マルテンサイト変態を利用した SUS304 鋼 溶接材中の真通疲労き裂の非破壊評価
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カテゴリ: 第2回
1.緒言
より、SUS304 鋼母材中の貫通および非貫通き裂で得られた上記の諸関係が成立するかどうか調べた。 SUS304 鋼は、不安定なオーステナイト相を持つオ ーステナイト系ステンレス鋼として知られており、通2.実験 常、室温近傍において延性かつ非磁性的性質を示すが、 強変形や大きな応力を受けると、SUS304 鋼中のオース2.1 SUS304 鋼平板疲労試験 テナイト相の一部がマルテンサイト相に変態して、そこ 供試材には SUS304 鋼を用い、溶接材料には TGS-308| の部分が脆性かつ強磁性的な特性を示すようになる。 を用いた。それぞれの化学成分を表1に示す。図1に - これまで 10-5)に、著者らは、室温中において、貫通 1-4) - 示すように、試験片中央部に V形開先突合せ溶接を施 および非貫通がき裂入り SUS304 鋼の疲労試験を行い、 し、長さ 2a=2.9mm の貫通切欠を放電加工した厚さ き裂近傍で塑性誘起変態によって発生したaマルテン t=3mm の平板試験片を用いた。切欠は試験片スパン中 サイト相(以下、「a’相」と略記)の分布状態を定量的に 央に導入した。ただし、V 型開先としたので、切欠き 明らかにし、その変態領域を強制磁化して得られるき 位置は表面において母材と溶接部の境界線上にあるが 裂近傍の垂直漏洩磁束密度B,のピーク間距離 21 とき裂裏面においては溶接部から 2mm 程度離れた場所にあ 長さ 2a および最大ピーク値 Bamme、最小ピーク値 Barning る。き裂進展試験は、応力比 R=0.1~0.4 の4段階に変 と応力拡大係数の最大値 Kmの間に良好な直線関係が 化させて荷重制御の下で行った。得られた da/dN-AK 線 成立することを見出した。図を図2に示す。白抜き記号は、過去に行った SUS304 本研究では、より実機に近い条件を想定し、当初よ りマルテンサイト相以外の強磁性相(フェライト相)を
Table 1 Chemical compositions of SUS304 parentstainless steel and TGS-308 filler wire 有する SUS304 鋼溶接材の疲労試験を行い、疲労き裂(mass %). 近傍から発生する漏洩磁束密度分布を測定することにMaterial c Si Mn P s Ni Cr Mo
2.実験 2.1 SUS304 鋼平板疲労試験 供試材には SUS304 鋼を用い、溶接材料には TGS-308 を用いた。それぞれの化学成分を表1に示す。図1に 示すように、試験片中央部に V形開先突合せ溶接を施 し、長さ 2a=2.9mm の貫通切欠を放電加工した厚さ t=3mm の平板試験片を用いた。切欠は試験片スパン中 央に導入した。ただし、V 型開先としたので、切欠き 位置は表面において母材と溶接部の境界線上にあるが、 裏面においては溶接部から 2mm 程度離れた場所にあ る。き裂進展試験は、応力比 R=0.1~0.4 の4段階に変 化させて荷重制御の下で行った。得られた da/AN-AK線 図を図2に示す。白抜き記号は、過去に行った SUS304Table 1 Chemical compositions of SUS304 parentstainless steel and TGS-308 filler wire(mass %). Material C Si Mn P s Ni Cr Mo |SUS304 0.05 0.44 0.78% 0.03|0.01| 8.06|18.2- |TGS-308 0.05 | 0.37| 1.6 0.02 0 19.54|19.8 0.1 |375R18““136。かA in detail 10:1WaldrantFig. 1 Specimen geometry (unit:mm).SUS304 WeldR%3D0.1 R=0.2 |R=0.3 [R-30.4da/dN , mm/cycleTSCこれでうれしいわれます1016- -132 0 25 30Stress intensity factor range, AK, MPavm Fig. 2 Comparison of da/dN-AK behavior in SUS304and its weldment at 293K in air.鋼貫通き裂材試験の結果 10-40を示し、黒塗り記号は今回 の溶接材の結果を示す。