赤外線サーモグラフィによる欠陥モニタリング

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
ムで温度場変動の計測を行った. 赤外線サーモグラフィから出力されるデジタルデータは,計測された赤外 - 経年劣化した機械・構造物の安全性保障が重要視さ 線の強度を 12 ビット整数値で表したものであり,この れている. 腐食減肉は,金属製構造物の重要な経年劣出力値のことを赤外線強度と呼ぶ.また,被計測物表 化問題の一つである. 腐食減肉の進行は,構造物の強面のある位置における,赤外線強度の時系列の変化を 度を低下させるだけではなく,孔食による漏洩等の事表す曲線を赤外線強度変動曲線と呼ぶことにする. 故原因となる.そこで,構造物の腐食減肉を検出・定 量評価できる非破壊検査法への要求が高まっている. 著者らはこれまでに,裏面に減肉欠陥を有する構造部 材に対して熱負荷を与えた直後の表面温度分布を赤外 三線サーモグラフィにより計測し,このデータを処理す ることにより,表面から減肉欠陥を定量的に非破壊評 価する手法を検討してきた(1-4本稿では,アクティブ加熱方法として持続時間の比 較的長いステップ状の熱負荷を供試体に与えた際の,10_05_1 152 525 3_ 3.5 4 赤外線強度分布の計測結果および赤外線強度変動曲線 Fig. 1 Descent curve of intensity of infrared radiation after のフーリエ解析結果に基づき,ステンレス鋼板の裏面 pulse heating obtained for flat bottom hole defects. 腐食減肉欠陥の深さ,大きさを定量評価する手法を示 す(3)一例として,円形平底穴欠陥に対して得られたパル 2. 時系列温度変動解析サーモグラフィ法ス加熱後の欠陥中心部の赤外線強度変動曲線を Fig. 1に示す.欠陥深さの違いにより表面から欠陥に熱が到 アクティブ加熱時の時系列温度変化には,面外方向 達する時間が異なることによって,健全部の曲線から の熱拡散状態の時間変化の影響が現れるため,これを の分岐傾向に差異がみられる.本研究では欠陥の大き もとに欠陥深さの推定を行うことができる.本実験でさ,深さを定量的に評価する手段として,この赤外線 は高速赤外線サーモグラフィを用いて毎秒 100 フレー 強度変動曲線の変化をフーリエ解析により定量化することを試みた.すなわち,赤外線強度変動曲線を次の係数を定量化の指標に用いた.
一例として,円形平底穴欠陥に対して得られたパル ス加熱後の欠陥中心部の赤外線強度変動曲線を Fig. 1 に示す.欠陥深さの違いにより表面から欠陥に熱が到 達する時間が異なることによって,健全部の曲線から の分岐傾向に差異がみられる.本研究では欠陥の大き さ,深さを定量的に評価する手段として,この赤外線 強度変動曲線の変化をフーリエ解析により定量化する ことを試みた。すなわち,赤外線強度変動曲線を次の ようにフーリエ級数展開して求められるフーリエ級数 係数を定量化の指標に用いた.338S() = + (on on This he, in \2) .. an-stycosmiserbr = = [ strosin Test- ここでは,AOの cos 成分の係数 aおよび sin 成分の 係数bを用いて,欠陥の位置,大きさおよび深さを定 量的に同定する方法を考えた.3.ステップ加熱による減肉欠陥同定ハロゲンランプを使い,試験片にステップ状の熱負 荷を与え,加熱時,およびその後の自然冷却時の試験 片表面の赤外線強度値の変化を計測した.測定に用い た試験片を Fig. 2 に示す. SUS316鋼の平板に機械加工 し, A から H の部分に図に示したような,異なる深さ の平底穴欠陥を導入した. ステップ加熱には 500 (W) ハロゲンライトを4基使用した. ステップ加熱の持続 時間は 20 秒とした.残存肉厚 1 mm の欠陥部と健全部 の赤外線強度値の時系列データをFig. 3 に示す.なお, ハロゲンランプを試験片に直接照射すると赤外線が試 験片表面に反射し,赤外線カメラによる計測に影響を 及ぼす.そこで,アクリル板が波長 3um 以上の赤外 線を吸収する性質を持つことを利用し,ハロゲンラン プの前にアクリル板フィルターを配置することにより 反射による影響をなくした.1810d (mm)|2100““4040)2004 040 コFig.2 Steel plate specimen with flat bottom hole defects.赤外線強度値の時系列データより欠陥深さを定量評 価する手段として,前述のフーリエ解析を用いた.こ こでは、赤外線強度値の時系列データをフーリエ級数 展開した際のフーリエ級数 aおよび6に注目し,係数 と欠陥の深さとの関係を調べた.