漏えい事象の評価手法に関する検討

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
一般に、いかなる構造物であっても時間の経過とと もに経年劣化(き裂、減肉など)が生じるものであり、 産業に用いられている設備機器も同様に、供用の開始 とともに徐々に経年劣化が生じる。このため、構造物 に経年劣化が発生、進展しても当該構造物の「機能」 が常に確保されるように機器を維持管理する必要があ り、機能の確保を確実にするために各種の基準が提案 されるようになっている。配管や容器のような機器は、冷却材等の内包流体に 対する圧力障壁機能、すなわち当該機器に作用する荷 重に耐えようとする役割の「構造強度」機能と、内包 流体を外部に漏らさないようにする役割の「水密性」 機能という2つの機能を有している。日本機械学会の 「維持規格」 (1) は「水密性」を前提に「構造強度」に 着目し、き裂等の欠陥がどの程度まで進展しても機能(安全性)を維持できるかについて評価できる手法を ・規定している。これに対し、「構造強度」を前提に「水 密性」が低下して漏えいが発生した場合を想定し、漏 えい事象の評価等に関するガイドラインを開発するた めの活動が日本保全学会で実施されている(2)。 * 本研究では、耐圧機器からの冷却材等の漏えい事象 に対し、どの程度の漏えいまで当該機器の機能を維持 できるか、また漏えいの評価手法としてどのようなも のが考えられるかについて検討した。(Fig.1、Fig. 2) 以下にその検討内容について述べる。
2. 漏えい評価手法2.1 漏えい率の予測方法耐圧機器からの漏えいには、大別すると、シール部 からの漏えいと、耐圧部材に発生したき裂や減肉など日本機械学会の維持規格は、 「破壊」に対する十分な余裕を 有する許容基準を規定破壊経年劣化の発生進展通 (漏えい発生)許容以上のえい破壊我看 (漏えい発生)破壊漏えい拡大今回、「漏えい」に対する十分な 余裕を有する許容基準を開発Fig. 1 Relation between a progress of aged degradationand acceptance criteria.「「水密性」機能低下現時点(漏えい検知)Speependesenm水密機能/漏えい率次回停止時における予測値(運転継続が可能)確保すべき機能の安全水準次回停止時における予測値 (補修・取替などの措置要)で安全余裕機能維持限界
「漏えい率」増加漏えい検出限界運転時間 Safety level to be ensured in leak events.Fig. 2291からの漏えいの2つがある。 (1)シール部からの漏えいの予測方法シール部からの漏えいは、下記の特徴を有している。・「水密性」が低下し、漏えいが発生、増加しても、「構造強度」は低下しない。 ・ 「水密性」を担っているパッキン、ガスケッ ト等(以下、パッキンという。)が劣化し、漏 えいが発生、徐々に増加しても、パッキンが 完全に無くなった状態にまで増加する可能性があるが、それ以上増加することはない。 また、漏えいが発生する原因としては、a)パッ キンの経年劣化、b)パッキンボックスの腐食減肉 などによる締め付け圧の低下、c)ボルト締め付け 力の低下などが考えられる。以上を念頭に、下記2つのケースに分けて、漏え い率の予測評価方法を検討する。* Q max Qaの場合 ここで、Qはシール部からの最大漏えい率、Q。 は許容漏えい事である。 1amQLの場合シール部からの最大漏えい率Qが許容漏えい 率以上になることがない場合は、常に機能を維持で きるので、基本的に発見された漏えいの増加を予測、 評価する必要はない。したがって、シール部からの 漏えいの場合、まず始めにこの両者の大小関係を正 確に評価、確認することが極めて重要である。 Qune は以下のように計算することができる。Qmv=CQY・Amer.v (1) ここでCA:流量係数:流体の比重量、 A:シール部の最大隙間面積(開口面積):内部流体の流出速度 ただし、この場合でも漏えい発生部が流出する流体 で侵食(エロージョン)され、漏えい率が増加する ことがあるため、特にシール部が炭素鋼製であるよ うな場合は注意が必要である。 2km>Q の場合シール部からの最大漏えい率Qが許容漏えい 率を超える場合は漏えい率の増加を予測評価し、そ の値が実際の漏えい率と一致し、かつ許容漏えい率以下であることを常に確認する必要がある。現時点で考えられる漏えい率の予測評価方法とし ては下記の2つが挙げられる。 i)シール部の経年劣化の進行を予測評価してその後の漏えい率を求める方法 ii) 漏えい発見後の漏えい率の測定実績を外挿してその後の漏えい率を求める方法 前者はパッキンの材質、形状、寸法などの各種条件、 金属性シール構造部の材質、構造、寸法、締付力な どの各種条件、そして使用条件(圧力、温度等)な ど、多種多様であることから、体系的にデータを収 集、分析してシール部の劣化を一般的に予測できる ようにすることは困難である。