光沢のある状の模様減肉が発線管が薄くなったため、内定によ り口無料の家が作の流れにより加される現象Fig.2 破口部の状況b. 肉厚測定A系配管およびB系配管について、超音波肉厚測定 器等による肉厚測定を実施した結果、いずれもオリ フィス下流側においては、ほぼ全周にわたり減肉傾 向が認められた。一方、オリフィス上流側において は、有意な減肉傾向は認められなかった。* c. 配管内面観察A系配管のオリフィス下流部について、破口部か らデジタルマイクロスコープで内面を観察した結果、 残留水によって表面が腐食し表面状態が変化したと 推定される180°位置(配管底部)を除くすべての 内面に、約1mm幅の鱗片状模様が一様に認められた。 オリフィス近傍では、鱗片状模様は約3~5mm幅と やや大きいものであった。以上の調査結果を踏まえると、オリフィス下流部 に鱗片状模様を伴った減肉が認められたことから、 当該部位はオリフィス下流部でエロージョン/コロ ージョンが発生したことにより減肉が進行し、肉厚 が薄くなった部位を中心にき裂が発生した結果、破 損したものと推定される。(2) 可視化試験と実機減肉との比較(エロージョン/コロージョン評価)当該部位はオリフィス下流部の流れの乱れにより エロージョン/コロージョンが発生していたと考えられることから、A系配管とB系配管のオリフィス 下流部の流れの乱れの状況を確認するために試験を 実施した。a. 可視化試験A系配管、B系配管の上流のヘッダ部を含め1/2.6 モデルの試験装置を製作し、ヘッダ部およびオリフ ィスの上下流部を可視化するとともに、オリフィス 上流部の流速分布およびオリフィス下流部の圧力変 動を計測した。その結果、A系配管、B系配管とも に旋回流が発生し流れに乱れが発生していることが 確認された。また、A系配管はB系配管に比べて強い旋回流が 発生し、オリフィス下流部で比較的大きな非定常な 流れの乱れが発生しているという特徴を確認した。 (Fig.3)楽統B系統>>3638000000ccイト 不安定(大きな乱れ発生)Fig.3 可視化試験による旋回流の状況なお、これら旋回流はヘッダ部からの配管分岐部 で発生していることを確認した。b. 可視化試験と実機減肉との比較 - 可視化試験で計測したオリフィス下流部の圧力変 動分布傾向と実機で計測した減肉分布傾向について、 軸方向と周方向で比較した結果、軸方向では実機の 最大減肉位置と可視化試験の最大圧力変動位置が対 応しており、また、周方向では実機の減肉量の傾向(A系配管がB系配管より大きい)が可視化試験の 圧力分布の傾向(A系配管がB系配管より大きい) に対応しており、両者は比較的良く一致していた。 (Fig.4)252OA系統08系統)方良電気は大量の 裏裏PROFEMAKIMO....wwwww.eeeeeeeeeeee!MIC11関0電方向禽方25.149くいしんかい絡線Fig.4 可視化試験と実機減肉の比較(3) 検討結果以上の検討から、配管破損メカニズムは、オリフ ィス下流部で流れの乱れによってエロージョン/コ ロージョンによる減肉が発生し、このエロージョン /コロージョンによる減肉が、当該部位で進行した ことによって、肉厚が薄くなり内圧によって破損し たものと考えられる。3.今後の行動計画関西電力では、1975年頃から、2次系配管のうち、 とりわけ炭素鋼製の配管について、肉厚管理を行っ てきた。1990 年には、こうした検査結果や海外の事 例を分析して、PWRプラントの2次系配管管理指 針を作成した。破損部の配管は、この指針における肉厚管理対象 箇所に当たっていたが、検査リストから、抜け落ち ていた。今回の事故の直接的な原因は、当社、三菱重工業、 日本アームの3者が関与する 2次系配管の減肉管理 ミスによって、要管理箇所が当初に管理リストから 欠落し、かつ、事故に至るまで修正できなかったこ とである。事故直後、当社は速やかに、減肉指針に沿って未 点検個所があるかどうかをチェックするとともに、全ての発 電所をいくつかのグループに分け、順番に停止させ、類 似の配管の減肉調査を実施した。