放射性廃棄物処理設備向け水中遠隔点検補修装置の開発
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カテゴリ: 第2回
1. はじめに
1 原子力発電所の機器類には高い信頼性が求められるため、 定期的な点検・補修が不可欠となっている。その一方で、こ れらの作業には、作業員や検査員の被ばくが伴うため、被ば くを低減する努力が、これまで絶えることなく続けられてき た。 被ばく低減対策の有力な手法の一つに、遠隔手法によ る点検補修技術がある。本稿では、弊社が、放射性廃棄物処 理設備の廃液貯蔵タンク用に開発した「水中遠隔点検補修装 置について紹介する。
2. 遠隔点検補修装置の特長 - 開発した水中遠隔システムは、点検と補修溶接を担当する 2台の水中作業ロボットと、これらの制御装置、付帯機器か ら構成される。水中ロボット及びシステムの外観を Fig.1 、 Fig.2に示す。これらのロボットは、水中において機器内壁 面に吸着し、その壁面上を無軌道で移動することができる。 その原理について補修溶接ロボットを例に Fig.3に示す。ス カート内の水を2つのスラスタを用いて排出することによ り、一種の吸盤効果を得て壁面に吸着する。吸着後は、駆動 輪からの推進力により、最大50mm/sec の速度で走行が可能 であり、搭載している重力センサと走行距離計、高精度なフ ィードバック制御の実施により、精度の高い位置決め性能を(a)、 Inspection RobotYAG-laser repair-welding RobotFig.1 Underwater Robots-259有している。両ロボットは、約 100m(ケーブル長)の遠隔 運用が可能で、適用水深は通常約 15m である。主要仕様に ついて、Table. 1 に示す。Fig.2 Robot and Control System (for Inspection)Tank WallWelding UnitCaster WheelThrusters640DriveWheelsNegative PressureSkirt DrivingUnitF1304\Unit°/520520|hat(unit:im)Fig.3 Illustration of YAG-laser repairwelding robot3.点検及び補修溶接ロボット - 点検ロボットには、通常、Fig.4に示すVT検査用近接C CDカメラ、欠陥除去用小型グラインダ、走行用監視カメラ を搭載しているが、必要に応じて超音波厚み計測装置、渦電 流測定装置等への交換が可能な設計となっている。また、こ れら装備の制御信号系とロボットの動力供給系は、1本の複 合ケーブルに集約されており、点検ロボットの水中における 機動性をなんら妨げることはなく、点検用デバイスとして良 好な運用性を実現している。一方の補修溶接ロボットには Fig.5に示すような超小型 L型溶接トーチを組み入れた水中YAGレーザ溶接ユニッ トを搭載している。現状で、一層のビードオン溶接から厚さ 約 10mmまでの多層溶接を実施することができる。Fig.6に これらの溶接試験結果の一例を示す。これらの水中溶接施工 法については、国の確性試験委員会からその妥当性について 承認を得るとともに、METI溶接施工法(特例)を取得済 みである。4.最後に 1. 本装置のうち、点検ロボットについては、実運転プラント への適用を開始しており、これまでの人間系の点検作業と比 較して、その有効性が確認されている。タンク点検への適用 例を Fig.7に示す。今後は、さらなる適用拡大を目指し、技 術開発を継続していく予定である。参考文献 [1] 岩田 圭司 他: “水中遠隔点検補修ロボットシステムの 開発”, 機械学会 2001 年次大会講演論文集 [2] Keiji iwata et al.:“Development of YAG-laser Repair WeldingRobot for Underwater Environment”, WRT2000, Florida USA, 2000Table.1 Specification of underwater robotsItemsConditions Robot (driving unit) Size640W×540L×170H(mm) Weight20~25(kg) Moving Speed ~50 (mm/sec) Water Depth~15(m) Cable Length ~100(m) InspectionInspection Method VT (CCD camera) Detecthole 0.3 (mm)liner 0.1 (mm) Grinderplate-type ,3000rpm Grinding Speed 1 0.05(mm/s) Repair-weldingWelding Method YAG-laser welding Laser Power~4.0(kW) Base-metalStainless Steel (SUS304) Welding Wire Y308L (solid wire) Shielding Gas ArgonGrinderGrinding Speed Repair-weldingWelding Method Laser Power Base-metal Welding Wire Shielding GasGrinde| CCD camerafor drivingCCD camera for inspectionZFig.4 View of inspection device (front)TorchWaterInert gasくうFiller wire9.CoSOILすDeposit metalL-type welding torchBase metalFig.5 Scheme of underwater welding withYAG-laser welding:2.5, 3.2kWMaterial, Wire:SUS304, Y308L Laser Power Water Depth:7.5m Bead AppearancesLiquid Penetration TestCross SectionSingle LayerMulti LayerFig.6 Bead Appearance of multi-pathTV monitor for watching robotTV monitor for Inspectioncableman-holeUnderwaterRobots control Systemcable-floatID watchingcameraJoystick-ControllerInspection or Repair-weldingRobotRadioactive liquid waste storage TankFig.7 Maintenance works for RadioactiveWaste Tank260“ “放射性廃棄物処理設備向け水中遠隔点検補修装置の開発“ “山口 智誉,Tomoyasu YAMANOKUCHI,岩田 圭司,Keiji IWATA,宮口 治衛,Haruei MIYAGUCHI