したがって、漏えい 率を予測評価する方法としては、後者の漏えい率測 定実績を外挿する方法が現実的である。 - シール部からの漏えいは徐々に進行し、急激に増 加することは少ないと考えられるので、それまでの 漏えい率の計測データを外挿し予測する方法が適し ている。具体的手法としては、下記が考えられる。 (Fig.3) ・ それまでの実測データを多項式で近似し、漏えい率の将来予測を実施する。 ・その後、継続的に実測した漏えい率のデータ を加えて上記と同様の手法で漏えい率の将来 予測を実施する。 ・以上を繰返すことにより正確な予測を行う。「水密性」機能低下・・・・・今回までの実測値(漏えい率) O....... 次回データ採取時の漏えい率 O・・・次々回データ採取時の漏えい率次回予測線経年劣化度 (漏えい率)今回予測線・....> --------次々回予測線**漏えいFig. 3運転時間 A method to predict a leak rate by extrapolation漏えい検出限界運転時間A method to predict a leak rate by extrapolation.実測データの外挿で漏えい率を予測するとなると、 問題となるのがデータの測定方法と測定時期である。 データ測定を行う時期は、当該系統あるいは機器の 機能喪失に対して十分な余裕のある時点で行う必要292があり、しかもその時の測定方法は当該系統あるい は機器の機能維持を担保するのに必要な測定精度を 有するものである必要がある。これらの関係を Fig. 4 に示す。「水密性」機能低下、機能喪失安全率と 余裕の確保Lad : 次回データ調取までの漏えい率増加量 レムE:漏えい率測定誤差「漏えい率」増加:漏えい率測定値運転時間| 今回データ採取時点 || 次回データ採取時点Fig. 4A method to determine the timing ofleak measurement. (3)(2)き裂や減肉などからの漏えいの予測方法 ・ き裂や減肉などからの漏えいの予測方法としては下 記の方法が考えられる。 i)き裂、減肉の進展速度を評価し、開口面積の 増加、すなわち漏えい率の増加を予測、計算する方法 ii) それまでの漏えい率の計測データを外挿し、漏えい率の増加を予測、計算する方法 以下にこれらの具体的方法について検討する。 ○き裂の進展予測から漏えい率を予測する方法き裂が応力腐食割れ(SCC)の場合、進展速度 は下記で与えられる。-2dt==C(K)““ここで、:き裂長さ、C,n:材料と環境に関す る係数、K:応力拡大係数である。 したがって、き裂開口面積Aと漏えい率Qは下記で 与えられる。 A=l ・ W(3) Q=Co・Y・A・ ここで、W:き裂幅、:漏えい流体の流出速度(= 2gJAP/、AP:耐圧機器内外の圧力差)で ある。-4(3) ・A・U(4) :漏えい流体の流出速度(= 耐圧機器内外の圧力差)で==C(4K)““以上のような手法で実際に漏えい率を予測する場 合、き裂長さと幅、特に幅の影響は大きいので、保 守的な評価となるよう、初期き裂の設定に配慮が必 要である。また、き裂進展モデルにも保守性が確保 されるよう、配慮する必要がある。なお、き裂にはSCCのほか、疲労割れがあるが、 これも同様に下記のように取り扱える。dedldt==C(AK)““dNdt dN de==C(AK)““f_-5ここで、N:繰返し回数、AK:応力拡大係数の変 化幅、 f:周波数(= )である。き裂の場合、き裂幅が狭いので、流出する流体に よって侵食(エロージョン)されると、開口面積へ の影響が大きく、漏えい率の増加につながる。この ため、特にシール部が比較的侵食されやすい炭素鋼 製であるような場合は注意が必要である。一方、減肉開口の進展予測は、き裂と異なり、進 展予測データがないので、予測が難しい。この場合 は次項に示す漏えい率の実測データから漏えい率を 予測する方法を採用することが考えられる。 2漏えい率の実測データから漏えい率を予測する方法き裂や減肉開口部からの漏えいも、前述のシール 部からの漏えいと同様、それまでの漏えい率の実測 データを外挿することにより、その後の漏えい率を 予測するという方法が考えられる。2.2 許容限界漏えい率の評価方法 - 漏えいを許容するとした場合、それをどの程度まで 許容するかが問題となる。そこで許容漏えい率を制限 する因子として考えられるものを下記のとおり抽出し た。 (1) 系統流量の余裕 - 機器からの漏えいが生じても当該機器および当該機 器が設置されている系統が安定して機能を維持できれ ば問題ないと考えられる。そのためには当該系統が有 している流体輸送能力の余裕以下に漏えいを制限する 必要がある。すなわち、下記が成立する必要がある。 Q295“ “漏えい事象の評価手法に関する検討“ “林田 貴一,Kiichi HAYASHIDA,青木 孝行,Takayuki AOKI
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