高圧電動機の運転中部分放電測定による絶縁診断の実機適用

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
高圧電動機は大型の回転機器の駆動源として使 用されており、運転中の故障によりプラント運転 に甚大な支障を生じさせるため、運転中の振動測 定や定期検査中の絶縁診断など予防保全策がとら れている。特に固定子コイルは軸受や冷却器など と異なり取替が容易でなく、絶縁診断・余寿命推 定 [1] [2] がおこなわれている。この絶縁診断は電 動機の分解点検に合わせて実施している外観目視 点検と電気的特性評価試験がある。この試験のた めに給電線より切り離す準備作業等が必要である こと、また停止中に限られていることもあり、省 力化やタイムリーな測定の観点から運転中に診断 を行う技術の確立が期待されている。運転中の部 分放電 (PD) 測定は、熱的、電気的、環境的、機械 的ストレスの影響を受けた状態で絶縁を診断する ため固定子の状態をより正確に把握でき、北米を 中心とした水車発電機での結合コンデンサ設置方 式や国内でも種々の研究報告 [2] [3] がなされてい る。当社では電動機の既設の測温抵抗体 (RTD)を 部分放電センサーとするオンライン PD モニター を株)三菱電機と共同開発しており [4] 、このオンラ イン PD モニターにて実際に原子力発電所で使用 されている多数の高圧電動機を使用期間(等価運 転年数)や使用温度などに着目して測定をおこな
2. オンライン PD モニターの概要当社にて開発した携帯型 PD モニターは、ピー クホールドとデジタル変換等の信号処理部とデジ タルデータを処理・表示をするノートパソコンか ら構成されており、測定時はモニターと電動機の RTD 外部端子間をケーブルで接続している(Fig. 1)。固定子コイル絶縁部で PD が発生すると高周 波パルスが固定子コイル間に設置されているRTD に伝わり電動機外部端子まで到達する。この信号 をモニターに取り込み PD の大きさに対応した信 号を測定する仕組みとしている。測定結果はノー トパソコンにてノイズ除去や、電圧位相と PD 強 度との関係(発生位相角分布特性)、PD 発生頻度 特性表示を行い、電気的特性評価試験での最大放 この関係(発生位相角分体特性)、PD 発生頻度 表示を行い、電気的特性評価試験での最大放固定子常用電源携帯型部分放電モニターFia 1 オンライン PD測定回路 Fig.1 オンライン PD測定回路275電電荷(0.ne)に相当する PD レベル(mV表示)を 求めている。この PD レベルが大きくなったり、 PD 発生数が多くなれば絶縁体内部の剥離やボイ ド等の欠陥が大きくなったか、または欠陥が増え て絶縁性能が低下したと判断出来る。また、本モニターは PD 発生位相角特性により PD 発生部位の推定を行なっている。絶縁層内ボイ ドでの部分放電は電源電圧位相に対して正負同等 に発生するが、コイルとの境界または鉄心との境 界部の放電は、電子の供給から正または負の放電 となることが知られており(Fig.2、Fig.3)、発生 位相角分布の評価は重要となっている。補足する と、コイル側のボイドではコイルが正でかつ鉄心 が負の電位の時、放電電子がコイル側に移動しや すく負極性パルスが優勢となる。また、鉄心側ボ イドでは鉄心が正でかつコイルが負の電位の時、 正極性パルスが優勢となる。(+)銅(-)銅コイル部電子放出 -- コイル側ボイド絶縁層内ボイド| (-) 絶縁 (+) |(+) 絶縁(-)→ S |(-) 絶縁(+) (+) 絶縁(-)DA電子放出 |(-) 鉄 (+)鉄心部鉄心側ボイドFig.2 絶縁層内ボイドでの部分放電モデル負極性180540正極性Fig.3 放電パルスの正負極] 3.3.実機での測定 3.1 実機測定対象対象とした高圧電動機は関西電力株)の原子力発 電所 (美浜、高浜、大飯発電所)の電動機であり、 全て三菱電機(株)製の 6.6kV 三相誘導電動機で内訳 を Table 1 に示す。これらは、逐次予防保全の観点 から固定子コイルの巻替えを実施または計画中で あり、巻替え前と巻替え後の両時点で測定を行っ た電動機も含んでいる。Table 1 対象とした高圧電動機台数* | 台数 | 出力 [kW] 美浜発電所 | 36 | 350~3760 高浜発電所 | 44 | 580~4300 大飯発電所 | 36 | 360~60003.2 等価運転年数と部分放電レベル等価運転年数を横軸に PD レベルをプロットし たものを Fig.4 に示す。等価運転年数は電動機が停 止中も劣化するものと推定して運転時間と停止時 間の 1/3 を加算している。等価運転年数で 10年前 後から PD レベルが 100[mV]を超えるものがかな りあり、一般的にいって PD レベルが劣化傾向を 示す指標となりうることを示している。1000PD [MV]A B種絶縁、 | F種絶縁」2510_15_ 10.... 15 . 