溶接材、母材共に安定成長期 のき裂進展を示していることが分かる。また、SUS304 鋼母材では、R 比の増加とともに da/dN が増加する傾 向が見られたが、溶接材では、R 比の影響は小さく、 母材の R=0.4 の場合と同程度の速い速度でき裂が進展 したことが分かる。 2.2 き裂上空の漏洩磁束密度分布の測定 き裂上空の漏洩磁束密度の測定には、島津製作所製フ ラックスゲートセンサ(FG、測定範囲 1~10G)を用 いた。測定前に試験片の磁化方向を既知一定の方向に 整えるため、消磁器で自然磁化の影響を取り除き(消 磁処理)、電磁石を用いて約 0.5T の外部飽和磁界を試 料に印加した(着磁処理)。着磁の方向は、き裂進展方 向(x軸方向) および板厚方向(Z軸方向の2方向とし、 漏洩磁束密度の板厚方向成分 B,の測定は、環境磁場の 影響を除外するために、アルミ箔で覆った磁気シール ドボックス内で行った。 FG のリフトオフ値は、センサ ーの測定限界を考慮して、x 軸方向着磁では 3mm、z 軸方向着磁では 4mm とし、き裂を中心として 37mm(試 験片幅方向)×23mm(長手方向)の矩形状領域内で x、y 方向ともに 1mm 間隔の格子点上で B, の自動測定を行 った。16 IV ZI(a) Before fatigue testModified FSreadingVata', % ■ 12.00 -14.00 ■10.00 -12.00 08.00 -10.00 | 0 6.00 -8.0004.00 -6.00 | 口 2.00 -4.00 10 0.00-2.00(b) During fatigue test; 2a=17.9mmFig. 3Contour maps of ferrite scope measurements around a fatigue crack before and during fatigue test.3. 実験結果 3.1 き裂近傍のa’相分布a*相変態率 V はフェライトスコープ(FS) 11-5)を用い て試験片表面および裏面のき裂周辺領域を 1mm 間隔 の格子点状に測定した。図 3(a)に、R=0.2 における疲労 試験前の FS の測定結果を示す。SUS304 鋼母材は非磁 性であるため、溶接部以外では FS の読みの補正値はほ ぼ 0%であったが、溶接部では最高 12%程度の値を示 した。これは、溶接の際に生成されたフェライト相に よるものであると思われる。図 3(b)に繰返し数 N130 kcycles、2a=17.9mm の時に得られた FS の測定結果 Vard をコンター図で示す。図 3(6)には、当初より存在 した図 3(a)のフェライト相の分布 V に疲労変形によっ て生成したa'相の分布 V』が重畳した分布 Vard. とな っているが、疲労き裂先端の位置(-8,0)、 (8,0)近傍で 12% 程度と周囲より高い FS の読みの補正値を示し、溶接部 のフェライト相に加え変態マルテンサイト相による磁 化の増加を判別することができた。 3.2き裂上空の漏洩磁束密度分布 * V 形開先突合せ溶接のため、試験片の表裏面で溶接 ビードの幅が異なり、漏洩磁束密度分布形態が異なっ た。そこで、き裂の進展とともに変化する試験片表裏 両面の B, の分布を測定した。x軸方向着磁の B,分布を376--m-1-|フロンアンフ11-----------Z-axis (gauss]Fatigue Crack--*-Z-axis (gauss]1|--| ---|----------- FatigueCrack シーンまで。-Dzmini---11915311351912612 18 |-0.2いいいいいいいX-axis [mm]a axis [mm][mm]/ -18 -12-18 -12-60206|12 18 円Y-axi mlNotchNotchFig. 4 1(a) x-dir. Magnetization(b) z-dir. magnetization 3D distributions of vertical magnetic flux density B, above a fatigue crack in SUS304 weldment; 2a=18.1mm, N440kcycles.o & R=0.1 A & AR=0.2 D&DR-30.3◆ & ◆ R %3D0.4 Open: Front surface Solid: Back surfaceo & R=0.1 A & A R=0.2 ロ & R %3D0.3◇&◆R=0.4 Open: Front surface