1 原子力発電所の機器類には高い信頼性が求められるため、 定期的な点検・補修が不可欠となっている。その一方で、こ れらの作業には、作業員や検査員の被ばくが伴うため、被ば くを低減する努力が、これまで絶えることなく続けられてき た。 被ばく低減対策の有力な手法の一つに、遠隔手法によ る点検補修技術がある。本稿では、弊社が、放射性廃棄物処 理設備の廃液貯蔵タンク用に開発した「水中遠隔点検補修装 置について紹介する。
2. 遠隔点検補修装置の特長 - 開発した水中遠隔システムは、点検と補修溶接を担当する 2台の水中作業ロボットと、これらの制御装置、付帯機器か ら構成される。水中ロボット及びシステムの外観を Fig.1 、 Fig.2に示す。これらのロボットは、水中において機器内壁 面に吸着し、その壁面上を無軌道で移動することができる。 その原理について補修溶接ロボットを例に Fig.3に示す。ス カート内の水を2つのスラスタを用いて排出することによ り、一種の吸盤効果を得て壁面に吸着する。吸着後は、駆動 輪からの推進力により、最大50mm/sec の速度で走行が可能 であり、搭載している重力センサと走行距離計、高精度なフ ィードバック制御の実施により、精度の高い位置決め性能を(a)、 Inspection RobotYAG-laser repair-welding RobotFig.1 Underwater Robots-259有している。両ロボットは、約 100m(ケーブル長)の遠隔 運用が可能で、適用水深は通常約 15m である。主要仕様に ついて、Table. 1 に示す。Fig.2 Robot and Control System (for Inspection)Tank WallWelding UnitCaster WheelThrusters640DriveWheelsNegative PressureSkirt DrivingUnitF1304\Unit°/520520|hat(unit:im)Fig.3 Illustration of YAG-laser repairwelding robot3.点検及び補修溶接ロボット - 点検ロボットには、通常、Fig.4に示すVT検査用近接C CDカメラ、欠陥除去用小型グラインダ、走行用監視カメラ を搭載しているが、必要に応じて超音波厚み計測装置、渦電 流測定装置等への交換が可能な設計となっている。また、こ れら装備の制御信号系とロボットの動力供給系は、1本の複 合ケーブルに集約されており、点検ロボットの水中における 機動性をなんら妨げることはなく、点検用デバイスとして良 好な運用性を実現している。一方の補修溶接ロボットには Fig.5に示すような超小型 L型溶接トーチを組み入れた水中YAGレーザ溶接ユニッ トを搭載している。現状で、一層のビードオン溶接から厚さ 約 10mmまでの多層溶接を実施することができる。Fig.6に これらの溶接試験結果の一例を示す。これらの水中溶接施工 法については、国の確性試験委員会からその妥当性について 承認を得るとともに、METI溶接施工法(特例)を取得済 みである。4.最後に 1. 本装置のうち、点検ロボットについては、実運転プラント への適用を開始しており、これまでの人間系の点検作業と比 較して、その有効性が確認されている。タンク点検への適用 例を Fig.7に示す。今後は、さらなる適用拡大を目指し、技 術開発を継続していく予定である。参考文献 [1] 岩田 圭司 他: “水中遠隔点検補修ロボットシステムの 開発”, 機械学会 2001 年次大会講演論文集 [2] Keiji iwata et al.:“Development of YAG-laser Repair WeldingRobot for Underwater Environment”, WRT2000, Florida USA, 2000Table.1 Specification of underwater robotsItemsConditions Robot (driving unit) Size640W×540L×170H(mm) Weight20~25(kg) Moving Speed ~50 (mm/sec) Water Depth~15(m) Cable Length ~100(m) InspectionInspection Method VT (CCD camera) Detecthole 0.3 (mm)liner 0.1 (mm) Grinderplate-type ,3000rpm Grinding Speed 1 0.05(mm/s) Repair-weldingWelding Method YAG-laser welding Laser Power~4.0(kW) Base-metalStainless Steel (SUS304) Welding Wire Y308L (solid wire) Shielding Gas ArgonGrinderGrinding Speed Repair-weldingWelding Method Laser Power Base-metal Welding Wire Shielding GasGrinde| CCD camerafor drivingCCD camera for inspectionZFig.4 View of inspection device (front)TorchWaterInert gasくうFiller wire9.CoSOILすDeposit metalL-type welding torchBase metalFig.5 Scheme of underwater welding withYAG-laser welding:2.5, 3.2kWMaterial, Wire:SUS304, Y308L Laser Power Water Depth:7.5m Bead AppearancesLiquid Penetration TestCross SectionSingle LayerMulti LayerFig.6 Bead Appearance of multi-pathTV monitor for watching robotTV monitor for Inspectioncableman-holeUnderwaterRobots control Systemcable-floatID watchingcameraJoystick-ControllerInspection or Repair-weldingRobotRadioactive liquid waste storage TankFig.7 Maintenance works for RadioactiveWaste Tank260“ “放射性廃棄物処理設備向け水中遠隔点検補修装置の開発“ “山口 智誉,Tomoyasu YAMANOKUCHI,岩田 圭司,Keiji IWATA,宮口 治衛,Haruei MIYAGUCHI