内圧を受ける減肉配管の変形特性に着目した減肉形状推定手法

公開日:
カテゴリ: 第2回
1. 緒言
* 発電プラントの炭素鋼配管のオリフィス, エルボの 後流にはコロージョンによる局部減肉が発生する場合 があり,この肉厚管理が適切に行われないと最悪の場 合内圧による延性破壊により配管が破裂することがあ る.たとえば 1986年 12 月に発生した米国サリー2 号 機,2004年8月美浜3号機の配管破裂事故では死傷者 を出す重大惨事に至っている.このような事故を未然 に防止するには,FAC(Flow Accelerated Corrosion)の発 生進展予測が困難であることを考えると,常日頃から 配管肉厚の計測管理を行うことが必要である.ところ が現状の配管肉厚計測方法は定期検査毎に配管の保温 を外し,超音波(UT)厚さ計を用いてスポット的な計測 を行うものであり,プラント全体の配管肉厚を計測す る労力を考えると配管の肉厚を広領域・稠密かつオン ラインで常時モニタするシステムの開発が急がれると考えた.このシステムには各種提案されている応力モニタリ ングシステムを活用し,計測された応力より配管の減 肉寸法を推定することが考えられる.しかし減肉部の 応力は,肉厚のみならずその長さに影響されることが 知られており[1], この意味において現存するプラントオンライン応力計測システムを適用したとしても減肉 配管のオンライン肉厚測定が直ちに可能となるわけで はない.そこで本研究ではまずは第一段階として図 1 の配管減肉最薄部 B部の寸法(6, )推定方法(何を 計測しそれをどのように減肉部の寸法へ換算するか) を提案した.
2.内圧を受ける減肉配管の変形特性に着目した減肉形状推定手法の提案2.1 計測する量配管は内圧 p, 軸力 N, 曲げモーメント Mを受け,周 方向応力の軸方向応力,,半径方向応力 , の三軸応 力状態にある.本研究では、が N, Mの影響を受けず, p と形状のみより定まることよりを計測することに した(図2).269M/NEWFig. 2Loads and principal stresses of a pipe.2.2 内圧を受ける段付円筒の定式化 * 図1の内圧 p を受ける現実的な減肉形状を有する円 筒については、最薄部」を含む断面(図1中 B-B 断面) の長手方向の4分布を考えると,これが図 3(a)に示す 肉厚 1, 長さる, の段付円筒(軸対称)の6分布と同等 となるとの粗い仮定の下,この段付円筒の分布をま ずは定式化することにした.L/22019/02/02シーシーL/2zk Elg17LI2Fig. 3 Modeling a pressurized pipewith partially thinned wall.このとき薄肉円筒であると仮定すると図 3(a)は軸対 称問題であるので, 図 3(6)の一様分布荷重(内圧p)を受 ける弾性支持はりに置き換えることができると考えた. そして図 3(b)の弾性支持はりについては段付きという 構造不連続に対応して図 3(C)の端部にせん断力 a, モ ーメント MAを受ける二本の弾性支持はりに置き換え ることができると考えた. *一般にバネ定数kで弾性支持される曲げ剛性 EIのは りのたわみ uは C1~Caを積分定数として u = @““ (C,cosfe + Casinz).........(1) +e -P (Cycos/lz + Casingz) + P として与えられる[2]. ここにB={k (EN]'4であり,平 均半径 R., 肉厚 1の円筒についてはヤング率E, vをポ アッソン比として k = Et/Rn3, I = 7 / [12(1 - 1, B= [3(1 - YD / (R.nety]'4の置き換えをすれば式(1)の弾性支 持はりの解を用いることができる.さて,ここで位置zのモーメント M,せん断力Fと たわみ , たわみ角iの関係は M = - El (du/dz'), F = dM/ dz=- EI(? v / dz), i = dv / dz ton, M, F, v, i については1,2のはりに対応して添字 1, 2 を用いる ことにする.はり1については- 8,/2 ≦ z = 8/2 で連続かっ 対称であるから u(z) = ( - z), if(z) = -1(-z)より,積 分定数を Bi, B, として __(z) = Bcos Biz cosh Biz + B2 sin Biz sinh Biz + $. *****ki と書くことができる.また左端に Qa, MAを受けること より,F(6.12) = Qa, M(. / 2) = MAである.ここに, k = E til Rmir, h = { / [12(1 - V1, B = [3(1 - / (Rn7'4である。はり2については左端に Qa, MAを受け, 右端が自由 である.積分定数を A~A』として,式(1)をはり2用に 書き下し.......1.= e (A,cosB z + Ansing z) +e““ (Aycosp z + Asing z) + 2............を得,はり2に対する境界条件は F2(/2) = Qa, MS. 12) = Ma, F(L/2) = 0, M(L12) = 0 である.ここに,k = Ett Rn, I = 7 /[12(1 - V1, B = [3(1 - VI/ (Rny] である. >= e““ (A,cosB z + Assinb z) + e““ (A,cosp z + Agsing z) + P.270さらにはり1,2の連続条件より (/2) = 02(6/2), i(6/2) = i(6/2)を境界条件として与えることにより, 積分定数 A ~ AA, B, B,および La, MAを定めることがで きる.