Solid: Back surfaceReal crack length, 2a, mmReal crack length, 2a, mm18SUS304 weldment fatigued at 297Kx-dir. magnetization Front and backsurfaces;lift-off 3mmSUS304 weldment fatigued at 297KZ-dir, magnetization Front and back surfaces;lift-off: 4mm101201020 Distance between Bzmax and Bzmin, 21, mm(a)x-dir. magnetizationDistance between Bzmax and Bzmin, 21, mm(b) z-dir. magnetizationFig. 5. Relations between 2a and 21 on the front and back surface sides of fatigued specimens. 図4(a)に、またz軸方向着磁の B,分布を図4(b)に示す。 1mm 以上ないと、21 の測定精度が劣化する傾向が見ら x軸方向着磁では、母材中の貫通 1-4)および非貫通5)の れた。このため、図 5(a)のデータ点のばらつきも母材 場合と同様、溶接部のフェライト相による B, 分布の中中の貫通き裂の場合よりも少し大きくなった。なお、 にき裂先端のマルテンサイト変態によって生じた正負図5(b)に示した z 軸方向着磁の場合にも、溶接部の影 4つのピークを得た。そこで、最外殻の正負のピーク 響はあるものの、母材中の貫通き裂 11-1)と同様、試験片 間距離を 21 とし、21 とき裂長 2の関係について調べ。 の表裏で同符号の2 つのピークが得られ、ピーク間距 た。結果を図 5(a)、(b)に示す。x 軸方向に着磁した図離 21 と 2a の間には良好な線形関係が得られた。 5(a)より、表面、裏面ともに、R 比の値によらず、21 図6(a)および(b)に、B,のピーク値 Brimag、Bamiとその と 2aが良好な線形関係を示している。従って、ピーク時の応力拡大係数の最大値 Km の関係について調べた 間距離 21 を測定することによりき裂長 2a の推定が可 結果を示す。図 6(a)の x 軸方向着磁の場合、試験片表 能であると言える。しかし、周囲の溶接部の磁化の影面の正負のピーク値 Brime と Barmin の値は、R 比の値に 響が強く、SUS304 母材中の貫通き裂の場合よりも判別よらず、Kavとの間に良好な線形関係を示した。また、 できるピーク間距離の分解能は悪く、き裂長増分が図6(b)のz軸方向着磁の場合には、表面で2つの正のeSUS304 weldment fatigued at 297Kx-dir. magnetization Front surface;lift-off: 3mmのシスさんってなんで、DO0Peak value of Bzmax or Bzmin,G2000000000OR=0.1 AR-0.2 O R %3D0.3 ● R=0.440Maximum stress intensity factor, Kmax, MPavm(a)x-dir. magnetizationFig. 6 Relations between Bzmax and Kmax obtained from FG measurements on the front and back surface sidesof fatigued specimens. ピーク、裏面で 2つの負のピークが得られたが、それ。 ず、2a-21 の関係および Briman-KimaxBrmin-Kmax の らのピーク値 B.me、B... の値はx軸方向着磁の場合と は良好な線形関係が成立することが分かった。従 同様に、R 比の値に無関係に、Konの値と良好な線形溶接部近傍の強磁性相中に埋没した疲労き裂にこ 関係を示している。以上の結果から、溶接材の場合に も、変態したa’相による漏洩磁束密度分布の変 も、その漏洩磁束密度分布を測定することにより、疲 定することにより、き裂長 2. と負荷応力拡大係数 労き裂進展の応力拡大係数の最大値の推測が可能であ大値 Komuの推定が可能であることが示された。 ると結論できる。4.