また、主な改善事項 として2次系配管肉厚管理の厳正化に努めるとともに、エロージョン/コロージョン管理プログラムの改善 を実施した。また、運転中プラントへの立ち入り制 、協力会社との情報共有を図った。 今後は、以下に示す基本行動方針のもと、全社を 挙げて安全文化を築き上げ、事故の再発防止対策を 確実に実施していく所存である。<基本行動方針> D安全を最優先します 2安全のために積極的に資源を投入します 3安全のために保守管理を継続的に改善し、メーカ、協力会社との協業体制を構築します。 の地元の皆様からの信頼の回復に努めます 5安全への取組みを客観的に評価し、広くお知らせ します。最後に、改めて、被災者の方々、ご家族の方々に こから、陳謝するとともに、このような事故が再び 発生しないように、再発防止対策をとるように努め きいと考えている。参考文献美浜3号機二次系配管破損事故について(H17.3 関 西電力株式会社):53“ “美浜3号機二次系配管破損事故と今後の対応“ “伊藤 肇,Hajime ITO
美浜3号機において、2004年8月 9 日(定格熱 出力で運転中)、2 次系配管の破損事故が発生した。 この事故により、8月14日から始まる定期検査の準 備作業に従事していた作業員 11 人が火傷を負い、う ち、5人の方が死亡した。被災者の方々、ご家族の方々に心から、陳謝する とともに、このような事故が再び発生させないため の再発防止対策をとるように努めたいと考えている。
2. 事象および調査
破損場所は、第4低圧給水加熱器と脱気器の間の A系統復水ラインであり、復水流量を測定するため のオリフィスの下流部にあたる。(Fig.1)破損配管は、直径 558.8mm(ノミナル値)、配管 肉厚 10mm(ノミナル値)の炭素鋼製である。破損 時、肉厚は、最小ポイントにおいて、0.4mm まで減 肉していた。 ・ 当社は以下のとおり、破損部について調査を実施 し、配管破損メカニズムを特定した。連絡先:伊藤肇 〒530-8270 大阪府大阪市北区中 之島3丁目 6番 16 号、関西電力株式会社 原子力 事業本部機械技術グループ、電話:06-7501-0157、 e-mail:ito. hajime@c2. kepco.co.jpA一水配管破損箇所おなね水配管、※水増の仕様後:約580さ:1000 後ろ肉:41:27:00 温度:約10°C 変:1,200かーうFig.1 破損箇所(1)配管調査 a.外観観察A系配管(破損配管)は頂上部近傍で軸方向およ び周方向に大きく破口し、破口幅は、軸方向に約 515mm、周方向に約930mmであった。(Fig.2)下流側に向かって、右方向に進展した周方向き裂 は、上流側、下流側ともに溶接部直近で停止し、左 方向に進展した周方向き裂は、管底部近傍で停止し ていた。251A復水配管破口部の状況(写真)方向盤内は光沢のある状の模様減肉が発線管が薄くなったため、内定によ り口無料の家が作の流れにより加される現象Fig.2 破口部の状況b. 肉厚測定A系配管およびB系配管について、超音波肉厚測定 器等による肉厚測定を実施した結果、いずれもオリ フィス下流側においては、ほぼ全周にわたり減肉傾 向が認められた。一方、オリフィス上流側において は、有意な減肉傾向は認められなかった。* c. 配管内面観察A系配管のオリフィス下流部について、破口部か らデジタルマイクロスコープで内面を観察した結果、 残留水によって表面が腐食し表面状態が変化したと 推定される180°位置(配管底部)を除くすべての 内面に、約1mm幅の鱗片状模様が一様に認められた。 オリフィス近傍では、鱗片状模様は約3~5mm幅と やや大きいものであった。以上の調査結果を踏まえると、オリフィス下流部 に鱗片状模様を伴った減肉が認められたことから、 当該部位はオリフィス下流部でエロージョン/コロ ージョンが発生したことにより減肉が進行し、肉厚 が薄くなった部位を中心にき裂が発生した結果、破 損したものと推定される。