流体解析を応用した溶接部移動熱源の高速伝熱解析

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
溶接部の残留応力評価は、移動熱源である溶 接トーチからの入熱による構造物内部の非定 常温度分布を求める伝熱解析と、その結果に基 づいた熱弾塑性応力解析とに大別できる。特に 前者の解析は応力や歪みの影響をほとんど受 けないため、後者に対して独立に行うことが多従来、移動熱源である溶接トーチの伝熱問題 は、熱源が解析領域中を移動する非定常解析と して扱われてきた。しかし、非定常解析は多大 な計算時間と計算機の記憶容量を必要とする ため、特に数十パスの開先溶接を対象として3 次元解析を行うような場合、計算時間だけで2 ~3箇月を要することになり現実的でない。こ のため、溶接線に直交する2次元断面内の伝熱 解析[1]が良く用いられてきた。しかし、この ような解析では溶接線方向の熱流を無視する ことになるため、信頼性確保のため、溶接条件 によっては試験による校正等が必要となる。筆者らは、移動座標系を適用することにより 上記3次元伝熱解析を定常解析に帰着させ大 幅に計算時間を短縮できる手法 [2, 3, 4]に注目 し、流体解析技術を使用することにより簡便に このような解析が可能であることを確認した ので報告する。また、原子炉炉心シュラウドの溶接モックアップ試験を対象に良好な解析結 果が得られることを確認した事例を紹介する。
2. 解析手法1. 移動熱源である溶接トーチの位置を基準と した移動座標系を用いる[2,3,4]。解くべき方程 式としては、通常の伝熱方程式に対して移流項 が加わった以下の形となる。port + (7.マ) - マ (77) - q=0 (1)ここで、p:密度、h:比エンタルピ、1:時 刻、k:熱伝導率、T:温度、である。4は発 熱密度であり、入熱モデルにより分布が与えら れる。元は移流速度であり、注目点における熱 源との相対速度ベクトルを与える。軸対称形状 の溶接体で周方向溶接の場合は相対旋回方向 速度ベクトルとなる。(1)式は非圧縮流体のエネルギ輸送方程式と して知られている。溶接体が形状不変の流体で あると考えれば、前記の相対速度ベクトルを移 流速として与え、また、流入・流出境界条件と 熱源の設定を行うことにより溶接の伝熱解析 が可能となる。* 軸対称形状である原子炉炉心シュラウドの 溶接モックアップ試験を対象とし、周方向開先 溶接の一つのパスを選択した。開先部の軸対称 断面図を温度評価点の位置と共に図1に示す。 曲率半径は約 2.8m である。溶接体の材料は SUS 316L であり、TIG 溶接を用いる。溶接条件は以 下の通り: ・ 電流/電圧: 300A/10-11 V (DC) ・ 溶接速度: 107mm/min3.検証試験[5]* 軸対称形状である原子炉炉心シュラウドの 溶接モックアップ試験を対象とし、周方向開先 溶接の一つのパスを選択した。開先部の軸対称 断面図を温度評価点の位置と共に図1に示す。 曲率半径は約 2.8m である。溶接体の材料は SUS 316L であり、TIG 溶接を用いる。溶接条件は以 下の通り: ・ 電流/電圧: 300A/10-11 V (DC) . 溶接速度: 107mm/mintemperature [°C](H(C)5000_100 200 300 400time [sec] Fig. 2 Temperature history5.結言1(F)(H)UC(C)Fig. 1Section of groove weld22.解析条件- 解析に用いる物性値は、望月ら[6]により測定さ れたSUS316L と SUS304 の温度依存の値をベー スに、溶融部の対流による伝熱促進効果を考慮す るため融点以上の熱伝導率を4倍にした[7] もの を用いる, 入熱モデルとしては Goldak(1984)に よる二楕円体体積発熱密度分布モデル[1]を適 用する。溶接体の表面境界条件として、輻射お よび自然対流による放熱を考慮する。4.解析結果- 計算セル数が約 25 万の熱源付近に十分に格子 を集中させた格子モデルを用い、IBM Power4, 1.3GHz の CPU1個を使用して、僅か1時間程度 で収束解が得られた,収束解から求めた図1の4 点における温度履歴を測定値と共に図 2 に示す。 マーク有が解析値で、マーク無が測定値を示す。 両者は良好に一致していることがわかる。溶接時の移動熱源による伝熱現象は移動座 標系を用いることにより高効率な定常解析に 帰着させることができること、および流体解析 技術を用いるとこのような解析を簡便・高精度 に行うことができ、有用であることを示した。参考文献[1] Goldak, J. , Chakravarti, A., et al., 1984, “Anew finite element model for welding heat sources,” Metallurgical Transactions B,15B, pp. 299-305. [2] Gu, M., Goldak, J., and Hughes, E., 1993,“Steady state thermal analysis of welds with filler metal addition,” CanadianMetalluigial Quarterly, 32, (1), pp. 49-55. [3] Goldak, J., and Gu, M., 1995, “Computationalweld mechanics of the steady state,” Mathematical Modelling of Weld Phenomena 2, Ed. H. Cerjak, The Institute of Metals,pp. 207-225. [4] Chen, X., Becker, M., and Meekisho, L. , 1998,“Welding analysis in moving coordinates,““ Mathematical Modelling of Weld Phenomena 4,Ed. H. Cerjak, pp. 396-410. [5] Ichida, K., et al., 2005, “Proc. 2005 ASMEPressure Vessels and Piping Division Conference,” (July, 2005, Denver, CO, USA),PVP2005-71208. [6] 望月ら、1994、“厚板を貫通する配管の溶接による残留応力発生機構の検討”、溶接学会論文集、 12、(4) 、pp. 561-567. Goldak, J., Bibby, J., et al., 1986,“Computer modeling of heat flow in welds,““ Metallurgical Transactions B, v.17B, pp. 587-600.“ “流体解析を応用した溶接部移動熱源の高速伝熱解析 “ “内田 憲,Ken UCHIDA,角谷 利恵,Rie SUMIYA,室伏 正,Tadashi MUROFUSHI,神保 雅一,Masakazu JIMBO
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