結言本研究では、室温(297 K) ・大気中において、応力比 R=0.1~0.4 で SUS304 鋼溶接材中の貫通疲労き裂進展 試験を行い、き裂近傍の強変形領域中に塑性誘起変態 によって生じたa'相変態率および試験片を磁化して得 られた垂直漏洩磁束密度 B, の分布を測定し、B,のピー ク間距離 21 とき裂長 2a、ならびに B, のピーク値 B.me および B...と応力拡大係数の最大値 Kmavとの関係を調 べた。その結果、これまでに報告してきた非磁性母材 中の貫通および非貫通き裂同様、応力比 R の値によらSUS304 weldment fatigued at 297K z-dir, magnetization; lift-off: 4mm2000,0000 A06AB01A008月08Peak yalue of Bzmax or Bzmin, G& R%3D0.1 A & R=0.2 ロ & R=0.3◇ & R%3D0.4 | Open: Front surfaceSolid: Back surface400301020 30 40 Maximum stress intensity factor, Kmax, MPavm(b) z-dir. magnetizationず、2a-21 の関係および Baman-Kimary Bamin-Kimax の関係に は良好な線形関係が成立することが分かった。従って、 溶接部近傍の強磁性相中に埋没した疲労き裂について も、変態したa’相による漏洩磁束密度分布の変化を測 定することにより、き裂長 2と負荷応力拡大係数の最 大値 Kamerの推定が可能であることが示された。参考文献[1] 中曽根ほか3名、機構論 No.00-17('00)、pp. 573-574. [2] 中曽根ほか3名、機構論 No.010-1('01)、pp. 107-108. [3] 日本 AEM 学会、電磁破壊力学調査研究分科会報告書、JSAEM-R-9803('99)、R-9903('00)、R-0005('01). [4] 中曽根ほか3名、日本 AEM学会誌、9-2('01)、pp. 123-130. [S] 中曽根ほか4名、機講論 No.03-11('03)、pp.321-322.[6] Bi? vt ASM Handbook, 19, ASM Int. ('97), pp. 1 159-160378“ “マルテンサイト変態を利用した SUS304 鋼 溶接材中の真通疲労き裂の非破壊評価“ “中曽根 祐司,Yuji NAKASONE,岩崎 祥史,Yoshifumi IWASAKI,大橋 聡,Satoshi OHASHI
より、SUS304 鋼母材中の貫通および非貫通き裂で得られた上記の諸関係が成立するかどうか調べた。 SUS304 鋼は、不安定なオーステナイト相を持つオ ーステナイト系ステンレス鋼として知られており、通2.実験 常、室温近傍において延性かつ非磁性的性質を示すが、 強変形や大きな応力を受けると、SUS304 鋼中のオース2.1 SUS304 鋼平板疲労試験 テナイト相の一部がマルテンサイト相に変態して、そこ 供試材には SUS304 鋼を用い、溶接材料には TGS-308| の部分が脆性かつ強磁性的な特性を示すようになる。 を用いた。それぞれの化学成分を表1に示す。図1に - これまで 10-5)に、著者らは、室温中において、貫通 1-4) - 示すように、試験片中央部に V形開先突合せ溶接を施 および非貫通がき裂入り SUS304 鋼の疲労試験を行い、 し、長さ 2a=2.9mm の貫通切欠を放電加工した厚さ き裂近傍で塑性誘起変態によって発生したaマルテン t=3mm の平板試験片を用いた。切欠は試験片スパン中 サイト相(以下、「a’相」と略記)の分布状態を定量的に 央に導入した。ただし、V 型開先としたので、切欠き 明らかにし、その変態領域を強制磁化して得られるき 位置は表面において母材と溶接部の境界線上にあるが 裂近傍の垂直漏洩磁束密度B,のピーク間距離 21 とき裂裏面においては溶接部から 2mm 程度離れた場所にあ 長さ 2a および最大ピーク値 Bamme、最小ピーク値 Barning る。き裂進展試験は、応力比 R=0.1~0.4 の4段階に変 と応力拡大係数の最大値 Kmの間に良好な直線関係が 化させて荷重制御の下で行った。得られた da/dN-AK 線 成立することを見出した。図を図2に示す。白抜き記号は、過去に行った SUS304 本研究では、より実機に近い条件を想定し、当初よ りマルテンサイト相以外の強磁性相(フェライト相)を
Table 1 Chemical compositions of SUS304 parentstainless steel and TGS-308 filler wire 有する SUS304 鋼溶接材の疲労試験を行い、疲労き裂(mass %). 近傍から発生する漏洩磁束密度分布を測定することにMaterial c Si Mn P s Ni Cr Mo