(2) 可視化試験と実機減肉との比較(エロージョン/コロージョン評価)当該部位はオリフィス下流部の流れの乱れにより エロージョン/コロージョンが発生していたと考えられることから、A系配管とB系配管のオリフィス 下流部の流れの乱れの状況を確認するために試験を 実施した。a. 可視化試験A系配管、B系配管の上流のヘッダ部を含め1/2.6 モデルの試験装置を製作し、ヘッダ部およびオリフ ィスの上下流部を可視化するとともに、オリフィス 上流部の流速分布およびオリフィス下流部の圧力変 動を計測した。その結果、A系配管、B系配管とも に旋回流が発生し流れに乱れが発生していることが 確認された。また、A系配管はB系配管に比べて強い旋回流が 発生し、オリフィス下流部で比較的大きな非定常な 流れの乱れが発生しているという特徴を確認した。 (Fig.3)楽統B系統>>3638000000ccイト 不安定(大きな乱れ発生)Fig.3 可視化試験による旋回流の状況なお、これら旋回流はヘッダ部からの配管分岐部 で発生していることを確認した。b. 可視化試験と実機減肉との比較 - 可視化試験で計測したオリフィス下流部の圧力変 動分布傾向と実機で計測した減肉分布傾向について、 軸方向と周方向で比較した結果、軸方向では実機の 最大減肉位置と可視化試験の最大圧力変動位置が対 応しており、また、周方向では実機の減肉量の傾向(A系配管がB系配管より大きい)が可視化試験の 圧力分布の傾向(A系配管がB系配管より大きい) に対応しており、両者は比較的良く一致していた。 (Fig.4)252OA系統08系統)方良電気は大量の 裏裏PROFEMAKIMO....wwwww.eeeeeeeeeeee!MIC11関0電方向禽方25.149くいしんかい絡線Fig.4 可視化試験と実機減肉の比較(3) 検討結果以上の検討から、配管破損メカニズムは、オリフ ィス下流部で流れの乱れによってエロージョン/コ ロージョンによる減肉が発生し、このエロージョン /コロージョンによる減肉が、当該部位で進行した ことによって、肉厚が薄くなり内圧によって破損し たものと考えられる。3.今後の行動計画関西電力では、1975年頃から、2次系配管のうち、 とりわけ炭素鋼製の配管について、肉厚管理を行っ てきた。1990 年には、こうした検査結果や海外の事 例を分析して、PWRプラントの2次系配管管理指 針を作成した。破損部の配管は、この指針における肉厚管理対象 箇所に当たっていたが、検査リストから、抜け落ち ていた。今回の事故の直接的な原因は、当社、三菱重工業、 日本アームの3者が関与する 2次系配管の減肉管理 ミスによって、要管理箇所が当初に管理リストから 欠落し、かつ、事故に至るまで修正できなかったこ とである。事故直後、当社は速やかに、減肉指針に沿って未 点検個所があるかどうかをチェックするとともに、全ての発 電所をいくつかのグループに分け、順番に停止させ、類 似の配管の減肉調査を実施した。また、主な改善事項 として2次系配管肉厚管理の厳正化に努めるとともに、エロージョン/コロージョン管理プログラムの改善 を実施した。また、運転中プラントへの立ち入り制 、協力会社との情報共有を図った。 今後は、以下に示す基本行動方針のもと、全社を 挙げて安全文化を築き上げ、事故の再発防止対策を 確実に実施していく所存である。<基本行動方針> D安全を最優先します 2安全のために積極的に資源を投入します 3安全のために保守管理を継続的に改善し、メーカ、協力会社との協業体制を構築します。 の地元の皆様からの信頼の回復に努めます 5安全への取組みを客観的に評価し、広くお知らせ します。最後に、改めて、被災者の方々、ご家族の方々に こから、陳謝するとともに、このような事故が再び 発生しないように、再発防止対策をとるように努め きいと考えている。参考文献美浜3号機二次系配管破損事故について(H17.3 関 西電力株式会社):53“ “美浜3号機二次系配管破損事故と今後の対応“ “伊藤 肇,Hajime ITO