20等価運転年数 [年] Fig.4 等価運転年数と部分放電レベルここで 20 年近い等価運転年数でも PD レベルが 10 [mV] 以下と低い電動機は、Table 2 に絶縁破壊 試験の結果を示すとおり固定子巻替え前において 絶縁破壊電圧 (BDV) は 60 [%] から 70 [%] の間を示 しており、劣化はしているものの . は 10000 [pC] 以下であり健全な電動機であった。これらは年数 は経過しているが、設計負荷に対して実負荷が少276 ない電動機で、過度の劣化進行がなかったものと 考えている。Table 2 絶縁破壊試験を実施した電動機の例 等価運 PD レベ製造年max|転年数ル「BDV0... | [年]| mv] | [%] | [pC]|A機 | 18.5 | |B機 | 18.5 | IC機 | 18.5 | |D機 | 19.7 |3.25 1.25 6.61 0.82| 62.5 | 5,400 | 1974 | 64 18,200 | 1974 | 67 17,200 | 1970 | | 65.6 | 1,400 | 1972 |3.3 PD レベルと経時変動 - 本モニター開発中の試験において、PD レベルが 時間的に変動している電動機が認められた。この 変動が外気温の影響によるものかどうか確認する ため、複数の電動機について3ヶ月ごとの測定を 30 ヶ月間実施し、PD 変化を確認するとともに一 部の電動機は2ヶ月にわたり2回/日の頻度で測 定を実施した。Fig.5 は代表機による測定結果の一 部である。 1000E|-K *F機~ ・G機 |-H機2018/02/092015/03/0700/4/101/1/26 |2022/01/112010/04/05- E機は01年8月に82 [mV]、02年5月に 127 [mV] 、 02年8月に 199 [mV]、03年8月に 188 mV]、また、 F機は 01年8月に 116 [mV] 、11 月に 28 [mV]、02 年1月に 22 [mV] 、6月に 52 [mV] と3ヶ月毎の測定 では変動が認められる。G、H、I 機については 10 [mV]以下でそれぞれ変動している。これらの電 動機については、電気的特性評価試験を実施した が、異常は認められなかった。このうち F機の3 ヶ月毎の測定と週2回の測定結果をRTD毎のデータとコイル温度と共に Fig.6、Fig.7 に示す。PD レベルは従来からコイル温度や発生ボイド の大きさ、ボイド形状やボイド内圧等の影響によ り変動している [5] と知られており、これ以外にも 変動はコイル温度ばかりでなく表面汚損や雨天後 の温度上昇による影響が認められる電動機の例も あり、傾向管理上、ある程度の変動は許容する必 要があると考えている。[°C]|- RTD-1RTD-2 1.RTD-3 | コイル温度PD [MV],192001/01/082001/01/112001/02/082001/02/022001/02/05測定日 Fig.6 PD レベルの経時変化例1Fig.6140-RTD-1 |-RTD-2+RTD-3 | ターコイル温度)2001/02/102010/02/092011/02/09__ 02/9/2402/10/15 で、02/10/8Fig.7 PDレベルの経時変化例2 3.4 高PD レベル電動機の診断事例 (事例1); PD レベルが 811[mV]であったJ機(A 発電所 IC 給水ブースタポンプ)の PD 発生位相角 分布特性と発生頻度特性は Fig.8 に示すとおり位 相特性は 180°毎(正負毎)に均等ではなく正負 非対称の位相特性を示しており、絶縁体外部での PD であることを示唆していた。J機を点検したと ころ、従来の絶縁診断では Table 3 に示すように異 常は認められなかったが、U1-1 と W2-1 のコイル エンド間で絶縁破壊の前兆である異相間放電によ るトラッキング(放電痕)を認めた。(Fig.9)277SENSOR(with noise rejection) 1250.0-1PD1000.0-1[mv]750.0500.0-1 250.00.0-10 180 20 PHASE ANGLE3601000100-160pps811.244 [mV]Repetition Rate[pps]2019/10/011001000.00 PD MAGNITUDE (MVFig.8 I機の発生位相角特性と発生頻度特性Fig. 8Table 3 J機の絶縁診断結果 ・製造年/等価運転年数 | 1971 / 19.7年 |・出力1000 [kW ・絶縁抵抗 (40°C) 1457 [MO] ・成極指数6.02 ・誘電正接9.66 25,500 [pC]・QmaxU1-3U1-2U1-1W2-1Fig.9 J機のコイルエンド部写真経路/U相V #W相 Fig. 10 J機のトラッキング経路V相トラッキングがあった U1-1 と W2-1 コイルは両 方とも口出し線に近く、相間電位は定格電圧の 90%と高い部位で、付着粉塵の影響で放電を起こ していたものと推定される。コイルエンドの拡大 写真を Fig. 9 に示すが、付着粉塵で写真では認識 できない小さなトラッキングであった。このトラ ッキングは、放置すればいずれはパス(放電路) となり絶縁破壊へと進展するところであった。ト ラッキングの経路を Fig. 10に示す。