原子力プラント保守支援のための放射線分布・被曝線量評価システム

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
現在、原子力プラントの放射線環境下での保守 作業については、過去の定期検査時の被曝線量 実績値などを基に、作業計画を立案している。IC RP90年勧告に基づく法令改正に伴なう放射線管 理値の低下もあり、被曝線量を低減しながら作業 を効率化するには、保守作業中の線量率分布・被 曝線量をより正確に把握する必要がある。このため、 作業エリア内での保守作業進行に伴う放射線量率 分布の変化を高速に推定し、この結果を可視化す ると共に、被曝線量を推定して、放射線環境下で の保守作業、放射線管理業務を支援するシステム を開発した。
2. システム構成システムはFig.1 のように、三次元CADデータ、 線量率計算結果などを格納するデータ・サーバ、 三次元可視化インタフェース用計算機、及び放射 線分布計算サーバで構成する[1]。この内、三次元 可視化インタフェースは、放射線分布計算用の入 カデータをCADデータを基に自動生成し、線量 率分布・被曝線量についての計算結果を可視化 すると共に、配管・機器の線源強度を推定する機能、 及び配管・機器の移動・撤去、遮蔽体の設置などの入 力データの変更を、GUIを用いて、画面上で確認しながら入力可能とする機能を持つ。 * システムの特徴は、CADデータを利用して放射 線分布計算用の入力データを簡便に作成できる 点、放射線分布の変化を高速に計算できる点、線 量率の測定値から、配管・機器の線源強度を推定 できる点、及び放射線分布と被曝線量の推定結果 を視認性良く可視化できる点にある。計算機はネットワークで接続しており、放射線管 理者などユーザは、場所を限定することなく、利用 することが可能である。Data Server3D CAD dataPC for 3D Visualization Interface Generate inputEstimate source data from CADstrength dataVisualize radiationfield Input data change using Calculate and GUIvisualize exposureComponentdataWorker's moving pathCalculationresultsCalculation Server Calculate dose rateUserFig. 1System composition.3. システム機能の概要 3.1 線量率分布の高速計算機器の分解・撤去、遮蔽体の設置など保守作業 の進行に伴って、保守エリア内の機器配置が変化353する。これに対応した放射線分布の変化は、従来、 y線遮蔽計算に広く使用されているプログラムQA D[2]によって計算可能である。しかし、機器配置な どが変更された場合には、体系全体についての再 計算が必要であり、保守エリアのような大規模な体 系について、詳細に計算しようとすると非常に多く の時間を要する。そこで、QADをベースに、より高 速に計算する方式を提案した。この方式(Fig. 2)では、前の体系についての計 算結果を保存しておき、2回目以降の計算では、 前の体系と形状が変化したことにより、線量率が変 化する線源・評価点の組を発見し、この部分のみ を再計算して、現在の体系についての放射線量率 の分布を求める。このように、線量率の変化を計算 する際には、体系の一部のみを計算すればよく、 計算を大幅に高速化できる。Value for previous geometry usedDetectorpointMoveNew ly calculatedSourceFig. 2 Rapid calculation method.については、さらに、同一計算機内の複 の並列計算を実現した。高速化については、さらに、同一計算機内の複 数 cpu での並列計算を実現した。3.2 入力データの自動生成 - QADの放射線分布計算では、円柱、直方体な どの基本形状要素を用いて、線源や遮蔽物の幾 何形状を表現する。従って、入力データをCADデ ータから自動生成するには、定義方法の異なるC ADの形状データを、基本形状要素の組合せで再 現する必要がある。しかし、形状を忠実に再現する だけでは入力データの形状数が非常に多くなり、 計算時間が増大するという問題がある。従来は遮 蔽計算の専門家が計算精度とのバランスをとりな がら、計算モデルの形状を決定していた。そこで、 本システムではこれと同様の方法により入力デー タを生成するアルゴリズムを開発した。 さらに、入力データ生成の過程で、電線管など、線源でもなく遮蔽効果も小さい構造物は自動的に 省いて、入力データに含めないようにしている。こ れらにより、入力データの形状数を大幅に低減できる。また、線源については、例えば、配管の口径・長 さなどから、計算精度を落とさず高速計算の可能 な線源メッシュを自動的に生成する。3.3 入力インタフェース保守作業中には機器や配管が分解され、移動 され、また、新たに遮蔽体が追加される。これに対 し、配管・機器の分解と移動を、ユーザが三次元 表示で確認しながらマウス・キーボードを用いて実 施できるGUIを用意した。機器はパーツごと、配管 は任意の長さに分解でき、分解した配管・機器は 自由に移動できる。