作業員のタスク要求に基づく保全支援情報提供

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カテゴリ: 第2回
1. 1. 緒言
原子力における時間計画保全から状態監視保全へと いう保全方策の動向を考えた場合、処理する必要のあ る情報の量はますます増大することが予想されている [1]。保全活動における情報処理の効率化、信頼性の向 上という観点からも、情報化技術の積極的導入を行う 必要がある。本研究グループでは、分散データベース とモバイルエージェントを要素技術とする保守支援シ ステムを提案している[2,3]。 提案システムにおいては、 日常保守において、現在帳票により行われているよう なデータ収集と確認作業に関しては、自律的な機能を 有するソフトウェア「モバイルエージェント」により 行われるという枠組みを導入している。作業員は携帯 情報端末 WID(Wearable Information Device)を携行 し、現場の機器設備側に設置される小型 UCD (Ubiquitous Computing Device)と交信することで、モ バイルエージェントの通信を行い、現場機器の状態に 関する更なる詳細なデータを収集可能となることが期 待される。更に、提案システムにおいては、目的指向 センシングという枠組みを提案し、トラブルシューテ」ィング時に作業員のスキルレベルや要求に応じて、ど このような付加的な計測を行えば良いのかをシステム側が指示するシステムの開発を行っている。本稿におい ては、実際の機器を対象にして、この作業員側からの 要求に応じて異なる形態での異常の絞り込みが可能で あることを検証した結果について述べる。2. 手法 1. 本研究では、保守作業、特に現場において発生した トラブルの原因を診断する過程における、経験豊富な 作業員が持つ戦略に対応して支援情報の提供を行うこ とを主眼としている。本研究では、既設の固定計装系 により異常が認識されるが、その情報だけでは十分に 異常原因が同定できない場合、次にどの情報を獲得す べきかという問題を対象としている。実際に現場にお いては、長年の経験に基づいて、特定のシステムに固 有の様々な戦略が形成されていると考えられるが、本 研究ではより一般的なレベルでの異常の絞り込みに関 する戦略を以下のように定式化した。 ○「異常仮説の重要度」に応じた絞込みこの戦略は、現在観測される情報から予想される異常 (異常仮説)の中で、保守作業員が重大と考える異常仮説か ら順に検証を行っていくという戦略である。例えば、あ る状況下で「放射線漏れ」が最も重大な異常であると考 えるならば、まずは現場の線量計の確認を行うであろう。 また、プラントの運転に直接関わる「ポンプの故障」が 最も重大な異常であると考えるならば、当該ポンプに対 する振動の調査等を行うであろう。 ○新たに獲得する「情報の価値」を考慮した絞込みこの戦略は、新たに観測する情報の価値に基づくもの である。「情報の価値」とは、ある情報を観測することが 状況の絞込みにどれだけ寄与するか、ということを意味」 する。例えばポンプの異常原因を特定する場合、「ポンプ の振動を計測すれば状況は概ね特定できるであろう」と いう判断が考えられる。この場合、保守作業員は「ポン プの振動」を情報の価値を高いものとみなしたことにな る。 これら二つの中で、どちらの戦略をとるかは、その時 のプラントの状況や作業員の判断に依存する。システ ム的に考えれば、情報の価値を考慮して絞り込みを行 いその結果を表示することは可能であるが、必ずしも その情報が作業員の要求する内容と一致しない可能性 がある。本研究では、作業員自身がどちらの戦略に応 じた情報が欲しいかを自ら判断し、システム側はそれ に応じて情報提供のモードを変えるというシステムを 構築した。 - 289 -3. プロトタイプシステムによる検証
3.1. システムの概要 1. 本研究においては、小型の携帯情報端末にセンサーを 接続し、現場において付加的情報の計測を行うシステム を構築した。小型情報端末は無線 LAN によりネットワー クに接続され、オンラインで他のプロセスパラメータを 参照しながら異常の絞り込みを行うことができる。異常 絞り込みの基礎となる対象システムの因果関係モデルと しては、階層的ベイジアンネットワークを利用している。
監視対象機器としては、材料試験用の安全裕度テスト ベンチ(以後 SSBF ; System Safety Benchmark Facility と呼ぶ) を用いた。SSBF は沸騰水型原子力プラ ントの配管を模擬した実験施設で、高負荷環境下におけ るプラント構造材の劣化および破壊挙動について評価を 行うための大型の実験施設である。実際のプラントと比 較した場合パラメータ数は遥かに少ないが、プラントに おける一つのサブコンポーネントとして捉えた場合、本 対象システムはパラメータ数、計測対象の複雑さ、パラ メータの多様性等の面で、十分な現実性を有していると 考える。3.2. 二つの情報提供モード前述の二つの異常絞り込みの戦略に対応して、本シス テムにおいては以下に示す二つの異常源絞り込みの支援 画面を作成した。・異常仮説駆動型 - 異常仮説駆動型の情報提供戦略においては、固定計装 系から得られる情報に基づいて、その時点での各異常仮 説に関する異常の確率が示される。(Fig.1)Datated daynese:_otop.PaulneShow““Pem Part““:0.747916666666667知りました。ありませんでないと110Basernooタイフーンストーンスインに20““ei-trandFig.1 異常仮説駆動型の異常絞り込み画面この絞り込み画面において、作業員が最初に原因であ るかどうかをハッキリさせたい仮説をクリックすると、 システムはどの情報を獲得すべきかを作業員に指示する。 これに基づいて付加的な計測を行いその情報をシステム こ入力することで、作業員が指示した異常仮説の状況を明らかにすることができる。・観測効用駆動型観測効用駆動型の情報提供戦略においては、付加的な 情報として何を測れば良いかを、観測効用に基づきシス テム側が決定して作業員に指示する。tagmemoreSlowend PuneてっJob11mototynerotion from. IATMFpun250.ntFig.2 観測効用駆動型の異常絞り込み画面3.3. システム評価 * 本研究では、「No.2 ループの電気伝導率異常」を模擬 異常として、本システムを利用して異常の絞り込みを行 い、それぞれに戦略に応じて、情報提供画面が有効に支 援情報を提供することを確認した。4. 結言本研究では、保守支援システムの要素技術としての 異常絞り込みにおける情報提供画面の提案と評価を行 った。実際の監視対象システムにおいて、作業員側か らの要求に応じて、異なる形態での異常の絞り込みが 可能であること示した。謝辞本研究は、(財)エネルギー総合工学研究所の革新的 実用原子力技術開発提案公募事業により支援を受け実施 しました。深く感謝いたします。参考文献 1] 北村(編), 日本原子力学会 ヒューマン・マシン・システム部会 原子力施設保守保全高度化研究調査 1. 委員会報告書, (2000). 2] 尾崎禎彦他: 原子力発電所運用高度化のための次世 BHMS に関する技術開発, 日本原子力学会2002 年春の 手会要旨集, H31, p.407, (2002) 3] 佐藤寿他、携帯端末とモバイルエージェントによる保 守支援システムに関する研究、保全学,3(3),(2004), 11-19.90“ “作業員のタスク要求に基づく保全支援情報提供“ “高橋 信,Makoto TAKAHASHI,原田 淳一,Jun-ichi HARADA,北村 正晴,Masaharu KITAMURA,若林 利男,Toshio WAKABAYASHI
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