これは従来診 断法の対地間に規定電圧を印加する試験では検出 不可能な異相間放電を運転中測定にて診断可能に した事例である。(事例 2); PD レベルが 200[annV]の E 機(B発電 所 1C給水ポンプ)の PD 発生位相角分布特性と発 生頻度特性を Fig.11 に示す。E機は初期の原子力 機で製造後 36年経過しており、運転等価年数でも 20.3 年であり 04 年固定子コイルを更新計画中の ものであった。PD 発生位相角分布特性はJ機と異 なり 100°、160°、280°、340°のピークを持つ 正負対称(位相差 120°の2波)であり絶縁内部 での PD を示唆している。当該機は 02 年8月から 200[mV]で推移し、04年1月まで運転を継続して 04年2月に固定子巻替えのため絶縁破壊試験を実 施した。従来の絶縁診断結果は Table 4 に示すが、 製造から 36 年経過し、BDV は 70[%]弱と劣化は 進んでいるものの Omarは4000[pc]弱と従来絶縁診 断の管理目標値 50000[pC]を十分下回っておりそ の他、絶縁抵抗、正極指数、誘電正接も管理目標 値内で、まだ健全な状態であった。SENSORwith no ise re je ction) 300.0PD『mm 200.0100.0- 100090180270 38HASE ANGLE10000 100010060 pps200705 InvRepetitiontition 4RateIpps】Repetition14 7.3153.39 390.11_PD MAGNITUDE [mvFig.11 E機の発生位相角特性と発生頻度特性278Table 4 E機の絶縁診断結果 ・製造年/等価運転年数1968 / 20.3年 ・出力2810 [kW) ・絶縁抵抗 (40°C) | 838 [MO] ・成極指数5.55 ・誘電正接5.163,800 [pC] ・BDV69 [%]4. 運転中 PD 測定の運用方法運転中 PD 測定による絶縁診断は4年から6年 毎に行なっていた電気的特性評価試験の補完を行 なうものと位置付け、PD レベルが管理目標値に接 近、もしくは大きく変化した場合に、従来の絶縁 診断を行なうこととしている。具体的には等価運 転年数で 20.3 年のE機の絶縁診断結果から管理目 標値を 200[mV]として、運転中 PD 測定結果が管 理目標値を上回れば、次回点検等に従来の絶縁診 断を実施することとした。また、PD レベルが管理 目標値を下回っている場合でも前回測定から大幅 な変動 (5 倍以上)でかつ PD 発生位相角分布特性 が内部放電と判定されれば測定周期を短くして監 視を強化することとしている。この管理目標値は 先の E 機の診断結果から決定したものであるが、 発電所での運転中 PD 測定結果のうち 250 から 811[mV]の発生位相角分布特性は外部放電または、 異相間放電と判定されるため内部放電で最大のも のとの位置付けから目標値としている。変動につ いても実機測定結果から種々要因にて測定値は変 動するため、5 倍内の変動は許容している。運転 中診断運用フローを Fig.12 に示す。運転中部分放電測定NO運転中測定値>判定基準NOYES平均PDレベル×5 <今回のPDレベル。YESNO診断前かNOYES位相特性が内部放電パー ターンであるYES絶縁劣化の兆候有り 開放点検および精密診断要要注意 短い測定インターバル良好Fig.12 運転中診断運用フロー-2795.結言原子力発電所で稼動中の高圧電動機運転中の PD 測定、特に既設 RTD をセンサーとする3年間 の測定により、絶縁劣化診断を試みた。 (1) 経年的な劣化傾向を運転等価年数から把握 することが可能なことを示した。 (2) 固定子コイル温度と関係があることを確認 し、傾向管理するうえで変動を許容した運用が 必要であることを示した。 (3) PD 発生位相角特性により PD 発生箇所が診断 可能であること示し、停止中測定では診断し得 なかった異相間放電の検知が可能であることを 示した。 (4) 高 PD レベル電動機の診断事例から運転中診 断運用フローにまとめた。 今後は、本測定結果を基として、別途市販され た運転中簡易診断の導入による更なる設備信頼度 の向上等に取り組む予定である。参考文献(1) 電気学会, “絶縁寿命限界と推定”, 電気学会技術報告第882号,2002-4. (2) 電気学会,“絶縁材料の劣化と機器・ケーブルの絶縁劣化判定の実態”,電気学会技術報告第 752号, 2001-1. (3) 電気学会, ““電力設備の運転中絶縁診断技術”,電気学会技術報告(I部) 第402 号,1992-1. (4) 栃尾 篤兼田 吉村浦川伸夫、“高圧電動機の絶縁劣化兆候検知手法の開発(2)-オンライン部分放電モニターによる実機試験の 結果?INSS JOURNAL, Vol.7, pp.231-238,2000-9. (5) 電気学会,““放電ハンドブック”,pp221, オーム社,2000.“ “高圧電動機の運転中部分放電測定による絶縁診断の実機適用“
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