3WR炉内構造物のニッケル基合金溶接部に発見された応力腐食割れの超音波探傷試験結果とその評価

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
1999 年 12 月、日本原子力発電(株)敦賀発電所 1 号機(沸騰水型軽水炉(BWR: Boiling Water Reactor)) の炉内構造物の一つであるシュラウドサポートに多数 のひび割れが発見された[1] (Fig.1) 調査の結果、原 因はシュラウドサポート溶接部(ニッケル基合金:イ ンコネル 182)に発生した応力腐食割れ(以下、SCC という。)であることが判明した。(Fig.2)この調査の 中で、原子炉圧力容器(以下、RPV : Reactor Pressure Vessel と略す。)の外面からシュラウドサポートと RPV との溶接部に対して超音波探傷試験(以下、UT 試験 という。)が実施され、当該溶接部に発生した SCC の 検出性やサイジング能力が調査された。この UT 試験 後、RPV 内部から接近し、当該 SCC 発生部の表面を 深さ約 0.5mm 毎を目標にグラインダー研削し、その都 度、液体浸透探傷試験(PT)を実施して欠陥指示が無 くなるまでこの作業を繰り返すという方法でひび割れ の実際の深さを測定した。この実測結果と UT 試験結果を比較、評価すること によって本 UT 試験手法の性能を評価、検証したの で、その結果を報告する。
2. 実施した UT 試験の特徴と意義 2.1 UT 試験を実施した溶接部の特徴
多数のひび割れ(SCC)が発見された溶接部は、 シュラウドサポートと RPV との溶接部(以下、H9 溶接部という。)であるが、この溶接部の周方向約1 m 長さについて UT 試験を実施した。 この溶接部の特徴としては、下記があげられる。 OBWR の実環境下に約30年という長期間、晒されて発生した自然欠陥(SCC)を内包している。 2当該溶接部は UT 検査が難しいと言われている、 異方性の高いインコネル溶接金属でできている。 3当該溶接部は圧力バウンダリーである RPV 本体に直接接続している。 2.2 UT 試験の意義 * 今回実施した UT 試験は次に示す点において従来 試験・研究と大きく異なる特徴を備えていると考え られる。 OBWR の実環境で発生した自然欠陥(SCC) に対342する UT 試験の探傷性能を確認できる。 2UT 試験後、欠陥部を徐々に削り取って実際の欠 * 陥寸法を確認し、その結果を UT 試験結果と比較することによって UT 試験性能を検証できる。 3RPV 外表面側から厚肉の RPV 本体を通して探傷 する UT 試験方法が最重要機器である RPV 本体 (低合金鋼部分)の健全性を判定できる能力を有 しているか否か判断できる。3. 実機溶接部の UT 試験要領 3.1 探傷試験範囲SCC は H9 溶接部全長にわたって発見されたが、そ のうちの 12 個のインディケーションを含む長さ約1 mの範囲について、RPV 外面から UT 試験を実施した。Circumferential WeldUpper Shroud Support (SUS 316)RPVInside: 46 cracks Outside: 10 cracksAxial WeldWeld Buildup (Alloy82)Upper Shroud SupportANInside: 11 cracksLower Shroud Support (Alloy 600)Low Alloy Steel Weld BuildupH9 WeldTemporary Weld forFabricationLower Shroud SupportInside: 8 cracks Outside: 1 crackWeld between ShroudSupport and RPVInside: 228 cracks Outside: 0 crackCracks remained within the Alloy 182&82 weld metal.(b) Location and number of crackingFig. 1 Structure of the shroud support and locations of cracking 3.2 UT 試験方法 1適用した UT 手法実機試験前に実施したモックアップ試験体の基礎 試験の結果を踏まえ、実機 SCC に対する UT 手法は、 垂直探傷法(縦波 0°)、斜角探傷法(横波 45°)、TOFD 法の3手法とした。 2探傷方法RPV 外面側の保温材を取り外し、RPV 胴にマグネッ ト固定式の軌道を取付け、探触子を搭載した駆動装置 がその軌道上を走行し探傷するという方法を採用した。 400 μm.300 μm 駆動装置の制御は制御装置で行い、超音波データの収 録はデータ収録装置で行うとともに、評価に必要な各 種データの処理はデータ処理装置で行った。