本研究では a, およ び 6 を求めるにあたって, 0から 20 秒までの加熱過 程および, 20 から 40 秒までの自然冷却過程および,前記の 2 区間の連続である加熱・冷却過程の赤外線強 度変動曲線をフーリエ級数展開に使用した.さらに係 数A およびBを次のように定義した.* A = InCamas), B = In(low-bal) (2) ただし,添え字s および d は,それぞれ健全部および 欠陥部の値であることを表す.Defect Area - Sound Area -..Intensity of infrared radiation energy5 10 15 2025-3035Elapsed time (s) Fig.3 Response of infrared intensity after step heatingobtained for flat bottom hole defects.4.平底穴欠陥を有する試験片の計測結果20秒間ステップ加熱した際の,加熱過程および自然 冷却過程における係数 B,また加熱・冷却過程におけ る係数 A と欠陥深さの関係が良好な直線関係を示した. 一例として,加熱・冷却過程における係数 A と欠陥深 さの関係を Fig. 4 に示す.測定の再現性を確認するた め,測定は3回行った.6 5 4 341磨1st 'exp. 01 2nd exp. 01 3rd exp. *A2 10 12012 3 4 5 6 7 8 9Defect Depth (mm) Fig. 4 Relationship between coefficient A and defect depth during step heating and natural convection cooling.(316 Stainless Steel, Defect diameter: 10mm)Fig. 4 より,係数 A と欠陥深さの関係は,良好な直339線関係を示している.加熱過程の係数 B および冷却過 程の係数 B についても同様の関係が得られた. よって, 係数 A, B を使って欠陥深さを定量化できると考えら れる.また,3 回の測定値は,ほぼ同じ数値を示して おり,測定の再現性も高いと考えられる. 1.次に, 試験片全体で得られた表面温度分布画像を Fig. 5 に示す.また,試験片全体における加熱・冷却過程 のフーリエ係数aの分布を, Fig.6に示す.Fig.5 より, 赤外線カメラで撮影した表面温度分布画像のみでは, 欠陥の検出限界は欠陥深さ 4 mm 程度であることがわ かる.これに対して,Fig. 6 より,フーリエ係数 a、の 分布画像に基づけば、深さ7 mm の欠陥まで検出可能 であり,フーリエ係数の分布画像を用いることにより, 欠陥検出限界が向上していることがわかる.Fig. 5 Distribution of infrared intensity measured on the surface of steel plate with flat bottom hole defects.1401 5 100 158 200256 Fig. 6 Distribution of Fourier coefficient A obtained for steelplate with flat bottom hole defects.表面温度分布画像は計測した瞬間の表面温度のコン トラスト差を画像で表しているのに対して,フーリエ 係数 a, b, は計算に用いた区間全体における赤外線強 度曲線の形状の差を表している.Fig. 3 に示したように, 健全部と欠陥部の赤外変動曲線の形状の差は,赤外線 強度変動曲線全体に見られる.よって、ある瞬間の温 度分布と比較して,一定区間の赤外線強度変動曲線形 状の特徴を評価するフーリエ係数 a, b, に,欠陥の影 響による差異が出やすく,欠陥検出限界の向上につな がっていると考えられる.また、試験片全体における表面温度分布画像である Fig.5 と, フーリエ係数分布画像である Fig.6を比較す ると,加熱の不均一によると思われる温度不均一によ る画像のムラが,フーリエ係数分布画像において軽減 されていることがわかる. 試験片表面の加熱ムラは, 欠陥検出性の悪化につながる.加熱ムラの影響を受け る赤外線強度画像に対して,フーリエ解析では赤外線 強度の変化傾向の特徴を定量化している. このため, フーリエ係数分布をもとに欠陥検出を行えば、試験片 表面温度の不均一性の影響による欠陥の誤判定の可能 性を軽減できるものと考えられる.5. 円錐状欠陥の深さ推定結果本実験で用いた試験片を, Fig.7に示す. 一辺 100 mm, 板厚 10mm の正方形平板の中央に,円錐形状の人工減 肉欠陥を,放電加工により導入した. 円錐状欠陥の直 径および深さは, Fig.7に併記した表に示すとおりであ る. 