2.実験 2.1 SUS304 鋼平板疲労試験 供試材には SUS304 鋼を用い、溶接材料には TGS-308 を用いた。それぞれの化学成分を表1に示す。図1に 示すように、試験片中央部に V形開先突合せ溶接を施 し、長さ 2a=2.9mm の貫通切欠を放電加工した厚さ t=3mm の平板試験片を用いた。切欠は試験片スパン中 央に導入した。ただし、V 型開先としたので、切欠き 位置は表面において母材と溶接部の境界線上にあるが、 裏面においては溶接部から 2mm 程度離れた場所にあ る。き裂進展試験は、応力比 R=0.1~0.4 の4段階に変 化させて荷重制御の下で行った。得られた da/AN-AK線 図を図2に示す。白抜き記号は、過去に行った SUS304Table 1 Chemical compositions of SUS304 parentstainless steel and TGS-308 filler wire(mass %). Material C Si Mn P s Ni Cr Mo |SUS304 0.05 0.44 0.78% 0.03|0.01| 8.06|18.2- |TGS-308 0.05 | 0.37| 1.6 0.02 0 19.54|19.8 0.1 |375R18““136。かA in detail 10:1WaldrantFig. 1 Specimen geometry (unit:mm).SUS304 WeldR%3D0.1 R=0.2 |R=0.3 [R-30.4da/dN , mm/cycleTSCこれでうれしいわれます1016- -132 0 25 30Stress intensity factor range, AK, MPavm Fig. 2 Comparison of da/dN-AK behavior in SUS304and its weldment at 293K in air.鋼貫通き裂材試験の結果 10-40を示し、黒塗り記号は今回 の溶接材の結果を示す。溶接材、母材共に安定成長期 のき裂進展を示していることが分かる。また、SUS304 鋼母材では、R 比の増加とともに da/dN が増加する傾 向が見られたが、溶接材では、R 比の影響は小さく、 母材の R=0.4 の場合と同程度の速い速度でき裂が進展 したことが分かる。 2.2 き裂上空の漏洩磁束密度分布の測定 き裂上空の漏洩磁束密度の測定には、島津製作所製フ ラックスゲートセンサ(FG、測定範囲 1~10G)を用 いた。測定前に試験片の磁化方向を既知一定の方向に 整えるため、消磁器で自然磁化の影響を取り除き(消 磁処理)、電磁石を用いて約 0.5T の外部飽和磁界を試 料に印加した(着磁処理)。着磁の方向は、き裂進展方 向(x軸方向) および板厚方向(Z軸方向の2方向とし、 漏洩磁束密度の板厚方向成分 B,の測定は、環境磁場の 影響を除外するために、アルミ箔で覆った磁気シール ドボックス内で行った。 FG のリフトオフ値は、センサ ーの測定限界を考慮して、x 軸方向着磁では 3mm、z 軸方向着磁では 4mm とし、き裂を中心として 37mm(試 験片幅方向)×23mm(長手方向)の矩形状領域内で x、y 方向ともに 1mm 間隔の格子点上で B, の自動測定を行 った。16 IV ZI(a) Before fatigue testModified FSreadingVata', % ■ 12.00 -14.00 ■10.00 -12.00 08.00 -10.00 | 0 6.00 -8.0004.00 -6.00 | 口 2.00 -4.00 10 0.00-2.00(b) During fatigue test; 2a=17.9mmFig. 3Contour maps of ferrite scope measurements around a fatigue crack before and during fatigue test.3. 実験結果 3.1 き裂近傍のa’相分布a*相変態率 V はフェライトスコープ(FS) 11-5)を用い て試験片表面および裏面のき裂周辺領域を 1mm 間隔 の格子点状に測定した。図 3(a)に、R=0.2 における疲労 試験前の FS の測定結果を示す。SUS304 鋼母材は非磁 性であるため、溶接部以外では FS の読みの補正値はほ ぼ 0%であったが、溶接部では最高 12%程度の値を示 した。