この任意のたわみ u(2)と周方向応力の2)の間に は1g = E (3)..........(4)Rmの関係があり[2], この意味において図 3(a)の内圧を受 ける段付円筒の応力分布が円筒の寸法(Rm, 減肉部 の寸法(6, t), 内圧の関数(以下理論解)として定式化で きた.式(2)-(4)により求めたodz)が内圧を受ける3(a)の 段付円筒に適用できることを確認するため,三次元有 限要素解析(FEA)を行った結果を以下に示す. 材料 一定数はヤング率 E = 206GPa, ポアッソン比v = 0.3とし,配管形状を Rult = 18.0, t = 15.1 mm, ty/t = 0.5, BL = 307 (L = 20 117 mm), BS, = 0.230, 内圧 p = 1.25 MPa である. 図4の結果の整理には内圧を受ける無限に長い薄肉円 筒の周方向応力 on = pRmlt = 22.5 MPa を用いた.図中 実線で式(2)-(4)により求めた応力を,白抜き四角で FEA 結果を示してある.(6/2)/(L/2)]woo 2086420 FEA ? Theoryooooooooooool 1.0 0.8 0 0.001 0.002*z/(L12) Fig. 4 Comparison of stress distribution by Eq. (2)-(4) with FEA results for wall-thinning configuration in Fig. 3 (a)(Rn/t = 18.0, BL = 307, B6, = 0.230, th/t = 0.5)図4 より式(2)~(4)により図 3(a)の段付円筒の62)評 価を行うことの妥当性が確認できた.この例において 両方法により求めた応力の最大差は 0.7%であった.そ の他広範囲の段付円筒形状に対しても同様の結果が得 られている. また, 段付部の応力については t/t = 0.5 であるから,oo-2 omとなると一般に予想されがちであるが,oは 高々1.1 0mであり,かつこの高応力範囲が段付部を含 む広い範囲に広がっていることが読み取れる.これは BS,が小さい場合に生じる現象であり,この場合には0。 とpを計測し,計測部の肉厚 t を Op= PRolt の関係から 逆算することができない. 1.次に,図1の現実的な形状につき最薄部」の応力分 布を式(2) (4)で求めた応力分布(図 3(a)の段付円筒に よるモデル化)と比較してみた。 一例に対する結果を 図5に示す.材料,内圧,円筒基本寸法については図 4の例と同じとし,ただ頂部肉厚ttlt = 0.7 となるよう A-A断面の肉厚を円弧状につなげ,かつ軸方向に肉厚 を図1に示すように二次曲線でなめらかにつなげた. また計算上の節点数の制約から,配管の全長をBL = 152 (L = 10 000 mm)にて計算したが,この程度の長さがあ れば減肉部の642)に影響がないことを別途確認してある| (62)/(L/2)]FEA -TheorysooDO0.80.003z/ (L12) Fig. 5 Comparison of stress distribution by Eq. (2)-(4) with FEA results for wall-thinning configuration in Fig. 1 (Rm/t = 18.0, BL = 152, BS2 = 0.230, th/t= 0.5, tult = 0.7)図5にて実線で式(2)-(4)による求めたodz), 白抜き 四角でFEA 結果を示してあるが,その最大差は高々6% であった.また応力分布形状についても,理論解が FEA 結果の傾向をよく表しており,かっ図1のような現実 的な減肉形状についてものは高々1.1 0m程度であるこ とがわかる.なおここでは詳細を省略するが,図1の現実的な円 筒形状の最薄部の分布 (op(z))について減肉長さBS が小さい場合には図5と同様の傾向が得られる.一方 BS,が大きくなると分布はずれるものの z = 0 および z271> 8/2 について段付円筒のモデル化により最薄部の 042)が工学的に許容される程度の精度で評価できる、 とを別途確認してある.33. 内圧を受ける減肉配管の減肉形状推定手法の提案ここではまず図 3(a)の段付円筒問題について段付部寸 法(6, t)を推定する方法を提案し,その後提案した手 法を図1 の最薄部の(, t)推定へ適用することを考え る.計測する量は周方向実際は周ひずみ p = dol E) である.3.1 段付円筒の段付部の長さ,肉厚の推定図3(a)中 z = +8,/2にて構造不連続に起因しせん断力 が不連続になる結果, z = 48,/2 にて duldz', そして 結局式(4)により Toddz の符号が変化する(図 6) 点に 着眼する。手順は0を円筒の全長にわたり計測し,こ れを用いて Noddz'の符合が変わる点を探す.この点が 構造不連続部(図 3(a)の場合はz=,/2)である.?o. I62/2 :real/Fig. 6 Estimation of wall thinning length.&.がわかったので, 6,12 ≦ zL/2 の範囲で計測 した4点の0を,式(3), (4)に代入することにより積分 定数 A1~Aを定める.そして段付部については,薄肉 円筒であることより Rmi & Rmとし, z = 8/2 におけるた わみおよびたわみ角の連続の条件とz=0の0を用いる ことにより,式(2), (4)を用いて積分定数 B, B, と所要 の肉厚」を数値的に求める. - 以上の方法により配管の正規寸法(Rm, ),内圧pが 既知のもとで図 3(a)の段付円筒について・42)を計測す ることにより(C, t)を推定することが可能となった. - 例として,図3(a)にて内圧 p = 1.25 MPa を受ける R.lt =27.7, t = 10 mm, BL = 2 970 (L = 160 000 mm), tilt =0.19,BS, = 92.0 の段付円筒に対する FEA によるo42) を用い,提案した手法により段付部の形状(E, 1)を推 定した結果を表1に示す.