遮蔽体については、任意のサ イズの遮蔽体を定義・追加するGUIを用意した (Fig.3)。遮蔽体の配置は、線量率分布や線源と の関係を見ながら指定でき、追加後の移動や撤去 も容易である。入力後のユーザの要求に従い、形 状変更された新たな体系について、システムは再 計算の必要な線源・評価点の組の発見、計算のた めの入力データの生成、分布計算の一連の処理 を自動的に実施する。Dialog for shape inputDialog for position inputInstalledshieldFig. 3Input method for radiation shield.3.4 線源強度の推定 ・配管・機器の線源強度は、プラントの運転に伴 ない変化する。このため、従来は、冷却水の水質 データなどを参考にしながら、遮蔽専門家が線源 強度を設定していた。線源強度は線量率分布の 計算結果に大きく影響するため、計算精度の向上 及び強度設定の省力化を目的に、定期検査時な354どに測定される線量率の値から、配管・機器の線 源強度を推定する方法を提案した[3]。線源強度の推定では、測定点の座標とその点 での線量率の測定値を与える。この測定値と線量 率計算プログラムでの計算値との差の二乗和 J を目的関数として、これを最小化する各部品グル ープの線源強度を、非線形最適化手法を用いて 決定する。これにより、測定値と計算値の差が最小とな る線源病腹が推定される。線源強度推定のためには、同等の強度を持つと 考えられる部品のグループ化、測定点座標と線量 率測定値の入力が必要である。これらの入力及び 線源強度推定結果の可視化のためのインタフェー スを開発した。これにより、GUI上で確認しながら、 強度推定のための入力を簡便に実施できる。また、 推定結果については、得られた線源強度を色及 び数値で示すと共に、推定強度を使用した場合の 線量率計算値と測定値の比較表示も可能とした。3.5 線量率分布・被曝線量の可視化線量率分布の計算結果は、構造物と併せて三 次元で可視化する。 Fig. 4 のように指定した線量率 の等値面を構造物に重ねて表示するほか、空間 全体の分布概要を示すボリューム表示やx、y、z 軸に垂直な断面上の分布表示が可能である。い ずれも線量率の強度分布を、色で表現すると共に、 構造物との関係を把握しやすくするため、半透明 で表示する。このように放射線分布を可視化するこ とによって、構造物と線量率分布の関係が容易に、 視認性良く確認できる。Radiation Exposure Moving Exposure pathRadiation fieldRadiation Field (Isosurface display)Dose rateMaintenancepersonFig. 4 Visualization of radiation field and exposure.被曝線量についても、図のように、推定に使用し た線量率分布と作業動線・作業時間・被曝線量な ビを構造物とともに三次元で可視化して確認する ことができる。4.結言放射線量率分布及び被曝線量を高速に計算し て可視化するシステムを開発した。 沸騰水型原子 力プラントの冷却材浄化系の再生熱交換器室など を対象に評価を実施し、遮蔽体設置、機器移動な どの保守作業進行に伴なう放射線分布の変化を、 高速に計算できることを確認した。線量率分布計算のための入力データ自動生成 機能については、格納容器内や再生熱交換器室 のような複雑な体系に対しても、CADデータの利 用により入力データが自動生成でき、配管・機器 の分解・移動や遮蔽体の設置もGUIで容易に指 定できる。また、線源強度の推定については、テス ト問題により、推定アルゴリズムの妥当性を確認し た。さらに、計算結果の可視化機能については、 線量率分布を構造物と共に三次元で可視化する ことにより、構造物と線量率、さらには被曝線量と の関係が視認性良く提示できることを確認した。開発システムは、保守作業のみならず、原子力 プラントの廃炉時解体作業やPET(positron amission tomography)など医療現場での被曝線量 の低減のためにも有効であると考えている。参考文献1] Ohga, Y., Fukuda, M., Shibata, K., Kawakami,T., Matsuzaki, T., “A System for Calculation and Visualization of Radiation Field for Maintenance Support in Nuclear Power Plants,” ICRS-10 / RPS 2004 Conferences, May 9-14, Funchal,Portugal (2004). 2](財)高度情報科学技術研究機構、“第 14 回原 子力コード開発・利用ワークショップQAD-CGGP2R テキスト”(2002). 3] 大賀幸治、福田光子、“放射線分布評価シス テムの線源強度推定機能の開発”、日本原子 力学会「2004年秋の大会」予稿集 L8 (2004).“ “原子力プラント保守支援のための放射線分布・被曝線量評価システム “ “大賀 幸治,Yukiharu OHGA,福田 光子,Mitsuko FUKUDA
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