これは、溶接の際に生成されたフェライト相に よるものであると思われる。図 3(b)に繰返し数 N130 kcycles、2a=17.9mm の時に得られた FS の測定結果 Vard をコンター図で示す。図 3(6)には、当初より存在 した図 3(a)のフェライト相の分布 V に疲労変形によっ て生成したa'相の分布 V』が重畳した分布 Vard. とな っているが、疲労き裂先端の位置(-8,0)、 (8,0)近傍で 12% 程度と周囲より高い FS の読みの補正値を示し、溶接部 のフェライト相に加え変態マルテンサイト相による磁 化の増加を判別することができた。 3.2き裂上空の漏洩磁束密度分布 * V 形開先突合せ溶接のため、試験片の表裏面で溶接 ビードの幅が異なり、漏洩磁束密度分布形態が異なっ た。そこで、き裂の進展とともに変化する試験片表裏 両面の B, の分布を測定した。x軸方向着磁の B,分布を376--m-1-|フロンアンフ11-----------Z-axis (gauss]Fatigue Crack--*-Z-axis (gauss]1|--| ---|----------- FatigueCrack シーンまで。-Dzmini---11915311351912612 18 |-0.2いいいいいいいX-axis [mm]a axis [mm][mm]/ -18 -12-18 -12-60206|12 18 円Y-axi mlNotchNotchFig. 4 1(a) x-dir. Magnetization(b) z-dir. magnetization 3D distributions of vertical magnetic flux density B, above a fatigue crack in SUS304 weldment; 2a=18.1mm, N440kcycles.o & R=0.1 A & AR=0.2 D&DR-30.3◆ & ◆ R %3D0.4 Open: Front surface Solid: Back surfaceo & R=0.1 A & A R=0.2 ロ & R %3D0.3◇&◆R=0.4 Open: Front surface Solid: Back surfaceReal crack length, 2a, mmReal crack length, 2a, mm18SUS304 weldment fatigued at 297Kx-dir. magnetization Front and backsurfaces;lift-off 3mmSUS304 weldment fatigued at 297KZ-dir, magnetization Front and back surfaces;lift-off: 4mm101201020 Distance between Bzmax and Bzmin, 21, mm(a)x-dir. magnetizationDistance between Bzmax and Bzmin, 21, mm(b) z-dir. magnetizationFig. 5. Relations between 2a and 21 on the front and back surface sides of fatigued specimens. 図4(a)に、またz軸方向着磁の B,分布を図4(b)に示す。 1mm 以上ないと、21 の測定精度が劣化する傾向が見ら x軸方向着磁では、母材中の貫通 1-4)および非貫通5)の れた。このため、図 5(a)のデータ点のばらつきも母材 場合と同様、溶接部のフェライト相による B, 分布の中中の貫通き裂の場合よりも少し大きくなった。なお、 にき裂先端のマルテンサイト変態によって生じた正負図5(b)に示した z 軸方向着磁の場合にも、溶接部の影 4つのピークを得た。そこで、最外殻の正負のピーク 響はあるものの、母材中の貫通き裂 11-1)と同様、試験片 間距離を 21 とし、21 とき裂長 2の関係について調べ。 の表裏で同符号の2 つのピークが得られ、ピーク間距 た。結果を図 5(a)、(b)に示す。x 軸方向に着磁した図離 21 と 2a の間には良好な線形関係が得られた。 5(a)より、表面、裏面ともに、R 比の値によらず、21 図6(a)および(b)に、B,のピーク値 Brimag、Bamiとその と 2aが良好な線形関係を示している。従って、ピーク時の応力拡大係数の最大値 Km の関係について調べた 間距離 21 を測定することによりき裂長 2a の推定が可 結果を示す。図 6(a)の x 軸方向着磁の場合、試験片表 能であると言える。