また周方向応力の3階微分 を図7に示す.材料定数はヤング率E = 206GPa, ポア ッソン比v=0.3としている.なお,応力の測定間隔は BAz = 0.290 (Az = 15.63 mm)である.まず図7より, z=(6/2)/(L/2)近傍で確かに dodz の 符号が変化していることが読み取れる. ゼロクロス点 を内挿により求めた結果,表1に示すように。につい ては 1.24%の差,そしてこのSを用いて提案した手法 により推定した」は真値に対し 0%の差と, 減肉長さに 推定誤差があったにもかかわらず,よい結果が得られ た.同様の結果は,式(2)-(4)の定式化の前提となる薄 肉円筒の仮定(R. /t >5程度)が満足される限り,そして 周方向応力がz方向に密に計測される限り,減肉長さ によらず得られる.Table 1 Estimation of (Oz, t?) in Fig. 3(a) by the proposed method (Rolt = 27.7, t = 10 mm, BL = 2 970,th/t = 0.19,BS, = 92.0)./ 2 | tin Actual mm 2500 | 1.90 Estimation mm | 2469 | 1.90 Difference % | 1.24 | 0.00| (6/2)/(L2) |0.0003EFP /op700000- 0.0003 00.03 0.06- z/(L/2)Fig. 7 3rd order differential coefficient of circumferential stress of a cylinder in Fig. 3 (a) (Rm/t = 27.7, t= 10 mm, BL = 2 970, th/t = 0.19, BS, = 92.0).2723.2 現実的な減肉形状への推定手法の適用 * 現実の減肉形状は図1のように長手方向に滑らかで あり,また周方向に不均一である場合も少なくない. そこで提案した手法をより現実的な減肉形状へ適用す ることが可能であるかを検討した.ここでは表 1 の例 に準じ, 内圧 p = 1.25 MPa を受ける Rom/t = 27.7, t = 10 mm, BL = 2 970 (160 000 mm)の円筒に,図1に示す最 薄部の肉厚 1/= 0.19,最厚部の肉厚(clt = 0.3, 減肉長 さB6, = 92.0 の減肉がある場合の例につき,最薄断面 B-B の周方向応力分布を FEA により求め,提案した方 法により最薄減肉部形状(E, t))を推定した. 頂部肉厚 tlt = 0.3 となるよう A-A断面の肉厚を円弧状につなげ, かつ軸方向に肉厚を図1に示すように二次曲線でなめ らかにつなげた. B-B 断面の周方向応力分布,その 3 階微分を各々図 8, 9 に示す. (6, 1)の推定結果を表2 に示す.なお, 応力の測定間隔はBAz = 0.290 (Az = 15.63 mm)である.まず図8より,式(2)~(4)により断面 B-B の応力分布 04z)を推定した結果, z = 0 およびz > 8.12 において FEA 結果による642)を精度よく推定できるものの,0 8.12 におけるなよz)の推 定精度が重要であることに対応していると思われるが, 0 5で無限円筒の仮 定が成り立つ[3]と言われていることからすると,0.5 という値はそれほど小さくないとも考えることができ そうである。5.結言1. 本研究では内圧と曲げ荷重を受ける図1に示す直 管中 B-B 断面の現実的な減肉形状(具体的には6, 1) を,同断面の04z)計測結果から推定する手法を提案し, その妥当性を FEA 結果と比較することにより確認 した.謝辞本研究は H16年度福井大学プロジェクト研究成果の 一部である。参考文献 [1] A. Deardorff, L. Goyette, P. Krishnaswamy and M.Kupinski, “ASME section XI evaluation methods and acceptance criteria for analytical evaluation of wall thinning due to flow accelerated corrosion (FAC)”, Proc. 1999 ASME Pressure Vessels and Piping Conference,PVP. Vol. 392, 1999, pp.187-206. [2] M. Hetenyi, Beams on Elastic Foundation, 2ndEdition (1971), The University of Michigan Press. [3] R. Labbens, A. Pellissier-Tanon, and J. Heliot, J.,“Practical Method for Calculating Stress-Intensity Factors Through Weight Functions”, ASTM STP 590, 1976, pp.368-384.274“ “内圧を受ける減肉配管の変形特性に着目した減肉形状推定手法“ “飯井 俊行,Toshiyuki MESHII
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)