試験片の材質は SUS316 鋼とした.100 5050_50[101005010120Defect diameter, D (mm)Defect depth, d(mm)| | |3|57Fig. 7 Dimension of SUS316 specimen with cone defectこの円錐型欠陥を有する試験片に対し, 円錐欠陥の 反対側表面から 20 秒間, ステップ加熱による熱負荷を 与え,同じ加熱側表面における温度分布を,赤外線サ ーモグラフィを用いて測定した. 1. 次に,円錐欠陥の形状および深さ推定方法について 示す.前述のように,平底穴欠陥を有する試験片に対 しステップ加熱を行った場合には,温度変動のフーリ エ解析から求められる係数 A, B と欠陥深さの間に良 好な直線関係が得られていた.そこで,この平底穴欠 陥について得られた係数 A, B と欠陥深さの直線関係340が, 円錐欠陥においても適用できるという仮定の下に, 円錐欠陥の形状および深さ推定を試みた.すなわち, 最小二乗近似を用いて直線の傾きおよび切片を求め, 係数 A, B と欠陥深さの較正関係式を作成した.一例として,直径 20mm, 円錐頂点における欠陥深 さが 5mm の円錐欠陥に対して,求められた自然冷却過 程の係数 B を基に,欠陥形状および深さを推定した結 果をFig. 8 に示す.欠陥の最大深さが精度よく推定で きているとともに,円錐欠陥の形状についても大まか な評価が可能であることがわかる. - 種々の試験片に対して実験を行い,係数 A, B に基 づき深さを推定した.その結果,欠陥深さと直径の形 状比が, 10:3 程度よりも大きい場合,平底穴欠陥に ついて得られた係数 A および B と欠陥深さの間の較正 関係を、ほぼそのまま適用することができ,それによ って、ほぼ正確に円錐頂部の欠陥深さを推定できるこ とがわかった.また,欠陥形状についても同様に,直 径と深さの形状比が 10: 3 程度より大きい場合,円錐 形状の大まかな推定が可能であった.これにより,板厚に比べて平面内寸法が比較的大き な減肉欠陥であれば,形状が複雑な自然欠陥であって も減肉深さを定量的に計測できる可能性があることが 明らかになった.14F Estimated depth 12F Actual depthDefect depth (mm)1 2 08 6420MAMA1020304050 60 70Location (pixel) Fig. 8 Estimated defect shape and depth of cone defect using coefficient B during natural convection cooling.5.結言1. 本研究では,ステップ加熱時の温度変動データを赤 外線サーモグラフィにより計測し,さらにこれをフー リエ解析することにより減肉欠陥同定を行う手法を開 発した.赤外線強度変動曲線をフーリエ級数展開した 結果, フーリエ係数 a, および 6 を用いて,平底穴減肉 欠陥の深さを定量化できた.また,フーリエ係数分布 を用いることにより,欠陥の検出性も向上することが わかった.次に,平底穴減肉欠陥で得られたフーリエ 係数と欠陥深さとの較正関係を,円錐形状の減肉欠陥 に適用した. 欠陥直径と欠陥深さの比が 10: 3 程度よ り大きい場合には,この較正関係に基づき,円錐頂部 においての欠陥深さおよび大まかな欠陥形状を推定で きることがわかった. * 本研究に対し,科学研究費補助金基盤研究(B)の援助 を受けた.ここに記して謝意を表する.参考文献 (1) 阪上隆英,松浦孝成,久保 純, 外野義弘, 久保司郎:パルス加熱赤外線サーモグラフィによる鋼板中 の減肉計測, 日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集, No.02-05, 2002-10, pp.217-218. (2) 阪上隆英,久保司郎,朝倉良章,松浦孝成,久保純:パルス加熱赤外線サーモグラフィによる鋼板腐 食減肉の定量評価,日本非破壊検査協会平成 15 年度春季大会講演概要集, 2003-5, pp.153-154. (3) 今西大輔,阪上隆英,久保司郎,遠藤健: ステップ加熱を用いた赤外線サーモグラフィによる減肉 欠陥同定法の開発, 日本機械学会関西学生会卒業研究発表講演会前刷集, 2005-3, p.3-7. (4) 遠藤 健,阪上隆英,久保司郎,朝倉良章:パルス加熱時の温度上昇比を用いた減肉欠陥深さの簡便 推定法, 日本機械学会材料力学部門講演会講演論文 集, No.03-11, 2003-9, pp.1013-1014.341“ “?赤外線サーモグラフィによる欠陥モニタリング“ “阪上 隆英,Takahide SAKAGAMI,久保 司郎,Shiro KUBO
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