しかし、周囲の溶接部の磁化の影面の正負のピーク値 Brime と Barmin の値は、R 比の値に 響が強く、SUS304 母材中の貫通き裂の場合よりも判別よらず、Kavとの間に良好な線形関係を示した。また、 できるピーク間距離の分解能は悪く、き裂長増分が図6(b)のz軸方向着磁の場合には、表面で2つの正のeSUS304 weldment fatigued at 297Kx-dir. magnetization Front surface;lift-off: 3mmのシスさんってなんで、DO0Peak value of Bzmax or Bzmin,G2000000000OR=0.1 AR-0.2 O R %3D0.3 ● R=0.440Maximum stress intensity factor, Kmax, MPavm(a)x-dir. magnetizationFig. 6 Relations between Bzmax and Kmax obtained from FG measurements on the front and back surface sidesof fatigued specimens. ピーク、裏面で 2つの負のピークが得られたが、それ。 ず、2a-21 の関係および Briman-KimaxBrmin-Kmax の らのピーク値 B.me、B... の値はx軸方向着磁の場合と は良好な線形関係が成立することが分かった。従 同様に、R 比の値に無関係に、Konの値と良好な線形溶接部近傍の強磁性相中に埋没した疲労き裂にこ 関係を示している。以上の結果から、溶接材の場合に も、変態したa’相による漏洩磁束密度分布の変 も、その漏洩磁束密度分布を測定することにより、疲 定することにより、き裂長 2. と負荷応力拡大係数 労き裂進展の応力拡大係数の最大値の推測が可能であ大値 Komuの推定が可能であることが示された。 ると結論できる。4.結言本研究では、室温(297 K) ・大気中において、応力比 R=0.1~0.4 で SUS304 鋼溶接材中の貫通疲労き裂進展 試験を行い、き裂近傍の強変形領域中に塑性誘起変態 によって生じたa'相変態率および試験片を磁化して得 られた垂直漏洩磁束密度 B, の分布を測定し、B,のピー ク間距離 21 とき裂長 2a、ならびに B, のピーク値 B.me および B...と応力拡大係数の最大値 Kmavとの関係を調 べた。その結果、これまでに報告してきた非磁性母材 中の貫通および非貫通き裂同様、応力比 R の値によらSUS304 weldment fatigued at 297K z-dir, magnetization; lift-off: 4mm2000,0000 A06AB01A008月08Peak yalue of Bzmax or Bzmin, G& R%3D0.1 A & R=0.2 ロ & R=0.3◇ & R%3D0.4 | Open: Front surfaceSolid: Back surface400301020 30 40 Maximum stress intensity factor, Kmax, MPavm(b) z-dir. magnetizationず、2a-21 の関係および Baman-Kimary Bamin-Kimax の関係に は良好な線形関係が成立することが分かった。従って、 溶接部近傍の強磁性相中に埋没した疲労き裂について も、変態したa’相による漏洩磁束密度分布の変化を測 定することにより、き裂長 2と負荷応力拡大係数の最 大値 Kamerの推定が可能であることが示された。参考文献[1] 中曽根ほか3名、機構論 No.00-17('00)、pp. 573-574. [2] 中曽根ほか3名、機構論 No.010-1('01)、pp. 107-108. [3] 日本 AEM 学会、電磁破壊力学調査研究分科会報告書、JSAEM-R-9803('99)、R-9903('00)、R-0005('01). [4] 中曽根ほか3名、日本 AEM学会誌、9-2('01)、pp. 123-130. [S] 中曽根ほか4名、機講論 No.03-11('03)、pp.321-322.[6] Bi? vt ASM Handbook, 19, ASM Int. ('97), pp. 1 159-160378“ “マルテンサイト変態を利用した SUS304 鋼 溶接材中の真通疲労き裂の非破壊評価“ “中曽根 祐司,Yuji NAKASONE,岩崎 祥史,Yoshifumi IWASAKI,大橋 聡,Satoshi OHASHI