超音波探傷試験の検査技術者に起因する信頼性評価

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
* 供用状態にある原子力発電所などでは、その健全性 の確認のために超音波探傷試験などの非破壊試験を用 いている。非破壊試験で得られる結果によって、当該 部分が健全であることを確認するとともに、前回点検 時と比べて変化があるかどうかを確認することが重要 である。原子力発電所では供用期間中検査 (In-Service Inspection: IS)において超音波探傷試験(UT)が多用さ れているが、UT は検査技術者の技量への依存が大きく、 その信頼性や再現性の確認は重要である。 * UT の信頼性確認では、国家的プロジェクト等で実験 的に確認している。一方で、ISIを実施する検査実 施会社であるIHI(石川島播磨重工業(株)では、日本非 破壊検査協会の資格の他に、より実際的な技量認定試 験を課して、実際の対象物に対しても探傷技量が充分 あることを確認してから、実際の探傷を実施している。今回はこの技量認定試験の結果を整理し、また IHI の実施している改良 UT(フェーズドアレイ等の新技術 を用いた欠陥深さサイジング技術)の精度、実際の原 子力発電所の UT を実施する検査技術者の技量の安定 性・信頼性を報告する。
2.UT測定値の統計評価
2.1 技量認定試験の概要 IHIの実施している技量認定試験は、配管溶接部 (原子力配管模擬、溶接裏波あり、余盛りなし)に人工欠陥を付与したものを使用し、40分間の制限時間内 に付与された人工欠陥の探傷を行うものである。 2.2 検出性に関する検討 * 付与されたきずを確実に検出することがまず重要で ある。下記の通り、技量認定試験に不合格であった検 査員は、必ずしも全てのきずを検出しているものでは ないが、実際のISIに従事する合格者は、付与され た比較的大きなきずの全てを検出することが可能であ る。Passed1Failed0.94200.20.40.60.81fig.2.2-1 Detection Rate2.3 エコー高さの再現性 エコー高さについては、採点の基準となる基準エコ ー高さからの差異で整理した。合格者の場合の平均誤 差が非常に小さいことから、基準エコー高さは妥当で あることが確認できる。また、エコーの再現性が標準 偏差で 2.5dB 程度(通常は最大で 6dB 程度の差がある といわれている[4])であり良好な再現性が示された。29Table 2.3-1 The Distribution of Echo HeightsPassedFailed-0.27 dB-1.70dBError Average Standard deviation|2.54 dB|3.81 dB |2.4 エコーの検出位置 反射源の位置を特定する基礎的な値に関して以下の とおりの統計値であった。周方向の位置については、 比較的単調なエコー分布を示す長いきずがあったこと もあり標準偏差は比較的大きい。しかし、軸方向位置 とビーム路程に関してはほぼ誤差なく計測できている。 合格者に関しては充分信頼性に足る結果であり、再現 性についても同程度と推定される[3][4]。Table 2.4-1 Distribution of Circular PositionPassedFailed-2.2 mmError Average Standard Deviation-0.3 mm 10.0 mm|17.5mmTable 2.4-2 Distribution of Axial PositionPassedFailed-0.1mm-0.1mmError Average Standard Deviation| 1.4mm2.8mmTable 2.4-3 Distribution of Path LengthPassedFailed0.2mmError Average Standard Deviation0.4mm | 0.9mm2.3 mm2.5 欠陥高さサイジング きずが検出された後には欠陥深さの測定が行われる。 通常の低合金鋼や炭素鋼の疲労割れであれば、比較 的簡単に端部エコー法での測定が行われるが、ステン レス鋼に発生した応力腐食割れ(SCC)の場合には、ステ ンレス鋼およびその溶接部の超音波透過性の悪さと SCC 特有のきず性状によりその深さ測定は困難である。 このことから改良 UT と呼ばれるフェーズドアレイ法 等を併用した方法が行われる。 - 実際の SCC について実施したデータを下記に示す。 ここで示されるように通常の「簡単」といわれる深さ サイジングの結果とほぼ同程度の 4.4mm 程度[1][2]の 計測誤差の範囲内で、信頼性のある計測が可能であっ|Estimated crack depth (mm)OPA Max ValueTode1 |0| |0000 OOT/bodo|112345678910True Depth(mm)Fig. 2.5-1 The Result of Depth Sizing with Phased Array 3.結言1) IHI の技量認定試験に合格した検査技術者は、試験 体に付与された程度のきずであれば、100%の検出が 可能であり、エコー高さの再現性、反射源位置の特 定についても、比較的安定した計測ができることを確認した。 2) 深さサイジングについては改良 UT を適用することで、難しいと言われるステンレス鋼の SCC に対し ても精度良く計測できることを確認した。 3) これらにより通常の検査で検出・測定されたUTの 結果は充分に信頼に足る結果が得られるものであ ることが示された。参考文献[1] H. Tokuma, “SCC Experiences and NDE Technologieson Recirculation Pipings in BWRs”, 4th International Conference on NDE in Relation to structural Integrityfor Nuclear and Pressurized Components. [2] 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原 子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会(第6回/平成 15年2月26日)配布資料. [3] 東海林一,笹原利彦, “UT検査員の信頼性試験に関する現状と統計データ”(社)日本非破壊検査協会平成 17 年度第1回超音波分科会. [4] (財)原子力工学試験センター“発電設備の健全性評価等に関する小委員会(第6回/平成 15 年2月 26日)配布資料.“ “超音波探傷試験の検査技術者に起因する信頼性評価“ “東海林 一,Hajime SYOUJI,愛宕 靖司,Yasushi ATAGO,椎名 英介,Eisuke SHIINA
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