Fig.2 Typical example of SCC observed at the H9JUNRPVCore ShroudShroud Support2010 100(000 (000 7000 10000 10001000Flow Baffle(a) Structure of shroud supportFig. 2 Typical example of SCC observed at the H93434. 実機溶接部の試験結果 - H9 溶接部の探傷試験範囲を前述の UT 手法で探傷 した結果は次の通りであった。 4.1 欠陥検出の結果 ,垂直探傷法、斜角探傷法(横波 45°) および TOFD 法の3手法を適用した結果、欠陥を検出できたのは、 対象とした SCC12 個中、それぞれ9個、7個、9個で あった。また、3手法のいずれかで検出できた SCC を全て集計すれば、結果として、探傷対象である SCC12 個中、全ての SCC を検出できたことになる。 (Fig.3)A:LUT B:SUT C:TOFD D:LUT+SUT+TOFDUT Detectedtability (%)A_ B_ _ DUT Methods Fig.3 UT Methods and Detectability4.2 欠陥サイジングの結果UT 試験でひび割れと識別できた 12 個の SCC につ いて、UT 試験で評価した深さ(Du) と UT 試験後に 当該 SCC を研削、除去し、直接、櫛形ゲージ等で実 測した深さ(Da)との関係を探傷方法別にプロット した結果を Fig. 4 に示す。ここで、深さとは、RPV 胴側の低合金鋼肉盛と H9 溶接部側のインコネル 82A LUT SUT O TOFD ----. : ASME PD CriteriaEstimated Crack Depth measured by UT : Du (mm)-15 -10 -5 0 _ 5_ 10 15 Actual Crack Depth: Da (mm) Fig.4 UT Results on Depth-Sizing肉盛との境界を基準“0”とし、そこから SCC 先端 位置までの寸法と定義した。なお、基準“0”から RPV 本体側を(-)、H9 溶接部側を(+)とした。ひび割れの先端位置は全て右半分内にサイジング されており、研削調査による実機のひび割れ確認結果 (全てのひび割れは RPV 本体までは進展していなか った。)と一致した。また、深さ測定誤差の平均値は -1.1mm で、標準偏差oの2倍が±5.2mm(RMS 誤差 2.5mm)であった。この値は米国の ASME 規格[2]で規 定されている UT サイジング精度の良否判定基準 (RMS 誤差≦0.25in.=6mm)を満足していた。5. 結言長期間運転後のPWR で発見されたインコネル溶接 一部の SCC(自然欠陥)を UT 試験した結果と UT 試験後に当該 SCC を徐々に削り取って直接ひび割れ深さ を測定した結果を比較し、適用した UT 手法の性能に ついて評価、検証した。以下に、本研究で得られた知 見を要約して示す。 (1) 本試験で用いた3種類の UT 手法はそれぞれ特性が異なり、短所を相互補完できる関係にある。こ れら3つの UT 手法を組合せることにより、欠陥 検出精度およびサイジング精度を著しく向上させることができる。 (2) 本試験で用いた3種類のUT 手法の組合せはシュラウドサポートのインコネル溶接部に発生した SCC が RPV 胴にまで進展しているか否かを判別 でき、RPV 本体、シュラウドサポート両者の健全性を評価できる十分な能力を有している。 (3)本試験で用いた3種類の UT 手法の組合せはインコネル溶接金属内を通過するビーム路程が 10mm 程度であれば、インコネル溶接部内の欠陥であっても検出およびサイジングが可能である。 (4) CRT 画面上に現れた異種金属境界部からの信号は欠陥検出やサイジングに必要な UT 波形、検出 位置を評価する上で有効に活用できる。参考文献 [1]火力原子力発電技術協会:平成 13 年版(平成 12 年度実績)原子力施設運転管理年報、406 頁-411 頁(2001年) [2]ASME Code Sec.XI. App. VII “ Performance Demonstration for Ultrasonic Examination SystemsSupplement6““ (2004)1900/12/09“ “3WR炉内構造物のニッケル基合金溶接部に発見された応力腐食割れの超音波探傷試験結果とその評価“ “青木 孝行,Takayuki AOKI,小林 広幸,Hiroyuki KOBAYSHI,樋口 真一,Shinichi HIGUCHI,清水 禎人,Sadato SHIMIZU
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